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2021年3月18日 (木)

【図解】イメージで理解する線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field10.png


線積分とは2変数関数の積分です。

2変数関数は、xyz座標(三次元)に描かれた面(二次元)です。

スカラー値関数(Scalar valued function)とベクトル値関数(Vector valued function)に分類されます。

線素(Line element)にも、線素スカラー(Line element scalar)、線素ベクトル(Line element vector)があります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral144_20210316162501.png

線積分は、これらの組み合わせによって、次の4つを区別できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral100.png

これらの線積分は、何が違うのかというと、出力される結果が違います。出力の違いに注目してまとめると以下のようになります(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral101.png

いちばん上が、いわゆるふつうの線積分です。

非常に紛らわしいのが一番下の線積分(接線線積分)です。

どちらもスカラー値(数字)を返します。

本記事では特にこの(線積分と接線線積分の)違いについて解説します。

 


まずは・・・ふつうの線積分から説明しましょう。

スカラー値関数(Scalar valued function)に対して積分します。

スカラー値関数(Scalar valued function)とは、以下のような関数です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

スカラー値関数(Scalar valued function)のイメージは、下記のような3次元空間に浮かぶ「曲面」です(数学者にはこういうグラフが漫画にみえるという話は ⇒ こちら)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral108.png

線積分を、このようなスカラー値関数(Scalar valued function)に対して行うわけです。

たとえば、上記のスカラー値関数(Scalar valued function)と線C:y = x との線積分の結果は、以下の黄色の部分の面積になります(0≤x≤1の範囲で線積分した場合(注2))。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20210318144401.png

青い線C:y = x と局面にはさまれている領域です。

これを式であらわすと

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral104.png

です(注2)。

線Cはy=xである必要はありません。

たとえば線C:y = x2 との線積分(範囲:0≤x≤1の範囲)の答えは下図の黄色部分の面積です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/2_20210318144401.png

これを式で表すと、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral105.png

です(注3)。

このように、線積分の結果(面積)は沿う線によって異なるのがふつうです。

これがふつうの線積分のイメージです。

 


では、接線線積分のイメージはどういうものでしょうか?

接線線積分は、ベクトル値関数(Vector valued function)に対して行います。

ベクトル値関数(Vector valued function)とは、たとえば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

という関数です。この関数のイメージは下図のようなベクトルの集合(ベクトル場)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral30.png

グラフ上のすべての点に対して2つの値が設定されているのです(スカラー値関数では1つの値)。

このベクトル場に対して、たとえば線C(y=x)にそった線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral106.png

を考えるのが接線線積分です。

内積の記号「・」が使われているのは、ベクトル値関数(Vector valued function)と線素ベクトルのどちらもベクトル同士だからです。

(同様に外積の記号を使えば、ベクトル値関数(Vector valued function)と線素ベクトルの(ベクトル同士の)外積の積分を考えることもできますが、この記事では扱いません)

たとえば範囲0≤x≤1の接線線積分であれば、計算式は以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral130.png

そのイメージは、接線ベクトル線素がその場その場のベクトルとの内積をとりながら、下図のベクトル場(上図を拡大しています)を、(0, 0)から(1, 1)に移動したときの内積の総和です(注4)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/3_20210318104301.png

といわれても、ベクトル場で内積をとりながら移動する・・・このイメージはわかりにくいです。

よくみると

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

の部分は先ほどのスカラー値関数(Scalar valued function)の線積分になっており、前述した3Dイメージが可能ではないでしょうか。

ただし、スカラー線素がdsではなく、dxやdyとなっている点に注意します。

つまり・・・

スカラー線素dsを使ったふつうの線積分(注5)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral109.png

を考えると、そのイメージはスカラー値関数(2x + y)があらわす面と、線 (y = x)に挟まれた下図の黄色の部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/5_20210318132001.png

この黄色のエリアをxz平面に投影したもの(面積)が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral145_20210316172101.png

です。イメージは下図の通りです(グリーンの三角形部分)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/6_20210318132001.png

これがdsに沿った線積分と、dxに沿った線積分の違いのイメージです。

同様に、線積分(注6)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral111.png

のイメージは、スカラー値関数(x - y)があらわす面と、線 (y = x)に挟まれた下図の黄色の部分です。ちょうど重なって線状になっていて面積はゼロです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral159.png

このエリアをyz平面に投影したもの(面積)が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral146_20210316172101.png

です。下図のグリーン部分です・・・線状でほとんどみえませんが・・・面積はゼロです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral160.png

これがdsに沿った線積分と、dyに沿った線積分の違いのイメージです。

結局、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

とは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral133.png

をxz平面へ、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral134.png
をyz平面に投影した両者の投影面積をたしたものです(注4)。

面白いことに、この和は、"とある曲面"に描かれた"とある線分"の始点と終点の高さの差(黒矢印の長さ)に一致します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/9_20210318120501.png

この曲面はなんだ?

という声が聞こえてきそうですが、接線線積分の対象となったベクトル値関数

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

を"とある方法"で積分して得られたスカラー値関数(Scalar valued function)です。

"とある"ばかりですみません。詳しくは後述します。

 

ベクトル値関数(Vector valued function)に対する接線線積分でも、積分に使う線Cは自由に選ぶことができます。

たとえば線C(y = x2)に沿った線積分は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral107.png

です。線C(y = x2)に沿って、0≤x≤1の範囲で線積分した結果は、ベクトルとの内積をとりながら(0, 0)から(1, 1)に移動した場合の内積の総和です(注7)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/4_20210318110301.png

これも先ほどの3Dイメージで考えてみましょう。

考えるのは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral132.png

です。特に、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

の部分は、スカラー値関数(Scalar valued function)の線積分になっています。

ただし、スカラー線素がdsではなく、dxやdyとなっている点に注意します。

まず、スカラー線素dsによるふつうの線積分(注8)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral113.png

を考えます。そのイメージは下図の通りです(黄色のエリア)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/11_20210318124401.png

これをxz平面に投影したもの(面積)が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral147_20210316172101.png

です。イメージは下図です(グリーンの部分)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/12_20210318151701.png

これがdsに沿った線積分と、dxに沿った線積分の違いのイメージです。

次に、線積分(注9)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral115.png

を考えます。そのイメージはここ(下図の黄色部分)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/13_20210318125501.png

これをyz平面に投影したもの(面積)が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral148_20210316172101.png

です。そのイメージは下図のグリーン部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/14_20210318132201.png
これがdsに沿った線積分と、dyに沿った線積分の違いのイメージです。

したがって、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

の意味とは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral133.png

をxz平面へ、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral134.png
をyz平面に投影した両者の面積をたしたものに相当します。

これが

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral132.png

の答えになります(注7)。

面白いことに、この計算結果は、下図の曲面に描かれた線分(黄色の線)の始点と終点の高さの差(黒矢印の長さ)に一致します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/10_20210318120501.png

この曲面は、ベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

をある方法(注10)で積分して得られたものです。

その式は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

です。どこかでみたことありますね?

 


~考察~

実は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral130.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral132.png

の接線線積分の結果が一致したのは偶然ではありません。

 

理論があるのです。

どういうことかというと、

ベクトル場の線積分(接線線積分)は、スカラー場の高低差になるのです。

ただし、ベクトル場(ベクトル値関数 F )とスカラー場(スカラー値関数 F )との間に

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral126.png

という関係が成り立つ場合の話です・・・

本記事の例の場合は、スカラー値関数(Scalar valued function)は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

ですので、これに∇を作用させてみると(2変数関数の微分を∇といいます)・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral128.png

となり、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

ですから、たしかに

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral127.png

が成り立っています。

 

逆に考えると、ベクトル値関数(Vector valued function)の接線線積分を計算するときに、先にベクトル値関数(Vector valued function)をスカラー値関数(Scalar vakued function)に変換してしまうことができれば、スカラー値関数(Scalar valued function)の式にxとyの値(始点の値と終点の値)を代入するだけで接線線積分の答えが得られます。

つまり、線積分とは言いながら、その計算結果は、線(経路)に依存せず、始点と終点のxとyの値だけで決まります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/15_20210318133101.png

 


 

(注1)それぞれの計算の仕方は以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral103.png

 

(注2)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral135.png

 

(注3)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral154.png

(注4)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral153.png

(注5)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral139.png

(注6)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral152.png

(注7)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral151.png

 

(注8)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral149.png

 

(注9)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral155.png

(注10)

ベクトル場

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https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral121.png

と積分するとこの関数を得られます。つまり・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral124.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral125.png

です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral127.png

このときのスカラー値関数「F」をベクトル値関数「F」のスカラーポテンシャルと言ったります。

イメージでは、これがスカラー値関数(Scalar valued function)が示すスカラーポテンシャルです。

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スカラーポテンシャルを微分して得られたベクトル値関数(Vector valued function)が示すベクトル場が下図です。

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スカラーポテンシャルとそのベクトル場を互いに重ね合わせてみると、下図のように直交します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field9.png

スカラーポテンシャルをZ軸方向からみるとスカラーポテンシャルの等高線になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field8.png

 

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral169.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral173.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral172.png

スカラーポテンシャルを等高線だと考えると、接線線積分の答えは、横切った等高線の本数に一致します。

ベクトル場とスカラーポテンシャルの関係は、反変ベクトル共変ベクトルの関係に相当します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field9.png

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反変ベクトル場をスカラーポテンシャルを介さずに、一気に共変ベクトル場に変換すればこうなります。スカラーポテンシャルとベクトル場、共変ベクトル場の関係はこうしてみるとよくわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral158.png

ベクトル場が示す方向は、スカラーポテンシャル(空間に浮かぶ曲面)のその場その場の最も急峻な方向を示していると言えます。

 

2021年2月19日 (金)

たぶんこの世で3番目ぐらいにやさしいテンソルの話 ~具体例をみてみる編~

テンソルの解説では、めったにみない具体例なテンソルの作り方を解説します。もしかしたらこんな解説、世界初?(苦笑)

ちなみに、記事で扱うテンソルは基本中の基本、2階のテンソルです。

なんでこんな解説を試みたのかというと・・・「テンソルの具体的な作り方」をみれば、「テンソルとは何か?」を感じることができるのでは?と思ったからです。

ステップ1〜15にわけました vヾ(´∀`○)ノ♪


ステップ1

次のような2つのベクトル(V1とV2)を用意します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor20.png

ベクトルV1

2 3

ベクトルV2

6 -1

このベクトルV1とV2からテンソルをつくることにします。

単に成分同士を掛け合わせるだけ(テンソル積)です。

すると・・・

12 -2
18 -3

というテンソルができます。

しかし、これがほんとうにテンソルかどうか、正規直交座標のままではわかりません。

そこで・・・

 


ステップ2

まず、正規直交座標を「斜交座標1」に変換します。

これがテンソル解説の常套手段です。

ここでは、新しい斜交座標1の基底を以下のように設定してみましょう。

正規直交座標

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor22.png

斜交座標1

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor23.png

正規直交座標の基底ベクトルを(1,0)と(0,1)とすると、斜交座標1の基底ベクトルは(2,1)および(-0.5,0.25)となるような新しい座標です。

すると・・・ベクトルV1とV2の成分表示も変化します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor20_20210725002001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor21_20210725002001.png

どのように変化するかというと、ベクトルの座標変換公式(後述)にしたがって・・・

ベクトルV1については、

反変表示は

2 4

共変表示は

7 -0.25

に変換されます。

反変表示、共変表示がよくわからないという人はこちらをご覧ください ⇒ 【図解】共変ベクトル・反変ベクトル。斜交座標では、2種類の表示があると思ってもらえば、ここではことたります。

 

同様に、ベクトルV2については、

反変表示は

1 -8

共変表示は

11 -3.25

に変換されます。

 

ベクトルV1とV2の成分変換は、以下の成分変換行列にしたがいます(公式があります)。

0.25 0.5
-1 2

また、もとの正規直交座標系の計量テンソルを

1 0
0 1

とすると、斜交座標1の計量テンソルは

5 -0.75
-0.75 0.3125

と決まります(公式があります)。

 


ステップ3

これらの斜交表示されたベクトルV1とV2から、テンソルをつくりましょう。

単に成分同士を掛け合わせるだけ(テンソル積)です。

斜交座標1でのベクトルV1とV2の表示を再掲します。

ベクトルV1の反変表示

2 4

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

 

ベクトルV2の反変表示

1 -8

ベクトルV2の共変表示

11 -3.25

これらのベクトルからつくられるテンソルは以下の4つです。

1.反変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

2.反変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

3.共変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

4.共変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

4種類のテンソルV12が造られました。

でも、この4つ・・・ほんとにテンソルでしょうか?

