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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その8

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7

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今回は、

G00 = 8πG T00 ・・・式1

この式の右辺にある、T00 について説明してみたいと思います。

いつものように単刀直入、結論から先に言うと

T00 の意味するところは、ずばり E(エネルギー)です。

そうです、あの特殊相対性理論の式

E = mc2

で有名な E(エネルギー)です。

「何だよ、じゃぁ最初っからそう言ってくれよー」って気持ちになるかもしれませんが、厳密には、"単位空間あたり" の E(エネルギー)ですので、つまり、数式的にあらわすと

T00 = E

ではなく、単位空間(vol)あたりの E(エネルギー)

T00 = E/vol

です。

つまり、

8πG T00 = 8πG E/vol

です。

(補足:E/vol があらわしているのは、エネルギーの局所的な"密度"とか"濃さ"みたいなもので専門書では「エネルギー密度」とよばれたりします。あまり深堀りしないほうがいいと思います ⇒ 参考記事:光の総エネルギー

 

さて、

特殊相対性理論によるとエネルギー「E」と質量「m」は等価です。

したがって、アインシュタインの特殊相対性理論から導かれる有名な式

E = mc2

は、自然単位系では

E = m

なんです(自然単位系では c = 1 )。

つまり(c=1とする自然単位系では)

E/vol = m/vol

となります。

つまり

8πG T00 = 8πG E/vol = 8πG m/vol

です。

単位空間当たりの質量「m/vol」とは、よくよく考えると「空間の密度」ってことですから、

早い話、「式1」の右辺は、空間の密度 ρ を使って

8πG T00 = 8πG ρ

と書きかえることができます(注1)。

つまり、T00 の意味するところは、ある単位空間あたりが有する質量、密度、エネルギーです。

 

一方、ニュートンの万有引力といえば、高校物理で習う

F = GMm/r2

という式を覚えている人もいるでしょう。

実は、この万有引力の方程式は、微分∇と 空間の密度 ρ を使って、

∇F = 4πG ρ

という微分方程式であらわせます(注2)。

 

この

∇F = 4πG ρ 

を先ほどの

8πG T00 = 8πG ρ

に代入すると

8πG T00 ≡ 2∇F

という式が得られます(正確には完全にイコールではないので記号を=ではなく≡としました)。

 

さぁ、ゴールはもう間近です!

 

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(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7


(注1)

つまり、

T00 = E/vol = m/vol = ρ

です。 ρ は、空間の密度です。

一般相対性理論では一般物理で主役をはっていた「質量」にかわり、「密度」が基本物理量になります。

主役交代です。

この主役交代は、4元運動量エネルギー運動量にかわるところと関係しています。

どういうことかというと

特殊相対性理論によって、時間(1次元)と空間(3次元)は一体化され、ミンコフスキー時空(4次元空間)となりました。

ミンコフスキー時空では、エネルギー(E/c)と運動量(px、py、pz)も一体化され、4元運動量(E/c、px、py、pz)となります。おもしろいですよね。特殊相対性理論によると、エネルギー(E/c)と運動量(px、py、pz)に本質的な違いはないのです。ある質点のエネルギー(E/c)とは、時間方向へ流れている質点の4元運動量をさし、運動量(px、py、pz)とは、空間方向(x方向、y方向、z方向)に流れている質点の4元運動量をさします。

このように、特殊相対性理論はエネルギーと運動量を統一した、という点ですごいのですが、一般相対性理論はさらにすごいです。この4元運動量に観察者の速度(観察者の4元速度)を掛け合わせた16個の値を考えます。これをエネルギー運動量といいます。これが本文中の Tμν の正体です。でも、運動量やエネルギーにはすでに速度(v)の要素が含れていますよね?そこにさらに観察者の速度(v)を掛け合わせるといったいどうなるんでしょう?最初は意味がよくわからないかもしれませんが、理屈としては、そうすることによって新たに観察者に対する質点の相対速度(v)があらわれます。つまり、静止している観察者の前を相対速度(v)で流れていく質点の4元運動量を観察していることになります。

