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2018年12月11日 (火)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その10


アインシュタインの特殊相対性理論 → ここからスタート

アインシュタインの一般相対性理論 → ここからスタート


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結局・・・

アインシュタイン方程式

Gμν = 8πG Tμν/c4

とは、係数を無視して(8πG/c4 = 1 とおき)単純化すれば

G」 = T

ということです。

 

言葉にすると、

空間の歪みをあらわす式を「G」とし、空間の密度をあらわす式を「T」とすると、(Γ ≡ F であれば)

G」 = 「T

だと思う

と、いっているわけですね(注)。

 

ところがこの理論のどこにも(Γ ≡ F であれば・・・)←この部分がはっきり書かれていないので、シロウト的には非常にわかりにくい。

特殊相対性理論では、「もし、光の速度が不変であれば・・・」という仮説からスタートして、一歩一歩、ロジックを進めていくと、最後に「E = mc2」という式がでてきて、みんなびっくり!

という感じだったと思います。

しかし、一般相対性理論はちょっと様子が違います。

アインシュタインがおもむろに

空間の歪みをあらわす「G」を右手に持ち、空間の密度をあらわす「T」を左手に持ち・・・えいっ!とばかりに

G」 = 「T

だろ?と、結合させた感じです。

自然に導かれたという感じがありません。

特殊相対性理論の E = mc2 の式のように、最後に「おぉ!!!」という感動がないのです。

なんか天下り式に

G」 = 「T

だろ?

と急に言われても、「ん?・・・なんで?」ってなる人が大半だと思います。

いやいや、当のアインシュタインからすれば、

Γ ≡ F」なんだから「 G = T」ってなるの、あたりまえじゃん。

オレ、なんかおかしいこと言ってる?

という感じかもしれませんが・・・(汗)

 

結局、一般相対性理論は数式自体の難しさ・・・もさることながら、

アインシュタインの直感というか、一番言いたいこと(Γ ≡ F)が、どこかオブラートに包まれていて、

そのせいで、理論の構成というか"あらすじ"がとてもわかりにくくなっている、という気がします。

特殊相対性理論のときの直感(光速度は不変だろ?)とちがって、

一般相対性理論の直感(Γ ≡ F だろ?)は、隠されていると思います。

 

管理人的には、しかし、その隠された直感こそが一般相対性理論の核心であり、

Gμν = 8πG Tμν/c4

という複雑怪奇な式よりも、むしろ、その背後に潜む

Γ ≡ F では?

という人智を超えた発想のほうに"すごさ"を感じます。

 

まとめます。

一般相対性理論は、重力がない世界で成り立つ特殊相対性理論を、重力がある世界でも成り立つように一般化させたもの、とよく言われています。

しかし、あの有名な E = mc2 を一般化したものが、アインシュタイン方程式 Gμν = 8πG Tμν/c4 である、というわけではありません。

そうではなく、アインシュタイン方程式は、ニュートンの重力方程式 ∇F = 4πG「 ρ 」を、アインシュタインの奇想天外な発想(Γ ≡ F)で一般化したものです。

その証拠に、アインシュタイン方程式からニュートンの重力方程式を取り除くと、隠されたアインシュタインの主張(Γ ≡ F)がみえてきます。

つまり、アインシュタイン方程式とは、アインシュタインの直感(Γ ≡ F)が正しければこうなる・・・という、いわば仮説にもとづいた方程式です。

言い方をかえれば、この方程式の正しさが証明されたとき、同時に

Γ ≡ F

(空間の曲がり = 重力)

という、おそらく博士が最も言いたかったはずのこと(重力の正体はジオメトリーである!)が証明されることになります・・・そういう仕掛けが施されていると思います。

 

おしまい

オワタ 三┏( ^o^)┛

・‥…━━━☆

(注):空間の歪み「G」と空間の密度「T」の関係は、下図のようなイメージで理解できるのではないでしょうか。

Cocolog_oekaki_2017_02_20_16_02

G」がグラフの線の曲がり具合(曲率)をあらわします。曲がりが大きくなればなるほど、ひずみに囲まれた物質の密度「T」が増加するというイメージです(頭の中には立体的に立方体みたいな絵があるのですが、描けません→WikipediaにGIFがありました。下記をご覧ください)。空間の密度が重力と関係していそうなこと、この絵をみてイメージしてみてください(*´v゚*)ゞ(

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/general_relativity_time_and_space_distor.gif(https://en.wikipedia.org/wiki/File:General_relativity_time_and_space_distortion_extract.gif)


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・‥…━━━☆

あとがき

今回、本邦初、無謀にも一般人が一般人のレベルでアインシュタイン方程式(Einstein's Field Equation)を一般人を対象にして解説してみました。

さすがに誰にとってもわかりやすい記事というわけにはいかなかったかもしれません。

専門家からみれば、ずいぶん正確さに欠けるところもあると思います。

しかし、世の中に出回っている一般相対性理論のわかりやすい解説は、数式を一切使わずマンガや絵ばかりでてきて、結局、アインシュタイン方程式 Gμν = 8πG Tμν/c4 の意味は永遠にわからいという不満があります。

かといって、数式に関する解説書に挑戦してみると、あまりにも難しすぎて途中で挫折してしまう・・・

そういうジレンマを感じている、物理学者でも数学者でもない管理人のような "いわゆる一般人" は、意外に多いのではないかと思います。

そこでこの記事では、一般相対性理論をより深く理解してみたいけど、数式だらけの難解な解説は御免だ・・・というような人を対象に、あえて数式を最小限に抑えつつ、アインシュタイン方程式の解説を試みるという無謀なチャレンジをおこないました。

管理人的には、相対性理論とは、もう、

特殊相対性理論:「E ≡ m」

一般相対性理論:「Γ ≡ F」

と、単純化して理解しています。

特殊相対性理論は、光速度は不変であるという観測結果から出発し、最終的に 「E ≡ m」 という驚くべき新しい概念に昇華しました・・・一方、

一般相対性理論では、重力の正体に関する驚くべきアイデア Γ ≡ F」 が最初にあって、それを使って古典的な万有引力の方程式をエレガントに書き換えた感じです。

一般相対性理論の数学的難しさは特殊相対性理論に比べて格段に上だと思います。しかも特殊相対性理論のような「おぉっ!」という感動がありません。それより(まったく個人的な感覚ですが)何か終始一貫してモヤモヤした感じがします。そのモヤモヤ感の原因はもちろん管理人の知的限界にあるのだと思いますが、どうもΓ ≡ F」というアインシュタインの奇抜なアイデアが、終始、伏線から浮上しないことも一因ではないかと思うのです。

そこで、むしろそこを最初にはっきりさせて解説しみてたらどうだろうか?と思い立ち、このシリーズの執筆をはじめました。

こんな解説はどこにもありませんし、間違っているかもしれません(いや、めちゃくちゃ簡略化したのでたくさん間違っているはずです)。しかし、本記事の目的は、専門家を相手にした正確な解説ではなく、アインシュタイン方程式とは簡単に言うとこういうことだ、という一般の人に伝わる散文です。

もしこの記事って少し面白かったな・・・というアマチュアが一人でもいてくれれば目的は達成、うれしいです(それを確認できないのが寂しいところですが・・・もし面白かったな~と思ったら、ぜひSNSなどでご紹介ください)。

それではみなさま、最後までお読みいただきありがとうございました!

(もし、何か気がついた点など、コメントいただければ"管理人が理解できる範囲"であれば参考にさせていただきたいと思います。が、難しすぎる質問にはたぶん対応できません。あしからず、すみません・・・(;´▽`A``)


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(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その10


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さぁ、いよいよラストスパートです!

繰り返しになりますが、

アインシュタイン方程式(式1)とは

G00 = 8πG T00 

だろ?という仮説です。

しかし・・・

ふつう、何の予備知識もない人が突然そんなことを言われると

(・_・)エッ....?

(・_・)ナンで....?

ってなると思います。

いや、けっこう勉強して、G00T00 をそれぞれ理解できた人でもそうなると思います。

なぜなら、

G00 は、時空の曲がりだ!

とか

T00 は、エネルギー密度だ!

とか、よくよく理解したところで、G00T00 を結びつけるものは何もないわけですから。

しかし、このシリーズを読まれてきたあなたにはわかりますよね?

そう、アインシュタインの心の奥底には

Γ ≡ F では?

っていう直感があるのです。

この直感があってはじめて G00T00 が結びつきます。

 

アインシュタインが

G00 ≡ 2 ∇ Γ

8πG T00 ≡ 2 ∇ F

という2つの式から

G00 = 8πG T00 

では?と結論するのはごくごく自然なことだったんです(だって、Γ ≡ F なんだから・・・)。

━━\(´∀`●)/━━

結局、アインシュタインは

Γ ≡ F

という自らの直感を、ニュートンの万有引力の式にあてはめて

G00 = 8πG T00

という式を導いた・・・というわけです。

 

さぁ、次回、いよいよ結論です。


(つづく)

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9


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今回は、

G00 = 8πG T00 ・・・式1

この式の右辺にある、T00 について説明してみたいと思います。

いつものように誤解を恐れず単刀直入に言うと

T00 の意味するところは、ずばり総エネルギー E です。

そうです、あの特殊相対性理論でおなじみの

E = mc2

の総エネルギー E です。

「何だよ、じゃぁ最初っからそう言ってくれよー」って気持ちになるかもしれませんが、厳密には、"単位空間あたり" の総エネルギーであって、

つまり、数式的に(式1)の右辺を書き換えると

8πG T00 = 8πG E/vol

となります。

("単位空間あたり" の総エネルギー E/vol があらわしているのは、エネルギーの局所的な"密度"というか"濃さ"みたいなもので「エネルギー密度」とよばれたりします。・・・あまり深堀りしないほうがいいと思います ⇒ 参考記事:光の総エネルギー

 

さて、ここで特殊相対性理論の登場です。

特殊相対性理論によると総エネルギー「E」と質量「m」は等価です。

したがって、アインシュタインの特殊相対性理論から導かれる有名な式

E = mc2

は、自然単位系では

E = m

なんです(自然単位系では c = 1 )。

つまり(c=1とする自然単位系では)

E/vol = m/vol

となります。

単位空間当たりの質量「m/vol」とは、よくよく考えると「空間の密度」ってことですから、

早い話、「式1」の右辺は、空間の密度 ρ を使って

8πG T00 = 8πG ρ

と書きかえることができます(注1)。

 

一方、ニュートンの万有引力といえば、高校物理で習う

F = GMm/r2

という式を覚えている人もいるでしょう。

実は、この万有引力の方程式は、微分∇と 空間の密度 ρ を使って、

∇F = 4πG ρ

という微分方程式であらわせることがわかっています(注2)。

 

この

∇F = 4πG ρ 

を先ほどの

8πG T00 = 8πG ρ

に代入すると

8πG T00 ≡ 2∇F

という式が得られます(正確には完全にイコールではないので記号を=ではなく≡としました)。

 

さぁ、ゴールはもう間近です!


