アメリカの研修医は悪性腫瘍を診ないというはなし
医者になるためには、まず医学部を卒業し、研修医になり、研修病院でいろいろと叩き込まれます。これは世界共通のプロセスでしょう。
日本では、大学病院が研修病院になっていることが多く、大学病院には悪性腫瘍の患者さんがたくさん入院しています。
なので、研修医が悪性腫瘍の患者さんを担当することは日常茶飯事です。
ところが―――。
アメリカでは、研修医のあいだに悪性腫瘍の患者さんを担当することは許されていません。
正確に言うと、2年間の研修期間中、2か月ほど悪性腫瘍専門の病棟を担当しますが、回診に参加する程度で、抗がん剤の指示や投与を研修医が行うことは禁止されています。
悪性腫瘍を診療するためには、まず内科一般(あるいは小児科)の研修を修了しなければならないのです。
まず3年間かけて一般内科(あるいは小児科)を修め、その後、血液腫瘍疾患の専門的なトレーニング(=フェローシップといいます)にはいり、はじめて悪性腫瘍の患者さんを担当することができるようになります。
フェローシップ期間中は、抗がん剤の指示や投与が上級医の監視の下にできるようになります。
この3年間のフェローシップを終えると、独立して悪性腫瘍の患者を診療することが許されます。
そもそも、悪性腫瘍に対する化学療法(プロトコールとよばれます)というと、まるで確立された治療法のような響きがありますが、悪性腫瘍の治療というのは、いわば、実験的段階なのです。アメリカでは、これを研修医の教育に使用するというのは問題があるという考えが前提にあります。
一方・・・
日本では、研修を始めたばかりの研修医が悪性腫瘍の患者さんを担当することは、ごくごく普通の光景です。
ですから、当然、抗がん剤の量を間違えそうになった・・・などという話が後を立ちません。
実際に医療事故を起こしてしまい、夢を絶たれた若い研修医もいます。
このような事故は、本当に研修医のせいなのでしょうか?
未熟な彼らに責任重大な業務を押し付けた上層部やシステムに問題はなかったのでしょうか?
今日も日本のどこかで、研修医に抗がん剤を投与されている患者さんがいるはずです・・・
患者さんも、それが教育病院に入院した使命だと思って我慢しているのではないでしょうか?
卒業したばかりの右も左もわからない研修医に悪性腫瘍を診療させる日本の医学教育システム・・・
アメリカの現場を経験してからというもの、このシステムに問題があるように思えてしかたがありません。
患者も医者も不幸だと思います。
誰も指摘しないし、文句も言っていないし、問題にもなっていないのだから、ほっとけという話ですが、大変重要な問題だと思うのです・・・
みなさんはどう思わますか?
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