« 2015年4月 | トップページ | 2017年11月 »

2015年5月 3日 (日)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 番外編

Fantasy2861815_1920

・‥…━━━☆

3.光の総エネルギー

光速で移動する「ある物体」があるとします。

その物体がピタッと止まった時、その物体の質量はどのくらいでしょうか?

アインシュタインの相対性理論によると、光速で移動する物体に静止質量m0があるとすれば、それは「0」以外にありえません。

なぜなら、相対性理論によると、運動中の物体の質量mと静止質量m0には

m = m0 /(1 – v2/c2)1/2

の関係がありますから

静止質量m0が「0」でないと、たとえそれがどんなに小さな値でも、その運動質量mは、光速で無限大になってしまうからです。

静止時になんらかの質量をもつ物体は決して光速になれない、ともいえます。

すなわち、光速で移動するモノがあれば、その静止質量m0は、必然的に「0」以外にありえません。

このことから、光の静止質量m0 は「0」だと考えられています。

しかし・・・

これはあくまでも理論的な話であって、光の速度というのはどんな状況でも不変というのが大前提ですから、少しでも速度を落とせば、それはもはや光ではありません(アインシュタインによる光速度不変の原理)。つまり現実的には、どんな方法を使っても、光の静止質量m0を知ることはできないのです(→光を止めようとしたらどうなるか?)。

また、光は発射された直後から光速であり、その後にどんな力を加えても、決して加速されることはありません。ですから、慣性質量(inertial mass)も測定不能です。

そういう意味では、光の静止質量m0は「0」というより、「ない」といったほうが適切かもしれません。

 

しかし、まぁ、静止質量m0が「ない」では考察のしようがないので、ここでは光の静止質量m0を「0」 として話をすすめてみましょう。

つまり、

m0 = 0

です

これを総エネルギーの式 

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

に代入してみます。

すると

E2 = 0 + p2c2

E = pc

という式が得られます。

これが光の総エネルギーをあらわす式です。

ψ(`∇´)ψ

残念ながら、E = mc2の形にはなりませんでした。

しかし、それまでの観測から光子「1個」あたりの総エネルギーは

E = hf = h(c/λ) = (h/λ)・c = pc

ということがわかっていましたので、その結果にピタリと一致したところが相対性理論のすごいところです。

 

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/electromagneticwaves1526374_1280.png

逆に言えば、この結果から、光の静止質量m0は、やっぱり「0」でいいんだね!ということになったのです。

 

でもなぜ、質量「0」の光にエネルギーがあるのでしょう?

それは・・・

光には運動量があるためです。

質量「0」なのに運動量?なんで?・・・と、一瞬、不思議に思う人もいるかもしれませんが、

光には、

電磁波としての運動量

があるんです。

(粒子としての運動量は p = mv であらわされますが、電磁波としての運動量は p = h/λ という式であらわされます)

 

ちなみに

光の運動量を

p = mc (v = c)

と仮定すると、光の運動質量は m です。

これを先ほど得られた式 E = pc に代入してみると、

E = pc

E = (mc)c

E = mc2

と、なります。ψ(`∇´)ψ

こうしてみると、実は光においてさえも、E = mc2 の関係が、概念的には、成立しているわけです。

エレガントとしかいいようがありません。

 

おもしろいことに、この考察から

光の運動質量 m は、ほんとうに

m = E/c2 (← 上記 E = mc2 より)

であると考える人がいます(重力質量(gravitational mass)と呼ぶべき?)。

 

どういうことでしょう?

