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アメリカの乳がん診療 3 (USMLE対策)

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Q: 32歳、胸にしこりが触れる女性が来院しました。どうしますか?

A: 針でしこりの中身を吸引します(FNAC)。もし吸引で透明な液がひけて、しこりが消失、内容物の細胞診も陰性であれば、治療完了とみなし、その後は定期的に検診を続けます。もし、中身が吸引できなかったり、しこりが残れば、摘出生検(excisional biopsy)でしこり全体を取り除きます。通常、針吸引(FNAC)する前に、しこりの周辺に触れない癌が隠れていないかどうかを調べるためのマンモグラフィーを撮影するのがふつうです(針吸引を先にしてしまうと、組織が出血し、マンモグラフィーの所見を読むことが難しくなってしまいます)。35歳以下ならマンモグラフィーをしなくてもよいという意見もありますが、40歳をこえていれば、必ずマンモグラフィーをすべきです。このとき注意しなければならないのは、すでにみつかっている「しこり」に対してマンモグラフィーをするわけではないということです。すなわち、マンモグラフィーの所見が完全に正常であっても、実存する「しこり」に対する精密検査の手を緩めてはいけません。マンモグラフィーが正常でも、しこりに対しては必ず針吸引(FNAC)をおこない、針吸引(FNAC)の後、しこりが残る場合には、マンモグラフィーが正常でも摘出生検(excisional biopsy)をおこないます。

(注:摘出生検Excisional biopsyと、後述する腫瘤摘出術Lumpectomyの違いがわかりにくいと思いますが、前者は検査扱いで後者は治療扱いです。手術手技としてはほとんど同じものです)

 

Q: 針吸引(FNAC)をおこなったところ、しこりは消失し、細胞診も陰性でした。ところがその後の経過観察中にしこりが再発。どう対処しますか?

A: 再度、針吸引(FNAC)をおこない、内容を細胞診にだします。2回再発した場合は摘出生検(excisional biopsy)をおこないます。

 

Q: 36歳女性、しこりは触れませんが、マンモグラフィーで異常がみつかりました。どう対処しますか?

A: しこりが触れないときは、定位針生検(コンピューターによる位置決め針生検)をおこないます。しこりが触れるならば、針生検(core biopsy)も可能です。

(注:日本では、マンモトームという器械を使うことが多いようです)

 

Q: 定位針生検の結果、予想される診断は何ですか?

A: 年齢が12歳から52歳であれば、50%の可能性で良性の「線維のう胞腫」または「線維のう胞変化」または「線維のう胞変性」といわれるものです(52歳以上では乳がんの可能性が高くなります)。特徴として、およそ同じ大きさの腫瘤が両方の乳房、特に外側上方4分の1の区分に複数発生し、押さえると痛みがあります。生理がはじまると大きさが小さくなったり痛みが軽くなりますが、生理前になるとまた悪くなります。基本的に良性の病変ですが2-3%の頻度で過形成をおこし、その場合、がん化する可能性があります。

 

Q: がん化する可能性がある過形成型の「線維のう胞腫」をどうやって見つけますか?

A: 一個だけ、他に比べて大きいしこりがある場合に過形成タイプをうたがいます。一番大きいしこりに対して針吸引(FNAC)をおこないます。

 

Q: 線維のう胞腫の治療方針は?

A: 無治療でOKです。過形成でなければ、乳がんとの関係もありません。ビタミンが効くとか・・・いろいろなうわさに振り回されないように指導します。

 

Q: 線維のう胞腫は、あるものの摂取量を減らすと改善しますが、それは?

A: コーヒー、チョコレート、コーラです。しかし、線維のう胞腫を食事だけで治療することはできません。

 

Q: 経口避妊薬は線維のう胞腫にどんな影響がありますか?

A: 経口避妊薬を飲むと、線維のう胞腫が良くなります。同様に、閉経すると線維のう胞腫は良くなります。線維のう胞腫にはエストロゲンが関係しているからです。痛みが強い場合には、経口避妊薬を使用して治療します。

 

Q: 25歳、境界のはっきりした弾性のあるしこりがひとつ触れます。診断は?

A: 次の回へ

 

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