【科学】ローレンツ因子の意味
アインシュタインの特殊相対性理論を、絵的に表現すると以下のようになります。
E:Total Energy(総エネルギー)
m0c2:Rest Energy(静止エネルギー)
pc:Momentum Energy
三平方の定理から、
E2 = (m0c2)2 + (pc)2
が、成り立ちます。これが特殊相対性理論です。
(極論かもしれませんが、特殊相対性理論とは「直角三角形の高さは絶対に斜辺の長さをこえられないよ!」みたいなことを言っているにすぎません)
静止エネルギーを底辺とすると、総エネルギーは斜辺に相当します。底辺に対する斜辺の長さが、ローレンツ因子(γ)です。
sin2θ + cos2θ = 1
(v/c)2 + (1/γ)2 = 1
(m0c2)2 + (pc)2 = E2
ローレンツ因子(γ)とは、総エネルギー(斜辺)と静止エネルギー(底辺)の比にほかなりません。
斜辺と底辺の差(γ -1)が、運動で増える相対論的運動エネルギー(Relativistic Kinetic Energy)に相当します。
【例題】
100 MeV の相対論的運動エネルギーを持ったμ粒子(ミューオン)の速度(v)およびローレンツ因子(γ)を求めよ。ただしμ粒子(ミューオン)の静止質量を105 MeV/c2、光速を3 x 108 m/sとする。
【解答】
まず、
静止質量(m0)= 105 MeV/c2
であることから、
静止エネルギー = m0c2 = 105 MeV
です。
次に、相対論的運動エネルギーが、直角三角形のどこにあたるのかを確認すると・・・
総エネルギー = 静止エネルギー + 相対論的運動エネルギー
です。これに、
静止エネルギー = 105 MeV
相対論的運動エネルギー = 100 MeV
を代入すると、
総エネルギー = 105 MeV + 100 Mev = 205 MeV
になります。
また、三平方の定理(特殊相対性理論)から、
2052 = 1052 + (Momentum Energy)2
が成り立ちますから、
Momentum Energy = √(2052 - 1052) = 176 MeV
です。
μ粒子(ミューオン)の速度(v)と光速(c)の比は、直角三角形の高さと斜辺の比なので、
v/c = 176/(105 + 100)
= 176/205 x (3 x 108)
= 2.577 x 108
すなわち、
μ粒子(ミューオン)の速度(v) = 2.577 x 108 m/s
です。
また、γ(ローレンツ因子)は、底辺に対する斜辺の長さなので、
γ = 205/105
ゆえに、
ローレンツ因子(γ) = 1.952
です。
最後にもう一度、復習しましょう!
γ(ローレンツ因子)とは、アインシュタインの直角三角形における底辺に対する斜辺の長さです。
ローレンツ因子の計算にローレンツ変換は不要です。
sin2θ + cos2θ = 1
(v/c)2 + (1/γ)2 = 1
(m0c2)2 + (pc)2 = E2
ローレンツ因子をリンドラー曲線(双曲線)で理解したい方はこちらへ。
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