それを確かめるために・・・

 


ステップ4

さらに新しい「斜交座標2」を設定します。

めんどくさいのですが、こうするのが常套手段なんです。

たとえば、斜交座標1の基底ベクトルを(1,0)と(0,1)とすると、新しい座標ではその基底ベクトルが(2,1)および(1,3)となるような斜交座標2を設定してみます。

斜交座標1

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor23.png

斜交座標2

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor24_20210725014501.png

すると・・・ベクトルV1とV2の成分表示も変化します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor21_20210725002001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor25_20210725014501.png

どのように変化するかというと、ベクトルの座標変換公式(後述)にしたがって・・・

ベクトルV1の反変表示は

0.4 1.2

共変表示は

13.75 6.25

に変換されます。

 

ベクトルV2も、その反変表示は

2.2 -3.4

共変表示は

18.75 1.25

に変換されます。

 

ちなみに、ベクトルV1とV2の成分変化は、以下の成分変換行列にしたがっています(公式があります)。

0.6 -0.2
-0.2 0.4

また、斜交座標1の計量テンソルを

1 0
0 1

とすると、

斜交座標2の計量テンソルは

5 5
5 10

です(公式があります)。

 


ステップ5

このベクトルV1とベクトルV2から新たにテンソルをつくります(これらの新しいテンソルが、さきほど作ったテンソルと同じになるかどうか?を気にしています)。

 

つくられるテンソルは以下の4つです。つくり方は成分同士を単に掛け合わせるだけ(テンソル積)です。

1.反変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

2.反変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変共変テンソルV12(新)

7.5 -0.5
22.5 1.5

3.共変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変反変テンソルV12(新)

30.25 -46.75
13.75 13.75

4.共変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変共変テンソルV12(新)

257.8125 17.1875
117.1875 7.8125

4種類のテンソルV12(新)ができました。

さて・・・

 


ステップ6

考察です。

ベクトルV1とV2から斜交座標1でつくられた

4種類のテンソルV12

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

 

と、斜交座標2でつくられた

4種類のテンソルV12(新)

反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

反変共変テンソルV12(新)

7.5 -0.5
22.5 1.5

共変反変テンソルV12(新)

30.25 -46.75
13.75 13.75

共変共変テンソルV12(新)

257.8125 17.1875
117.1875 7.8125

は、成分が違ってみえます。

 

しかし、元はと言えば、どちらも同じベクトル(V1とV2)からつくられたものです。

なので、同じテンソルのはずです。

であれば、これらのテンソルの間には、座標変換にともなうベクトルの成分変換と同じ理屈で、座標変換にともなうテンソルの成分変換式が存在し、互いの関係はその変換式に従うはずだ

という話をしています。

あたりまえと言えばあたりまえのような・・・しかし、ここがテンソル理解の要です。

そもそも、そういう成分変換式に従って成分を変換させる数字のセットをテンソルという、という定義もあるぐらいですから。

変換式が存在しなければ、斜交座標1でつくられた

4種類のテンソルV12

と、斜交座標2でつくられた

4種類のテンソルV12(新)

は、同じテンソルではないどころか、そもそもテンソルであることすら否定されます。

で、結論はどうなのかというと、

たしかに、このテンソルV12とテンソルV12(新)の間には、変換式があります。

その変換式は以下のようになります。

 

反変反変テンソルV12 を 反変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

反変共変テンソルV12 を 反変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

共変反変テンソルV12 を 共変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式3

1.2 -0.4 0.6 -0.2
-0.4 0.8 -0.2 0.4
0.6 -0.2 1.8 -0.6
-0.2 0.4 -0.6 1.2

共変共変テンソルV12 を 共変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

変換式の作り方は注1を参照してください。

ここでは、この変換式で本当にテンソルV12の成分がきちんと変換されるのかどうかを確認してみます。

たとえば、斜交座標1の反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

を、変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

に掛け合わせてみると・・・

0.88 -11.36
2.64 -4.08

となります。

これは、確かにベクトルV1とV2のテンソル積から造った反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

と一致しています。これは偶然ではありません。ほかのテンソルV12でもこのようになります。

 

テンソルの定義は、

1.テンソル積で造られたもの

2.変換式で変換できるもの

3.ベクトルに作用させるとベクトルをつくるもの

の3つがありますが、このようにテンソル積で造られたもの(1)は必ず変換式で変換できます(2)。

ここへんを少し詳しくみたい人はこちらをご参照ください ⇒ たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ゆる~く計算してみる編~

 


ステップ7

実は、正規直交座標と斜交座標1の間にも、テンソルの成分を変換する変換式が存在します。以下の通りです(注2)。

 

反変反変テンソルを反変反変テンソルに変換する

変換式1

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

反変共変テンソルを反変共変テンソルに変換する

変換式2

0.5 0.25 1 0.5
-0.125 0.0625 -0.25 0.125
-2 -1 4 2
0.5 -0.25 -1 0.5

共変反変テンソルを共変反変テンソルに変換する

変換式3

0.5 1 0.25 0.5
-2 4 -1 2
-0.125 -0.25 0.0625 0.125
0.5 -1 -0.25 0.5

共変共変テンソルを共変共変テンソルに変換する

変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

変換式のつくりかたについては(注2)をご参照ください。

 

余談ですが、ステップ1で、

ベクトルV1

2 3

ベクトルV2

6 -1

からつくられたテンソル

12 -2
18 -3

に、これらの変換式1~4を掛け合わせると、ベクトルV1とV2から斜交座標1でつくられた4種類のテンソルV12

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

が再現されます。

 


ステップ8

いったん正規直交座標に戻りましょう。

そして・・・

適当な4つの数字のセット

4 -1
5 3

を用意します。

これをテンソルT1とします。

ランダムな数字のセットです。

 

このテンソルT1は、どうやっても、もとの2つのベクトルに分解できません。

なぜならテンソル積(ベクトル⊗ベクトル)によって造られたものではなくランダムな数字のセットだからです。

このようなランダムに造られたテンソルにも、前述の変換式1~4は、使えるのでしょうか?

どのようにすればそれを確認できるでしょう???

それを確かめるために・・・

 


ステップ9

正規直交座標で用意されたテンソルT1

4 -1
5 3

に、ベクトルV1(どんなベクトルでもOKです・・・)

2 3

を掛け合わせてみます。すると、べクトルV3

5 19

がつくられます。

今やったことは、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

という、なんてことはない計算です。

しかし、この計算

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

が、座標系が異なっても成り立つか?を気にしています。

もし成り立てば、先ほどのランダムな数字のセット

4 -1
5 3

がたしかにテンソルであると言えるからです。

どういうことかというと・・・

座標系が変化するとベクトルV1とベクトルV3の成分表示は変化してしまいますよね。それでも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は、成り立つのか?という話です。

いや、テンソルT1の成分表示をそのままにしていては成り立つはずがありません。

なので、この問題は、もし

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

という関係を座標系に依存せず常に成り立たせるためには、テンソルT1を、どのように成分変換すればいいのか?という問題です。

 


ステップ10

正規直交座標を「斜交座標1」に変換してみます。

すると・・・

ステップ2でやったように、正規直交座標におけるベクトルV1

2 3

は、斜交座標1で反変表示

2 4

と共変表示

7 -0.25

になります。

 

正規直交座標のベクトルV3

5 19

は、斜交座標1では反変表示

10.75 33

と共変表示

29 2.25

になります。

 


ステップ11

では、正規直交座標に用意されたテンソルT1

4 -1
5 3

を座標変換すると、どうなるでしょうか?

ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4を掛け合わせればいい気がしますが、一つ問題が。

このテンソルT1はいったい何テンソルなんでしょう?

すなわち、成分変換式1~4のどの変換式を使えばいいのでしょうか?

 

結論を言うと、実は、正規直交座標で作られたテンソルはその種類を区別する必要がありません。

つまり、テンソルT1

4 -1
5 3

は、反変反変テンソルでもあり、反変共変テンソルでもあり、共変反変テンソルでもあり、共変共変テンソルでもあるのです。

正規直交座標では、それらを区別する必要がありません。

なので、テンソルT1

4 -1
5 3

には、テンソルの成分変換式1~4のすべてを作用させることができ、その結果、テンソルT1の斜交座標1表示は下記の4つが得られます。

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

これで座標変換された4種類のテンソルT1が得られました。

 


ステップ12

面白いことに、斜交座標1の

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

を反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

に作用させると、新しいベクトルV3の反変表示

10.75 33

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

2 4

を反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

に作用させると、ベクトルV3の反変表示

10.75 33

が得られます。

 

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

を共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

に作用させると、新しいベクトルV3の共変表示

29 2.25

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

2 4

を共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

に作用させると、新しいベクトルV3の共変表示

29 2.25

が得られます。

 

つまり、斜交座標1でも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は見事に成り立たっている、と言えます。

これは偶然ではありません。

逆に言うと、斜交座標1で

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

を成り立たせるテンソルの変換式は、先ほどの変換式1~4でいいのです。

 


ステップ13

さらに、斜交座標1を「斜交座標2」へ座標変換してみましょう。すると・・・

斜交座標2では、ベクトルV1の反変表示は

0.4 1.2

共変表示は

13.75 6.25

になります。

 

ベクトルV3の反変表示は

-0.15 11.05

共変表示は

60.25 35.75

になります。

 


ステップ14

ステップ6で求めた変換式(テンソルV12の成分表示を斜交座標1から斜交座標2へ変換する変換式1~4)をテンソルT1

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

に作用させてみます。

すると、以下の4つのテンソルT1(新)に変換されます。

反変反変テンソルT1(新)

0.38 -0.86
0.34 1.02

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

共変反変テンソルT1(新)

8.5125 -9.0875
3.2875 -1.5125

共変共変テンソルT1(新)

95.6875 18.3125
48.3125 13.6875

4種類のテンソルT1(新)が造られました。

 


ステップ15

面白いことに、斜交座標2のベクトルV1の共変表示

13.75 6.25

を反変反変テンソルT1(新)

0.38 -0.86
0.34 1.02

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の反変表示

-0.15 11.05

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

0.4 1.2

を反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の反変表示

-0.15 11.05

が得られます。

 

ベクトルV1の共変表示

13.75 6.25

を共変反変テンソルT1(新)

8.5125 -9.0875
3.2875 -1.5125

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の共変表示

60.25 35.75

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

0.4 1.2

を共変共変テンソルT1(新)

95.6875 18.3125
48.3125 13.6875

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の共変表示

60.25 35.75

が得られます。

 

このように、斜交座標2でも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は見事、成り立っています。

これも偶然ではありません。

逆にいうと、やはり

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

を成り立たせるテンソルの変換式は、先ほどの変換式1~4でいいのです。

つまり、変換式1~4は、ランダムなテンソルに対してもそれを適切に成分変換することができます。

 

テンソルにはこのように座標を超越した線型的な性質や作用が認められます。というか、そのような性質や作用をあわせ持つ数字のセットをテンソルというわけです。

専門書では、これらの説明を、記号や添字を使って、ほんの数行で終わらせます。

本記事は、そこのところに、ちょっとしたヘルプ、具体的な解説ができないかな?と思って書いてみました。

書き始めはこんな大変な作業になるとは思いませんでした。計算が思ったよりめんどくさかったです。

たぶん、数学の得意な人が読んだら「ご苦労様・・・」と一笑に付されると思います。もしかしたら、この世で3番目ぐらいに無駄なテンソルの話になってしまったかもしれません・・・(:-))| ̄|_ぐったり

(おしまい)


(注1)

斜交座標1から斜交座標2へのベクトルの成分変換行列

A'

0.6 -0.2
-0.2 0.4

と、その逆行列

B'

2 1
1 3

を用意し、A'⊗A'、A'⊗B'、B'⊗A'、B'⊗B'・・・と、それぞれの成分をひとつひとつ掛け合わせていくと、本文中にも掲載した以下の4つの変換式1~4が手に入ります。

 

反変反変テンソルV12 を 反変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

反変共変テンソルV12 を 反変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

共変反変テンソルV12 を 共変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式3

1.2 -0.4 0.6 -0.2
-0.4 0.8 -0.2 0.4
0.6 -0.2 1.8 -0.6
-0.2 0.4 -0.6 1.2

共変共変テンソルV12 を 共変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

 

(注2)

正規直交座標から斜交座標1へのベクトルの成分変換行列

A

0.25 0.5
-1 2

と、その逆行列

B

2 -0.5
1 0.25

を用意し、A⊗A、A⊗B、B⊗A、B⊗B・・・と、それぞれの成分をひとつひとつ掛け合わせていくと、本文中にも記載した以下の4つの変換式1~4が得られます。

 

反変反変テンソルを反変反変テンソルに変換する

変換式1

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

反変共変テンソルを反変共変テンソルに変換する

変換式2

0.5 0.25 1 0.5
-0.125 0.0625 -0.25 0.125
-2 -1 4 2
0.5 -0.25 -1 0.5

共変反変テンソルを共変反変テンソルに変換する

変換式3

0.5 1 0.25 0.5
-2 4 -1 2
-0.125 -0.25 0.0625 0.125
0.5 -1 -0.25 0.5

共変共変テンソルを共変共変テンソルに変換する

変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

 


余談1

反変共変テンソルは、反変ベクトル表示を異なる座標の反変ベクトル表示に変換するテンソルです。

本文中では、反変共変テンソルT1(新)は、反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

に、変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

を作用させて造りました。

しかし、

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

は、反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

にベクトルの成分変換行列

F

0.6 -0.2
-0.2 0.4

と、その逆行列

F-1

2 1
1 3

を掛け合わせて

反変共変テンソル(新)=(F-1)(反変共変テンソル)(F)

として求めることもできます。

変換式2でも、この方法でも、同じ反変共変テンソル(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

が得られます。

 


余談2

正規直交座標の計量テンソル

1 0
0 1

に、斜交座標1で共変共変テンソルを得る変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

を作用させると、斜交座標1の計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.3125

が得られます。ということは、斜交座標1の計量テンソルは共変共変テンソルだということです。

斜交座標1の基底を新しく

0 1

 

