アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その4
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(つづく)
さて、前回の記事で紹介した Γ(ガンマ) ⇐ これこそが、アインシュタイン方程式を理解する「最大の鍵」になるのですが、
ここは前記事でも指摘した通り、少し注意が必要です。
ついうっかり専門書をひらいてしまうと、Γ(ガンマ)とは別名、クリストッフェル記号(Christoffel symbols)とよばれるとか、微分(「∇」とか「∂」)をしたときの補正係数であるとか、接続係数であるとか、なんとなく「∇」とか「∂」の"脇役" であることがわかります。
すると、Γ(ガンマ)を理解するためには、その主役(難解な微分幾何学「∇」とか「∂」」)を理解しなければならないのか・・・
とか、
その先にアインシュタイン方程式があるのか・・・?
なんて思ってしまうかもしれません。
しかし、そこが初学者にとっては大きな落とし穴なんです。
一般相対性理論ってなんだろう?
と、軽い気持ちでその手の本を読み始め、気づかぬうちに深淵なる微分幾何学の世界に深入りしてしまい、結局、挫折してしまった・・・という一般人はたくさんいるのではないでしょうか?
管理人のような一般アマチュアにとっては
とりあえず Γ(ガンマ)については、あまり深入りしないのが肝心です(数学が得意な人は、もちろん挑戦していただいて構わないのですが・・・)
今のところは、あなたが専門家でもない限り
Γ(ガンマ)= 膜(世界)の曲がり
である・・・とだけ覚え、一旦、「∇」とか「∂」」とか数学のことは忘れましょう。
ほんと、こんな解説ありえない・・・と思うかもしれませんが(汗)。
(こんなこと言うと専門家に怒られそうですが・・・ 挫折するぐらいなら、という意味です。多くの一般人にとって共変微分の壁はあまりにも高すぎます)
それより、一般人にとっては Γ(ガンマ)に隠されているもう一つの意味を知ることのほうが重要です。
それは、 Γ(ガンマ)の物理学的な意味です。
そもそもアインシュタインが最高に冴え渡っていると思うのは、この Γ(ガンマ)のもう一つの意味を最初から見破っていたのでは?と思われることです。
どういうことかというと・・・
前回の記事で、アインシュタインが Γ(ガンマ)を一発で求める解の公式を必死で求めた・・・と書きましたが、
その Γ(ガンマ)を利用すると、ある有名な方程式を解くことができます(注1)。
ここではその方程式の詳細については触れませんが、その方程式をよ~くみると Γ(ガンマ)の "単位"というか"次元" が、位置を時間の2乗で割ったもの ――― 加速度 ――― に一致しているのです。
つまり、Γ(ガンマ)は物理学的に「加速度」と関係しています。
アインシュタインはこれをみて閃いていたに違いありません。
と。
いえ、あくまで、管理人の勝手な想像ですが(汗)。
でも、この発想自体は自然なことです。なぜかと言うと
ニュートン方程式を思い出してみてください。
F = mα ですよね?
質量を1とすれば、 F = α と解釈できます。
つまり、加速度(α)と力(F)は本質的に同じものです。
なので、Γ(ガンマ)の次元が加速度(α)であるのをみて、Γ(ガンマ)が力(F)と関係していると発想するのはアインシュタインにとって当たり前のことだったでしょう。
重力の方程式をつくろうとしていたアインシュタインにとって、Γ(ガンマ)の、この物理学的な意味あいは、とてもとても魅力的であったに違いありません。
いえ・・・これも想像ですけど(汗)
これまでのことをまとめると
Γ(ガンマ)の数学的な意味 = 世界の曲がり
Γ(ガンマ)の物理学的な意味 = 力(ちから)
です。
「世界の曲がり」と「力(ちから)」は
「 Γ(ガンマ)」を介して結びつく・・・ !!(`・д『+』
アインシュタインはこのアイデアに心底魅了されていたに違いありません。
もちろん・・・これも想像です(汗)
(つづく)
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(注1)測地線の方程式といいます。歪んだ曲面上にある2点間の最短ルートを探し出す式です。興味ある人のために(管理人の理解の範囲で)簡単に説明してみます。
まず、ある曲面世界で2点間の道筋を考えます。
これらのうち、どのルートが一番近道か?という問題です。
一見すると真ん中のまっすぐなルートが一番近道なような気がします。
しかし、それは下図のように、世界が平坦である場合です。