面白いのは、そう考えていくと、いつの間にか4元運動量の「質量」が「空間の密度 ρ 」としてエネルギー運動量に組み込まれてしまうことです。

式で表してみると・・・

「質点の4元運動量」 ⊗ 「観察者の4元速度」

「質点の質量 m」x 「質点の4元速度」 ⊗ 「観察者の4元速度」

=「質点の質量 m」x  「質点の4元速度」 ⊗ 「観察者の4元速度」

=「空間の密度 ρ」x  (「観察者からみた質点の相対的4元速度」

=「エネルギー運動量」

です。まるで手品のようです。

「質点の4元速度(4成分) 」⊗ 「観察者の4元速度(4成分)」が「観察者からみた質点の相対的な4元速度」(16成分)という新しい速度に融合し、統一されます。この速度(16成分)はテンソル形式になっていて観察者の運動(座標系)に依存しません。4元速度(4成分)が、16成分となったことによって、観察者の運動(座標系)に依存していた4元運動量(4成分)が、観察者の運動(座標系)に依存しないエネルギー運動量 (16成分)に変換された、ともいえます。逆にいえば、エネルギー運動量を考えることにより、観察者は静止した状態で質点の運動を観察していると宣言することができます。神の視点を手に入れたのでしょうか?いや、そうではなく、むしろ誰でも原点になれる・・・すなわち原点の廃止なのだと思います。

このとき(4元運動量がエネルギー運動量にかわったとき)、同時に、質量が「空間の密度 ρ 」に変化してしまいます。つまり、4元運動量は質量から計算されますが、エネルギー運動量は「空間の密度 ρ 」から計算されます。今まで慣れ親しんできた質量を捨て去るのは難しいかもしれませんが、一般相対性理論における"重さ"の基本概念は、粒子1個の質量ではなく「空間の密度 ρ 」なのです。

粒子の質量ではなく「空間の密度 ρ」を考えることによって、この世で観察されるすべての運動量やエネルギーは、"座標系に依存しない"形式で表現できるようになり、エネルギーや運動量を、座標の変化("重力"の影響)に依存せずに表現できるようになります。エネルギーや運動量を座標系("重力")に依存せずに表現できるということは、言い換えると、座標軸の変化が"重力"の影響をあらわすことを意味します。エネルギー運動量を一定に保とうと思っても"重力"が変化すればその値は変化してしまいます。エネルギー運動量の変化が"重力"を反映している・・・。結局、エネルギーも運動量も「空間の密度 ρ」に作用する力(ちから)F の結果として生じているのであって、同じものの異なる断面にすぎません。考えてみれば、運動量を時間(1次元)で微分したもの、あるいはエネルギーを空間(3次元、距離)で微分したものが力(ちから)F ですから、運動量やエネルギーの"流れ"が力(ちから)と結びつく、というのは理にかなった話です。

特殊相対性理論がエネルギーと質量の方程式であるとすると、一般相対性理論(の右辺)は、エネルギーと質量の微分方程式(場の方程式)にも思えます(エネルギーを微分したものがエネルギー運動量で、質量を微分したものが「空間の密度 ρ」)。

 

(注2)

重力ポテンシャルをφとすると、

2φ=4πGρ

であることがわかっています(ポアソンの方程式)。

また、一般に、重力(重力加速度)などの保存力はポテンシャルの微分(傾き、勾配)としてあらわされます。

F = ∇φ

このことから

∇F = 4πGρ

が得られます。数学的には厳密ではありませんが、密度 ρ を積分すると質量 m になりますので次元的にはあっています。ご了承ください。


(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7



エネルギー運動量について

(興味がない方は読み飛ばしてください)