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7




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(注1)

つまり、

T00

ll

「E/vol」

ll

「m/vol」

ll

ρ

です。 ρ は、空間の密度です。

一般相対性理論では一般物理と異なり、「質量」にかわって「密度」が基本物理量になります。

質量

密度

主役交代みたいなものです。

この主役交代は、4元運動量エネルギー運動量にかわるところと関係しています。

どういうことかというと

特殊相対性理論によって、時間(1次元)と空間(3次元)は一体化され、ミンコフスキー時空(4次元空間)となりました。

ミンコフスキー時空では、エネルギー(E/c)と運動量(px、py、pz)も一体化され、4元運動量(E/c、px、py、pz)となります。おもしろいですよね。特殊相対性理論によると、エネルギー(E/c)と運動量(px、py、pz)に本質的な違いはないのです。ある質点のエネルギー(E/c)とは、時間方向へ流れている質点の4元運動量をさし、運動量(px、py、pz)とは、空間方向(x方向、y方向、z方向)に流れている質点の4元運動量をさします。

このように、特殊相対性理論はエネルギーと運動量を統一した、という点ですごいのですが、一般相対性理論はさらにすごいです。この4元運動量に観察者の速度(観察者の4元速度)を掛け合わせた16個の値を考えます。これをエネルギー運動量といいます。これが本文中の Tμν の正体です。でも、運動量やエネルギーにはすでに速度(v)の要素が含れていますよね?そこにさらに観察者の速度(v)を掛け合わせるといったいどうなるんでしょう?最初は意味がよくわからないかもしれません。が、理屈としては、そうすることによって新たに観察者に対する質点の相対速度(v)があらわれます。つまり、静止している観察者の前を相対速度(v)で流れていく質点の4元運動量を観察していることになります。

面白いのは、そう考えていくと、いつの間にか質点の「質量」が「空間の密度 ρ 」になってしまうことです。まるで手品のようです。

式で表してみると・・・

「質点の4元運動量」 ⊗ 「観察者の4元速度」

「質点の質量 m」x 「質点の4元速度」 ⊗ 「観察者の4元速度」

=「質点の質量 m」x  「質点の4元速度」 ⊗ 「観察者の4元速度」

=「空間の密度 ρ」x  (「観察者からみた質点の相対的4元速度」

=「エネルギー運動量」

です。

「質点の4元速度(4成分) 」⊗ 「観察者の4元速度(4成分)」が「観察者からみた質点の相対的な4元速度」(16成分)という新しい速度に融合し、統一されます。この速度(16成分)はテンソル形式になっていて観察者の運動(座標系)に依存しません。4元速度(4成分)が、16成分となったことによって、観察者の運動(座標系)に依存していた4元運動量(4成分)が、観察者の運動(座標系)に依存しないエネルギー運動量 (16成分)に変換された、ともいえます。逆にいえば、エネルギー運動量を考えることにより、観察者は静止した状態で質点の運動を観察していると宣言することができます。神の視点を手に入れたのでしょうか?いや、そうではなく、むしろ誰でも原点になれる・・・すなわち原点の廃止です。

このとき(4元運動量がエネルギー運動量にかわったとき)、同時に、質量が「空間の密度 ρ 」に変化してしまいます。つまり、4元運動量は質量から計算されますが、エネルギー運動量は空間の密度から計算されます。今まで慣れ親しんできた質量を捨て去るのは難しいかもしれませんが、一般相対性理論における"重さ"の基本概念は、質量ではなく「空間の密度 ρ 」なのです。

質量ではなく「空間の密度 ρ」を考えることによって、この世で観察されるすべての運動量やエネルギーは、"座標系に依存しない"形式で表現できるようになり、エネルギーや運動量を、座標の変化("重力"の影響)に依存せずに表現できるのです。エネルギーや運動量を座標系("重力")に依存せずに表現できたとき、その座標軸の変化は"重力"の影響をあらわすことになります。エネルギー運動量の変化が"重力"を反映している・・・。結局、エネルギーも運動量も「空間の密度 ρ」に作用する力(ちから)F の結果として生じているのであって、同じものの異なる断面にすぎません。考えてみれば、運動量を時間(1次元)で微分したもの、あるいはエネルギーを空間(3次元、距離)で微分したものが力(ちから)F ですから、運動量やエネルギーの"流れ"が力(ちから)と結びつく、というのは理にかなった話です。

特殊相対性理論がエネルギーと質量の方程式であるとすると、一般相対性理論(の右辺)は、エネルギーと質量の微分方程式(場の方程式)にも思えます(エネルギーを微分したものがエネルギー運動量で、質量を微分したものが「空間の密度 ρ」みたいな・・・)。

 

(注2)

ポアソン方程式 ∇2φ=4πGρ を、F = ∇φ を用いて変形すると、空間の密度 ρ と重力 F を結びつける式 ∇F = 4πGρ が得られます。密度 ρ を積分すると質量 m になります。


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7



エネルギー運動量について

(興味がない方は読み飛ばしてください)

前述したように、エネルギー運動量とは、観察者からみた4元運動量の"流れ"をあらわしています。次元的には質点と言うより「空間の密度 ρ」に直結しており、質量や重力の本質を考えるうえで非常に重要な物理量だと言えます。イメージとしては、まず、空間(3つの次元 x、y、z)と時間(1つの次元 t)が一体化した4次元の箱をイメージします。3次元の立方体には6面(方向としては3つ)の壁がありますが、4次元立方体には8面(方向としては4つ)の壁がある、と勝手にイメージします(イメージしがたいですが・・・汗)。さらに、このような箱、しかも、そのごくごく小さな箱が4次元空間(ミンコフスキー時空)のありとあらゆるところに設置されている、と考えましょう。この4次元の箱に4方向から出入りしている4元運動量の"流れ"がエネルギー運動量です。質点が動けば4元運動量が発生します。観察者が動けば4元運動量に"流れ"が生じます。これがエネルギー運動量です。4方向(t、x、y、z)から箱に出入りしている4元運動量(E/c、px、py、pz)をイメージしてください。たとえば、4元運動量のうち px について考えるならば、t面に垂直に出入りするpx、x面に垂直に出入りするpx、y面に垂直に出入りするpx、z面に垂直に出入りするpxという、4つの px の"流れ"を考えることができます。壁1面あたり4種類の運動量の出入りを考えてもいいと思います(t面に垂直に出入りするE/c、t面に垂直に出入りするpx、t面に垂直に出入りするpy、t面に垂直に出入りするpz、という4つの"流れ")。壁の方向4つに対して4つの運動量の出入りがありますから、合計4 x 4 = 16通りの出入りを考えることができます。この4方向の4元運動量・・・16通り・・・の出入りを16個の数字 (T00, T01, T02, ・・・, T32, T33)であらわしたものがエネルギー運動量です。16個の数字全体で、空間のある1点における複数の粒子がつくりだす4元運動量の"流れ"をあらわしています。これが質量を作りだしています。

4元運動量(時間成分 x 1、空間成分 x 3)

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方向(時間方向 x 1、空間方向 x 3)

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor6.png

具体的に16個の数字をどうやってつくるのかをごくごく簡略化して説明すると、まず4元運動量4つの成分(ベクトル)から1つの成分をとりだします。次に、観察者(または設置されている箱)の4元速度をあらわす4つの成分(ベクトル)から1つの成分をとりだします。これら2つのベクトル成分を掛け合わせるだけです(簡略化して説明しています。厳密な計算方法を知りたい方は成書をあたってください)。これを各成分ごとに繰り返します。結局、それぞれが4つの成分を持つ2つのベクトルから合計16個の積の成分 (T00, T01, T02, ・・・, T32, T33)がつくられます(2つのベクトルのすべての成分同士を総当たり戦のようにすべて掛け合わせる計算をテンソル積と言い、できあがったものはテンソルになります)。できあがった一つ一つの成分について考えてみると、どの4元運動量がどの方向にどれぐらい移動しているか(4元運動量の"流れ")をあらわしていることがわかります。こうやってつくられた16個の数字はテンソルという形式になっていて、16個の数字全体で、空間の"ある1点"における4元運動量の"流れ"を座標系に依存しない形で包括的にあらわしています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor8_20190729143901.png

以下、4元運動量(E/c、px、py、pz)のどの成分が、4つの方向(t、x、y、z)のどの方向を横切っているか?を意識して読んでください。

T00 ・・・ 時間面を通過した、単位時間あたりの時間成分の4元運動量。積の意味は「時間面 x 時間成分の4元運動量の変化」。方向成分は時間成分のみ(t)、時間面を貫いて移動した4元運動量の種類は時間成分のみ(E/c)。これによって新しく生成されるT成分は1つ。1 x 1 = 1(T00)。

