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誰も言わないラドンと肺がんの関係

 

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知らないと怖いことなのに、だれも気にしていない・・・

外国では常識なのに

日本人のほとんどが知らない・・・

まぁ、知らないほうがいいこともあるでしょうけど、

ほんとにそんな無知でいいの?

ということもあります。

 

そのひとつが、

ラドンの脅威です。

 

ラドンとは、

そう・・・

あの放射能をもつ

「気体」です。

 

地下で発生し地上に漏れ出たラドンの粒子は空気中を漂っています。

呼吸によって体に吸いこまれたラドンは、肺に沈着し、そこでアルファ線による内部被爆をおこします。

小細胞癌という肺がんの原因になると考えられています。

 

アルファ線による電離作用は、ベータ線やガンマ線よりも非常に強いため、絶対に体内に取り込んではいけません。

統計によると、全米で毎年21000人がラドンによる肺がんで死亡しており、アメリカではラドンはタバコに次ぐ肺がんの第二位の危険因子に指定されています。

日本にはこのような統計データはなく、実態は不明です。

 

地下から漏れでてくるラドンが肺がんをおこす

ラドンと肺がんの関係は、日本人のほとんどが知らないことですが、世界では常識です。

たとえば・・・

アメリカで不動産の売買を行うときには必ず土地のラドン濃度を測定しなければなりません。

ラドン濃度は世界中で測定されており、その平均濃度は屋外で5 Bq/L、屋内で40 Bq/Lだそうです。

ラドンの濃度が100 Bq/Lをこえるごとに肺がんが16%増えるという統計があります。

アメリカでは安全なラドンの濃度基準は2 pCi/L(74 Bq/L)未満とされています。
4 pCi/L(148 Bq/L)を超える場合にはラドン除去装置を取り付けなければなりません。

 

実は日本でも、過去に数回、空気中のラドン濃度は測定されたことがあるようです(ラドン濃度測定調査:17ページ参照)。

その結果は・・・?

平均14.3 Bq/L →大丈夫だったΣ(;・∀・)

という結論です。

しかし・・・

測った場所は、日本全国でほんの2000家屋程度のようで、そのうち6家屋のラドン濃度は180 Bq/L以上だったと・・・

それで本当に大丈夫だといいきれるのでしょうか・・・?

ちょっと不安じゃないですか?

 

アメリカでは、あらゆる家屋、不動産のラドン濃度が数年に一度、測定されています。

ある家屋のラドン濃度は大丈夫でも、すぐ隣の家のラドン濃度が危険レベルであるということがふつうにあるからです。

一軒一軒、くまなく調べられているといっても過言ではありません。

日本はもっと細かく調べなくても大丈夫なのでしょうか???

あなたの土地は、ほんとに大丈夫でしょうか???

 

知り合いに、タバコも吸っていないのに肺がんになった人はいませんか???

ラドンの影響かもしれません・・・

いたずらに恐怖を煽るつもりはありませんが、

日本ではラドンに対する配慮が少なすぎるように思います。

 

ところで―――

放射能による被爆の影響を考えるとき、シーベルトだと、年間1-2ミリシーベルト/年が上限・・・

みたいなコンセンサスがありますが、

前述した空気中のラドンの濃度はシーベルトではなく、pCi/LとかBq/Lというわかりにくい単位であらわされています。

これって、シーベルトに換算すると、どれくらいの被爆量に相当するのでしょうか?

 

わかりにくいので調べてみました。

少なくとも日本語で納得できるサイトはありません。

ひとつ、10000 Bqのラドンを吸入したときの実効線量は0.065mSvであるというサイトがありますが、根拠が不明です。

英語のサイトに行くと、WLMという「さらにわかりにくい単位」を経由してシーベルトに換算する専門的なサイトばかり・・・

その中で、ようやく見つけたわかりやすい換算方法は、UNSCEARで使われているラドンの線量変換係数dose conversion factorをもとに計算する方法です。

ラドンの線量変換係数という一見、難しそうな数字を使ってシーベルトに換算します。

わかりやすく言うと、

ラドンの線量変換係数とは、1 Bq/Lの濃度のラドンを継続して一時間吸入すると、何mSVの被爆をおこすか?

という数値です(自分用の覚え書き(^-^;)。

ラドンの場合、これが、0.000009 (0.000006~0.000015) mSv/Bqh/Lであるといわれています(専門家レベルでは、いろいろと細かい異論はあるみたいですが・・・)。

つまり、

「1 Bq/Lの濃度のラドンを「一時間」継続して吸入すると、0.000009 ミリシーベルトの内部被爆をおこす」

ということです。

 

なるほど・・・

これなら、意味がわかります。

この数字に基づいて計算すると、1 Bq/Lの濃度のラドンを一年間継続して吸入したときの内部被爆は0.07884 ミリシーベルト/年となります。

つまり、アメリカのラドンの安全基準であるとされる 75 Bq/L(およそ2 pCi/L)の空気を一年間継続して吸入しつづけた場合の内部被爆量は5.9 ミリシーベルト/年になります。

けっこうな量の被爆ですね・・・

 

しかし、現実には、安全基準ぎりぎりの空気を常に吸入するわけではありません。

実際の空気中には、ラドンの濃度が高い場所、低い場所が混在しているますから、

実際には、これに平衡係数((゚Д゚)???)とやらを掛けて、75 Bq/Lのラドンによる内部被爆は、最終的には1.9 - 3.8 ミリシーベルト/年程度に落ち着くようです(ラドンの平衡係数は0.4 - 0.6らしいです)。

結局、

平均ラドン濃度20 - 40 Bq/Lを一年間吸入したときの内部被爆が1 ミリシーベルト/年程度

になります。

実際には、これから逆算して、ラドンの安全基準を75 Bq/L未満と定めているふしがあります。

最後に―――

 

ごく標準的な環境におけるラドンの影響(シーベルト)を詳しく計算してみましょう。

1. 屋内ラドン濃度40 Bq/L、屋外ラドン濃度10 Bq/Lというごく標準的な世界を仮定します。

2. 一年(8760時間)のうち、屋内で0.8年(約7000時間)、屋外で0.2年(1760時間)を過ごすとします。

3. 平衡係数として屋内0.4、屋外0.6を用います(この係数の根拠が実にあいまいですが・・・専門家が決めたことです( ´_ゝ`)フーン)。

実効線量係数effective dose factorを、0.000009 mSv/Bqh/Lとすると、

屋内 40 Bq/L x 0.4 x 7000 h x 0.000009 mSv/Bqh/L = 1.0 mSv

屋外 10 Bq/L x 0.6 x 1760 h x 0.000009 mSv/Bqh/L = 0.095 mSv

1.0 mSv + 0.095 mSv = 1.095 mSv

つまり、この屋内ラドン濃度40 Bq/L、屋外ラドン濃度10 Bq/Lという、ごく標準的な環境における内部被爆は、一年に1.095 mSv/年であると計算できます。

あなたの家屋、ラドンの濃度は大丈夫ですか?

煙草も吸ってないのに肺がんになった人がいれば、部屋のラドン濃度を測定したほうがいいかもしれません。

 

(その後の情報。日本の空気中のラドンの濃度は0.48 mSV/年らしい)

 

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