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迷走する療養病床の変遷~紆余曲折の記録

<<誰も言わない日本の医療問題>>

高齢者社会へとつきすすむ日本

療養・介護という言葉が広く人口に膾炙するようになり20年あまり経ちました。

そもそもは、財政的な理由がきっかけでした。

医師を必要としない患者が病院に長期間入院し、貴重な医療リソースを占有してしまっているという問題・・・

その後、療養病棟・療養病床・介護病床に対する厚生労働省の舵取りには幾多の紆余曲折(迷走?)がみられます。

今後どの方向に進んでいくのか、それを見極めるためにも、複雑怪奇でわかりにくい今までの経過を、ふりかえっておくことにします。

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基礎知識

療養病棟:一般病院(20床以上)における療養型の入院ベッド。

療養病床:有床診療所(20床未満)における療養型の入院ベッド。広義では一般病院における療養病棟のベッドを含む。

医療施設:病院、クリニック、医療機関。

介護施設:いわゆる「施設」というときは介護施設をさす。

医療保険型療養病床→医療療養型医療施設へ。

介護保険型療養病床→介護療養型医療施設→廃止の予定。

高齢者ホーム、老健、有料老人ホームなどについては→こちら

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療養病床再編成の歴史

1992年、第二次医療法改正によって療養型病床群という入院ベッドが制度化され、1993年に施行された。

根本には、必ずしも医者を必要としない長期療養患者による「社会的入院」が、医療資源(医師、病床)と医療費のムダを生み出しているという考え方があった。

そこで、長期療養患者(多くは老人)をケアする病床を療養型病床群とよび、その実態の把握に手をつけることになった。

そのための差別化の指標として導入されたのが療養型病床群(常勤配置6:1)である。

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将来、この療養型病床群(常勤配置6:1)を医療保険の適応からはずせば医療費の節約になるだろうと考えられた。

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2000年、介護保険がスタート。

療養型病床群(老人病棟、老人病院)のすべてを医療サービスでまかなうのは医療費と医療資源(病院、医師)の無駄使いであるという考えから、医療は医療サービスで、介護は介護サービスでまかなうべきだというコンセプトの元に介護保険制度がつくられた。

人件費が高くつく医療サービスから、介護サービス部分を切り離す作戦である。

ところが、療養型病床群(老人病棟、老人病院)の患者を解析していくと、すべてが医療サービスの不要な「いわゆる社会的入院」患者ではなく、長期的に医療を必要とする患者がいることもわかってきた。

そこで、療養型病床群(老人病棟、老人病院)のうち、特に医療サービスの必要度が低い病床を介護保険型療養型病床群(常勤配置6:1)とし、療養型病床群(老人病棟、老人病院)を、医療必要度が高く医療保険で賄う「医療保険型(常勤配置5:1)」と、いわゆる社会的入院である「介護保険型(常勤配置6:1)」に切り分けた。

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その上で介護保険型療養型病床群(常勤配置6:1)を医療保険の負担からはずし、介護保険(介護療養施設サービス費)で負担することにした。

さらに厚生労働省は、介護保険型療養型病床群の増床を強く奨励した。→ここは重要なポイント!

こうして療養型病床群(老人病棟、老人病院)における介護保険型療養型病床群(常勤配置6:1)のベッド比率はだんだん高くなっっていった。

このようにして、療養型病床群の大部分を医療サービスの必要度が低い病床に指定し、その負担を介護保険でまかなうことができれば、社会福祉費(医療費)の大きな節約になると考えられた。

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2001年、療養型病床群の名称を、療養病床に変更。病棟は一般病床と療養病床に分類されることになった。

2001年、一般病床に隠れている長期療養患者をさらに洗い出すために一般病床の定義が厳格化された(4:1から3:1へ変更)。

これに伴い療養型病床群療養病床と呼ばれることになり、その定義も見直され、医療保険型療養病床(常勤配置4:1または5:1、医療保険)と、介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)に分かれることになった。

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しかし、このころより、これでは単なる医療費から介護費への”付け替え(ケアミックス)”にすぎず、医療資源(医師、病床)の無駄使いの解消にはなっていないという指摘もでるようになった。

医療必要度の低い病床を「物理的」に医療機関から切り離し、医師を必要としない「介護施設」(老人保健施設、ケアハウスなど)へと転換・移行させなければ、医療資源(医師、病床)の有効利用にはならないという考えである。

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2006年(平成18年)、医療機関内における療養病床の総数は38万床まで増加した。うちわけは医療保険型療養病床(常勤配置4:1または5:1、医療保険)25万床、介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)13万床であった。

医療機関内における介護保険型療養病床の増加は、たとえそれが介護保険でまかなわれているとしても、その実態はいわば老人病院であり、依然として医療資源(医師、病床)の無駄使いの根源であるという考え方は根強く残っていた。

