【解剖】深部静脈血栓DVTスクリーニングのための下肢静脈解剖(自分用)
基本解剖:
【 ポイント】
1.深部静脈 deep vein と 表在静脈 superficial vein の違いは?
腓腹筋(Gastrocnemius)を覆う Deep fascia を同定。
Deep fascia より深いところを走行するのが深部静脈 deep vein。
Deep fascia より浅いところを走行するのが表在静脈 superficial vein。
2.大腿浅静脈 superficial femoral vein は深部静脈 deep vein か?
大腿浅静脈 superficial femoral vein は 浅という字がついているが深部静脈 deep vein である。
3.大腿静脈 femoral vein とは?
大腿浅静脈 superficial femoral vein または、総大腿静脈 common femoral vein を包括した総称である。大腿静脈 femoral vein という固有の静脈はない。
【解説】
下の図をまずよ~くみる。右下肢の静脈である。
静脈血流に沿って末梢から中枢側に(下から上に)超音波プローブをあてていくと・・・
足背で、中央よりやや内側(第2趾と第3趾の間)に脈が触れるところがある。そこからやや足の中央に向かいながら上行し、脛骨(Tibia)と腓骨(Fibia)の間をくぐり抜ける前脛骨静脈 anterior tibial vein をみつける。これは深部静脈なのでさらに上方へスキャンしていく。
足の外側で、くるぶし(腓骨 Fibia)の後方、浅いところにある静脈は小伏在静脈 small saphenous vein(SSV)である。これは深部静脈ではないのでとりあえず無視する。
足の外側で、くるぶし(腓骨 Fibia)の後方、深いところに腓骨静脈 peroneal vein をみつけることができる。これは深部静脈なのでさらに上方へスキャンしていく。
足の内側で、くるぶしの前方、浅いところにある静脈(下肢において最も点滴確保のルートにつかわれる静脈)は大伏在静脈 great saphenous vein(GSV)である。これは深部静脈ではないのでとりあえず無視する。
足の内側で、くるぶし(脛骨 Tibia)の後方、深いところに後脛骨静脈 posterior tibial vein をみつけることができる。これは深部静脈なのでさらに上方へスキャンしていく。
下肢の外側にある、腓骨(Fibia)に沿って走行する腓骨静脈 peroneal vein をスキャンしていくと、
上方で…
腓骨静脈 peroneal vein に、後脛骨静脈 posterior tibial vein が合流し、脛骨腓骨静脈幹(tibioperoneal trunk)となる。
さらに上方で…
脛骨腓骨静脈幹(tibioperoneal trunk) に、前脛骨静脈 anterior tibial vein が合流し、膝窩静脈 popliteal vein となる。
さらに上方で…
膝窩静脈 popliteal veinは、膝の上方で内転筋管(adductor canal、Hunter's canal)に入り、超音波では見えなくなる。
さらに上方で…
大腿部内側で内転筋管(adductor canal, Hunter's canal)をぬけた大腿浅静脈 superficial femoral vein が見えるようになる。
さらに上方で…
大腿浅静脈 superficial femoral vein に、大腿深静脈 deep femoral vein が合流し、総大腿静脈 common femoral vein となる。
さらに上方で…
総大腿静脈 common femoral vein に、大伏在静脈 great saphenous vein が合流する。
検査結果(レポート)において、大腿浅静脈 superficial femoral vein を大腿静脈 femoral vein と記載することがある(大腿浅静脈 superficial femoral vein をその名の通りに記載すると 表在静脈 superficial vein と誤解される可能性があるため)。しかし実際には 大腿静脈 femoral vein という固有の静脈はない。なお、動脈については 大腿浅動脈 superficial femoral artery を 大腿動脈 femoral artery と記載しても問題となることはない(表在動脈や深部動脈の区別が不要なため)。
表在静脈(superficial veins)とは:
Deep fascia(fascia lata, muascular fascia)より表在側にある静脈。皮静脈。
大伏在静脈 great saphenous vein(GSV)、小伏在静脈 small saphenous vein(SSV)など。
弁機能が悪くなるとここに静脈瘤を起こしやすい。ここに血栓があっても深部静脈血栓症(DVT)ではない。
注意:大伏在静脈 great saphenous vein が総大腿静脈 common femoral vein に合流する部位と、小伏在静脈 small saphenous vein が膝窩静脈 popliteal vein に合流する部位は Deep fascia(fascia lata)の内側である。すなわち、どちらの合流部も深部静脈 deep vein である。ここには、よく血栓(DVT)を生じる。
深部静脈(deep veins)とは:
Deep fascia(fascia lata, muascular fascia)より深部にある静脈。
ここに生じる血栓症が、深部静脈血栓症(DVT)である。
総大腿静脈 common femoral vein、大腿浅静脈 superficial femoral vein、大腿深静脈 deep femoral vein、膝窩静脈 popliteal vein、後脛骨静脈 posterior tibial vein、腓骨静脈 peroneal vein など。
大腿深静脈 deep femoral vein 分岐部より中枢側を総大腿静脈 common femoral vein、大腿深静脈 deep femoral vein 分岐部より末梢側を大腿浅静脈 superficial femoral vein という。
注意:大腿浅静脈 superficial femoral vein は、浅という字がついているが、表在静脈 superficial vein ではない。深部静脈 deep vein である。
注意:大腿深静脈 deep femoral vein は、いかにもDVTをおこしそうな静脈だが、実はその名前の割に、臨床的にあまり問題にならない(超音波でも分岐部しか見えない)。
静脈の基本構造図
上述の基本構造に加え、図には表現しにくいが前後に分岐する以下の構造を理解する。
小伏在静脈 small saphenous vein:下腿の後方を上行し、膝窩静脈 popliteal vein に後方から流入する。
前脛骨静脈 anterior tibial vein:下肢の前方を上行し、脛骨 tibia と腓骨 fibula の間にある interosseous ligamentを 貫通し膝の後方で膝窩静脈 popliteal vein に合流する。
腓腹静脈 Sural veins:腓腹筋 gastrocunemius 内部を走行する静脈。
ヒラメ静脈 Soleal veins:ヒラメ筋 soleus 内部を走行する静脈 ←ここにDVTが多発する!
すべてを書き込むとこうなる。
腓腹筋 gastrocunemius より深いところにヒラメ筋 soleus がある。
ヒラメ筋 soleus より深いところに、腓骨静脈 peroneal vein と後脛骨静脈 posterior tibial vein が走行する区画がある。
右の下肢静脈ダイアグラム
左の下肢静脈ダイアグラム
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