T01 T02 T03 ・・・ 空間面を通過した、単位時間あたりの時間成分の4元運動量。積の意味は「空間面 x 時間成分の4元運動量の変化」。方向成分は空間的に3つ(x、y、z)、空間面を貫いて移動した4元運動量の種類は時間成分のみ(E/c)。これによって新しく生成されるT成分は3つ。3 x 1 = 3(T01, T02, T03)。

T10 T20 T30 ・・・ 時間面を通過した、単位時間あたりの空間成分の4元運動量。積の意味は「時間面 x 空間成分の4元運動量の変化」。方向成分は時間成分のみ(t)、時間面を貫いて移動した4元運動量の種類は空間的に3つ(px、py、pz)。これによって新しく生成されるT成分は3つ。1 x 3 = 3(T10, T20, T30)。

T21 T31 T32 T11 T22 T33 T12 T13 T23 ・・・ 空間面を通過した、単位時間あたりの空間成分の4元運動量。積の意味は「空間面 x 空間成分の4元運動量の変化」。方向成分は空間的に3つ(x、y、z)、空間面を貫いて移動した4元運動量の種類も空間的に3つ(px、py、pz)。これによって新しく生成されるT成分は9つ。3 x 3 = 9(T21, T31, T32, T11, T22, T33, T12, T13, T23)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor4.pngこうやって2つのベクトル(4元運動量と4元速度)の成分同士を掛け合わせて生成された16個の数字は、数学的な専門用語でいうと、テンソルという形式になっています。4元運動量の"流れ"をテンソルという形式に落とし込み、ありとあらゆる座標系で表現できるようにしたもの・・・それがエネルギー運動量です。観察者の動き(視点の変化)によってエネルギー運動量の成分(16個の数字)は変化しますが、その変化は非常に規則的で、実のところ、16個の数字全体であらわしているエネルギー運動量自体は、座標系から独立した絶対的な物理量として変化しません。ある視点からみた4元運動量の"流れ"がわかれば、座標系に依存しない状態、あるいは、あなたにとって都合よい座標系での4元運動量の"流れ"を知ることができます。

16の数字、それぞれがもつ物理的な意味合いは以下のとおりです。

T00 ・・・  4元運動量の時間成分(エネルギー、E/c)が、間面(t)を光速(c)で単位時間の間に横切る量です。時間方向にだけ動く量というのは、空間面を横切らない量ということですから、3次元的には、単位空間にとどまっている量ということです(わかりやすく言いかえると、単位空間あたりの量 = 密度 Density です)。したがって、T00 は、単位空間あたりのエネルギーになります(エネルギー E/c が、時間方向に c だけうごきますから、E/c x c = E になります)。すなわち、エネルギーの密度といえます。T00 の値は、他の15個の数字に比べて桁違いに大きな数字になるので、通常の計算では、他の数字は無視されます。古典力学で扱うエネルギーは座標軸によって変化しない値(スカラー)でしたが、相対論的なエネルギーは密度としてあらわされ、座標軸の取り方によって変化する値(テンソル)の第一成分になります。

T01 T02 T03 ・・・ 4元運動量の時間成分(エネルギー、E/c)が、空間面(3方向 x、y、z)のそれぞれを光速(c)で単位時間の間に横切る量です。時間面を横切らないというのは、単位時間にとどまっている量と考えます(わかりやすく言いかえると、単位時間あたりの空間的な動き = 流れ Flux です)。単位時間あたりのエネルギー(E/c x c = E)が空間面を横切る量、すなわち、3次元的にはエネルギーが局所に流入または流出する"速度"(速度=単位時間あたりの量)をあらわしますT01 T02 T03 から計算されるエネルギーの流入流出量の総和は、T00エネルギー密度)から計算されるエネルギーの増減に一致します(エネルギーが流出するとそのぶんエネルギーが減り、エネルギーが流入するとそのぶんエネルギーが増える)。

T10 T20 T30  ・・・ 4元運動量の空間成分(運動量 px、py、pz)が、時間面(t)を単位時間の間に横切る量です。時間方向にだけ動く量というのは、空間面を横切らない量ということですから、3次元的には、単位空間にとどまっている運動量といえます(わかりやすく言いかえると、単位空間あたりの量 = 密度 Density です)。結局、T10 T20 T30 は、単位空間あたりの運動量、すなわち、その場所における運動量そのもの(空間成分)をあらわします。より正確には、単位空間あたりの運動量ですから、運動量の密度といえます。 T10 T20 T30運動量密度)の和は、T01 T02 T03 (エネルギー流入流出量)の和に一致することがわかっています。

T21 T31 T32 T11 T22 T33 T12 T13 T23 ・・・ 4元運動量の空間成分(運動量 px、py、pz)が、空間面(3方向 x、y、z)を単位時間の間に横切る量です。時間面を横切らないというのは、単位時間にとどまっている量であると考えます(わかりやすく言いかえると、単位時間あたりの空間的な動き = 流れ Flux です)。単位時間あたりに空間面を横切る量、すなわち、3次元的には運動量(空間成分)が局所に流入または流出する"速度"(速度=単位時間あたりの量)をあらわします。T21 T31 T32 T11 T22 T33 T12 T13 T23 から計算される運動量(空間成分)の流入流出量の総和は、T10 T20 T30運動量密度)から計算される運動量の増減に一致します(流出が増えるとそのぶん密度が減り、流入が増えるとそのぶん密度が増える)。また、これら運動量の流入または流出速度は、力(ちから)、すなわち、応力になります(力とは、運動量を時間で微分したもの、わかりやすくいうと運動量の単位時間あたりの変化量です)。運動量の空間成分が、その空間成分と同じ方向にある空間面を横切る量は"押し合い"(圧力)として、その空間成分とは異なる方向にある空間面を横切る量は"擦れ合い"(せん断応力)として観測されます。単位面積あたりの力の大きさと定義されている圧力は、実は、エネルギー密度(単位体積あたりのエネルギー)と同じ次元を持っているのです(ベルヌーイの法則)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor3_20190716152301.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor5.png

空間の、ありとあらゆる場所に、無数に浮かんでいるごくごく小さな箱を想像してみましょう。それぞれの箱の表面には16個の数字が表示されています。16個の数字はランダムなものではなく互いに関連していて、16個の数字全体で、その局所における4元運動量の"流れ"(エネルギー運動量)をあらわしている、と考えます。すなわち、箱の中の4元運動量がある箱から違う箱へと移動すると、箱に表示されている16個の数字もそれに応じてかわる、というイメージでいいと思います。空間に無数に浮かんでいる箱の表示によって、刻々と変化する4元運動量の"流れ"(エネルギー運動量)がみえるわけです。ここで、第二の想像です。観察者が動くとどうなるでしょう?観察者が動く、というのは、数学的には、座標軸が変化してしまうということを意味します。そうすると、エネルギー運動量をあらわす16個の数字自体、かなり違った数字になってしまうことが想像できるでしょう。実際、4元運動量そのものに変化はなくても、座標軸がかわるだけで16個の数字はまったく違うものに変化してしまいます。しかし、この16個の数字は、座標変換にしたがって"規則的"に変化しているだけで、16個の数字があらわす4元運動量の流れ、すなわち、空間のある1点におけるエネルギー運動量を、新しい座標軸のもとでも正確にあらわし続けているだけです。つまり、座標系がどのように変化しても(デカルト座標だろうと極座標だろうと、観察者の視点が動こうと、観察者の視点が加速していようとも)、16個の数字は、16個の数字で、空間のある1点におけるエネルギー運動量4元運動量の"流れ")を超然としてあらわし続けます。そういう座標系に依存しない、絶対量をあらわすことを可能にする、特別な数字のあつまりをテンソルといいます。アインシュタインにとって幸運なことに、当時の数学者たちは、このテンソルという数学体系をすでに確立していました。そこにタイミングよくアインシュタインが登場し、まんまとこのテンソルの仕組みを使って、エネルギー運動量を表現したのですはい、わかっています。専門家にはこんな説明ではダメだと怒られるでしょう。しかし、管理人を含む一般人にとって、テンソルの理解はとてもとても難しく、その"つかみ"としてはこれぐらいが限界ではないかと思います。


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7


・‥…━━━☆

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7


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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その6

(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その8


https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/knot242409_1920.jpg

アインシュタインの一般相対性理論の式はほんとうは16種類あるけれども、一般人は、そのうち

G00 = 8πG T00 ・・・式1

だけを考えればよい

というのが前回の記事のまとめですが、今回、この左辺の G00 について解説します。

いきなり結論から述べましょう。

G00 って・・・

実は、

Γ(ガンマ)のことなんです。

このシリーズをここまで読まれた方なら (・_・)エッ....? って感じですよね?

