犯罪をおこしうる精神疾患 5
窃盗症(クレプトマニア Kleptomania)
定義:物を盗む衝動を抑えきれず、窃盗を繰り返してしまう。これといって必要なものを盗むわけではない。いったんターゲットになるアイテムをみると、心臓が鳴り、手が震え、どんどん不安が増大し、口がカラカラにかわく。盗んでしまうと急激に不安から開放される。罪悪感はほとんどない。物ではなく、窃盗という行為そのものが目的化している。自宅には、使用されることなく放置された窃盗品(小瓶、灰皿、コースター、ナプキンリングなど、多くは小物)が大量
にみつかる。
危険因子:女性に多い傾向がある。日常生活上のストレスが関係していることが多い。しばしば、うつ病や、強迫性人格障害(Obsessive compulsive disorder)、摂食障害(過食症)を合併する。過食症の4人に1人が窃盗症を引き起こすともいわれている。また、脳疾患や知能障害との関係も認められる。
鑑別疾患:反社会的人格障害(Antisocial Personality Disorder)、詐病(malingering)、双極性障害(躁うつ病)の躁状態(判断力が低下し、きわめて衝動的となる)、統合失調症(窃盗症とくらべて妙なものを盗む)
身体精神症状:不安やうつの症状が認められることがある。行為そのものに罪や恥の意識も感じていることもあるが、自分は悪くないと思っている。
治療:自分の気持ちや感情、意見を表現させる治療(insight oriented therapy)などの精神療法の適応である。行動療法、たとえば嫌悪感をもたせる条件付け療法(aversive conditioning)や系統的な脱感作(systematic desensitization)によるリラクゼーション技術の修得により不安を克服できるようになる。薬物療法としては、SSRIや抗痙攣剤をもちいる。
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