1 0

と定義すれば、斜交座標1の計量テンソルは

1 0
0 1

になります。その計量テンソル

1 0
0 1

に、斜交座標1の共変共変テンソルを斜交座標2の共変共変テンソルに変換する変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

を作用させると、斜交座標2の計量テンソル

5 5
5 10

が得られます。このような観察からも計量テンソルは共変共変テンソルの性質を有していることがわかります。

事実、計量テンソルはテンソル積「共変基底⊗共変基底」で求めることができます。

 


余談3

計量テンソル

5 5
5 10

 

は、ベクトルの成分変換行列の逆行列

F-1

2 1
1 3

 

と、その転置行列

F-1・T

2 1
1 3

 

を、正規直交系の計量テンソル

1 0
0 1

掛け合わせて

計量テンソル=(F-1・T)(F)(正規直交系の計量テンソル)

として求めることもできます。

2021年1月31日 (日)

【図解】極座標基底によるベクトル表示 極座標表示との違い

正規直交座標があるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/16_20210131182401.png

こういう座標では、基底はどこでも同じ大きさと方向をもっています。なので・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/17_20210131182401.png

下図のようなベクトルの大きさと方向を表示しようとすれば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20210131171801.png

どの基底を選んでも

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/18_20210131182401.png

結果は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/19_20210131182401.png

同じになるでしょう。しかし、下図のような極座標では

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/38.png

基底の大きさや方向が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/42_20210205103801.png

ところによってバラバラです。なので、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/40_20210205103801.png

前述のベクトルの大きさや方向を極座標基底で表示しようとすると

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/41_20210205103801.png

どの基底を選ぶかで結果が変わってきます(ベクトルを動かしているような絵が気になる方は座標系の方をズラして動かしている・・・と考えてください)。

たとえばもし、次の基底を選べば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/25_20210131182402.png

前述のベクトル(2,3)は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/26_20210131182401.png

ベクトル(3.23,0.8)と表示されます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/32_20210131225501.png

これが"極座標基底によるベクトル表示"です。

(おしまい)


・・・w(゚o゚)w・・・

ちょっと、結論を急ぎすぎたかもしれません(汗)。もう少し丁寧に説明すると・・・このとき選ばれた "基底の場所" をあらわす極座標が(r,θ)なんです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43_20210205161201.png

まず、この極座標基底(erとeθ)を正規直交基底(exとey)を使って変換します。

考え方は下図を参照ください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31_20210131184701.png

極座標基底(erとeθ)の場所が、正規直交基底(exとey)の原点から(r,θ)だけ離れていることに注意してください。

極座標基底によるベクトル表示とは、

正規直交系のベクトル(A,B)が、この「正規直交基底(exとey)であらわされた極座標基底(er,eθ)」で、どう表されるか?

という問題です。答えは、

(Acosθ + Bsinθ -(A/r)sinθ + (B/r)cosθ)

です(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/polar-translation.png

(A,B)は正規直交座標での表示で(2,3)のような数値の組み合わせ、あるいは(2x+y, x-y)のような関数でも構いません。

前出の図からもわかるように

er = (cosθ,sinθ)= (cosθ)ex + (sinθ)ey

eθ =(-rsinθ,rcosθ)= -r(sinθ)ex + r(cosθ)ey

となるように erとeθ を決定しています。ルール上、erとeθは直交し、erのサイズは「1」、eθのサイズは「r」と決まっています。

たとえば極座標(r,θ)= (2,0.52)を起点とする基底を選ぶと、正規直交系のベクトル(2,3)は・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/32_20210131225501.png

ベクトル(3.23,0.8)とあらわされます(注2)。すなわち、

2ex + 3ey  = 3.23er + 0.8eθ

です。

これは偶然そうなっているのではなく、そうなるようにerやeθを決定しているのです。これが"極座標基底によるベクトル表示"の意味です。

もう一つ例をあげておくと、たとえば正規直交系のベクトル(4,-1)を同じ極座標基底で表示すると、ベクトル(2.96,-1.43)になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/36_20210204023101.png
すなわち

4ex - 1ey  = 2.96er - 1.43eθ

が成立します。

こうすることによって、ベクトル表示を局所極座標上、テンソルとして扱うことができるようになります(テンソルってなに?という方はこちらをご参照ください)。

 

ちなみに・・・

ベクトルを下図のように単純に極座標で表示したものは、"極座標基底によるベクトル表示"ではありません(なので、当然、テンソルにもなりません)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/28_20210131182401.png

注意しましょう(注3)。

 



(注1)

正規直交座標パラメータ(ⅹ,y)から極座標パラメータ(r,θ)への座標変換は、公式に従うと、以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/300.png

ここで

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301.png

ですから・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/302.png

です。結果として、以下の成分変換式が成り立ちます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/318.png

くどいようですが・・・

ベクトル(A,B)は正規直交座標であらわされたベクトルです。

そのベクトルの起点が(x,y)です。この起点(x,y)を極座標表示であらわすと起点(r,θ)です。

その起点に設置されているのが極座標基底(er、eθ)です。

ルール上、erとeθは直交し、erの方向はr方向、サイズは「1」、eθのサイズは「r」と決まっています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43_20210205161201.png

この極座標基底(erやeθ)を使うとベクトル(A,B)はどう表されるのか?という問題です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/26_20210131182401.png

その答えは、

(Acosθ + Bsinθ -(A/r)sinθ + (B/r)cosθ)

です。

ベクトル(A,B)の極座標表示を知りたいのではありません。

 

(注2)

ベクトル(3.23,0.8)は反変表示です。その共変表示は(3.23,3.16)です。したがって、ベクトルのサイズは不変に保たれています。

√(22+32)= √13

√((3.23)*(3.23)+(0.8)*(3.16))=√13

 

(注3)

たとえば、ベクトル(2,3)の極座標表示(r,θ)は(3.61,0.98)、ベクトル(4,-1)の極座標表示(r,θ)は(4.12,6.04)だから・・・

2ex + 3ey  = 3.61er + 0.98eθ

4ex - 1ey  = 4.12er + 6.04eθ

などとしても、そういうerやeθは見つかりません。そもそも極座標表示(r,θ)は ベクトルではありません。極座標表示(r,θ)と"極座標基底(erやeθ)によるベクトル表示"の違いにはくれぐれも注意しましょう。


2021年1月28日 (木)

たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ~ゆる~く計算してみる編~

以前、テンソルについてできるだけ数式を使わない解説を試みましたが、かえってわかりにくい・・・とのご指摘もあり、今回、少しだけ計算式を使って説明してみることにしました。

縮約はでてきません。省略もしません。また、決してxとyと1と2に変換したりしませんのでご安心ください(苦笑)。ただしちょっとびっくりするような式を紹介します。

本解説を読破するために最低必要な事前知識は以下の3つでしょうか・・・。事前にご確認ください。

1.全微分の公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/159.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/70.png

2.全微分の変数変換公式

座標(基底)を変換する場合は、合成関数の微分(いわゆる連鎖律)によって偏微分係数を変換します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/72.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/122.png

3.ベクトルの成分変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.png

この3つが理解できたら準備完了です。


【1日目】

XY座標にふたつのベクトルを用意します。ベクトルV1とV2です。V1=(2,3)とか V2 =(4、-1)とか、なんでも構わないのですけど、ちょっとカッコ悪いので文字表記にします(文字表記は抽象的でイヤだ・・・という人は下記「おまけ」具体例バージョンをご覧ください)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/120.png

そのまま座標軸だけを変換したところ、ベクトルV1とV2の表示は下記のように変換されたとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/125.pngとすると、ベクトル表示の変換は以下の変換式に従っていることになります。つまるところ、ごくふつうの一般的なベクトルの座標変換です(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/119.png

行列でまとめるとこうなります。別にまとめなくてもいいですが・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/123.png

上段がベクトルV1、下段がベクトルV2です。

では、ベクトルV1とV2からXY座標でテンソルV12をつくりましょう。テンソルをつくるのはカンタンで、ベクトルの成分同士を"すべて掛け合わせてならべるだけ"です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/238.png

これでテンソルになります。(8,-2,12,-3)みたいな4つの数字です。同様にRθ座標でもテンソルV12をつくってみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/211.png

できました。

このふたつのテンソルV12、"みため"(=成分)は違いますが、どちらも同じものです。なのでどちらも同じ名前(テンソルV12)でよびました。

ところが。

厳密な専門家たちにとっては、このふたつのテンソル、ほんとうに同じものか?いや、そもそもテンソルなのか?が自明ではありません。

どういうことかというと・・・

もし、このふたつのテンソル(ベクトルV1とV2からXY座標でつくられたテンソルV12と、Rθ座標でベクトルV1とV2からつくられたテンソルV12)の間に規則的な座標変換が成立していれば、それらは確かにテンソルでしょうし、したがって、まぁ両者は同じものといってよいだろう・・・、しかしそれまでは軽々しく同じ名前であらわしたり、そもそもテンソルという敬称で呼ぶなというわけです。

しかし、これらがテンソルであることは数々の専門書ですでに証明済みのことですし・・・

と言いたい気持ちをグッと抑えて、まぁここは、テンソルV12が確かにテンソルであることを確認してみたいと思います。

テンソルV12(Rθ座標)を、ベクトルV1とV2のXY座標成分を使ってあらわしてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/78.png

式を展開すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/79.png

行列を使ってまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/147.png

左辺はテンソルV12(Rθ座標)そのものになりました。最終的に次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

ほらね (o^-‘)bグッ!!

右辺にもテンソルV12(XY座標)が現れ、テンソルV12(XY座標)からテンソルV12(Rθ座標)への変換式になりました。

これが、テンソルV12がテンソルであること(=成分変化が整然と規則的に無機的に生じていること)を証明しています。

どういうことかというと、もし次のように「C」などという余計な項がつくようであれば、それはテンソルではなかった(←座標を超える線型性はないだろう)・・・というわけです(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/237.png

しかしそうではなかったわけですから、テンソルV12(Rθ座標)とテンソルV12(XY座標)はともにテンソルであり、したがってそれらは(成分表示が違うだけで)同一のものとみなしてよい・・・と結論できます。

(注1)

もう少し精密に、というか基底ベクトルを省略せずに記述すると以下のようになります。基底ベクトルが変化すると、ベクトルの成分はどのように変化するのかという式です。何も特別なことはなく、ベクトルを座標変換する際の公式みたいなものです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/304.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/305.png

なお、Rとかθはふつう極座標基底に用いられますが、この記事では単に基底を区別するための文字として使用しています。もちろん極座標基底としても構いません。極座標基底によるベクトル表示についてはこちらをご参照ください。

(注2)

テンソルには、ある座標で

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/296.png

であれば、他のすべての座標で

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/296.png

でなければならないという一丁目一番地ともいうべき決まりがあります。なので変換式に定数Cなどあってはならないのです。

 


おまけ

具体例で考えてみます。

下記のようなベクトルV1とV2を考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector-163.png

ベクトル(2,3)と(4,-1)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/241_20210129233701.png

つづいて座標変換をおこないます。

基底ベクトルが、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/320.png

から

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/321.png

へ、かわったとしましょう。

ベクトルはそのまま動かしません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector-161.png

本座標変換におけるベクトルの変換は以下の式に従うことになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/242_20210129233701.png

すると、新しい座標(Rθ座標)におけるベクトルV1とV2の表示は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/319.png

となります。これで下準備完了です。

では、XY座標でテンソルV12(XY座標)をつくってみましょう。ベクトルV1とV2のXY座標成分をすべて掛け合わせて並べるだけです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/249_20210129233701.png

同様に、Rθ座標で表示されているベクトルV1とV2からテンソルV12(Rθ座標)をつくります。ベクトルV1とV2のRθ座標成分をすべて掛け合わせて並べるだけです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/250_20210129233701.png

この4つの数字を覚えておきます。

つぎに、テンソルの変換式を考えます(以下の行列のことです)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/240_20210129232901.png
ベクトルの座標変換の公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.pngと、今回の座標変換の式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/242_20210129233701.png
の係数を見比べることによって

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/245_20210129233701.png

であることがわかります。これをもとにひとつひとつ計算していくと・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/246_20210129233701.png

です。これをテンソルV12(XY座標)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/249_20210129233701.png

に作用させてみましょう(作用とは、掛け算のことです)。すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/252_20210129233701.png

先ほど得られていたテンソルV12(Rθ座標)https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/250_20210129233701.png

と全く同じものが得られました。偶然ではありません。このことから、ベクトルV1とV2の成分をすべて掛け合わせて作られたテンソルV12は確かにテンソルといえます。

このとき、真ん中の行列

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/253_20210129234401.pngは、テンソルに作用して別のテンソルを作りだしたことになります。このように「テンソルに作用して別のテンソルをつくるもの」をテンソルというテンソルの定義があります。するとこれもテンソルといえます。

 

具体的な説明の方が好みの方は、こちらもご覧ください

 


【2日目】

前述したXY座標でつくられたテンソルV12とRθ座標でつくられたテンソルV12の関係を再掲します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

この式を特殊な方式で書くと、以下のようになります(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/144.png

えっと・・・目が点になっている人が多いと思いますが、この式を信じる信じないはおいといて・・・今から少しずつ式を展開していきますのでその様子をご確認ください。三つの⊗がありますが、まず、両サイドの⊗を処理します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/146.png

