E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 2
1.運動している物体(静止質量m0、運動中の質量m、速度=v)
まず
運動している物体の総エネルギーを計算してみましょう。
運動中の物体の質量 =m、速度 =vのとき、運動量 p は、
p = mv
であらわされます。
また、アインシュタインの相対性理論によると、運動中の物体の質量 m と静止質量 m0 には
m = m0/(1 – v2/c2)1/2
の関係があります。
(えっ?質量って運動中と静止してるときで違うの?とか、運動中の物体の質量なんて、どうやって測るの?という質問はアインシュタインさんにきいてください(→∵)
これらを前述の「総エネルギーの式」に代入します!
そうすると・・・
E2 = (m0c2)2 + (pc)2
E2 = m2(1 – v2/c2)c4 + (mv)2c2
E2 = m2c4 – m2v2c2 + m2v2c2
E2 = m2c4
E = mc2 ← (v^ー゜)ヤッタネ!!
つまり
静止質量 m0 のかわりに
運動質量 m を使うと
E2 = (m0c2)2 + (pc)2
の式が
E = mc2
となることがわかります!
\(^o^)/
このように、
運動している物体では、運動中の質量 m を使うと、あの有名な「E = mc2」の式になります。
え?でも、運動中のエネルギーを表す式なのに、式の中に速度 v が入っていない・・・?
なぜでしょう?
はい。相対性理論によると、速度 v に応じて運動質量 m が増加します。つまり、速度 v は質量 m に含まれてしまっているんですね!
ちなみに
この運動中の物体の総エネルギーを、あえて静止質量 m0 を用いてあらわすと、びっくりするような式になります。
それは
E = m0c2
ではありません(・oノ)ノ
上記で得られた
E = mc2
に、アインシュタインによる運動中の物体の質量 m と、静止質量 m0 の関係式
m = m0 /(1 – v2/c2)1/2
を代入して得られた式・・・
E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2
これが
運動中の物体の総エネルギーを、その物体の静止質量 m0 を用いてあらわした式になります!
え?
全然びっくりできないって?
いえいえ!
実は・・・
この式をテイラー展開すると、すごいことがおこるんです。
E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2
↓
テイラー展開(公式を使います)
↓
E = m0c2 + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
この式・・・もう一度書きますから、よーくみてください。
E = m0c2 + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
v<<cのとき、右辺の第三項以降は実はほぼゼロになるので薄くしました。
すなわち
時速1000kmぐらいまでの通常のスピード(v<<c)のときには、運動中の総エネルギーは静止質量m0を用いて、次のようにあらわせるんです。
E = m0c2 + (1/2) m0v2
ジャ━(ノ∀`〃)ゞ━ン♪
これが、
運動中の総エネルギーを、静止質量 m0 を用いてあらわした式
です!!!(ただしv<<c)
残念ながら
E = m0c2
の式にはなりませんでしたね。
でも・・・
気がつきましたか?( ̄ー ̄)ニヤリ
この式の第二項は、有名なニュートン力学の運動エネルギーの式
運動エネルギー = (1/2) m0v2
になっています!
そして・・・
第一項のm0c2は、実は
次のページで解説していますが、運動していない物体(静止物体)の
静止エネルギー = m0c2
なんです。
つまり、アインシュタインの式
E2 = (m0c2)2 + (pc)2
は、v<<cのときには、
E = m0c2 + (1/2) m0v2
つまり、
(総エネルギー)=(静止エネルギー)+(運動エネルギー)
になる・・・
ということ。
わかりやすくいうと、そんなに速くない運動(v<<c)の世界においては、
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(運動エネルギー)2
の式にある各項の2乗がはずれて
(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(運動エネルギー)
とあらわせる・・・
ということです!(注1)
結局・・・
ニュートン力学の範囲(v<<c)においては、運動によって変化しないエネルギー 「m0c2」をゼロとみなし、運動によって変化するエネルギー部分のみを
力学的運動エネルギー = (1/2) m0v2
として認識していたのですね!
すごいと思いませんか?
運動エネルギーの式にくっついてくる係数(1/2)は何かと思ったら、実は相対性理論をテイラー展開した時にでてくる係数だったわけです・・・
しかも運動エネルギーって正確には、
(1/2) m0v2 より、ちょっとだけ大きい、
(1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
だったんです!
運動エネルギー = (1/2) m0v2 というのは実は概算だったわけで、ニュートンの式はちょっとだけ運動エネルギーを過小評価している・・・
一歩すすんだ理解です(*^ー゚)b
アインシュタインの総エネルギーの式
E2 = (m0c2)2 + (pc)2
から、ニュートン方程式である
運動エネルギー = (1/2) m0v2
が導けるなんて・・・
ニュートンの当時は、運動に関係した「力学的エネルギー」のみが観測可能であり、まさか物体がそこに存在するために必要なエネルギー(m0c2)があるなんて・・・天才ニュートンをしても思いもつかなかったというわけですね!
なんで E = (1/2)mc2 じゃないんだろ・・・?(´ヘ`;) なんて考え悩んでいる人も、これですべて解決ですね('v`b)。
次回は、静止している物体の総エネルギーについて解説します。続きをお楽しみに。
(つづき)
E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 3
(もどる)
E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 1
・‥…━━━☆
(注1)
Momentum energy(運動エネルギー)と、Kinetic energy(運動エネルギー)の関係を図示してみます。
Momentum energyとKinetic energyを両方とも「運動エネルギー」とよぶことが気になるならば、
ここは、
物体の速度が光速より十分に遅い場合
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(Momentum Energy)2
の式にある各項の2乗がはずれて
(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Kinetic Energy)
となる・・・
と、読んでください。
図からわかるように、
物体の速度が光速より十分に遅い場合(=三角形の高さが十分に低い場合)、
相対論的運動エネルギーは、古典的運動エネルギーで近似できます。
つまり、運動エネルギーを次のように、
古典的運動エネルギー(Classical Kinetic Energy)=(1/2) m0v2
相対論的運動エネルギー(Relativistic Kinetic Energy)=(1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・
と2種類認めれば、物体の速度が光速より十分に遅い場合には
(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Classical Kinetic Energy)
が成り立ち、
(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Relativistic Kinetic Energy)
は常になりたつといえます。
(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(Momentum Energy)2
も常に成り立ちます。
また、次の図からも明らかなように、いわゆるローレンツ因子(γ)とは、直角三角形の底辺に対する斜辺の長さにすぎません。
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