【医学】 CCU・ICUで役に立つCVP波形の読み方(自分用・講義用)
CVPは右心系の還流圧をモニターするものですが、その波形を解析するといろいろと役にたちます。
CVPあるいは右心房の圧は、a波、c波、x波、v波、y波などの主に5つの波からなりたちますが、それぞれの波の成り立ちには理由があり、右心房と左心房でも微妙に波形が異なります。
上図に示したように、a波とv波は、正常RAではa波が高く、正常LAではv波が高くなります。
しかし何か異常があると(心房の要因、心室の要因、接続する静脈系の要因など実にさまざまな要因によって)、a波とv波の高さは、その高さが変化します。
なので、静脈波をよく勉強している人にとっては、a波とv波の波高が重要に思えるかもしれません。
しかし、a波とv波は実はCVP圧の決定因子というぐらいがその現実的な役割で、それ以外、循環動態の把握にはあまり役にたちません(例外は、Canon A waveぐらいか・・・)。
むしろ臨床的には、というか循環器科医の目線的には、心電図のRとRの間にある、"x波とy波" → この2つの陰性の波のほうが重要にみえます。
この2つの谷、正常ではx波が深いのですが、心室の拡張障害があるとy波が深くなります。
心室は、いろんな病態で(開心術後など)しなやかさを失い、拡張障害をおこします。そうするとy波がx波よりも深くなってくるのです。
たとえば、Constrictive physiology、Restrictive physiology、Decompensated heart failureの3病態では、いずれもy波が深くなります。・・・すなわちnon-compliant patternになります(特にRA圧)。
心室がしなやかさを取り戻すとともにy波が浅くなり、x波が深くなっていきます。
このようにRA波やLA波のx波y波のパターンは、拡張障害をモニターできるという点で役に立ちます。
ただし、このパターン認識には限界があります。
とくに、若い人のLA波は、これらの病態があってもy波が深くならない、すなわちNormal pattern のことがありますし、新生児・乳児期のRA波、および高齢者のLA波は、そもそもベースラインがnon-compliant patternであることがふつうです。新生児、乳児期のRV、高齢者のLVはそもそも硬いからです。
このようにパターン認識には限界がありますが、せっかくCVP波をモニターしているのに平均圧しかみないのはもったいないと思います。
(注1)
Tamponade physiologyにおいては、病態の進展とともにy波が浅くなり、相対的にx波の深さが深くなります。つまり、タンポナーデでは、RA波やLA波のx波y波のパターンは正常パターンです。教科書でも時々間違っているので要注意です。
Constrictive physiology、Tamponade physiology、Restrictive physiologyの鑑別のためには、エコーによる房室弁を通過する血流の呼吸性変動が役に立ちます。興味がある人はこちらをどうぞ。
(注2)
三尖弁逆流のRA波や僧帽弁逆流のLA波ではy波が深くなるとともにv波が高くなり、どちらも上から4番目の波形(LV non-compliant pattern)になります。
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