« Afterload(後負荷)とか、Preload(前負荷)とか、LV Filling Pressure(左室充満圧)とか (医学生・研修医向け) | トップページ | 後壁梗塞について (医師・医学生向け) まとめ »

Pressure Volume Loopについて (医学生・研修医向け)

 

☜この記事をシェアする

 

Pressure Volume Loop

Cocolog_oekaki_2016_04_23_23_26

青の線が、左心室の収縮容量圧曲線(Emax)。

どうやって測るかというと―――

  1. 拡張した左心室に「ある量」の血液を入れる。
  2. そのまま左心室の出口を硬い蓋で閉じてしまう。
  3. こうやって、絶対に血液がでていけない状態にしておいて、心臓を強制的に収縮させる。
  4. 収縮中の左心室の最高内圧(Emax)を測定する。
  5. 最初に入れる血液の量をちょっとずつ増やしながら、最高内圧を繰り返し測定していく。

Cocolog_oekaki_2016_05_01_00_33

こうやって・・・

容量をかえながら一回一回、最大収縮圧力を測定し、それらを一点一点結んでできるのが青の線(Emax)です。

この青の線の傾きは、心臓のContractilityの指標です。

出口を塞いで強制的に収縮させるのですから、

骨格筋を強制的に等尺運動させて全張力(Total tension)を測定する実験に似ています。

*注:Contractilityは収縮力ではありません。適切な日本語訳がありませんが、あえていえば収縮性能でしょうか?

 

ところが・・・

実際の心臓では、収縮の途中で出口が開放されるため、

弁の開放後に圧があがらなくなります。

骨格筋でいうと、等尺性収縮から、突然、等張性収縮に途中でかわるようなもの。

等張性収縮では、張力が一定に保たれるように、

大動脈弁が開放してしまうと、心内圧はそれ以上上昇しなくなります。

なので、圧力がEmaxに到達することはありません。

つまり、青の線(Emax)を生体で測定することは不可能です。

そこで、どうするかというと・・・

とりあえず、何回か収縮末期の左心室の容量(V)と内圧(P)を測り、それをPVグラフにプロットして、青の線(Emax)としよう!

と、いうことになっています。

どういうわけか、収縮末期の左心室の容量と内圧の関係は、ほぼ、この青の線(Emax)の線上にのることがわかっているからです。

なんだか、アタリマエのようなアタリマエでないような・・・

Cocolog_oekaki_2016_05_07_06_29

左心室の「収縮末期の容量と内圧」の関係は、

正しくは、「収縮末期における左心室エラスタンス」(Ees)と、呼ぶべきであって、

Emaxとは全く異なるものです。

しかし、

前述したように、数々の研究で、EesのプロットとEmaxのプロットは、「どういうわけか」よく一致することがわかっているので、

まぁ、

臨床的には、生体でも測定可能なEesをつかって、Emax曲線の代用としているのです。

Emaxは左心室のContractilityをあらわしているわけですから、「収縮末期の左心室エラスタンス」(Ees)を評価すればContractilityを知ることができると考えられます。

Cocolog_oekaki_2016_05_19_17_18

緑の線は、左心室の拡張末期の容量圧曲線をあらわしています。

どうやって測るかというと、

    1. 単純に、拡張した左心室に「ある量」の血液をいれて、内圧を測る。
    2. 入れる血液の量を変えながら繰り返し測定していく。

骨格筋の受動張力(Passive tension)を測定する方法に似ています。

これは、結局、房室弁解放後、拡張中期~末期の心室内圧曲線です。

この曲線も、アタリマエでないようでアタリマエのように、何回か拡張末期の左心室の容量(V)と内圧(P)を測り、それをPVグラフに1回1回プロットして得られる曲線と、まぁ、よく一致することがわかっていますので、

それで代用できる・・・

と、いうことになっています。

 

大動脈の収縮末期エラスタンス(Ea)

 

Cocolog_oekaki_2016_04_23_23_22

ピンクの線の傾きは、大動脈の収縮末期エラスタンス(Ea)を反映します。

どうやって測定するかというと―――

  1. 拡張した左心室に「ある量」の血液を入れる。
  2. そのまま左心室の出口を伸びるゴム膜で閉じてしまう。
  3. 心臓を強制的に収縮させる。
  4. 収縮終了時の左心室の内圧を測る。
  5. 収縮終了時にゴム膜が伸びて受け入れた血液の量を測る。
  6. これを、ゴム膜の硬さを変えながら繰り返し測定していく。
  7. さらに、最初に入れる血液の量を変えて1-6を繰り返す。

出口に張られたゴム膜が全く伸びなければ、Emaxの測定と同じことになります。

 

ところで―――

ちょっと難しい話になりますが、心臓の壁厚を考慮しなければ、左心室の壁張力(Wall tension)は、ある時点の左心室の径と圧の積に比例するため、図にすると、下図のような等高線としてあらわされます。

 

Cocolog_oekaki_2016_04_25_14_09

つまり、収縮末期や拡張末期の実際の壁張力(Wall tension)は、青の線とピンクの線の交点や、ピンクの線と緑の線の交点が、どの壁張力曲線上にあるかによって決まるといえます。

あえて立体的に書くとこんな感じ?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/afterload_preload1.png

PreloadやAfterloadなどの壁張力(Wall tension)は、ほんとはこういう立体的な概念であって、pressure-volumeという2次元グラフではあらわせないんです。

 

☜この記事をシェアする

 

« Afterload(後負荷)とか、Preload(前負荷)とか、LV Filling Pressure(左室充満圧)とか (医学生・研修医向け) | トップページ | 後壁梗塞について (医師・医学生向け) まとめ »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« Afterload(後負荷)とか、Preload(前負荷)とか、LV Filling Pressure(左室充満圧)とか (医学生・研修医向け) | トップページ | 後壁梗塞について (医師・医学生向け) まとめ »