あの Γ(ガンマ)です。

 

いや・・・ちょっと訂正。

正確に言うと・・・完全にイコールということではなく、

G00Γ(ガンマ)を少しだけ修正したものです(;´▽`A``。

 

どういうことかというと・・・

Γ(ガンマ)が表現する「空間の歪み」とは、2次元空間でいうと「面の曲がり」のようなものです。

たとえば、球面や円柱の側面は、どちらも曲がっています。

このような曲面では、

Γ(ガンマ)≠0

になります。

つまり、

Γ(ガンマ)≠0

であれば面は平らではない、というのは以前の記事に述べたとおりです(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/einstein_tensor.png

ところが・・・

一般相対性理論では、実は、円柱の側面のような曲がりは"平面"として取り扱いたい。

なぜなら、円柱の側面が布で覆われているとすると、それを剥がして完全な平面にすることができます。

(数学者は、これを、表面に3角形を描くと内角の和は180度になる、とか、表面に円を描くと円周は直径の3.14(π)倍になる、とか言います)

アインシュタインによると、このような(円柱の側面のような)曲面は、一見、曲がってはいるけれども、結局、平面とは区別できないというんですね。

 

一方、球の表面はホントウに歪んでいます。球の表面が布で覆われているとすると、それを剥がして平面に広げようとしても、皺だらけになって平面にできません。

(球の表面に3角形を描くと内角の和が180度になりませんし、円を描くと円周が直径の3.14(π)倍になりません)

曲がりを診断するツール Γ(ガンマ)は、円柱の側面のような曲がりも、球の表面のような歪みも、両方とも「曲がり」(Γ(ガンマ)≠0 )として判断してしまうという欠点がありました。

 

そこで、アインシュタインは、球の表面のような歪みのみを「曲がり」として診断できるよう、Γ(ガンマ)をさらに微分したりして新しい発展版の G にしました(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/einstein_tensor.png

(ここは、わかりやすさを優先し、かなりデフォルメして書いています。きちんと勉強したい方は必ず成書をあたってください。数式が得意な人以外、あまりおススメできませんが・・・)


結果、非常に簡単に言ってしまうと、Γ(ガンマ)を微分して2倍したものが G00 になりました(注3) 。

Γ(ガンマ)を微分して2倍する

という作業を、微分∇を使った式であらわすと、2∇ Γとなりますつまり、G00

G00 ≡ 2∇ Γ

とあらわすことができます(正確には完全にイコールではないので記号を=ではなく≡としました)。

 

次回の記事では、最後の砦、右辺にある T00 について解説します!


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その8

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その6




 

(注1)

たとえ面が平面でも、座標軸自体が湾曲していれば(たとえば極座標では)、Γ(ガンマ)≠0 になります。つまり、Γ(ガンマ)=0 なら必ず平面なんですが、Γ(ガンマ)≠0 のときは曲面である・・・とはいいきれません。

 

(注2)

ある座標空間に浮かぶ矢印を1本イメージしてください。座標系(座標軸)がどんなに変化しても、この矢印自体は動かないものとします。このように、矢印の長さと方向をどんな座標系においても正確に表現しつづける、そんな数学的ツールをベクトルといいます。ベクトルには成分がありますが、座標軸が変化しても、座標変換の規則にしたがって、ベクトルの成分を自動的に変化させれば矢印は動きません。ベクトルと言えば矢印みたいなものにつけられた名前のような気がしますが、本来、ベクトルというのは座標変換に従うものにつけられた名前で、そんなベクトルのテクニックを使えば、どんな座標系であろうとも、絶対空間に浮かぶベクトルのようすを正確に表現しつづけることが可能になります。

一方、一般相対性理論では、2つの矢印(ベクトル)を相手にします。正確に言うと2つの矢印(ベクトル)の間にある関係性です。この関係性を、どんな座標系においてもまったく同じように再現する、そういうことを可能にする数学的ツールのことをテンソルといいます( ⇒ テンソルについて)。テンソルのテクニックを使うと、2つの矢印(ベクトル)の間にある関係性をテンソルという形式に封印することができます。このメリットはどれだけ強調しても強調しきれないほど重大で、いったん、テンソルという形式に落とし込んでしまうと、ありとあらゆる座標系に対して、2つの矢印(ベクトル)の関係性を維持できるようになります。

面の曲がりをあらわす曲率も、つきつめると、隣り合った2つのベクトルの関係性として表現することができます。なのでテンソルで表現できます。しかし、アインシュタインが手に入れた Γ(ガンマ)は、座標の曲がりをあらわすのですが、テンソルにはなっていませんでした。

しかし、曲率 G はテンソルになっています。

 

(注3)

ニュートン力学が通用するような範囲内(Newtonian limit)で、Γ = (1/2)∇g00 と、G00 → ∇2g00 (g:計量テンソル)を連立させると、G00 ≡ 2∇Γ が得られます。より厳密には、G00 → 2∇Γ と書くべきところかもしれません。万が一、専門の人が読んでいるとしたら、この記事は一般向けに書いていますので、その主旨をご理解いただき、ご了承ください(;;;´Д`)。

ちなみに、Γ ≡ F と Γ = (1/2)∇g00

の二つの式から、g00 (計量テンソル)を微分したものが力(力を積分したものがg00)に相当することがわかります。

力の積分はポテンシャルエネルギー(たとえば重力ポテンシャル)ですので、g00 (計量テンソル)は、いわゆる重力ポテンシャルに相当するのだ、というアイデアにつながります。

なお、同様に、g00 (計量テンソル)の2階微分、すなわち、力(加速度)を1階微分したものが G00 に相当します。つまり、G00 の意味は力(加速度)の変化みたいなものです。


以下、興味のある方のみ。

本文では全省略しましたが、曲率 G が導かれたいきさつを、ごくごく簡単に(ものがたり的に)解説してみたいとおもいます(正確さを犠牲にした叙述的な説明です。興味がない方、すでに知っている方は読みとばしてください)。

まず・・・

正規直交座標を想像してください。

その上に曲線が描かれています。

その曲線のまがりは、いわゆる偏微分(∂)であらわされます。

これがゼロだと直線です。

すなわち、直線は

∂ = 0

であらわされます(正規直交座標系)。

ところが、座標軸が曲がっていたりすると、そうは言えません(例:斜交座標、極座標など)。

直線でも

∂ = 0

とはならないことがあるのです。

そこで、その偏微分(∂)の結果を補正するのが補正係数 Γ(ガンマ)です。

補正係数 Γ(ガンマ)によって補正された微分を共変微分(∇)と言います。

共変微分(∇)の開発によって、曲がったり歪んだりした座標軸であっても

∇ = 0

であれば直線であると言えるようになりました。

すごいのは、この共変微分(∇)がテンソルという形式になっていることです( ⇒ テンソルについて)。

テンソル形式だと結果を座標軸に縛られずに表現できます。

共変微分(∇)の結果は、テンソル形式になっているので、座標の違いを乗り超えます。たとえば、ある座標系で ∇ = 0 となるような直線は、他のすべての座標系でも直線(∇ = 0)となります(ちなみに、こういう性質を共変と言います)。

共変微分(∇)の開発によって、直線は(座標軸にかかわらず)

∇ = 0 

である状態

と言えるようになりました!

ところが・・・共変微分(∇)も万能ではなかったのです。

共変微分(∇)が通用しない座標系があります。

たとえば球面のような(・・・なんというか曲がっているだけではなく"歪んだ" ・・・)表面上の座標系です。

そのような座標上では、あきらかな直線でも共変微分の結果が ∇ = 0 とならない場合があります。というより、歪んだ表面で直線の共変微分(∇)を計算すると、その比較の仕方によって ∇ = 0 になったり、ならなかったりします。この共変微分(∇)の不一致は、球面のような "歪んだ" 座標系では、実はどうやっても補正できません。そこで、そういう場合には、もう補正はあきらめます。そして、その共変微分(∇)の不一致(差)を、むしろ、その面がもたらす特性、すなわち "曲率" という名で受け入れてしまいます。

そうして誕生したのが曲率 G です。アインシュタインが考案したというより、当時の天才数学者たちがすでにそういう空間幾何学を作り上げていたんです。

曲率 G は、隣り合う2つの微小空間の体積の関係を2つのベクトルの関係としてあらわしています。これにより、同じ体積である2つの空間が、歪みによって違う体積にみえている・・・などという考察が可能になります。「空間の歪み」をあらわす曲率 G は16個の数字からなる2階のテンソルになっています。したがって座標系に依存しません。アインシュタインテンソルともよばれます。これによって、どんな座標系においても、曲率を表現できるようになりました。 G00 はその曲率 G の第一成分です。

以上、曲率 G が導かれたいきさつです。

正確さを犠牲にしてわかりやすく書きましたが、概要はおおむね間違っていないと思います。

興味をもたれた方は、専門書でさらに正確さを極めてください。


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その8

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その6


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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その5

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7


15861603283_3579db3fc6_o

今回、いよいよアインシュタイン方程式について解説します。

もういちど式をみてみましょう。

Gμν = 8πGTμν/c4

ーーー ( ̄Ω ̄)

なんどみても眩暈がする数式です・・・が、

 

がんばって、ひとつひとつ、わかるところから確認していきましょう。

まず、光速の4乗(c4)の部分。

ここは自然単位系に単位を変更(光速 c = 1と定義)すれば、

Gμν = 8πGTμν

と、c を消去することができます。

8πGの部分は、8は数字の8、π(パイ)は円周率、黒字のGは定数(ニュートンの万有引力定数)です。

つまり、8πGの部分は、単なる数字(係数)にすぎません。

 

それより問題は、GμνTμνの部分です。管理人を含む一般人にとっては、ここがまったく意味不明だと思います。

 

いろいろ調べてみると、

GTに添えられているμν の意味は、案外、シンプルでした。

GTの種類だそうです。

4種類のμ(0~3)と4種類のν(0~3)があり、

GTの種類はそれぞれ 4 x 4 の16種類ありますよ、ということを言っているにすぎません。

 

なので・・・あえて、μν を使わずに書けば、一般相対性理論の式は、ホントウはこんな感じです。

G00 = 8πG T00・・・式1

G01 = 8πG T01・・・式2

G02 = 8πG T02・・・式3

G03 = 8πG T03・・・式4

G10 = 8πG T10・・・式5

G11 = 8πG T11・・・式6

G12 = 8πG T12・・・式7

G13 = 8πG T13・・・式8

G20 = 8πG T20・・・式9

G21 = 8πG T21・・・式10

G22 = 8πG T22・・・式11

G23 = 8πG T23・・・式12

G30 = 8πG T30・・・式13

G31 = 8πG T31・・・式14

G32 = 8πG T32・・・式15

G33 = 8πG T33・・・式16

8nGは定数ですから、これをkとでもおけば

G00 = k T00・・・式1

G01 = k T01・・・式2

G02 = k T02・・・式3

G03 = k T03・・・式4

G10 = k T10・・・式5

G11 = k T11・・・式6

G12 = k T12・・・式7

G13 = k T13・・・式8

G20 = k T20・・・式9

G21 = k T21・・・式10

G22 = k T22・・・式11

G23 = k T23・・・式12

G30 = k T30・・・式13

G31 = k T31・・・式14

G32 = k T32・・・式15

G33 = k T33・・・式16

です。

わざわざ16個の式を書き下したのはこれが世界初かもしれません(汗)

しかし、文字が減ったせいで、アインシュタイン方程式の見かけ上の恐ろしさはだいぶ軽減されたのではないでしょうか?