前述したように、エネルギー運動量とは、観察者からみた4元運動量の"流れ"をあらわしています。次元的には質点と言うより「空間の密度 ρ」に直結しており、質量や重力の本質を考えるうえで非常に重要な物理量だと言えます。イメージとしては、まず、空間(3つの次元 x、y、z)と時間(1つの次元 t)が一体化した4次元の箱をイメージします。3次元の立方体には6面(方向としては3つ)の壁がありますが、4次元立方体には8面(方向としては4つ)の壁がある、と勝手にイメージします(イメージしがたいですが・・・汗)。さらに、このような箱、しかも、そのごくごく小さな箱が4次元空間(ミンコフスキー時空)のありとあらゆるところに設置されている、と考えましょう。この4次元の箱に4方向から出入りしている4元運動量の"流れ"がエネルギー運動量です。質点が動けば4元運動量が発生します。観察者が動けば4元運動量に相対的な運動("流れ"みたいな動き)が生じます。4元運動量の"流れ"がエネルギー運動量であらわされます(一般物理で、運動量の"流れ"が応力テンソルであらわされるのとよく似ています。応力を知っている人にとっては早い話、応力テンソルの4次元拡張がエネルギー運動量テンソルともいえます)。4方向(t、x、y、z)から箱に出入りしている4元運動量(E/c、px、py、pz)をイメージしてください。たとえば、4元運動量のうち px について考えるならば、t面に垂直に出入りするpx、x面に垂直に出入りするpx、y面に垂直に出入りするpx、z面に垂直に出入りするpxという、4つの px の"流れ"を考えることができます。壁1面あたり4種類の運動量の出入りを考えてもいいと思います(t面に垂直に出入りするE/c、t面に垂直に出入りするpx、t面に垂直に出入りするpy、t面に垂直に出入りするpz、という4つの"流れ")。壁の方向4つに対して4つの運動量の出入りがありますから、合計4 x 4 = 16通りの出入りを考えることができます。この4方向の4元運動量・・・16通り・・・の出入りを16個の数字 (T00, T01, T02, ・・・, T32, T33)であらわしたものがエネルギー運動量です。16個の数字全体で、空間のある1点における複数の粒子がつくりだす4元運動量の"流れ"をあらわしています。これが質量を作りだしています。

4元運動量(時間成分 x 1、空間成分 x 3)

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor7_20190729143901.png

方向(時間方向 x 1、空間方向 x 3)

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor6.png

具体的に16個の数字をどうやってつくるのかをごくごく簡略化して説明すると、まず4元運動量4つの成分(ベクトル)から1つの成分をとりだします。次に、観察者(または設置されている箱)の4元速度をあらわす4つの成分(ベクトル)から1つの成分をとりだします。これら2つのベクトル成分を掛け合わせるだけです(簡略化して説明しています。厳密な計算方法を知りたい方は成書をあたってください)。これを各成分ごとに繰り返します。結局、それぞれが4つの成分を持つ2つのベクトルから合計16個の積の成分 (T00, T01, T02, ・・・, T32, T33)がつくられます(2つのベクトルのすべての成分同士を総当たり戦のようにすべて掛け合わせる計算をテンソル積と言い、できあがったものはテンソルになります)。できあがった一つ一つの成分について考えてみると、どの4元運動量がどの方向にどれぐらい移動しているか(4元運動量の"流れ")をあらわしていることがわかります。こうやってつくられた16個の数字はテンソルという形式になっていて、16個の数字全体で、空間の"ある1点"における4元運動量の"流れ"を座標系に依存しない形で包括的にあらわしています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor8_20190729143901.png

4元運動量

E/c ・・・ 時間成分

px、py、pz  ・・・ 空間成分

4つの方向

t ・・・ 時間方向、時間面を横切る方向

x、y、z ・・・ 空間方向、空間面を横切る方向

 