仮に・・・

静止質量 m0 が「0」の粒子がここにあるとします。

どんな粒子でも運動するとその質量が増える、というのが特殊相対性理論ですが、

静止質量が「0」の場合は、どんなにその粒子を速くうごかしても、限りなく光速に近づけても、

その粒子の運動質量 m はずっと「0」のままです。なぜなら

m = m0 /(1 – v2/c2)1/2

の関係があるのですから(もしくは、Teacher様のご指摘のように v = c なら不定になります)。

なので、光の運動質量 m が

m = E/c2

である

というのは、にわかには受け入れがたいことです。

 

ところが。

エネルギーEの光を鏡張りの箱に閉じ込めると、

なんと、E/c2だけ、その箱の静止質量(慣性質量)が増える

というのです。

!?(゚〇゚;)マ、マジ...!ナノ?

現実的には反射率100%の鏡の箱なんて存在しないでしょうけれども・・・

 

動き回る光を箱の中に閉じ込めると、その箱の質量が増える!?

想像してみてください。

エネルギーEの光が、反射しながら箱の中を動き回っている・・・

と考えると、

増えた箱の静止質量のもとになっているのは、箱の中で動き回っている光の運動質量(重力質量)m

以外にありません・・・

質量が「ない」はずの光を閉じ込めると質量になる・・・?

えっと、もしかすると

エネルギーと質量は等価である・・・

って、そういうことなのでしょうか!?

エネルギー = 質量 = 光?

この世のありとあらゆるモノ・物質の正体は、「閉じ込められた光」なのかもしれません。

 

この世はほんとに不思議な・・・実に美しい不思議に満ちあふれています。

「あ〜ぁ、なんかおもしろいことないかなぁ~」なんていっている場合じゃないのです。


(はじめにもどる)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 1

(特殊相対性理論はわかったので、今度は一般相対性理論に挑戦する)

アインシュタインの一般相対性理論 10話で完結 その1


おすすめ記事

2015年5月 2日 (土)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 3

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/planet581239_1280.jpg

・‥…━━━☆

2.運動していない物体(静止質量m0

この記事では、静止している物体の総エネルギーを計算してみます。

静止している物体の運動量 p は0(p = m・v = m・0 = 0)ですから

総エネルギーの式 

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

に p = 0 を代入すると

E2 = m02c4 + 0

これより、静止している静止質量m0の物体の総エネルギー

E = m0c2

が得られます。

簡単でしたね。

でも・・・

静止しているものにエネルギーなんてあるのでしょうか?

それをアインシュタインが発見したんです。

この世に存在するだけで、存在の「エネルギー」とでもよぶべきエネルギーがあるんです。

言いかえると、

あらゆる物体は、エネルギーなしには存在できないし

物体とは、エネルギーが目に見える形になったもの

でしかありません。

逆に考えると、

ある物体がこの世から消失すると(=質量を失うと)、このエネルギーが解放されますよ~~~

☆(((≪*☆*BOMB*☆*≫)))☆

ということですΣ(゚д゚lll)アブナッ !

 

実は、静止している物体の総エネルギーは、次のようにしても得られます。

総エネルギーの式

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

に、アインシュタインによる運動中の物体の質量mと、静止質量m0の関係式

m = m0/(1 – v2/c2)1/2

を代入し、あらかじめ運動質量m(運動量p)を使わない式に変形しておきます。

E2 = m02c4 + m02v2c2 /(1 – v2/c2)

E2 = m02c4 /(1 – v2/c2)

E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2

これに静止している物質の速度 v = 0を代入すると、静止している静止質量m0の物体の総エネルギー

E = m0c2

が得られます。

結局・・・

静止している物体の場合、静止質量m0を使って相対性理論の式を書き換えれば、いわゆる「E = mc2」の形になります。

静止している物体は、速度 v =0で運動中の物体とも考えられますから、静止中の物体の総エネルギーを、運動質量mを使ってあらわしても、当然

E = mc2

となります。

これは

運動中の物体の質量mと、静止質量m0の関係式

m = m0 /(1 – v2/c2)1/2

から

v = 0 のとき

m = m0

が、あきらかですから

静止=速度ゼロの運動

というわけで、当然といえば当然ですね(^-^;

 

まとめると・・・

<(`^´)> エッヘン

「ある物体が運動していようが、静止していようが、ある瞬間の物体の質量がわかれば、その瞬間の物体の総エネルギーは、常にE = c2として書き表わすことができる」

です。

なんか、すごいと思いませんか???