とにもかくにも、ここで言いたいのは、この16個の式をまとめて書いたのが、

Gμν = 8πG Tμν

ってことです(注1)。

 

この16個の連立方程式を解くのは、たぶん物理学者にとっても、かなり大変なことだと思うのですが、

しかし、この16個の式のうち、重要な意味を持つのはラッキーなことに「式1

G00 = 8πG T00・・・式1

だけなんです。

あなたが専門家でもない限り、この際、思い切って、残り15個の式は無視しましょう(注2)。

(実際、専門書でさえ、そうやって解説しているものもあります)

 

ということで、ついに、式は1個になりました。

G00 = 8πG T00・・・式1

めでたしめでたし。ψ(`∇´)ψ。

こうなると、もはや添え字のμν を気にする必要はなく、

G = 8πG T

とか

G = k T

でもいいわけです。

どうでしょう。だいぶシンプルになった気がしませんか?

そうでもないか・・・(^-^;

結局、 G00 の意味、および T00 の意味がわからないことには式が単純になったところで意味不明のままですよね・・・(;´▽`A``。

 

いったい、G00 とか T00 って何なんでしょう?


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その5


 ・‥…━━━☆

(注1)

つまり、一般相対性理論の式は、まぁ、こんな感じになります。

(G00, G01, G02, ・・・, G32, G33) = 8πG (T00, T01, T02, ・・・, T32, T33)

 

(注2)

実は16個の数式のうち、6個の式は重複しており、実際の式の数は10個になります。したがって、無視すべき式は15個ではなく、9個ですね。

 



 

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(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その6


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アインシュタインより前・・・

ニュートン力学では、さまざまな物体の落下運動(加速度)や惑星の自転(加速度)を説明するのに――― 重力 ――― が用いられました。

勘違いされていることが多いのですが

ニュートンが重力を発見した

なんて言われることのある重力ですが、重力とは、それを使えばいろいろな加速度をうまく説明できるから、という理由で都合よく想定された架空の力(ちから)にすぎません。

べつに重力という力(ちから)の正体が「同定された」わけではないのです。

 

ニュートン力学では、

自由落下している物体・・・非慣性系。重力という架空の力(ちから)が働き、加速されている状態

地面に静止している物体・・・ 慣性系。重力という架空の力(ちから)が、地面から受ける反作用によって釣り合い静止している状態

と考えられていました。

 

このように重力という架空の力(ちから)を考えることによって落下運動や惑星の加速度運動など、いろいろな物理運動が理解できるようになったのです。

しかし、なんか今ひとつよくわからないというか、

そもそも重力の正体ってなに?

という問題は未解決のままでした。

止まっているものが動きはじめたり、まっすぐ進んでいるものが曲がったりするためには、誰かが~何か~が力(ちから)で押したり引いたり「作用」しなければなりません。

そして、そういう力(ちから)には必ず反作用があります。

しかし重力には反作用がないのです・・・

なにか電磁気力みたいなものかな~とも考えられましたが、電磁気力と違って重力にはプラスやマイナス、S極やN極という反発しあう極性がありません。

 

ここでアインシュタインの登場です。

アインシュタインは、重力とはニュートンが考えたような架空の力ではなく、「みかけの力(ちから)」 ――― すなわち慣性力 ――― である!

という画期的な考えを持ち込み、すべてをひっくり返したのです。

慣性力とは、自分のいる場所が加速しているのに、自分がその場所にとどまろうとするとき、自分に対して、場所の加速方向とは反対向きに感じる「みかけの力(ちから)」です。

まわりの世界が動いていることに気づかなければ、何かが自分に対して作用している力(ちから)だと錯覚してしまいます。ニュートンはそれを「架空の力」(ちから)だと考えたわけです。

しかし、アインシュタインによると、そんな「架空の力」(ちから)を想定する必要はありません。

「みかけの力」(慣性力)は実存します。

加速されてない人からみるとそんな力など、

どこにもない

のにです。

外からみている人~加速されてない人~は、「それ、力(ちから)じゃないよ!君が加速しているだけだよ!」と教えてあげたくなるかもしれません。

まさに、「みかけの力(ちから)」です。しかし加速されている人には実存する力(ちから)なのです。

 

アインシュタインによると、

自由落下している物体・・・慣性系。実は何の力(ちから)も作用していない状態

地面に静止している物体・・・非慣性系。とまっているようにみえるが実は地面からの作用をうけて加速されている状態。

と先ほどの慣性系と非慣性系が全く反対になります!(・oノ)ノ

 

このコペルニクス的な発想の転換が、ニュートン力学では考えられなかったブレイクスルーをもたらしました(アインシュタインの等価原理(注1))。

重力を「みかけの力(ちから)」(慣性力)と捉えることによって、いろいろなことが矛盾なく説明できるようになり、非慣性系であっても、慣性系でも同じ物理法則を適用することができるようになったのです。

重力には反作用がない理由も説明できます(慣性力には反作用がありません)。

電磁力のように極性や反発がないことも理解できます。

 

しかし、この発想にも重大な問題がありました。

慣性力というからには、何かその力のもとになる ――― 加速 ――― が必要なんです。

いったい、どこにそんなもの・・・どこに加速があるというのでしょう・・・?

 

ここが、アインシュタインのすごいところで、

アインシュタインは、

それは空間である ーーー

そして、

空間が加速し、歪み ーーー

その "歪み" 加速度をもたらしている ーーー

と、ぶち上げたのです。ヾ(*゚A`)ノ

 

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/distortion5.png

(青いネット:黒い地面(地球)に向かって歪んでいる空間)

 

空間が加速???"歪み" が 加速度 ???え???( ゚д゚)ポカーン

奇想天外な発想のように感じられますが

単なる思いつき、ではないと思います。

前回、前々回の記事で述べたように、アインシュタインの頭の中には、すでに

Γ(ガンマ)の数学的な意味 = 空間の歪み

Γ(ガンマ)の物理学的な意味 = 加速度 α または 力(ちから)F

というアイデアがあるのです。

なので、アインシュタインが

空間の歪み = 加速度

あるいは

  空間の歪み = 力(ちから)

と帰結するのはごくごく自然なことだったと思います。

 

このアインシュタインの独想的なアイデア

  空間の歪み = 力(ちから)

を思い切って式にしてしまうと、

Γ ≡ F

です。

(完全にイコールなわけではないので、記号を=ではなく≡としました。ちなみに、アインシュタイン本人がこんな式を提唱したわけではありません。管理人のようなアマチュアがアインシュタインのアイデアをあえて式にしてみるとこうなる、という話です。しかし、アインシュタインの頭の中にはこれと似た式がイメージされていたと思います。そして、管理人的にはこの式こそが、一般人がアインシュタイン方程式を理解する「鍵」だと思っています)

 

一般相対性理論って、部分部分をみると別にアインシュタインでなくとも、その他の天才や秀才が、いずれは到達できるであろうロジックの積み重ねで成り立っていると思います。

しかし、その中で一か所だけ、アインシュタインならではのところがあり、それが

Γ(ガンマ)による物理と数学の結合・・・

言葉になおすと、私たち人間が物理的に力(ちから)F とか、加速度(Γ)と感じているものは、実は数学的には空間の歪み(Γ)にすぎない・・・

という超絶なアイデアでだと思います。

 

管理人に言わせれば、アインシュタイン方程式の原型は

Γ ≡ F

です。

しかし・・・そうは言っても、アインシュタイン方程式

Gμν = 8πG Tμν/c4

Γ ≡ F

は似ても似つかぬ形をしています。

どう関係しているというのでしょう?

 

乞うご期待!


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その6

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その4




(注1)アインシュタインの等価原理:下図をみながら想像してみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/distortion4.png
空間には青いネットが張られていて、重力によって地球の中心に向かって引き込まれています。

赤い丸は青いネットに張り付いているリンゴです。この青いネットは、地球の中心に向かって引っ張られており、時間とともに黒い地面の下に沈んでいきます。そういう動的なイメージです。青いネットが地面に向かって動くと、青いネットに張りついている赤いリンゴも、地面に向かって移動していきます。ヒトの目には青いネットは見えないとすると、赤いリンゴだけが動いているようにみえます。これがリンゴの自然落下です。青いネットは地面をすり抜けますが、赤いリンゴは地表にあたるとそこで止まります。このとき、赤いリンゴは青いネットからから引き剥がされてしまいますが、赤いリンゴは青いネットについていこうとして地面を押し続けます。このときリンゴが地面を推す力が重力質量です。赤いリンゴを青いネットから剥がす力が慣性質量です。慣性質量と重力質量は一致します。

赤いリンゴが自然落下しているとき、赤いリンゴは青いネットに対して止まっています。このとき、もし赤いリンゴに意識とか感覚があれば、無重力空間に「静止している」と感じているはずです(たとえ、青いネットとともに地表に向かって加速されていても・・・)。

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その5


https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/wormhole2514312_1920.jpg

さて、前回の記事で紹介した Γ(ガンマ) ⇐ これこそが、アインシュタイン方程式を理解する「最大の鍵」になるのですが、

ここは前記事でも指摘した通り、少し注意が必要です。

ついうっかり専門書をひらいてしまうと、Γ(ガンマ)とは別名、クリストッフェル記号(Christoffel symbols)とよばれるとか、微分(「∇」とか「∂」)をしたときの補正係数であるとか、接続係数であるとか、なんとなく「∇」とか「∂」の"脇役" であることがわかります。

すると、Γ(ガンマ)を理解するためには、その主役(難解な微分幾何学「∇」とか「∂」」)を理解しなければならないのか・・・

とか、

その先にアインシュタイン方程式があるのか・・・?