以下、4元運動量(E/c、px、py、pz)のどの成分が、4つの方向(t、x、y、z)のどの方向を横切っているか?を意識して読んでください。

T00 ・・・ 時間面を通過した、時間成分の4元運動量(単位時間あたり)。積の意味は「時間面 x 時間成分の4元運動量の変化」。方向成分は時間成分のみ(t)、時間面を貫いて移動した4元運動量の種類は時間成分のみ(E/c)。これによって新しく生成されるT成分は1つ。1 x 1 = 1(T00)。

T01 T02 T03 ・・・ 空間面を通過した、時間成分の4元運動量(単位時間あたり)。積の意味は「空間面 x 時間成分の4元運動量の変化」。方向成分は空間的に3つ(x、y、z)、空間面を貫いて移動した4元運動量の種類は時間成分のみ(E/c)。これによって新しく生成されるT成分は3つ。3 x 1 = 3(T01, T02, T03)。

T10 T20 T30 ・・・ 時間面を通過した、空間成分の4元運動量(単位時間あたり)。積の意味は「時間面 x 空間成分の4元運動量の変化」。方向成分は時間成分のみ(t)、時間面を貫いて移動した4元運動量の種類は空間的に3つ(px、py、pz)。これによって新しく生成されるT成分は3つ。1 x 3 = 3(T10, T20, T30)。

T21 T31 T32 T11 T22 T33 T12 T13 T23 ・・・ 空間面を通過した、空間成分の4元運動量(単位時間あたり)。積の意味は「空間面 x 空間成分の4元運動量の変化」。方向成分は空間的に3つ(x、y、z)、空間面を貫いて移動した4元運動量の種類も空間的に3つ(px、py、pz)。これによって新しく生成されるT成分は9つ。3 x 3 = 9(T21, T31, T32, T11, T22, T33, T12, T13, T23)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/em-tensor4.png

こうやって2つのベクトル(4元運動量と4元速度)の成分同士を掛け合わせて生成された16個の数字は、数学的な専門用語でいうと、テンソルという形式になっています。4元運動量の"流れ"をテンソルという形式に落とし込み、ありとあらゆる座標系で表現できるようにしたもの・・・それがエネルギー運動量です。観察者の動き(視点の変化)によってエネルギー運動量の成分(16個の数字)は変化しますが、その変化は非常に規則的で、実のところ、16個の数字全体であらわしているエネルギー運動量自体は、座標系から独立した絶対的な物理量として変化しません。ある視点からみた4元運動量の"流れ"がわかれば、座標系に依存しない状態、あるいは、あなたにとって都合よい座標系での4元運動量の"流れ"を知ることができます。

16の数字、それぞれがもつ物理的な意味合いは以下のとおりです。

T00 ・・・  4元運動量の時間成分(エネルギー、E/c)が、間面(t)を光速(c)で単位時間の間に横切る量です。時間方向にだけ動く量というのは、空間面を横切らない量ということですから、3次元的には、単位空間にとどまっている量ということです(わかりやすく言いかえると、単位空間あたりの量 = 密度 Density です)。したがって、T00 は、単位空間あたりのエネルギーになります(エネルギー E/c が、時間方向に c だけうごきますから、E/c x c = E になります)。すなわち、エネルギーの密度といえます。T00 の値は、他の15個の数字に比べて桁違いに大きな数字になるので、通常の計算では、他の数字は無視されます。古典力学で扱うエネルギーは座標軸によって変化しない値(スカラー)でしたが、相対論的なエネルギーは密度としてあらわされ、座標軸の取り方によって変化する値(テンソル)の第一成分になります。

