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アメリカの乳がん診療 1 (USMLE対策)

この記事は、乳がんの検診、初期診療について、2005年現在、アメリカの医学部生が習う内容をQ&A形式でまとめたものです。

当然ですが、内容的には2005年以前のエビデンスにもとづいていることをご留意ください。

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Q: 32歳の女性、乳頭から血液?のような分泌液がでるという訴えがあります。まず最初にするべき検査は何ですか?

A: 分泌液を顕微鏡で検査します。脂肪があれば乳汁。白血球があれば感染、がん細胞があれば癌、血液であれば管内乳頭腫であるとわかります。

 

Q: 顕微鏡での検査の結果、分泌液は血液でした。次に何を計画しますか?

A: 分泌物が血液の場合、90%の確率で良性です。診断は、良性の管内乳頭腫でほぼ間違いないでしょう。しかし、10%の可能性で乳がんの可能性が残ります。念のため、必ず摘出生検(excisional biopsy)をおこないます。

(注: 実際には、摘出生検とあわせてマンモグラフィーもおこないます。ほかの隠れた場所に乳がんがないかどうかをスクリーニングするためです。このマンモグラフィーは、できれば摘出生検の前にしたほうがいいでしょう。なぜなら摘出生検を先にしてしまうと組織が出血し、マンモグラフィーの所見が難しくなってしまいます)

 

Q: 摘出生検(excisional biopsy)の結果、管内乳頭腫と診断されました。今後のプランは?

A: 管内乳頭腫は良性で悪性化しません。生検前に施行したマンモグラフィーも陰性なら、経過観察で大丈夫です。

 

Q: では、顕微鏡での検査の結果、分泌物は乳汁であったとしましょう。このときあなたは患者さんにどのようなことを確認しますか?

A:
 乳汁分泌では3つのポイントを確認します。1.まず、最近の妊娠出産暦を確認します。1年以内に出産していれば、「生理的乳汁分泌」で心配ありません。2.次に、薬剤使用暦をききます。抗うつ剤、抗精神薬、アルドメット(高血圧の薬)などの薬剤で、抗ドーパミン作用による乳汁分泌がおこることがあります。3.さらに、胸部の創傷治癒(手術、帯状疱疹など)によって乳汁分泌がおこることもあるので、そういう病歴の有無もたしかめます。以上の3点で説明がつかなければ下垂体腫瘍を考えます。

 

Q: 乳汁分泌を抑えるために使われる治療薬は何ですか?

A: ブロモクリプチン(ドーパミン刺激剤)です。

 

Q: 下垂体腫瘍が疑われる場合、何を検査しますか?

A: プロラクチン測定、TSH測定、頭部MRIです。下垂体腫瘍が1cm以下のサイズ(microadenoma)であればブロモクリプチンによる薬剤治療をおこない、1cm以上であれば外科治療を選択します。

 

Q: 授乳行為が母体に及ぼす影響について説明してください。

A: 授乳行為には乳汁分泌のほかに、避妊の効果があります。授乳は、PIFを抑制し、下垂体を脱抑制することにより、プロラクチンの産生を促し、乳汁分泌を促進させます。また、授乳刺激は、GnRHを抑制し、LH、FSHの分泌が減るため、排卵が抑制されます。実際、「授乳」は母乳保育中のもっとも効果的な避妊法です。

 

Q: 胸部の創傷(帯状疱疹や手術)の後、乳汁が分泌されることがあるのはなぜですか?

A: 胸部の創傷治癒による刺激が、授乳にかかわる神経を刺激し、乳汁分泌を誘発すると考えられています。

 

Q: 乳房の自己検診をするとき、月経周期における最適のタイミングは?

A: 次の回へ

 

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