アインシュタインの「等価原理」 重力は空間の歪みがひきおこしている慣性力である
重力・・・
日本語では「力(ちから)」という文字が含まれているので、あたりまえのように「力(ちから)」だと思っている人が多いと思います。
なかには(というかほとんどの人が?)、まるでニュートンがその力(ちから)を発見したかのように思っている人もいるのではないでしょうか?
しかし、ニュートンは、単に「落ちる」という現象を"重力"という力(ちから)を想定してうまく説明することに成功しただけで、
重力という力(ちから)がほんとうに「ある」のかどうか・・・
とか、
「誰も何も触ってもいないのに、なぜリンゴが地球に向かって動くのか」
という重力の正体については全く理解されていなかったのです。
ややこしい話ですが、
ふつう・・・
「力(ちから)」といえば、モノを押したり引いたりするときの「力(ちから)」のことをいいますよね?
力(ちから)には、必ず、反作用があります。
しかし、重力には反作用がないのです。
それも奇妙でした。
重力が、押したり引いたりすることによって生じる、いわゆる本物の「力(ちから)」であれば必ず反作用を伴うはずなんです。
「いったいGravity(重力)とは何なんだ?!」
この誰にも答えることができなかった疑問・・・
その謎を解き明かしたのが―――
アインシュタインなんです。
誤解を恐れずに彼の考えを端的に言いあらわすと、
「重力なんて・・・そんな力(ちから)は、ないっ!」
というものです。
もう少し正確に言うと、
「みんなが重力だと思っているのは、実は"みかけの力"にすぎないんだよ!」
・・・という、たぶん当時としてはかなりヤバい発想でした。
「みかけの力」は「慣性力」ともいいます。
電車が急に動き出すと、からだが進行方向とは反対側に押されたように動きますよね?
誰も押していないのに・・・
まるで誰かがある力(ちから)で押したように、からだが動きます。
このように、まわり(場)が加速して動くことによって、自分が"感じる"力(ちから)・・・
その力(ちから)が「慣性力」です。
「慣性力」って、力(ちから)・・・という字がはいっていますが、実は、何の力(ちから)も作用していないことがわかるでしょうか。
実際のところ、電車が急に動いたために、からだが取り残されているだけです。
アインシュタインは、
重力によって落下している物体には、力(ちから)なんて作用していない!
と主張したのです。
たしかに、自由落下している人に聞けば、力(ちから)のない無重力状態に浮かんでいるのと同じ感覚でしょう。
重力が「慣性力」であれば、「慣性力」には反作用がありませんから、重力に反作用がない点もうまく説明できます。
重力 = 「慣性力」ということで、辻褄が合うのです。
ところが!
重力を「慣性力」と考えるには大きな問題がありました。
「慣性力」には何か・・・「慣性力」を引き起こす"事象"が必要なのです。
アインシュタインは、いったい何が「慣性力」を引き起こしていると考えたのでしょう・・・?
実は、ここがアインシュタインの真骨頂というべき発想なのですが、
アインシュタインは、「慣性力」を引き起こしているのは「空間の歪み」であると指摘したのです。
(・_・)エッ....?・・・
いまならトンデモといわれそうなアインシュタインでなければ不可能な発想です。
つまり、こういうことです。
私たちには、目の前に広がっているはずの「空間の歪み」は見えません。
しかし、その結果としてのモノの運動などが落下運動としてみえていて・・・
私たちは、その動きを重力によるものだと錯覚している・・・というのですΣ(゚□゚(゚□゚*)
たとえば、地球がつくる空間の歪みとリンゴがつくる空間の歪みが一体化しようとする性質によって互いに接近する結果、リンゴは地球に引っ張られているようにみえるだけだ・・・と。
実態は、地球とリンゴが、空間の歪みにしたがって互いに接近しているだけだ・・・と。
そこには、力(ちから)なんてない・・・と。
ニュートン力学では、このリンゴと地球が接近しているのは、重力という架空の「力(ちから)」によるものだ
と解釈しているだけで、
実のところ、リンゴと地球の間には何の「力(ちから)」も"ない"というのです・・・(リンゴが動いているのに!)。
何という挑発的な発想でしょう・・・
アインシュタインは、自分が思いついたこの発想がたいそう気に入ったらしく、"The happiest thought of my life!"と語っていたというエピソードは有名です。
「重力は、歪んだ空間の内在的な作用が引き起こした"みかけの力"にすぎない」という、この発想は今ではアインシュタインの等価原理とよばれていますが、この発想はその後、一般相対性理論を根底から支える概念的バックボーンになりました。
アインシュタインの目には、自由落下するリンゴの周囲に、歪んだ「空間」がありありとみえていたに違いありません。
何か、カント哲学の雰囲気すら漂いますよね。
何の力(ちから)も受けず、ただ無重力空間に静止している物体や等速運動中の物体を、物理学用語で慣性系にあるといいます。力(ちから)がまったく作用していない状態と考えてください。
ニュートン力学の時代には、自由落下している物体に重力という力(ちから)が働いていると考えられていました。したがって自由落下している物体は非慣性系にあるといえます。
アインシュタインによると、自由落下している物体には、何の力(ちから)も働いていません。したがって自由落下している物体は慣性系にあるといえます。
慣性系にある物体の運動を非慣性系からみると、架空の力(ちから)が働いているようにみえます。この架空の力(ちから)を実在する力(F)のように扱えば、非慣性系からみた物体の運動も慣性系の物体の運動も、同じ物理法則で記述することができます。
(アインシュタインによると、地上に静止している人は、自由落下を阻止する力(ちから)を受けているため非慣性系にあります。この地上に静止している人からみた自由落下の運動は、非慣性系からみた、慣性系にある物体の運動です。つまり、地上に静止している人からみた自由落下運動は、自由落下をおこしている架空の力(= 重力)を想定し、それを力(F)と同様に扱うことによって、慣性系で成り立つ物理法則(ニュートン方程式)を使ってあらわすことができます)
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