次に真ん中の⊗を処理すると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/129.png

最後の⊗を処理すると、最終的に次式を得ます。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

前述したテンソルの座標変換式とまったく同一のものが得られました。

テンソルの座標変換とベクトルの座標変換の係数を比較してみましょう。

テンソルの座標変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/144.png

ベクトルの座標変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/196.png

テンソルの座標変換がベクトルの座標変換に完全に依存していることが見てとれます。ベクトルの座標変換が成り立つ限り、テンソルの座標変換も必ず成立するのです。

(注1)

この形式は厳密ではないかもしれませんし、あるいは、すでに誰かが開発している確かな方法なのかもしれませんが、従来より管理人が個人的に勝手に愛用している方法で、区分行列を一つの成分とみなしながら、クロネッカー積のような積を外側から処理していく方法です。非常に見通しがよく今のところ常に正しい変換行列を得るので利用しています。ただし、決して、正式な場で使用しないでください。


【3日目】

今回は計量テンソルについて考えてみます。計量テンソルの問題とは、正規直交座標で成り立つ

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/174.png

という三平方の定理が斜交座標ではどうなるか?という問題です。専門書では、この式は本当は以下のような形をしていると言います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/92.png

は?って感じです。専門書によると正規直交系では計量テンソルの働きによってdxdyやdydxの項がゼロになっているのだと・・・。どういうことなのでしょう?それを調べるために、まず、全微分の公式を使って、dxとdyを別の基底で書き変えてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/130.png

これらの公式を使って前述の式の右辺を書き変えると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/131.png

さらに展開します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/132.png

係数に注意しながら、次のように変形します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/152.png

行列でまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/137.png

この式を特殊な方法で書くと・・・次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/202.pngさらにまとめていくと・・・ちょっと途中で長くなってしまいますが、次のようになります・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/203.png

最終的にはやや単純化されて以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/204.png次の部分がいわゆる計量テンソルを構成する部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

XY座標からRθ座標への基底変換の式(以下)とよ~く見比べてください。係数が完全に一致しているわけではありませんが・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/157.png

計量テンソルを構成する成分は、基底変換の係数に100%支配されていることがわかると思います。計量テンソル構成する4つの成分は次の式をみればわかります(前述の式を再掲)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/152.png

この式、4つの係数(A B C D)をつかえば、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/153.png

という形になっていることに注目してください。つまり、冒頭の式は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/175.png

と書き変えることができます。(1  0  0  1)とか(A B C D)の部分がズバリ「計量テンソル」です。直交基底のときは計量テンソルが(1  0  0  1)になり、典型的な三平方の定理

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/174.png

となります。


【4日目】

今回は共変ベクトルをふたつ(V1とV2)用意します。そのXY座標での座標表示、Rθ座標表示を以下のように定めます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/162.png

共変ベクトルの成分変換は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.png

ではなく、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/160.png

であることに注意しましょう。ベクトルV1およびV2の成分も、この法則に従い、以下のように変換されるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/164.png

つまり、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/165.png

です。ここからテンソルV12をつくります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/178.png

できました。成分が違いますが両者とも同じテンソルです。その証拠にそれぞれのテンソル成分には以下の関係式が成り立っているはずです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/193.png

式を一度展開してみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/179.png

まとめなおすと以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/177.png

テンソルの成分表示が、基底変換に応じて整然と規則的に変化することがわかります。

これを特殊な形式であらわすと・・・以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/169.png

ベクトルの座標変換公式と見比べてみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/199.png

それぞれの係数比較により、テンソルの座標変換がベクトルの座標変換に完全に依存していることがわかります。また、今回は計量テンソルを構成する成分(以下参照)とも比べてみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

計量テンソルと共変テンソルの密接な関係が見えてきます。

 


【5日目】

今回は、基底を入れて考えてみます。基底を導入すると式が非常に複雑になるので逃げたい気分なんですが、ちょっと頑張ってみます。1日目で考察したベクトルVとV は基底を使えば以下のようにあらわせます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/219.png

ベクトルVとV のRθ座標は、XY座標表示を使って以下のようあらわされます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/306.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/307.png
ベクトルVとV からテンソルV12(Rθ座標)をつくります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/231.png

式を展開します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/310.png

基底の変換には以下の式を適用します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/283.png

これを前述の式に代入します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/309.png
式を部分的に展開し、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/285.png
行列の形にします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/286.png
特殊な形式でまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/287.png

さらにまとめていくと・・・https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/288.png

途中、式がやたらと長くなりますが、最終的には以下のようにまとまります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/290.png

これがテンソルの変換式です。基底をつけるとこのように非常に複雑化します。

ベクトルVとVからつくられるテンソルV12についても同様の考察が可能です。最終的な変換式のみ示します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/291.png

共変テンソルの変換式には、計量テンソルで考察した次の式をそのまま適用できることがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png


おまけ

既出の反変テンソル、共変テンソルの座標変換に加え、混合テンソルについても変換式だけアップしておきます。

 

(2,0)テンソルの座標変換

「反変ベクトル⊗反変ベクトル」としてつくられた反変テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/235.png

 

(0,2)テンソルの座標変換

「共変ベクトル⊗共変ベクトル」としてつくられた共変テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/192.png

 

(1,1)テンソルの座標変換

「反変ベクトル⊗共変ベクトル」としてつくられた混合テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/182.png

 

「共変ベクトル⊗反変ベクトル」としてつくられた混合テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/239.png


 

 

2021年1月26日 (火)

線型性とは?

線型性についてちょっと説明してみます。

正確さを犠牲にしてわかりやすく説明しますので、その点、ご了承ください。


線型性とは・・・

ハンバーガー2個と、チーズバーガー1個の値段が同じだとします。

ハンバーガー3個と、ダブルチーズバーガー1個の値段が同じだとします。

このとき。

もし「チーズバーガー1個とダブルチーズバーガー1個のセット」が、ハンバーガー5個の値段と等しければ「線型性があるな~」と感じるのです。

そう。それだけのことです。

線型性=あたりまえな話=です・・・

日常生活で、ありとあらゆるところにみられるべき「あたりまえ」をわざわざ線型性と言っています。

もし「チーズバーガー1個とダブルチーズバーガー1個のセット」が、ハンバーガー4個と同じ値段なら「線型性がないなぁ・・・」と。

あたりまえの感覚ですよね。

そして。

この関係性が日本だけではなく、アメリカでも成り立っていると「まるでテンソルみたいだなぁ」と感じるわけです。国や通貨の違い(座標)を超えて線型性が保たれているからです。

たとえばハンバーガー1個が日本では100円、アメリカでは1ドルだとしましょう。

このとき。

「チーズバーガー1個とダブルチーズバーガー1個のセット」の値段が日本では500円、アメリカでは6ドルなら・・・「あれ?なんかおかしい」と思うわけです。

テンソルであれば「個の和の変換」と「個の変換の和」が一致するはずです。

「ハンバーガー5個」の値段が6ドルなら線型性は保たれているのかな・・・でも5ドルなら線型性は崩れています。

座標を超えて線型性が保たれていなければテンソルではありません。

テンソルであれば、線型性はどこでも成り立つはずです。インドでも。フランスでも。

そうすると国をまたいだ価格の変換公式とか、つくりやすくなります。

変換公式があてはまらない国では、「あれ?この国の計量テンソルは曲がっているなぁ~」なんて感じる人もいるかもしれません(そんな人はいないか・・・)。そういう国ではちゃんとした値段づけのために共変微分をしてから価値の比較をする必要があります(いや、それも言い過ぎか・・・(汗))。

線型性って、ちょっと難しい響きがありますけれども「常識的」というぐらいの意味で、なんかあたりまえすぎてかえってわかりにくくなっている概念だと思います。

2021年1月20日 (水)

・・・ちょっとだけ共変微分(´~`)

今日、ちょっとだけ変な微分を勉強してみましょう。


次のようなベクトルvを考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301_20210722224201.png
このベクトルvを偏微分すると、以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/298_20210315185001.png

上段がベクトルvのx方向への偏微分

下段がベクトルvのy方向への偏微分

です。

基底ベクトルを使って表現すれば、次のようにもあらわせます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/25.png

まとめると・・・https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31.png

こうなります。これが、ふつうのベクトルの偏微分です。

 

では、共変微分とはどんな微分でしょう?

共変微分を一言で言い表すと、成分(vx、vy)だけではなく、基底ベクトル(ex, ey)も一緒に偏微分する微分です。

まず、先ほどのベクトルv

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301_20210722224201.pngを基底ベクトルを使った形になおします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/302_20210722224201.png

これを基底も含めてまるごと偏微分します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/34.png

上段がベクトルvのx方向への偏微分、下段がベクトルvのy方向への偏微分です。

先ほどのふつうの偏微分と違うのは、

よ~くみると、連鎖律(合成関数の微分)によって成分だけではなく基底ベクトル(ex, ey)も偏微分している点です。

これが共変微分です。

結果だけを書くと・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/40.png

こうなります。上段がベクトルvのx方向への偏微分、下段がベクトルvのy方向への偏微分です。

実質的には、これで共変微分は完了です。式を整理して次を得ます。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/200.png

おわり!!!

・・・といいたいところですが、専門家は、ここからがすごいんです。

このままでは、式の後半に「∂ex」と「∂ey」という基底ベクトルの偏微分が存在しますよね?

基底ベクトル(ex, ey)を含めて偏微分したのであたりまえなんですが、なんと、専門家は魔法のような技を使ってこの「∂ex」と「∂ey」を消してしまいます。

なんでそんなことをするのかというと、最終的に以下のような形にしたいからです(「∂ex」や「∂ey」があるとこうできません)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/294.png
∂ex」や「∂ey」を消してしまう魔法の式は以下のとおりです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/27.png

なんだか見慣れない人もいるかもしれませんが Γ をクリストッフェル記号と言います(ただの数字(係数)だと思ってください(注1))。

この魔法の式を代入後、式を整理すると以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/19.png

かえってわかりにくくなった・・・と感じる人もいるかもしれませんが、完全に基底ベクトル(ex, ey)の「和」の形になっています。見事です。このメリットは計り知れません。

カッコの中身は全部同じ形なので、下記のように書き変えるのが流儀です(共変微分としてよく教科書に紹介されている式はここですね)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/21.png
最終的に、ベクトルの共変微分は次のようにあらわされます。これで正真正銘、目的達成です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/9.png

雑談:

共変微分は共変ベクトル covariant vector の微分というわけではないんですね。はじめてきいたときには管理人も含め、共変ベクトルと関係ある微分?と思ってしまう初学者がずいぶんいると思います。基底(ex, ey )も共に偏微分するので共変微分 covariant derivative と言うみたいです。であれば共偏微分と言ってくれた方が素人的にはわかりやすい気もします。


(注1)

クリストッフェル記号(Γ)の値は計量テンソルgから求めます。gxxは計量テンソルの第一成分、gxyは第二成分、gyxは第三成分、gyyは第四成分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/54.png

計量テンソルには添字が上付きのモノと下つきのものがあります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/55.png

計量テンソルからクリストッフェル記号(Γ)の値を求める式を記しておきます。二次元では8つあります。超めんどくさそうにみえますが、計量テンソルgの値さえわかればすべての値を一発で計算できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/53.png

ためしに、極座標におけるクリストッフェル記号(Γ)の値をひとつだけ計算してみましょう。極座標の計量テンソル(第一成分、第二成分、第三成分、第四成分)は以下の通りです。ただし、極座標ですから(x,y)を(r,θ)に書き換えています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/194.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/61.png

この計量テンソルの情報から次のようなことがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/62.png

これらの情報を利用して、クリストッフェル記号(Γ)の値を計算します。ここでは一つだけ計算しますが、他の記号も簡単に計算できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/67.png

 

(補足)

直交座標や斜交座標のように座標軸が直線の場合、座標全体を通して基底に変化が生じません。したがって基底の偏微分「∂e」は必ずゼロ(Γ = 0)になり消失します(下記)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/25.png

したがって、共変微分の結果はふつうの偏微分の結果に一致します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31.png

ところが、極座標のような場合、基底ベクトルの微分がゼロ(Γ = 0)になりません。

つまり、極座標ベクトルhttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/41.png

を共変微分すると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/195_20210125234101.png

とはならないのです。

実際に極座標ベクトルの共変微分を計算してみましょう。ベクトルをr方向とθ方向に偏微分します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/42.png次の式を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43.png

基底の偏微分をクリストッフェル記号(Γ)で置き換えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/44.png次の式を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/312.png

目的のベクトルは次のように表されます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/48.png

ただし、真ん中の行列の成分は以下の公式から求めます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/311.png

クリストッフェル記号(Γ)を計算し、以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/50.png

このように、クリストッフェル記号(Γ)にゼロ以外の値がはいるため、極座標の共変微分は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/195_20210125234101.pngにはなりません。


自分用メモ

正規直交座標ベクトル(A,B)を極座標基底であらわすと以下のようになる。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/313.pngこのベクトルを極座標に沿って共変微分してみる。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/314.pngより、結果は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/317.pngまたは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/316.png

である。

2021年1月19日 (火)

【図解】計量テンソルと格子定数・・・ちょっとだけ共変微分(´~`)

斜交座標があるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/1_20200225134701.png

こういう斜交座標は、次の3つで定義できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/2_20200225134701.png

赤の長さ、青の長さ、赤と青の間の角度。

これを格子定数といいます。

計量テンソル(the metric tensor)と同じ情報量をもっています。

 


ちょっとだけ共変微分(´~`)