(青い線:ルートを考えている世界を内部世界とします。この内部世界からみた外部世界の座標線が、このように平行な直線であれば内部世界は外部世界と一致しています。一般には、外部世界は平坦であるというのが前提ですので、内部世界からみた外部世界の座標線が平行直線であれば、内部世界も(外部世界からみて)平坦になります)
世界が平坦ではない(外から見て曲がっている)と、話はそう簡単ではありません。
どのように考えるかというと・・・
これらのルート上を時間とともに移動するとき、ある地点での速度はそのルートに対する接線ベクトルとしてあらわされます。下図の黄色の矢印は、そのような速度(接線ベクトル)の例です。2点間のあらゆる道筋に対してこのような速度(接線ベクトル)を考えます。
(黄色矢印:内部世界から見た接線ベクトルの変化のようす)
このとき、速度(接線ベクトル)の変化(∂)と世界(曲面)の曲がり(Γ)のズレが少なければ少ないほど近道になるのです。
(なんで?とかきかないでください。そういうことになってるんです(汗))。
とくに、速度(接線ベクトル)の変化(∂)と世界の曲がり(Γ)が完全に一致する場合(∇ = 0 となる場合、あるいは、∂ = -Γ となる場合)、そのルートを測地線といい、たとえ曲がっているようにみえても、そのルートこそ、実はまっすぐな直線(最短ルート)です。
曲がった面の上で最短距離を考えると、こういうややこしいことがおこります。
たとえば、下の図では、一番上のルートが実はまっすぐな直線、すなわち測地線(最短ルート)であることを模式的に示しています。
(青い線:内部世界からみた外の世界の座標線。外の世界ではこの青い線はすべて平行な座標直線です)
このように曲がった空間内では、直線や平行は「∂ = 0」ではなく「∇ = 0」として定義されます。
このとき(この最短ルート上で)
∇ = 0
or
∂ = -Γ
or
∂ + Γ = 0
すなわち
速度(接線ベクトル)の変化(∂)+ 世界の曲がり(Γ)= 0
という関係式が成立しており、これを測地線の方程式といいます。
逆に言うと、この方程式を解けば最短ルートが求まります。
(ここは、わかりやすさを優先し、かなり正確さを犠牲にして説明しています。興味がある方は成書をあたってみましょう。数学が得意でない限り気持ちが萎えると思うのでお勧めしませんが・・・)
さぁ、ここで、アインシュタインの登場です!
速度(接線ベクトル)の変化(∂)とは、よくよく考えると加速度(α)のことです。
ですから、測地線の方程式
速度(接線ベクトル)の変化(∂)+ Γ(ガンマ)= 0
は
α(加速度)+ Γ(ガンマ)= 0
と言いかえることができます。
つまり、
Γ(ガンマ)= -α(加速度)
です。
面白いのは、この式をみたアインシュタインが
「 Γ(ガンマ)は α(加速度)と関係がある!」
とは言わなかったことです。そうとは言わずに
「自由落下する物体の経路は、測地線と一致する!」
と予言しました。
頭のいい人はこういうことをします。さすがです。
このふたつ、「 Γ(ガンマ)は、α(加速度)と関係している」と「自由落下する物体の経路は測地線と一致する」って、実は同じことなんです。
そして、アインシュタインは測地線の方程式を使って水星の軌道を解いてみせました。
水星などの惑星の軌道は自由落下の経路の一種ですからね。
その軌道が過去のどの計算よりも正確だったため、自分の予言
「自由落下する物体の経路は測地線と一致する」
の正しさがみんなに認められたわけです。が・・・
アインシュタインにとっては、測地線の方程式の有用性とか、自分の予言「自由落下する物体の経路は測地線と一致する」の正しさがみんなに認められたことより、
「 Γ(ガンマ)は、α(加速度)と関係している!」
という自分の密かなアイデアが証明されたことのほうがうれしかったに違いありません。
いえ、これも勝手な想像ですけど・・・(汗)。
(つづく)
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自分用メモ
測地線の例。
上図:極座標の上に直線(光の軌跡)が描かれている(測地線)。
下図:極座標の内部に入り込む。すると、上図の直線(光の軌跡)は下図のような曲線になる。
この曲線をみながら、ある日、極座標の内部に住む天才が思い至る。「なぜ、光はこんな風に曲がって進むのだろう?」「もしかしたら、この曲線は、本当は直線ではないのか?」と。
そして実は自分たちの空間が曲がっていること(極座標世界に住んでいること)に気づくのだ。
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