なんて思ってしまうかもしれません。

しかし、そこが初学者にとっては大きな落とし穴なんです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/401.png

一般相対性理論ってなんだろう?

と、軽い気持ちでその手の本を読み始め、気づかぬうちに深淵なる微分幾何学の世界に深入りしてしまい、結局、挫折してしまった・・・という一般人はたくさんいるのではないでしょうか?

管理人のような一般アマチュアにとっては

とりあえず Γ(ガンマ)については、あまり深入りしないのが肝心です(数学が得意な人は、もちろん挑戦していただいて構わないのですが・・・)

今のところは、あなたが専門家でもない限り

Γ(ガンマ)= 膜(世界)の曲がり

である・・・とだけ覚え、一旦、「∇」とか「∂」」とか数学のことは忘れましょう。

ほんと、こんな解説ありえない・・・と思うかもしれませんが(汗)。

(こんなこと言うと専門家に怒られそうですが・・・ 挫折するぐらいなら、という意味です。多くの一般人にとって共変微分の壁はあまりにも高すぎます)

 

それより、一般人にとっては Γ(ガンマ)に隠されているもう一つの意味を知ることのほうが重要です。

それは、 Γ(ガンマ)の物理学的な意味です。

そもそもアインシュタインが最高に冴え渡っていると思うのは、この Γ(ガンマ)のもう一つの意味を最初から見破っていたのでは?と思われることです。

どういうことかというと・・・

前回の記事で、アインシュタインが Γ(ガンマ)を一発で求める解の公式を必死で求めた・・・と書きましたが、

その Γ(ガンマ)を利用すると、ある有名な方程式を解くことができます(注1)。

ここではその方程式の詳細については触れませんが、その方程式をよ~くみると Γ(ガンマ)の "単位"というか"次元" が、位置を時間の2乗で割ったもの ――― 加速度 ――― に一致しているのです。

つまり、Γ(ガンマ)は物理学的に「加速度」と関係しています。

 

アインシュタインはこれをみて閃いていたに違いありません。

「ん!?ってことは Γ(ガンマ)は、力(ちから)に関係してる?!(・oノ)ノ?」

と。

いえ、あくまで、管理人の勝手な想像ですが(汗)。

 

でも、この発想自体は自然なことです。なぜかと言うと

ニュートン方程式を思い出してみてください。

F = mα ですよね?

質量を1とすれば、 F = α と解釈できます。

つまり、加速度(α)と力(F)は本質的に同じものです。

なので、Γ(ガンマ)の次元が加速度(α)であるのをみて、Γ(ガンマ)が力(F)と関係していると発想するのはアインシュタインにとって当たり前のことだったでしょう。

 

重力の方程式をつくろうとしていたアインシュタインにとって、Γ(ガンマ)の、この物理学的な意味あいは、とてもとても魅力的であったに違いありません。

いえ・・・これも想像ですけど(汗)

 

これまでのことをまとめると

Γ(ガンマ)の数学的な意味 = 世界の曲がり

Γ(ガンマ)の物理学的な意味 = 力(ちから)

です。

「世界の曲がり」と「力(ちから)」は

Γ(ガンマ)」を介して結びつく・・・ !!(`・д『+』

アインシュタインはこのアイデアに心底魅了されていたに違いありません。

もちろん・・・これも想像です(汗)

 


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その5

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その3




(注1)測地線の方程式といいます。歪んだ曲面上にある2点間の最短ルートを探し出す式です。興味ある人のために(管理人の理解の範囲で)簡単に説明してみます。

まず、ある曲面世界で2点間の道筋を考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/395.png

これらのうち、どのルートが一番近道か?という問題です。

一見すると真ん中のまっすぐなルートが一番近道なような気がします。

しかし、それは下図のように、世界が平坦である場合です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/399.png

(青い線:ルートを考えている世界を内部世界とします。この内部世界からみた外部世界の座標線が、このように平行な直線であれば内部世界は外部世界と一致しています。一般には、外部世界は平坦であるというのが前提ですので、内部世界からみた外部世界の座標線が平行直線であれば、内部世界も(外部世界からみて)平坦になります)

世界が平坦ではない(外から見て曲がっている)と、話はそう簡単ではありません。

どのように考えるかというと・・・

これらのルート上を時間とともに移動するとき、ある地点での速度はそのルートに対する接線ベクトルとしてあらわされます。下図の黄色の矢印は、そのような速度(接線ベクトル)の例です。2点間のあらゆる道筋に対してこのような速度(接線ベクトル)を考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/394.png

(黄色矢印:内部世界から見た接線ベクトルの変化のようす)

このとき、速度(接線ベクトル)の変化(∂)と世界(曲面)の曲がり(Γ)のズレが少なければ少ないほど近道になるのです。

(なんで?とかきかないでください。そういうことになってるんです(汗))。

とくに、速度(接線ベクトル)の変化(∂)と世界の曲がり(Γ)が完全に一致する場合(∇ = 0 となる場合、あるいは、∂ = -Γ となる場合)、そのルートを測地線といい、たとえ曲がっているようにみえても、そのルートこそ、実はまっすぐな直線(最短ルート)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/397.png

曲がった面の上で最短距離を考えると、こういうややこしいことがおこります。

たとえば、下の図では、一番上のルートが実はまっすぐな直線、すなわち測地線(最短ルート)であることを模式的に示しています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/398.png

(青い線:内部世界からみた外の世界の座標線。外の世界ではこの青い線はすべて平行な座標直線です)

このように曲がった空間内では、直線や平行は「∂ = 0」ではなく「∇ = 0」として定義されます。

このとき(この最短ルート上で)

∇ = 0

or

∂ = -Γ

or

∂ + Γ = 0

すなわち

速度(接線ベクトル)の変化(∂)+ 世界の曲がり(Γ)= 0

という関係式が成立しており、これを測地線の方程式といいます。

逆に言うと、この方程式を解けば最短ルートが求まります。

(ここは、わかりやすさを優先し、かなり正確さを犠牲にして説明しています。興味がある方は成書をあたってみましょう。数学が得意でない限り気持ちが萎えると思うのでお勧めしませんが・・・)

さぁ、ここで、アインシュタインの登場です!

速度(接線ベクトル)の変化(∂)とは、よくよく考えると加速度(α)のことです。

ですから、測地線の方程式

速度(接線ベクトル)の変化(∂)+ Γ(ガンマ)= 0

α(加速度)+ Γ(ガンマ)= 0

と言いかえることができます。

つまり、

 Γ(ガンマ)= -α(加速度)

です。

面白いのは、この式をみたアインシュタインが

Γ(ガンマ)は α(加速度)と関係がある!」

とは言わなかったことです。そうとは言わずに

「自由落下する物体の経路は、測地線と一致する!」

と予言しました。

頭のいい人はこういうことをします。さすがです。

このふたつ、「 Γ(ガンマ)は、α(加速度)と関係している」と「自由落下する物体の経路は測地線と一致する」って、実は同じことなんです。

そして、アインシュタインは測地線の方程式を使って水星の軌道を解いてみせました。

水星などの惑星の軌道は自由落下の経路の一種ですからね。

その軌道が過去のどの計算よりも正確だったため、自分の予言

「自由落下する物体の経路は測地線と一致する」

の正しさがみんなに認められたわけです。が・・・

アインシュタインにとっては、測地線の方程式の有用性とか、自分の予言「自由落下する物体の経路は測地線と一致する」の正しさがみんなに認められたことより、

Γ(ガンマ)は、α(加速度)と関係している!」

という自分の密かなアイデアが証明されたことのほうがうれしかったに違いありません。

いえ、これも勝手な想像ですけど・・・(汗)。

 


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その5

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その3




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自分用メモ

測地線の例。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20211212214102.png

上図:極座標の上に直線(光の軌跡)が描かれている(測地線)。

下図:極座標の内部に入り込む。すると、上図の直線(光の軌跡)は下図のような曲線になる。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20211212214101.png

この曲線をみながら、ある日、極座標の内部に住む天才が思い至る。「なぜ、光はこんな風に曲がって進むのだろう?」「もしかしたら、この曲線は、本当は直線ではないのか?」と。

そして実は自分たちの空間が曲がっていること(極座標世界に住んでいること)に気づくのだ。

2018年12月 3日 (月)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その3


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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その2

(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その4


https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/wormhole739872_1280.png

前回の記事で、アインシュタイン方程式とは、歪んだ膜(世界)の様子を数式であらわしたもの・・・と、述べました。

では、たとえば、下図のように、曲がった膜(世界)があるとして

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/manifold3.png

こんな曲面、どんな数式で表現したらいいのでしょう?

少し数学に詳しい人なら、2変数関数とか偏微分や全微分をつかえばいいのでは?と思うかもしれません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/manifold1_20200121220201.png

しかし、アインシュタインが必要としたのは、もっと複雑な数学でした(曲面そのものの式というより、曲面の上に描かれたグラフとかベクトルの式・・・みたいな)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/401.png

いろいろな記録によると、アインシュタインも

「これは、むずかしいなぁ・・・」

と感じていたようです。

ところがラッキーなことに、アインシュタインの時代には、すでに天才数学者たちがそういう難しい問題を解決していたのです。

その式はこんな感じです。

 

∇ = ∂ + Γ

 

えっと・・・めっちゃくちゃ省略しました!!!(;´▽`A``)

もともとの式は複雑すぎて気持ちが萎えるので見ないほうがいいです(注1)。

天才アインシュタインもこの式を理解するのに四苦八苦したようですし・・・

専門家でもない限り、この式の意味とか式の成り立ちとか、あまり気にしないほうがいいでしょう( ̄- ̄) 。

(こんなこと言うと、専門家の先生に怒られそうですが・・・)

それよりもっと大事なことがあります。

「∇」とか「∂」とか「Γ」とか、何やら意味不明な記号がならんでいますが、

「∇」と「∂」の差が、 Γ (ガンマ)です。

この Γ (ガンマ)が、アインシュタイン方程式につながる「最大の鍵」になります。

 

初学者は、とりあえず「∇」と「∂」は、ほっといていいです。

では、「Γ」とは何か?

