E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 1
アインシュタインの特殊相対性理論といえば
E = mc2
の式が有名ですよね。
ある物体がこの世から消失すると、ものすごい量のエネルギーに変化するという原子爆弾の理論的根拠にもなったとか、ならなかったとか ゚ ゚( ロ ;)!!
この式の意味、わかりますか?
文字の意味は E は物体のエネルギー、m はモノの質量、c は光の速度です。
E や m は高校物理でおなじみですけれども、そこに c が関係しているところが、ちょっとむずかしい感じです。
でも・・・
よく考えてみてください。
光の速度(c)は不変なので(=絶対に変化しないので)、この c2 の部分は、定数というか係数というか「ある数」にすぎません。
ある数といっても、この数字、メートル法で考えると c2 = 約900億 という巨大な数字になり思考停止してしまいそうです。しかし
新しく「c =1」という単位を人為的につくってしまえば c2 = 1 です。
すると
E = mc2
という式は、c=1と考えれば
E = m
ってことなんです(実際、c = 1 としたところでこの世界の物理現象に何の支障もありません)。
科学者たちもみんなそう考えて驚いたわけです。
式の意味をあえて言葉であらわせば
「姿・形のないエネルギー(E)が、質量(m)という姿・形になっている」~ それがこの世の正体である!
という感じでしょうか ( ゚_ノ゚)…
いわゆる専門家の言うところの
「エネルギーと質量は等価である」
という発見です。
エネルギーと質量が同じもの
だなんて。
なんと哲学的な・・・
アインシュタインの目には、釈迦がみた「悟り」のような世界がみえていたのかもしれません。
が!
ここまで言っててなんですが
アインシュタインの特殊相対性理論から導かれる式は、実は
E = mc2
でも
E = m
でもないんです。
実はなんと
E2 = (m0c2)2 + (pc)2 (m0:静止質量、p:運動量)
なんです ヾ(゚Д゚;●)??
知ってました・・・?
こりゃ複雑です。
2乗がいっぱいついててわかりにくいと思います。が
言葉であらわすと、そうでもありません。
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (運動エネルギー)2
です(注1)。
つまり、エネルギーに関する式です。
つまり、アインシュタインは、エネルギーの秘密を解き明かし、その概念を一変させたのです。
これまで、アインシュタインの相対性理論といえば
エネルギーと質量は等価である、とか
物体が運動すると、質量が増加する、とか
長さが縮む、とか
運動している物体の中では時間の進みが遅くなる、とか
光のスピードは不変、とか
いろいろ言われていると思いますが・・・そんなことより
アインシュタインの相対性理論の本質とは、
E2 = (m0c2)2 + (pc)2
すなわち
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (運動エネルギー)2
という総エネルギーの発見です。
いいですか?
あなたが「一歩すすんだ理解」を好むなら
アインシュタインの相対性理論とは・・・
総エネルギーの発見である
と言い切りましょう。
ちなみに・・・
みなさんが高校のときに習った「位置エネルギー」は「静止エネルギー」とはまったく違うものです。
つまり、みなさんが高校で習った力学的エネルギー保存の法則の式
(力学的エネルギー)= (位置エネルギー) + (運動エネルギー)
とは関係のない話をしています。
「力学的エネルギー」は運動によって変化せず一定に保たれますが、相対性理論の「総エネルギー」は運動によって増加します。
このアインシュタインが発見した総エネルギーですが、ちょっとわかりにくいのは
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (運動エネルギー)
ではなく
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (運動エネルギー)2
と、各項に2乗がついているところではないかと思います。
総エネルギーのイメージを少しでもわかりやすくするため、あえて図にしてみるとこんな感じでしょうか。
E:総エネルギー(Total Energy)
m0c2:静止エネルギー(Rest Energy)
pc:運動エネルギー(Momentum Energy)
総エネルギー(E)と静止エネルギー(m0c2)、運動エネルギー(pc)の関係は、
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (運動エネルギー)
という直線的な関係ではなく
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (運動エネルギー)2
という直角三角形的な関係になっています(注2)。
物体の運動エネルギー(pc)は、運動速度に応じ、直角三角形の高さの方向に増加します。
その結果、総エネルギー(E)は、直角三角形の斜辺として増加します。
しかし、物体の静止エネルギー(m0c2)は、その物体がこの世に存在する限り、直角三角形の底辺として、増えも減りもしません(注3)。
そんなエネルギーの三つ巴の関係です。
ところで・・・
この直角三角形の式と
あの有名な、E = mc2 の式は
当然、関係があります。
いったい、どんな関係なのでしょうか?
