Pressure Volume Loopについて (医学生・研修医向け)
Pressure Volume Loop
青の線が、左心室の収縮容量圧曲線(Emax)。
どうやって測るかというと―――
- 拡張した左心室に「ある量」の血液を入れる。
- そのまま左心室の出口を硬い蓋で閉じてしまう。
- こうやって、絶対に血液がでていけない状態にしておいて、心臓を強制的に収縮させる。
- 収縮中の左心室の最高内圧(Emax)を測定する。
- 最初に入れる血液の量をちょっとずつ増やしながら、最高内圧を繰り返し測定していく。
こうやって・・・
容量をかえながら一回一回、最大収縮圧力を測定し、それらを一点一点結んでできるのが青の線(Emax)です。
この青の線の傾きは、心臓のContractilityの指標です。
出口を塞いで強制的に収縮させるのですから、
骨格筋を強制的に等尺運動させて全張力(Total tension)を測定する実験に似ています。
*注:Contractilityは収縮力ではありません。適切な日本語訳がありませんが、あえていえば収縮性能でしょうか?
ところが・・・
実際の心臓では、収縮の途中で出口が開放されるため、
弁の開放後に圧があがらなくなります。
骨格筋でいうと、等尺性収縮から、突然、等張性収縮に途中でかわるようなもの。
等張性収縮では、張力が一定に保たれるように、
大動脈弁が開放してしまうと、心内圧はそれ以上上昇しなくなります。
なので、圧力がEmaxに到達することはありません。
つまり、青の線(Emax)を生体で測定することは不可能です。
そこで、どうするかというと・・・
とりあえず、何回か収縮末期の左心室の容量(V)と内圧(P)を測り、それをPVグラフにプロットして、青の線(Emax)としよう!
と、いうことになっています。
どういうわけか、収縮末期の左心室の容量と内圧の関係は、ほぼ、この青の線(Emax)の線上にのることがわかっているからです。
なんだか、アタリマエのようなアタリマエでないような・・・
左心室の「収縮末期の容量と内圧」の関係は、
正しくは、「収縮末期における左心室エラスタンス」(Ees)と、呼ぶべきであって、
Emaxとは全く異なるものです。
しかし、
前述したように、数々の研究で、EesのプロットとEmaxのプロットは、「どういうわけか」よく一致することがわかっているので、
まぁ、
臨床的には、生体でも測定可能なEesをつかって、Emax曲線の代用としているのです。
Emaxは左心室のContractilityをあらわしているわけですから、「収縮末期の左心室エラスタンス」(Ees)を評価すればContractilityを知ることができると考えられます。
緑の線は、左心室の拡張末期の容量圧曲線をあらわしています。
どうやって測るかというと、
- 単純に、拡張した左心室に「ある量」の血液をいれて、内圧を測る。
- 入れる血液の量を変えながら繰り返し測定していく。
骨格筋の受動張力(Passive tension)を測定する方法に似ています。
これは、結局、房室弁解放後、拡張中期~末期の心室内圧曲線です。
この曲線も、アタリマエでないようでアタリマエのように、何回か拡張末期の左心室の容量(V)と内圧(P)を測り、それをPVグラフに1回1回プロットして得られる曲線と、まぁ、よく一致することがわかっていますので、
それで代用できる・・・
と、いうことになっています。
大動脈の収縮末期エラスタンス(Ea)
ピンクの線の傾きは、大動脈の収縮末期エラスタンス(Ea)を反映します。
どうやって測定するかというと―――
- 拡張した左心室に「ある量」の血液を入れる。
- そのまま左心室の出口を伸びるゴム膜で閉じてしまう。
- 心臓を強制的に収縮させる。
- 収縮終了時の左心室の内圧を測る。
- 収縮終了時にゴム膜が伸びて受け入れた血液の量を測る。
- これを、ゴム膜の硬さを変えながら繰り返し測定していく。
- さらに、最初に入れる血液の量を変えて1-6を繰り返す。
出口に張られたゴム膜が全く伸びなければ、Emaxの測定と同じことになります。
ところで―――
ちょっと難しい話になりますが、心臓の壁厚を考慮しなければ、左心室の壁張力(Wall tension)は、ある時点の左心室の径と圧の積に比例するため、図にすると、下図のような等高線としてあらわされます。
つまり、収縮末期や拡張末期の実際の壁張力(Wall tension)は、青の線とピンクの線の交点や、ピンクの線と緑の線の交点が、どの壁張力曲線上にあるかによって決まるといえます。
あえて立体的に書くとこんな感じ?
PreloadやAfterloadなどの壁張力(Wall tension)は、ほんとはこういう立体的な概念であって、pressure-volumeという2次元グラフではあらわせないんです。
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