わかりやすい人工呼吸器 基礎の基礎1(レジデント向け)
呼吸モニターには患者の呼吸数が表示されます。下図はその様子をあらわしたものです。
モニターに表示される呼吸数は、患者の自発呼吸の数と一致します。
自発呼吸がゼロになれば、モニター上の呼吸数もゼロになります。
あたりまえですよね。
しかし、人工呼吸器をつけるとそうはなりません。
下図はその様子を表した図です。
自発呼吸が少なくなると、人工呼吸器がそれを補います。
グラフの水平部分がそれをあらわしています。
自発呼吸の数が少なくなっていくと、あるところから人工呼吸器が最小呼吸数になるまで強制的に換気します。
最小限度の呼吸回数が保証されます。
そういう人工呼吸器の設定方法(モード)に2つあります。
Assistモード(持続的MV:CMV)とSIMVモード(間欠的MV:IMV)です。
Assistモード(持続的MV:CMV)
すべての自発呼吸を補助換気(assist)しつつ、自発呼吸が少ないときには調節換気(control)によって呼吸数を補います。
下図はその様子をわかりやすくあらわした図です。
自発呼吸はすべて補助換気(assist)されます。
自発呼吸が少なくなると、調節換気(control)によって呼吸回数が補われます。この仕組みによって設定された最小限の呼吸回数が保証されます。自発呼吸が多くなると調節換気(control)の回数はゼロとなり、補助換気(assist)のみとなります。補助換気(assist)の回数に上限リミットはありません。
調節換気(control)も補助換気(assist)も、どちらも強制換気(MV)なので、Assistモードは常に強制換気(MV)していることになります。そのため持続的MV(CMV)ともよばれます。
SIMVモード(間欠的MV:IMV)
必ずしもすべての自発呼吸を補助する必要がなければ、補助換気(assist)の回数に制限をつけてSIMVモードとします(下図)。
SIMVモードでは、自発呼吸の数にかかわらず、設定された呼吸回数が強制換気(MV)されます。この強制換気(MV)に、調節換気(control)と自発呼吸への補助換気(assist)が含まれます。
自発呼吸が設定回数より少ない場合、調節換気(control)によって設定された呼吸回数が保証されます。自発呼吸が設定回数より多くなると、調節換気(control)の回数はゼロとなります。設定回数を超えた自発呼吸については補助換気(assist)はおこなわれません(あるいはpressure support(PS)のみとなります) 。
SIMVモードは、自発呼吸が設定回数より多い場合には間欠的なMV(IMV)ですが、自発呼吸が設定回数より少ない場合は持続的MV(CMV)と区別できません。
IMVモード(間欠的MV:IMV)
SIMVより一世代前には、純粋な意味でのIMVモードというものがありました。
その模式図は以下の通りです。
非常にシンプルです。
この頃の強制換気(MV)に補助換気(assist)の仕組みはなく、調節換気(control)のみです(あってもpressure support(PS)のみ)。補助換気(assist)が開発される前のモードですから当然といえば当然です。
自発呼吸が少なかろうと多かろうと決められた換気回数だけ調節換気(control)します。
設定回数を超えた自発呼吸には補助換気(assist)はありません(あるいはpressure support(PS)のみとなります) 。
この頃のモードは単純です。モードと呼ぶのも憚れるほどです。
調節換気(control)の数を増やして自発呼吸がなくなれば持続的MV(CMV)になるし、調節換気(control)の数を減らしてときどき自発呼吸がみられれるようにすると間欠的MV(IMV)になります。
むしろ、これこそがIMVモードの本来の姿です。
自発呼吸を抑制した持続的MV(CMV)では換気はすべて調節換気(control)ですから、これをControlled Mechanical Ventilation (CMV)とよんだりして、CMVの意味が混乱していたのも今は昔の話です。
もはや実際の臨床の現場では目にすることもなくなった歴史的なモードですが、換気モードの理解のためには知っておいた方がよいでしょう。
ところで
AssistモードやSIMVモードには、それぞれVCVベースのものとPCVベースのものがあります。
それぞれ、SIMV、A/C(アシストコントロール)、BiPAP、BiPAPアシストなどとよばれます。
それらについて勉強したい方はこちらへ。
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