有名な「E = mc2」の式・・・

とてもシンプルな式ですけど、「m」が運動質量であるとも静止質量であるともいいがたい。うまく定義できないところがモヤモヤしますが、逆にいうと、どちらでも成り立つところがすごいです・・・

あえていえば、この「m」は、物体が静止していようが運動していようが、「その瞬間の物体の質量」といえます。

静止状態を、速度ゼロの運動と考えれば、「E = mc2」の式における「m」は、つねに運動質量と言ってもいいのかもしれません・・・

そう考えると、

よく、E = mc2 の式は、静止している物体(p = 0)のときのみ成り立つ、という解説がよくありますが、そうではないですよね。むしろ運動しているときだけ成り立つ、といえるわけです(v =0の運動、つまり静止を含む)。

さて、

次の記事では、質量ゼロといわれる光のエネルギーについて考えてみましょう。


(つづき)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 番外編

(もどる)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 2


おすすめ記事

2015年5月 1日 (金)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 2

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/timespace.jpg

1.運動している物体(静止質量m0、運動中の質量m、速度=v)

まず

運動している物体の総エネルギーを計算してみましょう。

運動中の物体の質量 =m、速度 =vのとき、運動量 p は、

p = mv

であらわされます。

 

また、アインシュタインの相対性理論によると、運動中の物体の質量 m と静止質量 m0 には

m = m0/(1 – v2/c2)1/2

の関係があります。

(えっ?質量って運動中と静止してるときで違うの?とか、運動中の物体の質量なんて、どうやって測るの?という質問はアインシュタインさんにきいてください(→

 

これらを前述の「総エネルギーの式」に代入します!

そうすると・・・

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

E2 = m2(1 – v2/c2)c4 + (mv)2c2

E2 = m2c4 – m2v2c2 + m2v2c2

E2 = m2c4

E = mc2  ← (v^ー゜)ヤッタネ!!

 

つまり

静止質量 m0 のかわりに

運動質量 m を使うと

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

の式が

E = mc2

となることがわかります!

\(^o^)/

 

このように、

運動している物体では、運動中の質量 m を使うと、あの有名な「E = mc2」の式になります。

 

え?でも、運動中のエネルギーを表す式なのに、式の中に速度 v が入っていない・・・?

なぜでしょう?

はい。相対性理論によると、速度 v に応じて運動質量 m が増加します。つまり、速度 v は質量 m に含まれてしまっているんですね!

 

ちなみに

この運動中の物体の総エネルギーを、あえて静止質量 m0 を用いてあらわすと、びっくりするような式になります。

それは

E = m0c2

ではありません(・oノ)ノ

 

上記で得られた

E = mc2

に、アインシュタインによる運動中の物体の質量 m と、静止質量 m0 の関係式

m = m0 /(1 – v2/c2)1/2

を代入して得られた式・・・

E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2

これが

運動中の物体の総エネルギーを、その物体の静止質量 m0 を用いてあらわした式になります!

 

え?

全然びっくりできないって?

いえいえ!

実は・・・

この式をテイラー展開すると、すごいことがおこるんです。

E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2

   ↓

テイラー展開(公式を使います)

   ↓

E = m0c2 + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

 

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

この式・・・もう一度書きますから、よーくみてください。

E = m0c2 + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

v<<cのとき、右辺の第三項以降は実はほぼゼロになるので薄くしました。

すなわち

時速1000kmぐらいまでの通常のスピード(v<<c)のときには、運動中の総エネルギーは静止質量m0を用いて、次のようにあらわせるんです。

E = m0c2 + (1/2) m0v2

ジャ━(ノ∀`〃)ゞ━ン♪

これが、

運動中の総エネルギーを、静止質量 m0 を用いてあらわした式

です!!!(ただしv<<c)

残念ながら

E = m0c2

の式にはなりませんでしたね。

でも・・・

気がつきましたか?( ̄ー ̄)ニヤリ

この式の第二項は、有名なニュートン力学の運動エネルギーの式

運動エネルギー = (1/2) m0v2

になっています!