・・・と問われると、

そのイメージをちょっとだけ絵にしてみると、こんな感じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/374.png

(膜に描かれた黄色の線を外の世界からみた絵。薄い青線:外の世界からみた膜の内部の座標線。膜の内部世界では、この青い座標戦は等間隔で平行な直線です。外から見ると、それがこんなに曲がってみえます。膜の内部世界からみた黄色の線の曲がりはその分を差し引いて考えなければなりません)

 

う~む。絵にしたところで意味不明かもですね・・・(汗)

曲面世界の上に描かれた黄色い線を、二つの方法(曲面の外からみた計算「∇」と曲面の中からみた計算「∂」)で微分すると、その差がガンマ(Γ)になる・・・という絵です。

 

ま、わからなくたって大丈夫。

アインシュタイン方程式を理解するにあたり、一般人にとって重要なことはひとつです。

それは・・・

 

Γ(ガンマ) = 膜(世界)の曲がり

 

をあらわしているってこと(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/376.png

(「∇」と「∂」の差が、世界の曲がり =「ガンマ(Γ)」をあらわす)

 

Γ(ガンマ)によって、膜(世界)の曲がりがあらわされます。

あなたが初学者なら、とりあえず、この Γ(ガンマ)の意味だけを知っておけばいいと思います。

この際、「∇」や「∂」は忘れましょう!

(なんて言うと、ますます、専門家の先生に怒られそうですが・・・)

 

いいですか?

もし「∇」と「∂」が一致していれば、膜(世界)は曲がっていません(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/375.png

 

このようなとき、世界は「平坦である」と言います。

世界が平坦であれば、

Γ(ガンマ)= 0

です。

反対に、もし膜(世界)が曲がっていれば、Γ(ガンマ)はゼロになりません。

ここは、アインシュタイン方程式を理解するうえでの核心中の核心ポイントだと思いますので、もう一度、繰り返します。

もし、膜(世界)が曲がっていると「∇」と「∂」が一致せず、Γ(ガンマ)はゼロになりません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/376.png

(わかりやすさを優先するため、かなりデフォルメして書いています)

あなたが専門家や数式マニアでもない限り、

∇ = ∂ + Γ

の式の成り立ちなどに深入りする必要はないと思います。

非専門家や一般人にとって重要なポイントは、

 

 Γ(ガンマ)によって 膜の曲がり をあらわすことができる

 

ということです。

これだけです。

こんな説明、他にないとおもいますが・・・(汗)

 

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/374.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/401.png

そして・・・むしろ、ここからがアインシュタインのすごいところなんですが、

アインシュタインは、

この Γ(ガンマ)の値を一発で計算する、いわば Γ(ガンマ)の

"解の公式"

みたいなものを必死になって探し求めました。

素人的には、Γ(ガンマ)の値を知りたいのなら、「∇」と「∂」を別々に計算し、その差を調べればすむこと、すなわち

Γ = ∇ - ∂

と計算すればすぐわかるじゃん?・・・という気がしますが、

それではダメだったようで、アインシュタインは複数の数学者に頼んだりして、やっとの思いで

Γ(ガンマ)の "解の公式" を手に入れたそうです(この式も気持ちが萎えるので見ないほうがいいです(注2))。

 

アインシュタインが抱いた Γ(ガンマ)への強いこだわり。

いったい何が彼をそこまで Γ(ガンマ)にこだわらせたのでしょう?

理由があります。

(続き)


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その4

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その2



(注1)この数式は見ないほうがいい・・・と書きましたが、怖いもの見たさで興味ある人のために紹介すると次のような式になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/408.png

どうでしょう?複雑すぎて意味わからないですよね?

この数式がサッと分かる人は本記事なんか読んでいないと思いますし、そうでない人は、この式をみてもわけがわからないはずです。

しかしアインシュタインは、当時、自分の専門外である数学の論文の中からこの式を発見し「これだ!」と見抜いたわけで・・・友人の数学者に手伝ってもらったとはいえ、すごいとしか言いようがありません。

添字(α、β、γなど)をすべて省き、式をデフォルメして書くとこうなります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/295.png

つまるところ、曲面の上に描かれたベクトル(v)に関する式なんです。

本文中にも述べましたが、Γ(ガンマ)は、 ∇(共変微分)と ∂(偏微分)の差をあらわします。

非専門家にとって大事なのは、 Γガンマ)です。非専門家がアインシュタイン方程式を理解するのに、それ以上のことはとりあえず、知る必要はありません。

でも、少しは ∇(共変微分)や ∂(偏微分)の意味も知ってみたい・・・という全くの初学者には "眼鏡とペンのアナロジー" がわかりやすいと思います。

ちょっと想像してみてください。目の前にペンがあります。あなたはそのペンをみています。もしそのペンが曲がってみえたら?

ペンそのものが曲がっているのでは?とまずは考えますよね?それがふつうです。しかし、実はあなたは眼鏡をかけています。すると、眼鏡の歪みのせいで曲がってみえているのでは?・・・とも考えられますよね。これが共変微分のアイデアにつながります。眼鏡をとおして見えているペンの曲がりがふつうの微分(偏微分「∂」)に相当します(内部世界)。一方、眼鏡をはずしてみたときのペンの曲がりは共変微分「∇」に相当します(外部世界)。 もし「∂」と「∇」に差があれば、その差が眼鏡によってつくられた空間(内部世界)の歪み: Γ(ガンマ)です。

天才数学者たちは、眼鏡をかけた状態でのペンの曲がり「∂」と眼鏡をはずしたときのペンの曲がり「∇」の差を Γ(ガンマ)とし、それでメガネの曲率を表そうという高度な空間幾何学を構築していました。

アインシュタインはそのアイデアに飛びついたわけですが、眼鏡をはずしたり、かけたりする部分がどうも気に入らなかったらしく、眼鏡をかけたまま Γ(ガンマ)を知ることができないか?と考えたのです。

共変微分についてもう少し深入りしたい方はこちらもどうぞ。

 

(注2)この式も見ないほうがいいと思いますが、興味ある人(怖いもの見たさ?)のために書くと次のような式になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/14.png

意味がわかりませんよね?

添字(α、β、γ、δなど)をすべて省き、式をデフォルメして書くとこうなります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/402.png

いわゆる「計量テンソル(g)」に関する式です。

について知りたい方は → こちらへ「計量テンソル

数学の世界では、曲がった世界(面)の上の一点一点に「計量テンソル(g)」という値が設定されている・・・ そういう前提があります。

その「計量テンソル(g)」の変化の様子(∂)さえわかれば、 Γ(ガンマ)の値を一発で計算できる、というわけです。

共変微分()の必要はありません。

この公式を使えば、非常にカンタンに Γ(ガンマ)の値を計算できます。

おもしろいと思うのは、アインシュタインの思考回路です。

思考が逆、というか・・・

どういうことかというと、ふつう数学のテキストなどでは、まず最初に「グラフ」が与えられます。

そして、曲面の「計量テンソル(g)」を求めるのがゴールです。

少し具体的にいうと、たとえば、数学の専門書では、曲面上のグラフが、2つの座標を使った式であらわされます。

2つの座標問うのは、絶対座標(外部世界)と、曲面上の座標(内部世界)です。

この2つの座標であらわされたグラフの式から、それぞれ共変微分(∇)と偏微分(∂)を計算し、その差をとって Γ(ガンマ)を求めます。

その Γ(ガンマ)をもとに、最終的に曲面上の「計量テンソル(g)」を求めていく・・・

という思考の流れです。すなわち「計量テンソル(g)」を求めるのがゴールです。

しかし、

アインシュタインは逆です。最初に、曲面の「計量テンソル(g)」を手にします。そこから、"解の公式" 一発で (ガンマ)を求めてしまいます。そうして得られた Γ(ガンマ)とグラフの偏微分(∂)から、グラフの共変微分(∇)を求めます。すると、絶対座標系(外部世界)からみたグラフの式が得られます。

つまり、アインシュタインにとってのゴールは、絶対座標系(外部世界)であらわされたグラフの式です・・・

「計量テンソル(g)」とは、最後に求めるものだと思ってしまうと、この思考の反転に戸惑うかもしれません。

「計量テンソル(g)」を最初に手に入れる? どうやって「計量テンソル(g)」を手に入れるの?

と。

しかし、よくよく考えてみると、曲面の「計量テンソル(g)」は、曲面そのものを、直接、観察すればわかるはずのものです。

みなさんの中には、「グラフの傾き」をみただけで、「グラフの式」を想像できる人っていますよね?

