【超解】アインシュタインの特殊相対性理論 これでわからなかったらあきらめよう! その2
ところで・・・
双曲線(自然落下運動の軌道)が座標変換の影響をうけないということを利用して、この双曲線をグラフの目盛りとして使う
というアイデアがあります。
どういうことかというと・・・
この双曲線を使って下図のようなダイアグラムをつくってしまいます。
すると、複雑なローレンツ変換計算の手間がはぶけるのです。
(つたない図でもうしわけありません)
ある事象Aについて考えてみます。
あるAという星の爆発としましょう。
この星Aの爆発は、あなたからは、次のように観察されます。
双曲線がx軸、t軸と交差するところが目盛りです。
つまり、この事象Aは、およそ、3.3光年ぐらい先に存在する星Aが、今から約2.2年後に、爆発するイベントと認識されます。
では、星Aの方向に等速運動している別の観測者には事象Aはどのように認識されるでしょうか?
まず、観察者の移動によって、x'軸とt'軸の傾きがググっと歪みます。
そうすると、
移動中の観測者には、事象Aが上図のようにひずんだ軸によって認識されます。
双曲線は動きません。
この新たな座標で事象Aを読み取るには、
歪んだ軸と、双曲線の交差点を新たな目盛りとして読みとればいいだけです。
すなわち、この移動している観測者にとっては、
事象Aは、約2.4光年先の星Aが、今から0.8年後に爆発する
というイベントにみえることがわかります。
これがローレンツ変換です。
物理学者は難しい計算をしてこれらの数字を求めるのですが、
この双曲線ダイアグラムを使えば、
難しい計算をしなくてもいい
ことがわかります。
歪んだ(x', t')座標を直交に戻しても、事象Aを同一の双曲線に沿って移動させると読み取りの値は変わりません。
↓
つまり、観察者が移動しているなら斜交座標、静止しているなら、直交座標・・・
どちらの座標をつかっても、この観察者からみた事象Aは、約2.4光年先の星Aが、今から0.8年後に爆発する事象です。
結局、等速で動いていても、静止していても・・・読み取りの値に変化はないんです。
もっといえば、静止している観察者と、移動している観察者は、もはやどちらが静止しているかはわからないのです。
この2つの観察者は、どちらも静止しているのは自分だ、と思っているでしょう。
つまるところ、
この宇宙では、いったい誰が静止していて誰が動いているのかなんてわからないのです。
・‥…━━━☆
最後に面白い話ひとつ。
このリンドラー座標の横軸tと縦軸xの座標軸の両方に、一定の力Fをかけてみます。
すると・・・
Fは単なる数字なので、Fを縦軸と横軸にかけても、グラフ自体の形は変わりません。
自然落下する物体に働く力(重力加速度)がかわっても、物体の自由落下のグラフが変化しないことをあらわしています。
グラフの形は変わりませんが、双曲線の式は、
x2 - t2 = s2
から、
(Fx)2 - (Ft)2 = (ある定数)2
へと、かわります。
縦軸 Fx はエネルギー e を、横軸 Ft は運動量 p をあらわします。
整理すると
(e)2 - (p)2 = (ある定数)2
になりました。
では、この(ある定数)とはなんでしょうか?
数学的には、この双曲線の頂点座標(切片)を表しているはずです。
結論を先に言うと、
この(ある定数)、すなわち切片、があらわしてるのは物体の 静止質量 (m0) なんです。
(証明は後述します)。
つまり、双曲線の式、
x2 - t2 = s2
は、実は、
(e)2 - (p)2 = (m0)2
という式と表裏一体なんですね。
自然落下する物体の運動は、その加速度にかかわらず、この式を保ちながら落下していくわけです。
しかも、その様子が観察者の運動によって変化しないということは、
(e)2 - (p)2 = (m0)2
という関係、すなわち、
(エネルギー)2 - (運動量)2 = (静止質量)2
という関係が、観察者の視点によらず、常に成立する
ことをあらわしています。
ここで・・・
(e)2 - (p)2 = (m0)2
の式をメートル法で計算できるように
e = E/c、m0 = m0c2/c = m0c
と単位補正すると・・・
(E)2 - (pc)2 = (m0c2)2
となります(注2)。
これは、あの超有名な特殊相対性理論の式
(E)2 = (m0c2)2 + (pc)2
です。
特殊相対性理論の式は
(E)2 - (pc)2 = (m0c2)2
という双曲線の式だったわけですね。
この双曲線が観察者に拠らず(相対的に)不変である(ローレンツ不変であるともいいます)
というのが特殊相対性理論の数学的な意味です。
(この式 (E)2 = (m0c2 )2 + (pc)2 と、よく知られている E2 = mc2 の式の関係は別記事で解説しています)
(つづく)
(注1)ローレンツ因子(γ)を図示すると、以下のようになります。ローレンツ因子(γ)とは、総エネルギー(E)と静止エネルギー(m0c2 )の比にほかなりません。
(注2)(e)2 - (p)2 = (m0)2 は、光速 c = 1 とする自然単位系で成立しています。これを地球人にわかるように補正(普通の単位系~メートル法に換算)すると、(E)2 - (pc)2 = (m0c2)2 になります。メートル?そんなの知るか!という宇宙人には、(e)2 - (p)2 = (m0)2 でOKです。というか、そもそも (e)2 - (p)2 = (m0)2 の方が宇宙的には正しいんです。
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