そして・・・

第一項のm0c2は、実は

次のページで解説していますが、運動していない物体(静止物体)の

静止エネルギー = m0c2

なんです。

つまり、アインシュタインの式

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

は、v<<cのときには、

E = m0c2 + (1/2) m0v2

つまり、

(総エネルギー)=(静止エネルギー)+(運動エネルギー)

になる・・・

ということ。

わかりやすくいうと、そんなに速くない運動(v<<c)の世界においては、

(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(運動エネルギー)2

の式にある各項の2乗がはずれて

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(運動エネルギー)

とあらわせる・・・

ということです!(注1)

 

結局・・・

ニュートン力学の範囲(v<<c)においては、運動によって変化しないエネルギー 「m0c2」をゼロとみなし、運動によって変化するエネルギー部分のみを

力学的運動エネルギー = (1/2) m0v2

として認識していたのですね!

すごいと思いませんか?

運動エネルギーの式にくっついてくる係数(1/2)は何かと思ったら、実は相対性理論をテイラー展開した時にでてくる係数だったわけです・・・

しかも運動エネルギーって正確には、

(1/2) m0v2 より、ちょっとだけ大きい、

(1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

だったんです!

運動エネルギー = (1/2) m0v2 というのは実は概算だったわけで、ニュートンの式はちょっとだけ運動エネルギーを過小評価している・・・

一歩すすんだ理解です(*^ー゚)b

アインシュタインの総エネルギーの式

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

から、ニュートン方程式である

運動エネルギー = (1/2) m0v2

が導けるなんて・・・

ニュートンの当時は、運動に関係した「力学的エネルギー」のみが観測可能であり、まさか物体がそこに存在するために必要なエネルギー(m0c2)があるなんて・・・天才ニュートンをしても思いもつかなかったというわけですね!

 

なんで E = (1/2)mc2 じゃないんだろ・・・?(´ヘ`;) なんて考え悩んでいる人も、これですべて解決ですね('v`b)。

 

次回は、静止している物体の総エネルギーについて解説します。続きをお楽しみに。


(つづき)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 3

(もどる)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 1


‥…━━━☆

(注1)

Momentum energy(運動エネルギー)と、Kinetic energy(運動エネルギー)の関係を図示してみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/new1_20190709231201.png

Momentum energyとKinetic energyを両方とも「運動エネルギー」とよぶことが気になるならば、

ここは、

物体の速度が光速より十分に遅い場合

(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(Momentum Energy)2

の式にある各項の2乗がはずれて

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Kinetic Energy)

となる・・・

と、読んでください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/new1_20190709231201.png

図からわかるように、

物体の速度が光速より十分に遅い場合(=三角形の高さが十分に低い場合)、

相対論的運動エネルギーは、古典的運動エネルギーで近似できます。

つまり、運動エネルギーを次のように、

古典的運動エネルギー(Classical Kinetic Energy)=(1/2) m0v2

相対論的運動エネルギー(Relativistic Kinetic Energy)=(1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

と2種類認めれば、物体の速度が光速より十分に遅い場合には

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Classical Kinetic Energy)

が成り立ち、

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Relativistic Kinetic Energy)

は常になりたつといえます。

(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(Momentum Energy)2

も常に成り立ちます。

また、次の図からも明らかなように、いわゆるローレンツ因子(γ)とは、直角三角形の底辺に対する斜辺の長さにすぎません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/einstein-triangle.png

おすすめ記事

« 2015年4月 | トップページ | 2017年11月 »