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2015年5月 1日 (金)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 2

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/timespace.jpg

1.運動している物体(静止質量m0、運動中の質量m、速度=v)

まず

運動している物体の総エネルギーを計算してみましょう。

運動中の物体の質量 =m、速度 =vのとき、運動量 p は、

p = mv

であらわされます。

 

また、アインシュタインの相対性理論によると、運動中の物体の質量 m と静止質量 m0 には

m = m0/(1 – v2/c2)1/2

の関係があります。

(えっ?質量って運動中と静止してるときで違うの?とか、運動中の物体の質量なんて、どうやって測るの?という質問はアインシュタインさんにきいてください(→

 

これらを前述の「総エネルギーの式」に代入します!

そうすると・・・

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

E2 = m2(1 – v2/c2)c4 + (mv)2c2

E2 = m2c4 – m2v2c2 + m2v2c2

E2 = m2c4

E = mc2  ← (v^ー゜)ヤッタネ!!

 

つまり

静止質量 m0 のかわりに

運動質量 m を使うと

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

の式が

E = mc2

となることがわかります!

\(^o^)/

 

このように、

運動している物体では、運動中の質量 m を使うと、あの有名な「E = mc2」の式になります。

 

え?でも、運動中のエネルギーを表す式なのに、式の中に速度 v が入っていない・・・?

なぜでしょう?

はい。相対性理論によると、速度 v に応じて運動質量 m が増加します。つまり、速度 v は質量 m に含まれてしまっているんですね!

 

ちなみに

この運動中の物体の総エネルギーを、あえて静止質量 m0 を用いてあらわすと、びっくりするような式になります。

それは

E = m0c2

ではありません(・oノ)ノ

 

上記で得られた

E = mc2

に、アインシュタインによる運動中の物体の質量 m と、静止質量 m0 の関係式

m = m0 /(1 – v2/c2)1/2

を代入して得られた式・・・

E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2

これが

運動中の物体の総エネルギーを、その物体の静止質量 m0 を用いてあらわした式になります!

 

え?

全然びっくりできないって?

いえいえ!

実は・・・

この式をテイラー展開すると、すごいことがおこるんです。

E = m0c2/(1 – v2/c2)1/2

   ↓

テイラー展開(公式を使います)

   ↓

E = m0c2 + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

 

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

この式・・・もう一度書きますから、よーくみてください。

E = m0c2 + (1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

v<<cのとき、右辺の第三項以降は実はほぼゼロになるので薄くしました。

すなわち

時速1000kmぐらいまでの通常のスピード(v<<c)のときには、運動中の総エネルギーは静止質量m0を用いて、次のようにあらわせるんです。

E = m0c2 + (1/2) m0v2

ジャ━(ノ∀`〃)ゞ━ン♪

これが、

運動中の総エネルギーを、静止質量 m0 を用いてあらわした式

です!!!(ただしv<<c)

残念ながら

E = m0c2

の式にはなりませんでしたね。

でも・・・

気がつきましたか?( ̄ー ̄)ニヤリ

この式の第二項は、有名なニュートン力学の運動エネルギーの式

運動エネルギー = (1/2) m0v2

になっています!

そして・・・

第一項のm0c2は、実は

次のページで解説していますが、運動していない物体(静止物体)の

静止エネルギー = m0c2

なんです。

つまり、アインシュタインの式

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

は、v<<cのときには、

E = m0c2 + (1/2) m0v2

つまり、

(総エネルギー)=(静止エネルギー)+(運動エネルギー)

になる・・・

ということ。

わかりやすくいうと、そんなに速くない運動(v<<c)の世界においては、

(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(運動エネルギー)2

の式にある各項の2乗がはずれて

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(運動エネルギー)

とあらわせる・・・

ということです!(注1)

 

結局・・・

ニュートン力学の範囲(v<<c)においては、運動によって変化しないエネルギー 「m0c2」をゼロとみなし、運動によって変化するエネルギー部分のみを

力学的運動エネルギー = (1/2) m0v2

として認識していたのですね!

すごいと思いませんか?

運動エネルギーの式にくっついてくる係数(1/2)は何かと思ったら、実は相対性理論をテイラー展開した時にでてくる係数だったわけです・・・

しかも運動エネルギーって正確には、

(1/2) m0v2 より、ちょっとだけ大きい、

(1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

だったんです!

運動エネルギー = (1/2) m0v2 というのは実は概算だったわけで、ニュートンの式はちょっとだけ運動エネルギーを過小評価している・・・

一歩すすんだ理解です(*^ー゚)b

アインシュタインの総エネルギーの式

E2 = (m0c2)2 + (pc)2

から、ニュートン方程式である

運動エネルギー = (1/2) m0v2

が導けるなんて・・・

ニュートンの当時は、運動に関係した「力学的エネルギー」のみが観測可能であり、まさか物体がそこに存在するために必要なエネルギー(m0c2)があるなんて・・・天才ニュートンをしても思いもつかなかったというわけですね!

 

なんで E = (1/2)mc2 じゃないんだろ・・・?(´ヘ`;) なんて考え悩んでいる人も、これですべて解決ですね('v`b)。

 

次回は、静止している物体の総エネルギーについて解説します。続きをお楽しみに。


(つづき)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 3

(もどる)

E = mc2の式 アインシュタインの特殊相対性理論 一歩すすんで理解する 1


‥…━━━☆

(注1)

Momentum energy(運動エネルギー)と、Kinetic energy(運動エネルギー)の関係を図示してみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/new1_20190709231201.png

Momentum energyとKinetic energyを両方とも「運動エネルギー」とよぶことが気になるならば、

ここは、

物体の速度が光速より十分に遅い場合

(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(Momentum Energy)2

の式にある各項の2乗がはずれて

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Kinetic Energy)

となる・・・

と、読んでください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/new1_20190709231201.png

図からわかるように、

物体の速度が光速より十分に遅い場合(=三角形の高さが十分に低い場合)、

相対論的運動エネルギーは、古典的運動エネルギーで近似できます。

つまり、運動エネルギーを次のように、

古典的運動エネルギー(Classical Kinetic Energy)=(1/2) m0v2

相対論的運動エネルギー(Relativistic Kinetic Energy)=(1/2) m0v2 + (3/8) m0v4/c2 + (5/16) m0v6/c4 + ・・・(省略)・・・

と2種類認めれば、物体の速度が光速より十分に遅い場合には

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Classical Kinetic Energy)

が成り立ち、

(総エネルギー) = (静止エネルギー)+(Relativistic Kinetic Energy)

は常になりたつといえます。

(総エネルギー)2 = (静止エネルギー)2 +(Momentum Energy)2

も常に成り立ちます。

また、次の図からも明らかなように、いわゆるローレンツ因子(γ)とは、直角三角形の底辺に対する斜辺の長さにすぎません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/einstein-triangle.png

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