放射能について1 シーベルトとベクレルの違い
放射能・・・とは
物質が「放射線」を放射する能力のことである。
人は、いろいろな数字を使ってその強さを「高い」「低い」などと表現する。が、
何をもって「強い」「弱い」を決めているのか?
その根拠がわかりにくい。
事態をことさらわかりにくくしているのが二つの単位だ。
ベクレルとシーベルトである。
「100万ベクレルのセシウムは1mはなれた人体に1日あたり約2マイクロシーベルトの外部被爆をおこします」
と聞いて、
どれだけの人がすっと理解できるであろうか?
とにかく放射能をわかりにくくしている原因の第一は、
この単位の意味の分かりにくさ!
であることに違いない。
放射線を研究している人にとっては、単位がいろいろある方がいろんな点で都合がいいのであろう。
しかし・・・
「〜町の土壌から500ベクレルの放射線物質が検出されました」
とか、
「〜区で、2.7 マイクロシーベルトが検出されました!」
と言われて、どれだけの人がリスクを理解できるだろう?
どちらが「やばい!」のか、ぜんぜんわからないという人も多いはずである。
そもそも、ベクレル、シーベルトとは何か?
よくある例えでは、
ベクレル → ストーブの火力
シーベルト → 部屋の温度
みたいなものだという・・・
別の例えでいえば、
ベクレル → お酒の強さ
シーベルト → どんだけ酔っぱらうか
みたいなものだろうか・・・
結局、ベクレルは放射線の源がどれだけ強いか・・・みたいな指標であり
シーベルトこそが人体への実質的な影響の強さをあらわしている。
(シーベルトと、レム、グレイ、ラドは互いに換算できるので、シーベルトさえ押さえておけば、レム、グレイ、ラド・・・も忘れてよい)
関連サイト:ベクレルからシーベルトへの換算について
被爆の程度は、結局、シーベルトで決まる。ベクレルではない。
では、どのくらいのシーベルトが「やばい」レベルなのか?
これがあまりわかっていない。
シーベルトで理解する放射線の影響
一回に4000mSvを浴びると、ヒトの半数が死亡する(半数致死量=4000mSv)。
一回に100mSv - 200mSVを浴びると、100人に0.5~1人の割合で癌になる。
一回に妊婦が200mSv - 250mSvを浴びると、胎児に異常がおこりうる。
実は、放射線による人体への影響はこの程度しか知られていない。
そして、今日に至るまで、
放射線をゆっくりと長期にわたって浴びた場合の影響は実は全くわかっていない。
一度に浴びてしまった放射線のリスクについては上記のようなことがわかっているが、放射線を何回かにわけて少しずつ浴びた場合、あるいは低容量を長時間浴び続けた場合のリスクについてはよくわかっていないのである。
しかし
わからないでは何の対策のたてようもないので、
たぶん・・・
あびたシーベルトの合計が100 mSvを超えてくると危険ではないか?
と考えられているのだ(専門家レベルでいろいろ細かい異論はある)。
たとえば、一回であびる放射線量(人体への影響)は、
東京-ニューヨーク往復:0.1
mSv - 0.2 mSv/往復
胸部X線写真:0.05 mSv/枚
胃透視:8 mSv/回
CTスキャン:7-10 mSv/回
のようなことがわかっている。
そこで、
これらを何回くり返すと100 mSvになるかを単純計算し、
東京ニューヨークを500往復以上すると危険
レントゲン写真を2000枚以上撮ると危険
胃透視を12回以上すると危険
CTスキャンを10回以上撮ると危険
のように判断する。
まぁ
あくまで、ざっくりとした予想にすぎないのだ。
そうすると
たとえば、報道によくでてくる 1 mSv/年 という生活居住基準も理解できる。
100年間、連続して浴びてようやく100mSvに到達するレベルである。安全基準としては妥当であろう。
ここで
情報を読むときに重大な落とし穴が一つある。
同じ 1 mSv(ミリシーベルト)といっても
それが
1mSv/時
なのか
1mSv/年
なのかで、人体への影響がぜんぜん違うということだ。
先ほど「100ミリシーベルト = 危険」と書いた。
じゃぁ、1ミリシーベルトなら安全かというと、そんなこと言っている人は問題の根本がわかっていない。
1ミリシーベルトであっても、
どれだけの期間1ミリシーベルトmSvを浴びつづけるのか?
つまり、合計どれだけのシーベルトを浴びるのか?
これが大事である。
たとえば、以前、世田谷区で2.7マイクロシーベルトが検出されたと報道されたことがあった。
100mSv以下なら安全とだけ覚えていると、「マイクロシーベルトはミリシーベルトの1000分の1だから・・・2.7マイクロシーベルト= 0.0027ミリシーベルト・・・なーんだ、全然たいしたことない!」と思うかもしれない。
しかし、
世田谷区で2.7マイクロSv/時ということになれば・・・1年で、
0.0027 x 24
x 365 = 23.7 mSv/年
ゲッ、ってことは、1年間に23.7mSvってこと?可能性として4-5年で癌が発生してくるレベル・・・
けっこうやばいじゃん!ってことにもなるのだ。
日本各地の放射線量は、およそ年間1-2mSvである(このうち0.8mSVはラドン吸入による被爆)。
時間あたりに直すと、0.1~0.2マイクロSV/時。
これと比べると世田谷区の2.7マイクロSV/時は高いといえるだろう。
1年にCT2、3枚撮影と同じレベルである。
世田谷区全体が心臓カテーテル検査室になったようなもので、病院ならば放射線モニターバッジの着用が義務付けられるレベルである。
反対に、福島の放射線レベルを、
年間1mSv以下にする。
という話について・・・
これは、上記の考え方でいくと100年住んでようやく危険というレベルなので、目標とするのはいいが、基準とするには、ちょっと厳しすぎ・・・非現実的であると思う。
※年間1mSVは、時間あたりでいえば、およそ0.1マイクロシーベルト/時。
実は、この福島の基準は、居住基準といって、
環境に自然に存在する自然放射線を「超えた分」の線量である。
これを追加線量という。
つまり・・・
もともと背景に存在する自然放射線量が年間1mSVの地域では、
自然放射線1mSV + 追加線量1mSV = 年間合計2mSV
すなわち、年間合計2mSV以下の被爆を目標としましょうということなのだ。
また、これは管理基準であって、目標であり、これ以下でなければ居住できないと意味ではない。
・‥…━━━☆
補足
シーベルト、レム、グレイ、ラドの換算について
10レム=1mSV
100ラド=1グレイ
グレイをシーベルトに換算するときはα線(プルトニウムなど)の場合、1グレイ=20SVとする。β線、γ線の場合(セシウムなど)は1グレイ=1SV=1000mSVでよい。
4Gy = 4000mSVがヒトの半数致死量である。
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