そこで、2005年、厚生労働省は、まず手始めとして、医療機関内における介護保険の適用を2012年(平成24年)までとし、それ以降は廃止するという方針を打ち出した(「廃止の決定 )。

厚生労働省としては、医療サービスの必要度が低い病床は、病院の一部ではなく、物理的に「介護施設」として切り離したいという考えである。

同時に、医療機関内における医療保険型療養病床(常勤配置4:1または5:1、医療保険)は、医療療養型医療施設常時配置20:1または25:1医療保険)とよばれるようになった。

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そのうえで、厚生労働省は、医療療養型医療施設(常時配置25:1、医療保険)に、きわめて低額の診療報酬を設定した。

このようにして、病院を兵糧攻めにすれば、医療の必要度が低い療養患者は、自動的に医療機関の外(介護保険「施設」)にあぶりだされるはず、というのが政府の目論見であった。

厚生労働省の考えは、いずれ「25:1と30:1は病院(医療施設)から切り離し、医師不要の施設(介護施設)にする」である。

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つまり、いずれは医療機関内の介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)における介護保険の適用を廃止するだけでなく、医療機関内における医療療養型医療施設(常時配置25:1、医療保険)への医療保険の適用をも廃止し、介護保険の適用にするということであろう。もしかしたら医療療養型医療施設(常時配置25:1、医療保険)を介護施設へと転換した場合にのみ、医療保険の適用を続けるということもあるかもしれない。

実際、この「廃止の決定」後、1年間で1万5千床もの療養病床が閉鎖され、また、それを上回る多くの患者が退院通告を余儀なくされた。

居場所を失った多くの療養患者の受け皿はなく、「介護難民」という名の社会問題になった。

しかし、これは政府のシナリオどおりであり、順調にいけば、2012年までに医療療養型医療施設の総数は15万床まで減り、それ以降は、この15万床のみを医療保険でカバーすればよいはずであった

すなわち、5年間という限られた期間に、23万人の入院患者を医療施設から吐き出させるという強引な政策であった。

また、2012年以降、医療機関では介護保険が使えなくなると周知しておけば、それまでに、医療機関内の介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)は介護保険施設(老健、ケアハウスなど)へと物理的に改築、転換されるだろうという目論見があった。

ところが、介護保険型療養病床(医療機関)から介護保険の「施設」(老健、ケアハウスなど)への改築・転換は、これを促進するためのさまざまな補助政策が講じられたにもかかわらず、なかなか思うようには進まなかった。

それもそのはず、医療機関を経営する医師にとって、介護保険型療養病床(医療機関)を介護保険施設へ転換することは「病院から施設へ」の転換を意味し、そこには大きな心理的抵抗があったのである。

また、厚生労働省の意向にかかわらず、実際には医療サービスを提供できる療養病床に対する需要は増加していた。行き場を失った多くの介護難民の行き先は、結局、医療機関以外になかったのである。

結果として、おこったことは、介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)から医療療養型医療施設(常時配置25:1、医療保険) への逆移行であった。2012年以降、医療機関で介護保険が使えなくなるとすれば、介護難民は医療療養型医療施設(常時配置25:1、医療保険)で受け入れる以外に方法はない。これは多くの医療機関にとっては、赤字覚悟の決断であった。

2000年以降、医療費の抑制のために、かなり強引な政策で介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)を導入し、その増床を奨励しておいて、後にそれを廃止するという厚生労働省のやりかたは、「支離滅裂」「他人の懐に手をいれて好き勝手をする」「上にのぼらせておいて後からはしごをはずすやり方」などさまざまな表現で非難された。

このころより、政府の高齢者医療に対する方針に疑問をもつ機運が医療機関の間に高まり始めた。

介護難民となった患者や家族、世論も、厚生労働省の強引なやり方に疑問を持つようになった。

こうして、政府の目論見とは正反対に、介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)から医療療養型医療施設へ、さらには医療療養型医療施設から一般病棟(常時配置15:1)への赤字覚悟の逆移床がおこりはじめた。

結果、介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)から介護保険施設への改築・転換、いわゆる療養病床の転換はほとんどすすまなくなった。

こうして介護保険施設が絶対的に不足した状況が続いたため、2012年までに介護保険型療養病床を廃止することは事実上不可能となった。

結局、厚生労働省は、医療機関における介護保険型療養病床(常勤配置6:1、介護保険)を、介護療養型医療施設常時配置30:1 、介護保険、療養病床を持つ病院・診療所のうち介護保険施設としての指定を受けたもので施設区分としては「病院」)として認め、これを2018年(平成30年)3月まで存続させることにした。

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結果として、現在、医療施設における療養病床は、医療の必要度が高い医療療養型医療施設常時配置20:1または25:1医療保険)と、医療の必要度が低い介護療養型医療施設常時配置30:1 、介護保険)に今も2分された状態である。

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