同じように「計量テンソル(g)」をみただけで、「曲面の式」を想像できる人たちがいるのではないでしょうか。

「計量テンソル(g)」ナニナニの曲面とか・・・

(傾きナニナニのグラフ・・・みたいに)

実は、アインシュタイン方程式とは、その「計量テンソル(g)」を最初にゲットするための方程式です。

今はちょっと何言ってるのかわからないかもしれませんが、アインシュタイン方程式を、ひとことで言えば、あるエネルギー(=質量、物体)のまわりの「計量テンソル(g)」を求めるための方程式なんです。

「は?」

という感じかもしれませんが、アインシュタイン方程式を使うと、太陽のまわりの「計量テンソル(g)」などを計算できるようになります。

みたことも行ったこともない星・・・たとえばブラックホールのまわりの「計量テンソル(g)」さえ計算することができます。

すると、それをみただけで、「おぉ、ブラックホールのまわりはこんな感じに曲がってるのか!?」などと楽しむことができる・・・マニアな人たちがいると思います。

その人たちは、まず最初に、ブラックホールのまわりの「計量テンソル(g)」から "解の公式" を使って一発で Γ(ガンマ)を求めてしまいます。

すると、たとえばブラックホールの内部で描かれた直角三角形や放物線が、ブラックホールの外(ブラックホールから遠く離れた地球)からみてどんな形にみえるのかが、最終的に、わかるのです。

はい、今はまだ意味が分からなくても大丈夫です。

おそらく、そんなマニアな人たちの界隈では、もはや「計量テンソル(g)」は、天下り式に与えられるものだと思います。

超マニアな世界です。

ところで、アインシュタインはとても運がいいと思います。

アインシュタインがこの Γ(ガンマ)の"解の公式"を探し始めたとき、この Γ(ガンマ)の "解の公式" は、すでに数学専門の論文に発表されていたのです。

それを、よくみつけたな、と思います。

なぜなら、 Γ(ガンマ)の "解の公式" が論文化されていることなど、当時のアインシュタインには知る由もなかったはずです。

当時は今のようにコンピューターで論文を検索できる時代でもありません。

アインシュタインは友人の数学者などに手伝ってもらいながら、数学の専門論文を検索し、あるかどうかもわからないこの Γ(ガンマ)の "解の公式" を必死になって探し求めたそうです。

最終的にこの式を発見した時はかなりうれしかったのではないでしょうか?

運がいいというか、自分が必要なもの、探すべきものがわかっているというのはさすがだとおもいます。

 

ここから先は、アインシュタインが Γ(ガンマ)の"解の公式"を探した理由になります。

その理由は、この Γ(ガンマ)の "解の公式" にある特徴です。

前述したように、

式の中、すべてが偏微分 ∂ のみで、どこをみても共変微分 ∇ が含まれていませんよね?

つまり、前述したように「計量テンソル(g)」という情報さえ手に入れば、この式を使って、共変微分 ∇ なしに Γ(ガンマ)を一発で求めることができます。

というか・・・

アインシュタインは最初から共変微分 ∇ を含まない Γ(ガンマ)の式にこだわっていたのでしょう。

(だから、Γ = ∇ - ∂ では意味がなかったんですね)

しかし、ではなぜ「共変微分 ∇ を含まないこと」にこだわったのでしょうか?

共変微分 ∇ を少し難しく表現すると、1次元うえの視点(膜の外にある座標軸)を利用した微分です。

三次元世界が歪んでいるかどうかを判断するのに4次元世界にある座標を使う、みたいなイメージです。

たとえると、地球の表面がどのように曲がっているかどうかを表現するのに、表面から離れ、地球の外に設定された座標軸を利用するイメージです(鳥の視点"bird's view"とかいったりします)。

共変微分 ∇ を実行するためには、座標系を世界の外に設定する必要があります(専門用語でこれを "外在的(extrinsic)" といったりします)。

考えてみれば、これは直感的にもわかりやすい話で、

面の曲がりをあらわすには、面の外からみた視点が必要だろう・・・

と考えるのはふつうのことです。

そうやって、世界の外側からみた共変微分 ∇ と、世界の内側からみた偏微分 ∂ の差を Γ(ガンマ)とするわけです。

しかしアインシュタインは、それじゃぁ、ダメだ

と考えました。

この世界の内側の情報だけで Γ(ガンマ)を求めたい!

と考えたわけです。

地球の表面が曲がっているかどうかを、外の世界に飛び出さず、地表にいながら判断したい・・・

みたいな感じです(虫の視点"bug's view"といったりします。前述した眼鏡のたとえで言うと、眼鏡をかけて見えるのがインナー世界、bug's view です)。

そして、ついにアインシュタインは、共変微分 ∇ が含まれない Γ(ガンマ)の式を手に入れたのです。

共変微分 ∇ が含まれない

ってことは、その式をつかえば、誰でも自分の世界の内側にいながら Γ(ガンマ) を計算できることを意味します(専門用語では、これを "Γは内在的(intrinsic)である" といったりします)。

そうすると、世界の内側にいながら、この世界を外側からみた様子(共変微分 ∇ の結果など)を想像することができます・・・

この世界がどのように曲がっているかどうかを、この世界の中から表現する

というのは、一見、不可解な気がします。しかし、できるのです。

これには専門家も驚いたようで、

専門家に言わせると「驚異の定理」と呼ばれるほど驚くべきことなんだそうです(けど、別に驚かなくても大丈夫です (^y^))。


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その4

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その2




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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その2


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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その1

(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その3


Abstract2891890_1920

まず、一般相対性理論を理解をするために必要なイメージというものがあります。

それは、今、私たちが住む立体的な世界が、もし、下の絵のような、高さのない平らな世界だったら・・・というちょっとした想像です。

Cocolog_oekaki_2017_02_22_10_05

その世界を横からみたら・・・

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

こんな感じのただの線にみえるでしょう (*´v゚*)ゞ

 

このように、一般相対性理論の理解には、3次元世界を2次元におきかえる

というか・・・

高さのない世界をイメージする能力が必要です。

 

たとえば、ニュートンの万有引力の法則は、ふたつの物体が引き合う、ということですが、

これを平面世界の上でイメージすると・・・

こんな感じになります。

Cocolog_oekaki_2017_02_18_00_47

絵にかいたボールに高さがありますが、頭の中では高さのないボールをイメージしてください(^-^;

式は、この引力をあらわす、有名なニュートン方程式です。

アインシュタインは、これを下図のようなイメージで考えた・・・

とよくいわれています。

Cocolog_oekaki_2017_02_25_00_12

下手な絵で申しわけありません (ノ∀`*)

2次元であらわされた世界は、単に高さがないだけでなく、トランポリンの膜のように物体があるとたわむのです。

 

アインシュタインによると、たとえばボールとボールが引き合うのは、お互いに引力で引っ張りあっているのではなく

単に、たわんだ膜の歪みにしたがって移動しているだけ、つまり

その結果、お互いに引き合っているようにみえるだけだ・・・というのです。

Cocolog_oekaki_2017_02_17_17_36

物体の存在が膜を歪ませる・・・というアイデアは、なかなかわかりやすいイメージで、

多くの人の心を捉えました。

 

モノが周りのものを引きつける重力や、惑星が太陽の周りをバランスよく回っているのも、この歪みが原因だと・・・

いろいろな解説書にも下のようなイメージがのっています。

Cocolog_oekaki_2017_02_22_10_34

また、次のようなイメージを使用している解説もあります。

膜の世界を上からみたイメージです。

Cocolog_oekaki_2017_02_22_10_37

Cocolog_oekaki_2017_02_22_10_31

つくづく絵が下手ですみません(;´Д`A ```

質量があるところで方眼紙の軸が歪む・・・という感じです。

まぁ、どちらが正しいイメージであるとかないとかは、あまり意味がないことで、どんなイメージを描いても決して正しいものは描けませんし、描けばかならず誤解も生じます。

大事なのは、物体が存在すると、その周辺が「たわむ」あるいは「歪む」・・・というイメージです。

まぁ、こういう説明なら、あちこちでもっと上手に説明している解説記事がたくさんあります。

しかし、

その歪んだ様子を数式であらわしたものがアインシュタイン方程式

Gμν = 8πGTμν/c4

ヘ(゚д゚)ノ ナニコレ? ・・・の式なんです。

世界の「たわみ」や「ひずみ」がどうしてこんな式になるのか?

をやさしく解説しているものはほとんどありません。

このブログでは、これを物理や数学の専門家でない人にでもわかるように解説してみようという無謀な試みを企てています。

さぁ、心の準備ができた方は続きへどうぞ。


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その3

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その1


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2018年12月 1日 (土)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その1

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/spacetime.jpg

アインシュタインによって提唱された相対性理論には、特殊相対性理論と一般相対性理論があります。

特殊相対性理論は、重力がない世界で不変的に成り立つ物理法則を考察したもので、E = mc2 という有名な式で知られています。

一般相対性理論は、これを重力がある世界でも成り立つように発展させたもの・・・と言われており、その理論にでてくる有名な式は次のようなものです。

Gμν = 8πGTμν/c4

ヘ(゚д゚)ノ ナニコレ? ・・

 

アインシュタイン方程式(Einstein's field equation)といいます。

はじめてみた人は、ほぼ確実に、あっけにとられるでしょう。

特殊相対性理論ででてくる式 E = mc2 とは似ても似つかぬ・・・

一般の人には意味不明な式だと思います。

もちろん物理や数学の専門家には、それほど難しい式ではないかもしれません。

しかし、そういう専門家にこの式の意味を教えてもらおう・・・とすると、おそらく最悪です。まず間違いなく、何言ってるのかわかりません。(^-^;

そもそも専門家の仕事というのは、理論をわかりやすく世間に伝えることではありませんから。

つまり、アインシュタイン方程式は、

専門家でなければ理解するのはむずかしい・・・

という問題の上に、

わからない人にわかるように説明できる専門家はいない・・・

という、われわれ一般人にはどうすることもできない問題を抱えているのです。

 

結局、一般人がアインシュタイン方程式を理解するためには、それぞれ、自分でがんばる以外にないということになります。

それならば・・・と、

今回、一念発起、物理や数学を専門としない管理人が、一般相対性理論を独学で勉強し、理解できたところを解説してみることにしました。

なので・・・先に断っておきます m(_ _)m

できるだけウソや間違いのないように努めたつもりですが、あくまで管理人の能力の範囲内です。

また、かなりの部分で正確さというより、わかりやすさを重視した散文になっていることをご了承ください(;´▽`A``)

 

それでもよろしいという方のみ、先へおすすみください (=´Д`=)ゞ

ぜんぶで10話です。

きっと、読み終わるころには今より式の形が簡単にみえているのではないでしょうか (ゝ∀・)

(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その2

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