共変微分とは、ベクトルの微分なんですけど、ただの微分ではなく、格子定数(計量テンソル)の微分を取り除いてしまう非常に特殊な微分です。

どういうことかというと・・・

格子定数(計量テンソル)は、上の図のような、座標が平面で、かつ、座標軸が直線であれば、その座標系において、どこでも同じです。

そういう座標で格子定数(計量テンソル)を微分すると、どの方向に偏微分してもゼロになるでしょう。

しかし、もし。

座標が曲面上に描かれていたり(球面座標など)、平面上であっても座標軸が曲がったりしている場合には(極座標など)、格子定数(計量テンソル)の微分が必ずしもゼロになるとは限りません。

なぜなら、そういう場合(座標軸が歪んでいる場合)、格子定数(計量テンソル)は場所から場所によって違うからです。

つまり、斜交定数(計量テンソル)を微分すれば、座標軸の歪みがわかりそうです。

そう考えるのは自然なことです。

これが共変微分 ∇のアイデアにつながります。

 

ごくごく簡単に説明してみると・・・

(専門家の先生には突っ込みどころ満載かもしれませんが(汗))

ある座標上に複数のベクトルが並んでいるとします(ベクトル場をイメージできれば最適です)。

それらのベクトルは、ベクトルの起点ごとに違う大きさや方向をもつベクトルにみえるかもしれません(注)。

それらの変化を知るために微分します(微分可能な状態だとします)。

微分すれば変化がわかるのですから、ベクトルの微分 ∂(V) が0であればベクトルに変化なし、 ∂(V) が0でなければベクトルに変化あり・・・

と判断するところです。

ところが、格子定数(計量テンソル)自体が変化している場合にはそうはいきません。

その場合には、ベクトルの微分 ∂(V)から格子定数(計量テンソル)の変化の影響を取り除く必要があります。

そこで、斜交定数(計量テンソル)の微分を Γ(ガンマ)としましょう。

すると、

∂(V)- Γ(ガンマ)

の値が、正味のベクトルの変化に相当することになります。

このようにベクトルの微分 ∂(V)から、斜交定数(計量テンソル)の微分 Γ(ガンマ) を除外(キャンセル)する微分を共変微分 ∇といいます。

共変微分 ∇ = ∂(V)- Γ(ガンマ)

です。

Γ(ガンマ) の符号によっては、

共変微分 ∇ = ∂(V)+ Γ(ガンマ)

と書かれることもあります。

共変微分 ∇ の結果、

共変微分 ∇ ≠0であればベクトルはほんとうに変化しています。

共変微分 ∇ =0なら、ベクトルは変化しているようにみえても変化していません。みためが違うだけです。斜交定数(計量テンソル)の影響を取り除くと、同じ大きさと方向を持っています。違ってみえるのは、斜交定数(計量テンソル)が違うから、すなわち、面が曲がっているか、座標軸が曲がっている・・・ことがわかります。

共変微分 の具体的なプロセスについてはごくごく簡単にこちらで説明してみましたのでご参照ください。

ちなみに共変微分 ∇ はテンソルで、座標軸の影響をうけません。すなわちある座標系で共変微分 ∇ が0なら、あらゆる座標系で0になります。∂(V) Γ(ガンマ) もテンソルではないのに、両者を足すとテンソルになるというのはなんかとても不思議です。

注:たとえばベクトルの式 V=(2x, 3y)であれば、下図のように、ベクトルの方向や大きさが、一見、座標点ごとに違ってみえますよね。でも、それほんとに違うの?格子定数のせいじゃないの?という疑問に答えるのが共変微分です。下図をみて、すべての矢印はほんとうは全部同じ方向、同じ大きさを向いているのではないか?土台になっている座標面のほうが湾曲してるんじゃない?という問いかけがテーマになっています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/2x3y.png

 

 

リンク:アインシュタインの一般相対性理論

 

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2021年1月10日 (日)

【図解】共変ベクトル・反変ベクトル

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空間に浮かんでいる矢印。

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座標軸を置いてみます。すると・・・その矢印の大きさや方向をあらわすことができます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector1.png

この座標軸がくるっと動いても・・・

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矢印は動きません。

こんな風に、座標軸の動きに影響をうけない「もの」をベクトルとかスカラーとかテンソルと言うなら、この赤い矢印はベクトルと呼んでもいいのではないでしょうか。

少なくとも、座標軸と一緒に動いてしまうものはベクトルとは言えません。

ベクトルとは、座標系に依存しない座標を超越した存在です。

これが前提です。

 

重要なテーマなので繰り返します。ベクトルは座標軸がうごいても(それだけでは)、まったく"回転しない”し、”歪まない"し、"動きません"。このことを肝に銘じておいてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector6.png

 

さて、ここからは2次元世界で考えます。今、平面上に下図のようなベクトルがあるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector1.png

このベクトルの大きさと方向を表現したいなら、何か座標軸を与えるのが流儀です。適当に、x軸、y軸をとります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector2.png

べつにx軸が水平でなくてもいいのです。この座標のとりかたは、自由です。直交でなくても。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector3.png

ま、しかし・・・ここでは、とりあえずベクトルの端を原点に合わせます。基底(目盛り)を2方向(上下方向、左右方向と二次元ですから2方向)とると、ベクトルの2つの成分が決まります。基底(目盛り)の大きさは自由ですが、1つの目盛りを「1」とします。

こうやってはじめて、このベクトルを、"この座標系"では(2,3)とあらわすことができます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector144.png

では、下図のような基底だったら、どうなるでしょう?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector6.png

この赤い矢印がそれぞれサイズ「1」の基底だとすると、この座標ではベクトルは、ベクトル(0.6,0.8)のように表示されることになります(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector7.png

このベクトル(0.6, 0.8)は、さきほどのベクトル(2, 3)と同じベクトルです。

・・・よね?

こういわれるとわからなくなる人がいるようですが、"ベクトル"とはこの図の緑の矢印自体の名前です。

成分の内容表示が(2, 3)から(0.6, 0.8)へと変わってしまいましたが、ベクトル(緑色の矢印)そのものが変化したわけではありません。

基底が変わってしまったために、同じベクトルなのに成分表示が変化してしまっただけです。

これを、

(2,3)=(0.6,0.8)

と、表現してしまうと、おかしなことになります。

きちんと表そうと思えば、基底も含めて、

2(1,0)+3(0,1)=0.6(2,1)+0.8(1,3)

みたいに書かなければいけません。

 

このように・・・

座標軸(基底)が変わったとき、いったい、どのように成分を変化させれば、ベクトルを動かさずにあらわし続けることができるだろうか? ⇐こういうのがベクトルやテンソルの勉強です。

 

ちなみに、上の図で、描写されたような矢印ベクトルを、反変ベクトルといいます(基底のサイズが大きくなるにつれて、表示される成分の値が小さくなるので反変というそうです)。「反」という字がついていますが、もっとも素直なベクトルの表示方法です。みなさんが中学・高校で習ったベクトルはすべて反変ベクトルです。

また、この反変ベクトルを表示するときに基準となった基底(前述の青い基底や赤い基底)を共変基底といいます。みなさんが中学・高校で習った基底はすべて共変基底です。

そして、共変基底でベクトルのサイズと方向をあらわすことを反変表示といいます。みなさんが中学・高校で習ったベクトル表示はすべて反変表示です。

なんで、今、名前にこだわっているのかというと・・・共変基底には、その対になる反変基底が存在するからです。

(専門書では、共変基底を ex、ey、反変基底を εx、εy などと記号であらわして解説をすすめることが多いですが、本記事ではなるべく記号を使用しないようにしています)

 

反変基底と共変ベクトル

さぁ、ここから、少しややこしい話になります。たとえば上図で示した赤い共変基底について、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector92.png

その反変基底がどこにあるかというと・・・ここにあります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector9.png

この黄色い点線の上です。黄色い点線は、互いに赤い共変基底と直交しています。わかりますか?どことどこが直交しているのか、よ~くみないとわかりませんよ。そして・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector10.png

これが反変基底です。大きさは、赤い共変基底(直交していないほう・・・)との内積が「1」になるように決定しています(注1)。

(反変基底は、わざわざ作図しなくても、勉強すれば共変基底から計算で求めることができるようになります)

ところで・・・

反変基底からみた緑の矢印ベクトルのようすは次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector11.png

このベクトルを反変基底を使ってあらわしてみましょう。すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector12.png

ベクトル(7,11)になります。

このように、反変基底でベクトルのサイズと方向をあらわすことを共変表示といいます(共変基底のサイズが大きくなるにつれて反変基底が小さくなり、結果として表示される成分の値が大きくなるので共変というそうです)。

 

実はこの共変表示(7,11)は、計量テンソル

5 5
5 10

を使えば、さきほどの反変表示(0.6,0.8)から一発計算で求めることができます。

 

共変ベクトルの正体

ここまでは、他のサイトやテキストで解説されている内容と大差ないかもしれません。

でも、

みなさん、共変ベクトルを図示せよ・・・といわれたら、どんなベクトルを思い浮かべますか?

以下に示すような「緑の矢印」(既出)でしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector65.png
いえ、これではちょっとダメなんです。世の中の解説の多くはここで混乱していると思います(・・・でなければ、読者を混乱させています(^~^;))。

いやいやおまえも、ついさっき、これを「共変表示」と言ったではないか!とお叱りをうけそうですが、ベクトル(7, 11)・・・は、たしかにベクトルの共変表示です。しかし、共変ベクトルを図示したものではありません。

ここがややこしいところで、ベクトル(7, 11)をそのまま矢印ベクトルとして図示してしまっては、共変ベクトルを図示したことにならないのです。反変基底を使った反変ベクトル・・・みたいな話になってしまいます。

 

いつものように結論から述べましょう。

共変ベクトルをあえて図示すると、次の水色の等高線(みたいな縞模様)になります(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector71.png

え、これがベクトル?

という声が聞こえてきそうですが・・・はい、これが共変ベクトルの正体です。実は、共変ベクトルは矢印ベクトルではうまく図示できません。

共変ベクトルは、元になった反変ベクトル(下図)https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector1.png

とは、似ても似つかぬ姿をしています。

ぜんぜん似ていませんが、しかし、もちろんお互いに関係があります。

まず、方向です。

反変ベクトルの方向と共変ベクトル(上の図の等高線(みたいな縞模様))の方向は互いに直交します。平行というべきかもそれません。要するに、矢印の軸が縞模様の線と直交します。

次にサイズです。

反変ベクトルのサイズと等高線(みたいな縞模様)の間隔には、

1/反変ベクトルの成分 = 等高線(のような縞模様)の間隔

という関係があります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector35.png

作図的には、反変ベクトルの反変表示は(0.6,0.8)ですから、反変基底の

1/0.6 = 1.67倍

1/0.8 = 1.25倍

となるように、等高線(のような縞模様)の間隔を決定します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector83.png

こんな感じで、共変ベクトルを斜交座標上に図示できます。ちなみに、図上の 1.67 と 1.25 は、共変ベクトルの成分のように思う人もいるかもしれませんが、そうではありません(注3)。

 

もし、斜交座標上にこれらの反変ベクトルと共変ベクトルを図示せよ・・・という問いがあれば、下記がその答えというか、その絵的な表現になるでしょう。

反変ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector94.png

共変ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector93.png

こんな等高線(みたいな縞模様)がベクトルといわれて、納得できない人もいるかもしれません。

しかし、これが共変ベクトルのイメージなんです。

共変ベクトルは、このように座標全体に広がる存在です。

が、注意してください!

共変ベクトルが持っている情報は、座標全体の情報ではなく、ある特殊な領域に関する情報です。

その領域とは?

共変ベクトルの起点です。

共変ベクトルにも反変ベクトルのように起点があるんです。

えっと、それはどこでしょうか?上の絵ではわかりません。

何か座標上の点(7, 11)や(0.6, 0.8)に関係しているのでは?と思うかもしれませんが、そうではありません。

反変ベクトルの起点と同じです。

上の図でいえば、緑の矢印の起点が共変ベクトルの起点です。

そこから全体に広がっている感じ・・・というか、

あくまでも共変ベクトルが示しているのは、起点の情報です。

下図のように描いたほうがより正しいイメージに近いかもしれません・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector97.png


考えてみれば、反変ベクトルを(0.6,0.8)などと表示するときも、その成分は矢印ベクトルの起点に関する情報であり、

座標上の点(0.6,0.8)(ベクトルの終点)の情報ではありませんよね。

 

ところで。

以下の二つのベクトルは、同じベクトルです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector157.png

||

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png斜交座標の都合上、反変表示(0.6, 0.8)あるいは共変表示(7, 11)と、表示形式が違うだけです。

なので、その内積は「ベクトルの大きさ」の2乗になります。

同じベクトル同士の内積は、その「ベクトルの大きさ」の2乗に一致する・・・というのは高校数学で習いましたよね?(習ったはずです・・・(;´^_^`))

すなわち、

(7,11)・(0.6,0.8) =  13

です。

つまり、このベクトルの大きさは√13です。

 

不思議なことに・・・

共変ベクトルと、元になった反変ベクトルを重ね合わせると、矢印が貫く等高線の数が「ベクトルの大きさ」の2乗に必ず一致します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector75.png

これは偶然ではありません。

一般に、どんな共変ベクトルに、どんな反変ベクトルを重ねても、その矢印が貫く等高線(のような縞模様)の数はそれらのベクトルの「内積」に一致します(注4)。

なので、同じ由来である共変ベクトルと反変ベクトルを絵的に重ね合わせると、矢印が貫く等高線の数が「ベクトルの大きさ」の2乗に一致するのは・・・実はこれ、不思議ではなくあたりまえのことなんです。

 

ところで・・・

以下の二つのベクトルは同じベクトルです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector157.png||

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector143.png

言葉でいうと、

斜交座標で反変表示(0.6, 0.8)とあらわされているベクトル

と、

直交座標で反変表示(2, 3)とあらわされているベクトル

です。

では、斜交座標で共変表示(7, 11)とあらわされているベクトル(下図)は、直交座標では何とあらわされているベクトルでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png||




答えは、共変表示(2, 3)とあらわされるベクトルです(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector142.png

直交基底では共変基底と反変基底が一致するため、反変表示と共変表示も一致します。

斜交座標の反変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)

斜交座標の共変表示(7, 11)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)

と言えます。

直交座標上、反変表示(2, 3)のベクトルと、共変表示(2, 3)のベクトルは、どちらも同一の反変ベクトルであり、したがって、その内積は「ベクトルの大きさ」の2乗になります。

(2,3)・(2,3) =  13

今、何が言いたいのかというと、共変ベクトルを考えるのに何もわざわざ斜交座標で考える必要はないということです(注5)。共変ベクトルは、直交座標においても既にそこにあります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector167.png

 

絵的に考えれば、反変ベクトルと共変ベクトルの関係は、非常にシンプルで、

1.互いに直交(というか平行?)