T01 T02 T03 ・・・ 4元運動量の時間成分(エネルギー、E/c)が、空間面(3方向 x、y、z)のそれぞれを光速(c)で単位時間の間に横切る量です。時間面を横切らないというのは、単位時間にとどまっている量と考えます(わかりやすく言いかえると、単位時間あたりの空間的な動き = 流れ Flux です)。単位時間あたりのエネルギー(E/c x c = E)が空間面を横切る量、すなわち、3次元的にはエネルギーが局所に流入または流出する"速度"(速度=単位時間あたりの量)をあらわしますT01 T02 T03 から計算されるエネルギーの流入流出量の総和は、T00エネルギー密度)から計算されるエネルギーの増減に一致します(エネルギーが流出するとそのぶんエネルギーが減り、エネルギーが流入するとそのぶんエネルギーが増える)。

T10 T20 T30  ・・・ 4元運動量の空間成分(運動量 px、py、pz)が、時間面(t)を単位時間の間に横切る量です。時間方向にだけ動く量というのは、空間面を横切らない量ということですから、3次元的には、単位空間にとどまっている運動量といえます(わかりやすく言いかえると、単位空間あたりの量 = 密度 Density です)。結局、T10 T20 T30 は、単位空間あたりの運動量、すなわち、その場所における運動量そのもの(空間成分)をあらわします。より正確には、単位空間あたりの運動量ですから、運動量の密度といえます。 T10 T20 T30運動量密度)の和は、T01 T02 T03 (エネルギー流入流出量)の和に一致することがわかっています。

T21 T31 T32 T11 T22 T33 T12 T13 T23 ・・・ 4元運動量の空間成分(運動量 px、py、pz)が、空間面(3方向 x、y、z)を単位時間の間に横切る量です。時間面を横切らないというのは、単位時間にとどまっている量であると考えます(わかりやすく言いかえると、単位時間あたりの空間的な動き = 流れ Flux です)。単位時間あたりに空間面を横切る量、すなわち、3次元的には運動量(空間成分)が局所に流入または流出する"速度"(速度=単位時間あたりの量)をあらわします。T21 T31 T32 T11 T22 T33 T12 T13 T23 から計算される運動量(空間成分)の流入流出量の総和は、T10 T20 T30運動量密度)から計算される運動量の増減に一致します(流出が増えるとそのぶん密度が減り、流入が増えるとそのぶん密度が増える)。また、これら運動量の流入または流出速度は、力(ちから)、すなわち、応力になります(力とは、運動量を時間で微分したもの、わかりやすくいうと運動量の単位時間あたりの変化量です)。運動量の空間成分が、その空間成分と同じ方向にある空間面を横切る量は"押し合い"(圧力)として、その空間成分とは異なる方向にある空間面を横切る量は"擦れ合い"(せん断応力)として観測されます。単位面積あたりの力の大きさと定義されている圧力は、実は、エネルギー密度(単位体積あたりのエネルギー)と同じ次元を持っているのです(ベルヌーイの法則)。

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空間の、ありとあらゆる場所に、無数に浮かんでいるごくごく小さな箱を想像してみましょう。それぞれの箱の表面には16個の数字が表示されています。16個の数字はランダムなものではなく互いに関連していて、16個の数字全体で、その局所における4元運動量の"流れ"(エネルギー運動量)をあらわしている、と考えます。すなわち、箱の中の4元運動量がある箱から違う箱へと移動すると、箱に表示されている16個の数字もそれに応じてかわる、というイメージでいいと思います。空間に無数に浮かんでいる箱の表示によって、刻々と変化する4元運動量の"流れ"(エネルギー運動量)がみえるわけです。ここで、第二の想像です。観察者が動くとどうなるでしょう?観察者が動く、というのは、数学的には、座標軸が変化してしまうということを意味します。そうすると、エネルギー運動量をあらわす16個の数字自体、かなり違った数字になってしまうことが想像できるでしょう。実際、4元運動量そのものに変化はなくても、座標軸がかわるだけで16個の数字はまったく違うものに変化してしまいます。しかし、この16個の数字は、座標変換にしたがって"規則的"に変化しているだけで、16個の数字があらわす4元運動量の流れ、すなわち、空間のある1点におけるエネルギー運動量を、新しい座標軸のもとでも正確にあらわし続けているだけです。つまり、座標系がどのように変化しても(デカルト座標だろうと極座標だろうと、観察者の視点が動こうと、観察者の視点が加速していようとも)、16個の数字は、16個の数字で、空間のある1点におけるエネルギー運動量4元運動量の"流れ")を超然としてあらわし続けます。そういう座標系に依存しない、絶対量をあらわすことを可能にする、特別な数字のあつまりをテンソルといいます。アインシュタインにとって幸運なことに、当時の数学者たちは、このテンソルという数学体系をすでに確立していました。そこにタイミングよくアインシュタインが登場し、まんまとこのテンソルの仕組みを使って、エネルギー運動量を表現したのですはい、わかっています。専門家にはこんな説明ではダメだと怒られるでしょう。しかし、管理人を含む一般人にとって、テンソルの理解はとてもとても難しく、その"つかみ"としてはこれぐらいが限界ではないかと思います。