E = mc2 は、静止している物体(p = 0)のときのみ成り立つ、なんていう説明がありますが、はたしてそうなのでしょうか?
続きを読めばすべてがわかります!では!(*^ー゚)b
(つづく)
E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 2
(注1)
この記事でいう運動エネルギー(pc)は、英語ではMomentum energy(適切な日本語訳はありません)と表現されるもので、いわゆる、高校物理で習う、運動エネルギー(Kinetic energy)とは異なります。
アインシュタインの相対性理論では、空間(3次元)と時間(1次元)が一体化し・・・時空が融合します。
すると、エネルギー(1次元)と運動量(3次元)も一体化します(4元運動量)。
この4元運動量の時間成分は総エネルギーになり、空間成分が Momentum energy になります。
とてもややこしいので、図にしてみます。
高校物理で習う運動エネルギー(Kinetic energy)と、この記事でいうMomentum energy(運動エネルギー)を、アインシュタインの三角形に無理やり書き込むと以下のようになります。
Kinetic energy(運動エネルギー)は、古典的なKinetic energy(運動エネルギー)と相対論的なKinetic energy(運動エネルギー)に区別されます。
しかし、本記事では、これらすべてを運動エネルギーと言っています。
違うものを同じ名前で書くな!と言いたくなる人もいるかもしれません。が、しかし、定義上、総エネルギーのうち、静止エネルギーでないエネルギーは、運動エネルギーとしか言いようがないんです・・・(; ◜ ᵕ◝)
もうすこし噛み砕いて説明すると・・・
古典的なKinetic energy(運動エネルギー)は物体の速度が遅い場合にしか成り立ちません。
どういうことかというと・・・
物体の速度がそれほど速くない場合には、みなさんが高校のときに教わった
古典的なKinetic energy(運動エネルギー)= (1/2) m0v2
を用いて
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (1/2) m0v2
と書けるのです。
ところが
物体の速度がめちゃくちゃ速くなるとこの式は成り立ちません。
しかし、相対論的運動エネルギー(Relativistic Kinetic Energy)を使えば、物体の速度がどんな場合でも成り立ちます。
どういうことかというと、
相対論的なKinetic energy(運動エネルギー)= (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
とするんです。
すると、
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
の式が成り立ちます。どんな速度でも成り立ちます。
この式を数学の知識を利用してまとめると
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (pc)2
となるのです。
つまり
相対論的な運動エネルギー = (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
が
Momentum energy(運動エネルギー)= pc
に変身してしまいました。
言葉だけで書くと
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (古典的な運動エネルギー) ← 速度が遅い場合にしか成り立たない!
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (相対論的な運動エネルギー) ← 常に成り立つ!
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (Momentum energy)2 ← 常に成り立つ!
です。
相対論的運動エネルギー(Relativistic Kinetic Energy)は、Kinetic energy(運動エネルギー)のアインシュタインバージョンともいえます。
そのもとになっているのは、Momentum energy(運動エネルギー)です。
Momentum energy(運動エネルギー)が姿を変えたものが相対論的なKinetic energy(運動エネルギー)と言ってもいいかもしれません。
相対論的なKinetic energy(運動エネルギー)とMomentum energy(運動エネルギー)は交換可能なのですが、これらを入れ替えると、
(総エネルギー) = (静止エネルギー) + (相対論的な運動エネルギー) ← 常に成り立つ!
という式が
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 + (Momentum energy)2 ← 常に成り立つ!
という各項に2乗がついた式に変化してしまうというわけです。
これがアインシュタインが発見したエネルギーの秘密です。
このあたりのことは、次の記事で解説します。
(注2)
いやいや三角形じゃないでしょ?双曲線でしょ?という方はこちらへ。直角三角形のほうが絵的にわかりやすいのですが、双曲線として理解でする方法もあります。
(注3)
実はそうともいいきれない場合があるようです →こちらのコメント参照)