2.「反変ベクトルが共変ベクトルを横切る数」= (反変ベクトルのサイズ)2

というだけです(注7)。

 

最後に簡単なクイズをだして終わりにします。下図に、反変ベクトルとその共変ベクトルを示します。この反変ベクトルのサイズはいくつでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector88.png

簡単ですね。サイズは√10です。10本貫いてますからね(間隔が10)。

すごいとおもいませんか?

「座標軸もないのに」サイズがわかったのです。

逆に、ベクトルのサイズが決まっているところに共変基底を設置すれば、そのベクトルのサイズを不変に保つような反変基底が自動的に決定されます。

ベクトルの方が座標軸より格が上・・・みたいな。

ベクトルは反変ベクトルと共変ベクトルという一組のセットで座標系から完全に独立しうる存在です。

 

(おしまい)


(注1)

反変基底を作図するためには、まず、ふたつの赤い共変基底(exとey)のサイズを決定する必要があります。ここは一番わかりにくいところです。このふたつの赤い共変基底は、その座標系においては(1, 0)と(0, 1)という基底であり、そのサイズはその座標系においては両方とも「1」です、とはいうものの、私たちの眼には(作図上は・・・)、ふたつの赤い共変基底(exとey)の "みため" のサイズは違ってみえます。なので、作図の都合上、両方とも「1」とするわけにはいきません。どちらかを「1」として作図するか、あるいは「作図上の1」を別個に人為的に定義して・・・とか、何とかうまく対処しなければ反変基底を作図できません。そこで、ここでは大元になった直交座標を流用します(何を基準にしてもいいはずです)。その基底のサイズを「作図上の1」としました。すると、このふたつの赤い共変基底(exとey)のサイズは、作図上では大きさが√5と√10のベクトルとまったく同じとみなせます。こうしてはじめて、反変基底(εxとεy)のサイズを、作図上、赤い共変基底との内積が「1」になるように決定することができます。非常に面倒くさいことを言っていますが、結局、大元になった直交座標を作図上の基準として流用し、赤い共変基底(exとey)のサイズをそれぞれ√5と√10であると(作図上)決めるだけです。こうすることによって、赤い共変基底(exとey)は、作図上(2,1)と(1,3)というふたつのベクトルと同じ大きさと方向をもつものとみなすことができます。また、内積を使っていとも簡単に反変基底(εxとεy)と同じ大きさと方向をもつベクトルを決定、作図することができます。共変基底と直交している反変基底との内積は「0」、直交していない反変基底との内積は「1」となるのが原則ですから、そうなるようにうまく計算して反変基底と同じ大きさと方向をもつベクトルを決めてあげます。すると反変基底は、ベクトル(0.6,-0.2)とベクトル(-0.2,0.4)として、大元になった直交座標上に表現できます。

具体的にいうと、

ex・εx =(2,1)・(0.6,-0.2)=「1」

ex・εy =(2,1)・(-0.2,0.4)=「0」

ey・εx =(1,3)・(0.6,-0.2)=「0」

ey・εy =(1,3)・(-0.2,0.4)=「1」

となるように εx と εy の成分を決定してあげるのです(実務的には行列(2,1,1,3)の逆行列を求めるだけ・・・)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector86.png

こうなります。

実は、共変基底と反変基底は入れ替えることができます。下図のピンクの基底を共変基底と考えると反変基底は赤の基底になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector96.png

こうすると本文中の反変ベクトルの反変表示は(7, 11)、共変表示は(0.6, 0.8)と表示が入れ替わります。


(注2)

この等高線(みたいな縞模様)がベクトルである・・・ということは、つまり、この等高線(みたいな縞模様)も座標変換に対してまったく"回転せず”、”歪まず"、"動きません"。
https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector78.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector79.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector80.png

反変ベクトル起始部の情報であることを強調すれば以下のように描いたほうがより正確なイメージに近いかもしれません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector102.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector103.pnghttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector104.png

矢印ベクトル(反変ベクトル)に対し、このような等高線(みたいな縞模様)ベクトルを余ベクトル covector(共変ベクトル)とよんだりします。

 


(注3)

ここは書こうかどうか迷ったのですが、共変ベクトルの成分表示について言及しようとするとどうしても必要になってしまいます。共変ベクトルの反変表示や共変表示に興味がある方だけお読みください。

まず、本文中でピンクの矢印として描かれた反変基底(εxとεy)は、それぞれ下記のような等高線(みたいな縞模様)であらわすこともできます。

基底そのものを、矢印ではなく等高線(みたいな縞模様)にするとどうなるかという話です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector122_20210113234901.png

ちょっとわかりづらいかもしれませんので、εx と εy に分けてみます。

反変基底 εx

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector155.png

反変基底 εy

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector156.png
それぞれ、ピンクの矢印の方ではなく、黄色の等高線(みたいな縞模様)が εx とか εy である

と考えてください。

では、このふたつの基底(等高線(みたいな縞模様))をどう組み合わせれば、以下の共変ベクトルを作図できるのでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector71.png

和を使います。

等高線(みたいな縞模様)ベクトルも矢印ベクトルのように足したり引いたりできるのです。

共変ベクトル = 「εx 成分」+「εy 成分」

これらの成分(係数)をどう決定するか・・・という問題です。

難しいですよね。

共変ベクトルの成分表示を説明しようと思えば、その説明に共変ベクトルの知識を使わなければならない・・・

というジレンマがあり、本文中ではそれを避けました。が、

ここではそのジレンマをいったん横において、この問題を解決してみます。

等高線(みたいな縞模様)の間隔をどう調整すればよいのでしょうか?

反変ベクトルの反変表示(0.6,0.8)を利用します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector157.png

反変ベクトルの「ex 成分」は0.6ですよね?

その逆数をとります。

1/0.6 =1.67

今、反変基底 εx の方向に、間隔が εx の 1.67倍である等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。これが目的とする(図示したい)共変ベクトルの 「εx 成分」なんです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector118.png

しかし、この等高線(みたいな縞模様)が共変ベクトルの「εx 成分」だと言われても・・・

数式としては、どうあらわしたらいいのでしょう?

間隔を1.67倍にしたのだから

1.67εx でしょうか?

いいえ。

一般に、共変ベクトルの係数う(大きさ)は、等高線(みたいな縞模様)の間隔の広さに「反」比例します。

したがってこの場合、εx 成分の大きさ(係数)は 1.67 倍になったのではなく、1.67 の逆数、すなわちもとの等高線(みたいな縞模様)の0.6 倍であると考えます。

すなわち、目的とする共変ベクトルの「εx 成分」 は 0.6 です。

間隔があいているのに係数が小さくなるのが納得いかない人は、等高線の間隔は、あけばあくほど勾配が緩やかになる・・・と考えるといいかもしれません。

 

同様に、共変ベクトルの「εy 成分」を求めてみます。

反変ベクトルの反変表示(0.6,0.8)の「ey 成分」である 0.8の逆数をとります。

1/0.8 =1.25

次に、反変基底 εy の方向に、間隔が 1.25倍 にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。これが目的とする共変ベクトルの「εy 成分」です。
https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector120.png

この「εy 成分」は、数式で書くと 1.25εy ではなく、1.25の逆数を用いて、0.8εy とあらわされます。

すなわち、目的とする共変ベクトルの「εy 成分」は 0.8 です。

結局、目的とする共変ベクトルは、

0.6εx + 0.8εx

と、あらわされます。

これらを重ね合わせると、たしかに目的の共変ベクトルになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector121.png

すなわち、この共変ベクトルの成分は(0.6,0.8)です。

これが、反変基底を使った「共変表示」の絵的なイメージです。

 

では、共変基底を使った「反変表示」はどうなるでしょう?

まず、本文中で赤い矢印として描かれた共変基底(exとey)は、それぞれ下記のような等高線(みたいな縞模様)であらわすことができます。

共変基底 ex

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector145.png上図で、等高線(みたいな縞模様)の間隔が赤い基底の1/5になっているのは(注1)に解説した理由により、この基底のサイズが作図上√5であるためです。同様に、

下図で、等高線(みたいな縞模様)の間隔が赤い基底の1/10になっているのは(注1)に解説した理由により、この基底のサイズが作図上√10であるためです。

共変基底 ey

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector147.png

この等高線(みたいな縞模様)の和を使った表現が、共変基底を使った「反変表示」です。

共変ベクトル = 「ex 成分」+「ey 成分」

この成分をどう決定するか・・・という問題です。

その決定には、反変ベクトルの共変表示(7,11)を利用します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png

この「εx 成分」 は7です。

その逆数をとります。

1/7

共変基底 ex の方向に、間隔が 1/7倍 にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。これが目的とする共変ベクトルの「ex 成分」です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector127.png

等高線(みたいな縞模様)の間隔は、共変基底 ex の大きさの1/7になっていますが、数式上は7ex とあらわされます。

これで共変ベクトルの「ex 成分」は7であることがわかりました。

次に、反変ベクトルの「εy 成分」を使って、共変ベクトルの「ey 成分」を求めます。

反変ベクトル共変表示(7,11)の「εy 成分」は11です。

その逆数をとります。

1/11

共変基底 ey の方向に、間隔が 1/11 倍にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。これが目的とする共変ベクトルの「ey 成分」です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector126.png
この等高線(みたいな縞模様)の間隔は、共変基底 ey の大きさの1/11になっていますが、実はサイズは11倍になっています。したがって、目的とする共変ベクトルの「ey 成分」は 11です。


これらのベクトルの和

「ex 成分の共変ベクトル」+「ey 成分の共変ベクトル」 = 7ex + 11ey

が、目的の共変ベクトルです。

重ね合わせると、たしかに目的の共変ベクトルに一致します。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector128.png

共変基底を使った「反変表示」は、(7,11)だといえます。

これまで述べてきた非常にややこしい話を表にまとめると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector.png

このようにベクトルは、反変ベクトルか、共変ベクトルかどうかで、成分表示が入れ替わります。

共変基底、反変基底を入れ替えると、成分表示が入れ替わるという話です。

 

実は、前出の等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底(exとey)を使えば、反変ベクトルを、矢印が貫く等高線(みたいな縞模様)の本数を数えるだけで共変表示できます。

絵的に重ね合わせるだけです。

やってみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector146.png

緑の矢印は等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底(ex)を7本貫いていますよね(赤い共変基底は無視してください)。

なので、「εx 成分」にかかる係数は7です。

同様に・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector148.png緑の矢印が貫いている等高線(みたいな縞模様)の本数は11本です(赤い基底は無視してください)。

なので、「εy 成分」にかかる係数は11です。

結局、緑の矢印ベクトル(反変ベクトル)は、等高線(みたいな縞模様)をつかって(7,11)と表現できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector150.png

同じように解説しているテキスト(反変ベクトルを共変表示している解説書)もありますが、どれも等高線(みたいな縞模様)を使っていないので意味がわかりにくいと思います。

等高線(みたいな縞模様)を使わないのなら、下図のように矢印の反変基底をつかった共変表示のほうがわかりやすいと思います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png

いずれにしてもややこしい話です。

 


(注4)

数学者は、何かを与えると変数を返すものはなんでも関数と考えるようです。なので、共変ベクトルも、反変ベクトルを作用させると内積(スカラー)を返す「関数」である・・・と言われることがあります。

ちょっと絵で説明してみます。

たとえば・・・

次の2つのベクトルの「内積」は何でしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector51.png

・・・といわれても、座標がわからなければ計算のしようがありませんよね?

では、座標を設定しましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector52.png

こうすると、それぞれのベクトルが(2, 3)と(4, -1)であることがわかります。

すると、

(2, 3)・(4, -1)=5

と「内積」を求めることができました。

では次のような座標が与えられたらどうでしょう?正規直交座標から基底を(2,1)と(1,3)に動かしました。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector159.png

ベクトル自体は動いていません。

緑が(0.6,0.8)、赤が(2.6,-1.2)というところまでは何とか求めることができるかもしれません。

では内積は?