 

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(つづく)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その9

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アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その7


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コメント

本文中に(注3)と(注4)が見当たらないようですが、脚注との関連を教えてください。

mizuki様
かなり以前に本文を推敲した際、エネルギー運動量テンソルに関する内容をすべて文末の(補)に移しました。その際、脚注関連もすべて変更したつもりでしたが、そのままになっていました。訂正しました。ご指摘ありがとうございました。

わかりました。ご親切にどうもありがとうございました。ところで、管理人様は youtube には動画を立ち上げておりませんか。もう一度教えてください。

mizuki様 いいえ、動画は用意しておりません。動画があったほうがよいでしょうか?

私のようなド素人には、やはり動画の方が訴える力は大きくなるのかなとは思います。今、youtube にはたくさんありますが、みんな「帯に短し、襷に長し」です。深川峻太郎さんの「アインシュタイン方程式を読んだら宇宙が見えた」も買いましたが、管理人様の記事が一番簡潔でわかりやすいです。謙遜されておりますが、こちらの分野にかなり造詣の深い方とお見受けいたしました。今後余裕ができましたら、ぜひ youtube もご検討いただきたいと思います。益々のご活躍を祈念しております。どうもありがとうございました。

mizuki様
最近はずいぶんわかりやすい解説や動画が増えてきたので、いつまで公開すべき?価値あるのかな?と思うこの頃ですが、そのように言っていただけると嬉しいです。励みになります。ありがとうございます。

末尾の説明がとっても分かりやすかったです!
特に、
「ここで、第二の想像です。観察者が動くとどうなるでしょう?観察者が動く、というのは、数学的には、座標軸が変化してしまうということを意味します。
そうすると、エネルギー運動量をあらわす16個の数字自体、かなり違った数字になってしまうことが想像できるでしょう。
実際、4元運動量そのものに変化はなくても、座標軸がかわるだけで16個の数字はまったく違うものに変化してしまいます。
しかし、この16個の数字は、座標変換にしたがって"規則的"に変化しているだけで、16個の数字があらわす4元運動量の流れ
、すなわち、空間のある1点におけるエネルギー運動量を、新しい座標軸のもとでも正確にあらわし続けているだけです。
つまり、座標系がどのように変化しても(デカルト座標だろうと極座標だろうと、観察者の視点が動こうと、観察者の視点が加速していようとも)、
16個の数字は、16個の数字で、空間のある1点におけるエネルギー運動量(4元運動量の"流れ")を超然としてあらわし続けます。
そういう座標系に依存しない、絶対量をあらわすことを可能にする、特別な数字のあつまりをテンソルといいます。」
の部分は、「曲がった時空」を移動する物体が、どのような「物理量の変化」を受けるのか、そのテンソル的な(不変な)値と、可観測量的な(局所座標系毎に見かけ上異なる)値の違いがどうなるのか、について、とってもわかりやすかったです!
素晴らしい記事をありがとうございました!

長文にもかかわらず読んでいただきありがとうございます!

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