アブサン解禁
抑えの効いた照明に静かなBGM・・・
靴の底から伝わる床の軋みが心地よい。
いいバーに出会うと、胸が高鳴るものだ。
ズラリと並んだボトルの中、左斜め前にリカール社のパスティスをみつけて、迷わず注文。
すると、
「アブサンもありますが・・・」
と、マスターのひとことに一瞬、自分の耳を疑った。思わず「ぺルノーのアブサンタイプってことですか?」と聞き返すと、
「いえ、ホンモノです」
と・・・。
アブサンといえば悪魔の酒として、1915年に製造禁止、以来ずっと入手不能になっていた、あの、禁断の酒だ。
2005年ごろ、解禁されたという話は聞いたことがある。
これは注文しないわけにはいかない。
ボトルはぺルノー蒸留所に残る100年前のレシピをもとに蘇ったといわれるPerroquet。
専用グラスにスプーンを仕掛け、アブサンを浸した角砂糖に火を灯す・・・
ピカソ、ヘミングウェイなど、多くの芸術家が愛した贅沢な時間―――静寂の中、炎だけが揺れている。
まるでタイムスリップしたかのようだ・・・
給水器からしたたる水の音。ふと気がつくと、
すでに炎は消え、バーに立ち込めるアニスの香り。
薄緑色のアブサンの完成だ。
アニスの苦味に仄かな甘み・・・
あぁ、旨い。
五感で、余すことなく堪能する。
まさに幻惑、禁断のひととき。
(2013年2月 Bar CAVALLO@福岡にて)
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