次の公式を使います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20200706213201.pngベクトル(A,B)とベクトル(C, D)の内積は、計量テンソル(a, b, c, d)を間に挟んで計算するのが正式です。

そうすると、この斜交座標の計量テンソルが

5 5
5 10

であることがわかれば、やっと

(0.6, 0.8)・(7, 1)=5

と内積を求めることができます。

 

ところが・・・共変ベクトルを使うとこんな計算は不要になります。

どういうことかというと・・・

たとえば、上図の「緑のベクトル」だけを等高線(みたいな縞模様)ベクトルに変更してみましょう・・・

すると次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector82.png

緑のベクトルが消え、等高線(みたいな縞模様)になりました。

赤い矢印が貫く等高線(みたいな縞模様)の数を数えてみてください。

「5本」ですよね?

この数が「内積」に一致します。

ですので「内積」は5です。

これがどんな座標系であっても成り立ちます。

「赤いベクトル」を共変ベクトルに変更しても結果は同じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector91.png

数えてみてください。

「5本」ですよね?

この数が「内積」に一致します。

共変ベクトルを使うと「内積」を求めるのに計算は不要です。

というか・・・

座標軸さえ不要です。

矢印が等高線(みたいな縞模様)を乗りこえる数を数えるだけです。

内積はまんが(絵)でわかるのです。

数学の世界では

「内積」=一定

という式によって、直線や平面をあらわしますが、

共変ベクトルを持ち込めば、直線や平面を座標系を使わずに表すことができます。

反変ベクトル・共変ベクトル

= 矢印・等高線(みたいな縞模様)

= 矢印が等高線(みたいな縞模様)を貫いた数

= スカラー(内積)

みたいな感じです。

この意味で使うとき、この等高線(みたいな縞模様)を、1形式(one form)とか、線型汎関数とか、線形写像とか、線形作用素とかいいます。

ちなみに、1形式(one form)とは、ひとつのベクトルとの「内積」により、スカラーを返すものです。共変ベクトルはまさにその例です。同様に、2形式(Bileanear form)とは、ふたつのベクトルとの「内積」により、スカラーを返すものです。その例は計量テンソルです。

結局、この等高線(みたいな縞模様)をベクトルとみるか、関数とみるかによって、呼び方がかわります。双対ベクトル dual vectorとか、余ベクトル covectorとか、1形式(one form)とか、線型汎関数とか、線形写像とか、線形作用素とか・・・

そして、双対ベクトルの双対ベクトルはベクトルに戻るのです。不思議ですよね。というか、本来同じもの(の裏表)ではないか?と思えてなりません。

話がそれました。

言いたかったのは、共変ベクトルと反変ベクトルがあれば座標軸は不要である・・・という爽快な話です。


(注5)

本文記事中に、反変ベクトルについては、

斜交座標の反変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)

斜交座標の共変表示(7, 11)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)

と記述しましたが、共変ベクトルについては、

斜交座標の反変表示(7, 11)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)

斜交座標の共変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)

となります。

その理由を説明します。

直交座標で考えると、共変ベクトルをあらわす等高線(みたいな縞模様)の間隔は、

x軸方向に 1/2 = 0.5

y軸方向に 1/3 = 0.33

という関係になっていて、x軸方向に0.5、y軸方向に0.33 の間隔です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector70.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector110.png

これが、直交座標から求めた共変ベクトルです。

この共変ベクトルの成分表示を考えます。

この等高線(みたいな縞模様)の間隔は 0.5εx と0.33 εy です。

しかし、共変ベクトルの成分表示は(0.5,0.33)ではありません。

(注3)で述べた理由により、それぞれの逆数、すなわち、2と3が共変ベクトルの成分になります。

共変ベクトルの係数(成分の大きさ)は、等高線(みたいな縞模様)の間隔の広さではなく、等高線(みたいな縞模様)を基底ベクトルが貫いている数に比例します。

下図からもあきらかだと思います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector131_20210114034301.png

上図であらわされている等高線(みたいな縞模様)は、ベクトル2εx です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector133.png
上図であらわされている等高線(みたいな縞模様)は、ベクトル 3εy です。


https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector134.png

したがって、この共変ベクトルの成分表示(反変基底による共変表示)は

x + 3ε = (2,3)

です。

共変ベクトルの共変基底による反変表示にも同様の考察が適用され、

2ex + 3ey = (2,3)

です。

共変ベクトルそのものは、斜交座標上で求めた共変ベクトルと同じです。

ベクトルは座標の影響をうけません。

直交座標で考えるなら、実は直線の式 2x+3y = c(cは変数)を使うだけで簡単に共変ベクトルを描くことができます(共変ベクトル(a,b)の成分が直線の式 ax+by = cのaとbになります)。


(注6)

直交座標では、原点からx方向の基底2に対し4本の等高線、y方向の基底3に対し9本の等高線、すなわちベクトル(2,3)の方向で合計13本の等高線を、矢印が横切ることになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector106.png

上図の4と9という数字は基底が乗りこえる等高線の数で、座標表示ではないことに注意してください。

では、記事本文中にでてきた斜交座標では、矢印が横切る等高線の数は何本でしょうか?

計算してみると・・・

7/(1/0.6) = 4.2

11/(1/0.8) = 8.8

下図からもわかりますが、εx 基底7に対し等高線4.2本、εy 基底11に対し等高線8.8本、すなわちベクトル方向(7, 11)で合計13本です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector107.png

注3と注5を読まれた方なら、共変ベクトルを εx 方向と εy 方向の等高線(みたいな縞模様)に分割してみるともっとよくわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector138.png

注意してほしいのは、上の図の4.2と8.8という数字はベクトルの座標表示ではなく、反変基底εx7に対する等高線が4.2本、反変基底εy11に対する等高線が8.8本であることをあらわしています。

座標軸にかかわらず合計13本です。

等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変ベクトルが、反変ベクトルと同様、座標変換に対して不変であることに着目してください。

乗りこえる等高線を数えるのに共変基底を用いることもできます。

計算してみると・・・

0.6/(1/7) = 4.2

0.8/(1/11) = 8.8

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector108.png

注3、注5を読まれた方なら、共変ベクトルを ex 方向と ey 方向の等高線(みたいな縞模様)に分割してみるともっとよくわかります(ん?・・・この場合はこっちの方がわかりにくいかもですね(汗))。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector139.png

共変基底 ex0.6に対する等高線の本数は4.2本、共変基底 ey0.8に対する等高線の本数は8.8本、合計13本です。

共変基底が乗りこえる等高線の数は、反変基底が乗りこえる等高線の数と一致します。

あたりまえのような不思議なような話です・・・

 


(注7)

等高線(みたいな縞模様)と矢印の方向は直交している・・・といわれると、

もしかしたら偏微分や勾配ベクトルを知っている人なら

反変ベクトル = 勾配ベクトル(∇f)

とイメージできるかもしれません。まさにそのイメージでいいと思います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field-2.png
あえて3Dっぽく絵に描けば・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field6.png
ある1点を起点とする、こういう空間に浮かぶ面の勾配が反変ベクトルによって表現されているともいえます。

 

そして・・・ピンときた人もいると思いますけれど、

全微分を知っている人にとっては、

共変ベクトル = 全微分(df)

と、考えることもできると思います。

ある1点を起点して空間に浮かぶ下図のような面の等高線が共変ベクトルによって表現されているといえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field5.pngこういう平面を真上からみたときの高さの変化が共変ベクトルという等高線(みたいな縞模様)であらわされている・・・と想像すればいいのです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral175.png

たとえば、f(x,y) = x2 + y2

という曲面があるとき、その点(1, 1.5, 3.25)における全微分は、

df = 2dx +3dy

です。本記事中で論じている共変ベクトルはちょうどこの全微分 df に相当します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20210116001401.png

点(1, 1.5, 3.25)における接平面のスロープは、勾配ベクトル方向(2,3)への傾斜が一番きつく、x方向に2行くと4上昇し、y方向に3行くと9上昇、つまりベクトル(2,3)方向で合計13上昇する斜面です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral177.png

傾斜が一番きつい方向 = 反変ベクトルの方向です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral178.png

この等高線(みたいな縞模様)や矢印は、その様子を見事にあらわしています(注6)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector76.png

共変ベクトルをスカラーポテンシャルと考えることもできるかもしれません。

2次元の存在と思っていたベクトルが実は3次元的な情報を持っているのは驚きです。

すべての反変ベクトルは、その起始部においてペアになる共変ベクトルをもっており、それらは双対関係にあるといいます。

 

双対ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector97_20210112021001.png

面白いのは、これ、数学的につきつめていくと、どちらが矢印でどちらが等高線(みたいな縞模様)なのか、だんだんよくわからなくなるんです。みためはこんなに違うのに・・・。実は等高線(みたいな縞模様)も、まるで矢印ベクトルのように足したり倍にしたりできます。よくよく考えると、等高線(みたいな縞模様)の、そのまた等高線(みたいな縞模様)を考えることもでき、そのイメージはまた矢印に戻ります。いったい、どちらが元祖ベクトルなのか・・・鶏が先か卵が先かみたいな話です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field9.png

リンク:アインシュタインの一般相対性理論

 

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https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector105.png

 

2020年2月 3日 (月)

【基礎】たぶんこの世で一番やさしいテンソルの話 基礎の基礎

この記事であつかうテンソルは、行列とそっくりな2階のテンソルです。しかも2x2という単純な・・・。なぜかって?2階のテンソルがわかれば他の複雑なテンソルも理解できると思うからです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor1.png


専門家は言います。

テンソルと行列は違う

と。

しかし、そう言われたって、テンソルと行列は、同じにみえます。

5 -1
3 4

どちらもこんなふうに数字のセットとして表されます。

ベクトルや行列との掛け算や計算のルールなども、まったく同じです。

テンソルとはいったい何なんでしょうか?

いったい、専門家は何を言おうとしているのでしょうか。

 

(えっと・・・なぜか読者が急増しているので、あえてお断りしておきます。本記事はあくまで一般人を対象にした解説です。専門家の方を対象とした厳密な内容ではありません。その証拠に添字とかアインシュタインの縮約とか省略とかでてきません。そういう専門的な話ではありません・・・)

 

テンソルと行列のちがいを理解する最初の一歩は、数字とスカラーの違いを理解することだと思います。

たとえば数字の3。

数字の3は数字の3です。

こどものころ、こういう数字には「意味」がありましたよね?

6は3より大きいとか、数が多いとか、少ないとか・・・

しかし、成長とともにだんだん数字を抽象的に扱うことに慣れてくると、いちいち数字の意味を考える必要がなくなっていきます。

意味を考えず、数字を使って、機械的・抽象的に計算することができるようになります。

ここで・・・

こどものころに感じていた、"意味"を戻してあげると、数字がスカラーに戻ります。

数字としての3、スカラーとしての3・・・

スカラーには、サイズ感がつきまといます。

単位とかもついてきます。

単位付きの数字、みたいに理会するといいかもしれません。

スカラーは無機的ではなく、しっかりした意味をもちます。

このようにスカラーと数字は違う!

と専門家に言われても

はい、そうなんだ

と思うだけでしょう。

 

次に、この数字を2つ組み合わせてみましょう。

たとえば、2と3。

これを(2, 3)と一組にしてみます。

無機的な数字の組み合わせです。抽象的です。

しかし、グラフ上にプロットしてみれば(2, 3)という座標として表示されます。

ちょっと具体的なイメージはあるかもしれません。

(2, 3)という数字の組み合わせをみて、意味がわからん!とか思い悩んでいる人はあまりいないかもしれません。

(2, 3)って、実に無機的なのに。

ここで・・・

この(2, 3)という組み合わせに、"方向"という感覚をくっつけてみましょう。

グラフの原点から(2, 3)に向かう矢印のような・・・

みなさんご存じ、そういう数字の組み合わせを、ベクトルといいます。

大きさと方向をもった、何か矢印のようなイメージです。

ベクトルには、大きさや方向の感覚がついてまわります。

(2, 3)という数字の組み合わせに意味が与えられます。

無機的な数字の組み合わせと、ベクトルでは意味が違う!

と、専門家に言われても、

はい、そうですね・・・というしかないでしょう。

 

次に数字を縦横に4つならべたもの、たとえば

5 -1
3 4

こういうのを行列と言います。

無機的な数字の組み合わせです。

慣れないうちは、意味が気になるものです。

連立方程式の係数・・・?

なんて、無理やり意味をこじつけようとしたりします。

しかし、これも年齢をかさね(汗)、慣れてくると、いちいち意味を与えずに行列として利用できるようになります。

抽象的、無機的な数字のセットとして計算できるようになります。

そこに・・・

この4つの数字に、何かイメージのようなものを無理やり与えると・・・

それがテンソルになります。

2つのベクトルの大きさと方向と、その"組み合わせ"という感覚がプラスされます・・・って、えっと・・・

どんなイメージだ!?

という疑問はさておき、

テンソルにもスカラーやベクトルのように何かイメージがあるのです。

行列にはありません。

それが、テンソルと行列の違いです。

 

ではテンソルのイメージとはどんなものでしょう?

みんな、それを知りたいし、知ってる人は教えたい・・・

なのにそれが難しい、できない!

