アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その5
(もどる)
(つづく)
アインシュタインより前・・・
ニュートン力学では、さまざまな物体の落下運動(加速度)や惑星の自転(加速度)を説明するのに――― 重力 ――― が用いられました。
勘違いされていることが多いのですが
ニュートンが発見した(と言われる)重力とは、それを使えばいろいろな加速度をうまく説明できるから、という理由で都合よく想定された架空の力(ちから)にすぎません。
ニュートンによって重力の正体がわかったわけではないのです。
ニュートン力学では、
自由落下している物体・・・非慣性系。重力という架空の力(ちから)が働き、加速されている状態
地面に静止している物体・・・ 慣性系。重力という架空の力(ちから)が、地面から受ける反作用によって釣り合い静止している状態
と考えられていました。
このように重力という架空の力(ちから)を想定することによって落下運動や惑星の加速度運動など、いろいろな物理運動が理解できるようになったのです。
しかし、なんか今ひとつよくわからないというか
じゃ、そもそも重力の正体ってなに?
という重大な問題が残りました。
止まっているものが動きはじめたり、まっすぐ進んでいるものが曲がったりするためには~何か~が力(ちから)で押したり引いたり「作用」しなければなりません。
そして、そういう力(ちから)には必ず反作用があります。
しかし重力には反作用もありません・・・
たとえば、何か電磁気力みたいなものかな~とも考えられましたが、電磁気力と違って重力にはプラスやマイナス、S極やN極という反発しあう極性がありません。
ここでアインシュタインの登場です。
アインシュタインは、重力とはニュートンが考えたような架空の力ではなく、「みかけの力(ちから)」 ――― すなわち慣性力 ――― である!
という画期的な考えを持ち込み、すべてをひっくり返したのです。
慣性力とは、自分のいる場所が加速しているのに、自分がその場所にとどまろうとするとき、自分に対して、場所の加速方向とは反対向きに感じる「みかけの力(ちから)」です。
たとえば電車やバスが加速したとき、後方に引っ張られるように感じませんか?あれが慣性力です。
エレベーターが昇り始めたとき、床に押し付けられるように感じませんか?あれも慣性力です。
目隠しでもされ、電車やバス、エレベーターが動いていることに気づかなければ、何か力(ちから)が自分に対して作用した!
と錯覚するはずです。誰も自分に触ったり押したりしていないのに。
ニュートンはそれを「架空の力」(ちから)を想定して解決したのですが、しかし、アインシュタインによると、そんな「架空の力」(ちから)を想定する必要はありません。
「みかけの力」(慣性力)は実存します。
加速されてない人(電車やバスの外にいる人)からみると
そんな力(ちから)は
どこにもない
のに。
電車やバスの外にいる人は、「それは君のまわりが加速しているだけだよ!力(ちから)のせいじゃないよ!」と教えてあげたくなるかもしれません。
まさに、「みかけの力(ちから)」です。
しかし加速されている人にとっては実際に存在する力(ちから)なのです。
アインシュタインによると、
自由落下している物体・・・慣性系。実は何の力(ちから)も作用していない状態
地面に静止している物体・・・非慣性系。とまっているようにみえるが実は地面からの作用をうけて加速されている状態。
と先ほどの慣性系と非慣性系が全く反対になります!(・oノ)ノ
このコペルニクス的な発想の転換が、ニュートン力学では考えられなかったブレイクスルーをもたらしました(アインシュタインの等価原理(注1))。
重力を「みかけの力(ちから)」(慣性力)と捉えることによって、いろいろなことが矛盾なく説明できるようになり、非慣性系であっても、慣性系でも同じ物理法則を適用することができるようになったのです。
重力に反作用がないことも説明できます(慣性力には反作用がありません)。
電磁力のように極性や反発がないことも理解できます。
しかし、この発想にも重大な問題がありました。
慣性力というからには、何かその力のもとになる ――― 加速 ――― が必要なんです。
いったい、どこにそんなもの・・・どこに加速があるというのでしょう・・・?
ここが、アインシュタインのすごいところで、
アインシュタインは、
加速しているのは空間である ーーー
そして、
空間は加速によって歪み、その 歪み が加速度をもたらしている ーーー
と、ぶち上げたのです。ヾ(*゚A`)ノ
(青いネット:黒い地面(地球)に向かって歪んでいる空間)
空間が加速???"歪み" が 加速度 ???え???( ゚д゚)ポカーン
奇想天外な発想のように感じられますが
単なる思いつき、ではないと思います。
前回、前々回の記事で述べたように、アインシュタインの頭の中には、すでに
Γ(ガンマ)の数学的な意味 = 空間の歪み
とか
Γ(ガンマ)の物理学的な意味 = 加速度 α または 力(ちから)F
というアイデアがあるのです。
なので、アインシュタインが
空間の歪み = 加速度
あるいは
空間の歪み = 力(ちから)
と帰結するのはごくごく自然なことだったと思います。
このアインシュタインの独想的なアイデア
空間の歪み = 力(ちから)
を思い切って式にしてしまうと、
Γ ≡ F
です。
完全にイコールというわけではないので=ではなく≡としました。
この
Γ ≡ F
という式こそがアインシュタイン方程式の原型だと思います。
力(ちから)なんてものは存在しなくて、それは空間の曲がりに過ぎないんだよってことです。
物体は力(ちから)によって動いているのではなく、空間の曲がりに沿って動いているだけ、ともいえるでしょうか。
ちなみに、一般相対性理論の論文のどこにもこんな式 Γ ≡ F はでてきません。
しかし、ほぼ確実にアインシュタインは頭の中でこれと似た式をイメージしていたと思います(管理人の勝手な推測です・・・汗)。
なぜなら、この式からアインシュタイン方程式が導かれるからです。
・・・そうは言っても、アインシュタイン方程式
Gμν = 8πG Tμν/c4
と
Γ ≡ F
は似ても似つかぬ形をしていますよね?
いったいどうつながるというのでしょう?
すぐにわかります。
乞うご期待!
(つづく)
(もどる)
(注1)アインシュタインの等価原理:下図をみながら想像してみてください。
空間には青いネットが張られていて、重力によって地球の中心に向かって引き込まれています。
赤い丸は青いネットに張り付いているリンゴです。この青いネットは、地球の中心に向かって引っ張られており、時間とともに黒い地面の下に沈んでいきます。そういう動的なイメージです。青いネットが地面に向かって動くと、青いネットに張りついている赤いリンゴも、地面に向かって移動していきます。ヒトの目には青いネットは見えないとすると、赤いリンゴだけが動いているようにみえます。これがリンゴの自然落下です。青いネットは地面をすり抜けますが、赤いリンゴは地表にあたるとそこで止まります。このとき、赤いリンゴは青いネットからから引き剥がされてしまいますが、赤いリンゴは青いネットについていこうとして地面を押し続けます。このときリンゴが地面を推す力が重力質量です。赤いリンゴを青いネットから剥がす力が慣性質量です。慣性質量と重力質量は一致します。
赤いリンゴが自然落下しているとき、赤いリンゴは青いネットに対して止まっています。このとき、もし赤いリンゴに意識とか感覚があれば、無重力空間に「静止している」と感じているはずです(たとえ、青いネットとともに地表に向かって加速されていても・・・)。
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