ってのがテンソルの難しさです。

 

そこで・・・

ちょっと視点をかえてみましょう。

どういうことかというと・・・


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ベクトルには数字のそれぞれ(成分)に「基底」がくっついています。

たとえばベクトル(2,3)を、基底をつかってあらわすと、

2 3

||

2ex + 3ey

ってことです。

ex や ey を基底といいます。

座標軸のよって決まるベクトルの基本単位です。

ベクトルは、このように基底をつかった表現に書き換えることができます。

基底を、

ex =(1,0)

ey =(0,1)

とおけば、

2ex + 3ey

= 2(1,0)+ 3(0,1)

=(2,0)+(0,3)

=(2,3)

ですよね。つまり、

(2, 3)

||

 2ex + 3ey 

です。

これがベクトルです。

絵にするとこんな感じです。青い矢印が基底です。


https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/covector4.png


何をあたりまえな・・・

と感じるかもしれませんが、

テンソルにも、ベクトルと同様、それぞれの数字(成分)に「基底」がくっついています。

あえて式で表してみると・・・

5 -1
3 4

||

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy

みたいな感じになります。

何なの?この e とか ε の合体した変な基底は?

という疑問は、ぐっと飲みこんでください。

このとき考えている基底は、

exεx

||

 

exεy

||

1

 

eyεx

||

 

eyεy

||

みたいな感じです(注1)。

すると、

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy

||

-1

||

5 -1
3 4

になりますよね?

つまり、

5 -1
3 4

||

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy

です。

 

このように「数字」プラス「基底」という考え方・・・を意識するのがテンソルの勉強です。

4つの「数字」は、それぞれ「基底」の係数にすぎません。

4つの「数字」が「基底」と結びついているとき、それは行列ではなくテンソルだ、と専門家は言いたいのです。

「基底」が変化したら係数はどう変化するのだ?・・・と。

上の例だと、ex とか、ey とか、εx とか、εy とか・・・、そういう基底がいろいろと変化したら、exεx や、exεyや、 eyεxや、eyεy の係数はどうなる?

と・・・(注2)。

そういう勉強です。

 

ここで、以下のベクトルとテンソルを100回ぐらい交互にみてください。


ベクトル

2 3

||

2ex + 3ey


テンソル

5 -1
3 4

||

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy


・・・

どうですか?

ちゃんと100回みましたか?(苦笑)

なんだか・・・

ベクトルもテンソルも、結局は似たようなものにみえてきませんか?

基底に対する係数が箱に入ってるだけです。

くりかえし交互にみてください。

あ、なるほど!そういうことか!と感じることができたら・・・ラッキーです。

そう、それだけのことなんです。

(^▽^;)

こんな逃げた説明・・・専門家の先生にめちゃくちゃおこられそうですが・・・

絵で描いたり図示できればいいんでしょうけれども、テンソルのイメージなんて、なかなか図示できません。

テンソルのイメージをベクトルのように図示するのは不可能なんです。

これが、何事も完全に理解しながら一歩一歩前に進んできた人たちにとっては大きな壁になると思います。

テンソルの学習は、そうはいきません。もやもやしたあいまいな理解を同時に複数かかえながら少しづつ理解を深めていく・・・という、ちょっと高次な脳機能を要します。

 

いくつかの専門書によるテンソルの解説は「成分」の変換法則に焦点をあてた解説が多く、初学者にとってはそこも落とし穴になっているかもしれません。

大事なのは成分ではなく基底です。

成分は基底にかかっている係数にすぎません。

成分変換に意識を奪われると、いつまでたってもテンソルの本質に到達できないと思います。

テンソルをテンソルたらしめているのは、5,-1,3,4 などという成分ではなく基底のほうだからです。

ベクトルだって、そうですよね?

ベクトルの本質は、2とか3という成分より、基底の大きさや方向です。

基底がいろいろと変化するから、係数がそれに応じて変化するのです。

2とか3ってのは基底にかかる係数にすぎません。

ベクトルやテンソルは基底と切っても切れない関係があります。

逆にいうと、たとえテンソルのイメージがわからなくても基底を意識できていれば、イメージを考えていることになるんです。

成分と基底の結びつきがみえてくると、なんかテンソルの意味がわかりはじめます。

基底を意識すると、テンソルの成分変換が意味を持ち始めます。テンソルの凄さがわかってきます。

行列は単なる数字の組み合わせ。

しかしテンソルは基底にかかっている係数を成分にしたもの。基底の変化に応じて成分が規則正しく変化します。

 

このテンソルの性質が、物理学者にとって非常に非常に非常に便利なんです。

どうしてかというと、

基底=座標軸

だからです。

基底(座標軸)の変換に影響をうけない物理量というものがたくさんあって、テンソルのテクニックに習熟すればそういう物理量をテンソルであらわすことができます。

座標軸がうごいても、方向や大きさが変わらないもの・・・といわれて、パッと思い浮かぶのは、ベクトルでしょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor9.png

ベクトルは座標軸から独立した存在です。

だからこそ、座標軸が変化すると、成分が変化するわけです。

ベクトルが表そうとしている"物理量"を不変に保つために成分が変化します。

テンソルも同じです。

 

実はスカラーだってそうです。

そもそもスカラーには基底がありません。

なので、座標軸(=基底)が変化してもスカラーの値はかわりません。

そういう意味で、スカラーも座標軸の変換に影響をうけない物理量と言えます。

たとえば・・・ある瞬間の東京の気温。これはスカラーです。

その東京の位置を緯度経度で表したり、平面地図で表したり・・・

東京の位置をあらわす方法はたくさんあると思いますが、

そのあらわし方によって、東京の気温は違ってくるでしょうか?

変わりませんよね。

東京の位置をあらわす座標(観察者の視点)が変化しただけで東京の気温が変化したら大変なことになります。

ある部屋の明るさ、富士山の高さ・・・

いろいろなスカラーがありますが、その場所、位置を表す方法が変化しても、スカラーの値は変化しません。

なんか、言いたいことがあたりまえすぎて、うまく伝わっていない気もしますが・・・(汗)。

 

ベクトルだって同じです。

たとえば平面地図で、東京からみた福岡市の位置は、ベクトルで表現できます。

東京からみた福岡の位置をあらわす方法は、東京を原点とする地図で表したり、東京と福岡を緯度経度であらわしたり、いろいろな方法があるでしょう。

東京からみた福岡の位置は、東京の温度、とは違い、場所の表し方によっていろいろと表現内容が変わってくるかもしれません。

しかし、東京からみた福岡の距離や方向そのものが変化するわけではありませんよね?

東京からみた福岡の方向や距離は座標の取り方に影響をうけないのです。

ベクトルも同じです。

基底の選び方によって、ベクトルの「成分」は変化してしまいます。

が、つまるところ、観察者の視点がかわったために、みための数字が変化しているだけの話です。

「ベクトル」そのものが変化したわけではありません。

ベクトルの成分=みため

です。

なんか、本当に話がくどくてすみません・・・(苦笑)

 

テンソルだって同じなんです。

テンソルを使って、物理学者がこの世の "何か" をあらわすとします。

この世には、テンソルでしかあらわせないものがあります(注3)。

テンソルを使わないとあらわせないものっていうのは、

たいがいが難しいものなので、

想像するのが難しいのですが、

だから難しい勉強が必要なわけで・・・(汗)

アインシュタインは「空間のエネルギー」をテンソルであらわしました。

なんだ?!それ?

という感じはさておいて、

今、「空間のエネルギー」を測定できたとします。

それを「複数の数字のセット」でうまくあらわすことができたとき・・・

それがテンソルになっていれば、その数字のセットは、ベクトルの成分のようにふるまうわけです。

座標系が変化すると、それにともなって数字がクルクルと変化します。

注意すべき点は、数字が変化したからと言って「空間のエネルギー」そのものが変化しているわけではないということ。

観察者の視点が変化しているために、その変化に応じてテンソルの成分が変化しているだけです。

そうすることによって、「空間のエネルギー」を座標系に依存せずにあらわし続けることができているのです。

いってみれば、テンソルとは、

座標変換に影響をうけずに~"何か"~をあらわし続ける数学的なテクニックです。

この世には、テンソルを使うとうまくあらわせる、何か、があります。

(それがなければ、テンソルなんて、誰も見向きもしなかったでしょう。一部の数学者が何の役にたつのかわからないまま研究する、たんなる数学上の抽象的な題材にすぎなかったと思います)

電磁気力とか、せん断応力とかです。

そういうものを、観察者の視点やスケールや運動に依存せずに、絶対的なものとしてあらわしたい・・・

学者さんにはそういう願望があります。

それを可能にするのがテンソルです。

座標系が変わっても、テンソルの成分(数字)が規則にしたがって変化するだけで、もとになったテンソルがあらわしている"何か"・・・方向や大きさのようなもの・・・は失われないし、変わらないようにしたい。

そういう学者さんの願望が、テンソルを生み出したとも言えます。

スカラーもベクトルも、実はテンソルです。

スカラーを0階のテンソル、ベクトルを1階のテンソルといったりします。

行列のようにみえるのは2階のテンソルです。

その成分の変化のさせ方・・・

そこがテンソルの核心なんです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor7.png空間に浮かぶベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor8.png座標で表示することができる

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor9.png同じベクトルを違う座標からみる

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor10.png

そうすると座標表示が変わる

こういうものをすべてテンソルという

この座標変換を自動計算したい!

 

 

抽象的な話は、うんざり・・・という人のために、すこし具体例をあげながら解説してみます。

次のような4つの数字のセットを考えます。

5 -1
3 4

一見、行列のようにみえます。物理学者が、この4つの数字で"何か"をあらわそうとしています。

それぞれの数字は座標の基底 exεx や、exεyや、eyεx や、eyεy の係数になっています。つまり

5 -1
3 4

||

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

です。

今つけた基底によって、この4つの数字は行列ではなくテンソルになったと思います。

ほんとうでしょうか?

その様子をみてみましょう。

まず、座標を変換してみます。たとえば・・・

座標全体が反時計回りに+30度回転すると、このテンソルはどうなるかというと・・・

5.61 -1.93
2.06 3.38

に、変換されます。

このように、座標変換される行列=テンソル、です。

座標変換によって、表示が変化するのです。

こういうのを自動計算できるようになるのがテンソルの勉強です。

数字が大きく変わってしまいましたが、物理学者が表現しようとしていた "何か" が変化したわけではありません。

その "何か" を、新しい座標であらわすと、

5.61 -1.93
2.06 3.38

||

[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]

になります。

座標変換により、基底が、 ex や ey 、εx 、 εy の組み合わせから、e'x や e'y 、 ε'x 、ε'y の組み合わせに変化しましたが、そのパターンは同じです。

なので、基底の変換にあわせて成分を規則的に変化させることができました。

うまく伝わっているかどうかわかりませんが、たとえば、もし、

5 -1
3 4

||

[5ex - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

みたいに、e と ε の個数があわなかったりしたら(基底の対称性が失われていたら)、こうはうまくいかないのです。

 

えっと・・・

これの何が便利なのかって?

座標が+30度回ったので(基底が変化したので)、テンソルの成分(数字)が変化してしまいましたが、こうすることによって、物理学者があらわそうとしていた"何か"(物理量)が、座標変換の影響をうけずに維持されたのです。

つまり、

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

||

[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]

ってこと・・・

わかるでしょうか?

係数だけとりだして書いてみると・・・

5 -1
3 4

||

5.61 -1.93
2.06 3.38

となってしまい、ちょっと意味がわからなくなりますが、この、基底の変化にともなう係数の変化・・・

ここらへんがテンソルの真髄なわけで、この醍醐味が理解できなければ、テンソルの勉強は無味乾燥でやってられません。

 

もう一例考えてみましょう。

たとえば、さきほどのテンソル

5 -1
3 4

||

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

は、x軸が+20度(反時計回りに20度)、y軸が-30度(時計回りに30度)に歪んだ座標上では、どう表されるでしょうか?

2.61 -1.66
3.80 6.39

||

[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80e*yε*x + 6.39e*yε*y]

です(注4)。

数字が変化してしまいましたが、やはり、同じテンソルです。

座標軸が変化したことによって、テンソルの中身(数字、成分、みため)が変わってしまいましたが、4つの数字であらわそうとしている ”何か” (物理量)が変化したわけではありません。

つまり、

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

||

[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]

||

[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80e*yε*x + 6.39e*yε*y]

です。

これを基底なしで書くと、

5 -1
3 4

||

5.61 -1.93
2.06 3.38

||

2.61 -1.66
3.80 6.39

となって、ちょっと意味がわからなくなります。

 

座標の変化にともなってテンソルの成分が変化するのは、

実は、「基底」が変化していることによる二次的なものです。

つまりテンソルの本質は「基底」のほうにあります。

「基底」の様子がわかってくると、テンソルにだんだんイメージがついてくるようになります。

すると、しだいに成分(数字、みため)に対する興味は消えていき、「基底」の変化が気になりはじめます。

exεx 、exεy 、eyεx、eyεy と ex や ey 、εx や εy の意味が知りたくなってきます。

ベクトルやテンソルのイメージは「基底」と切っても切り離せない関係があります。

直交座標では、「基底」はx方向に1の大きさ、y方向に1の大きさをもつ矢印のようなイメージです。

「基底」を変化させると、何かを不変に保とうとして、テンソルの「成分」(数字、みため)が2次的に変化してしまうんです。

なんだ、そんなことかと思います。

座標軸の変化ではなく「基底」の変化を理解するのが本質です。

いったい、基底 ex 、ey とか、基底 εx 、εy とは何なのでしょうか?

テンソルの基底 exεx 、exεy、eyεx 、eyεy と ベクトルの基底 ex や ey 、εx や εy には、どんな関係があるのでしょう?

 

具体例で考えましょう。

正規直交座標の「基底」は、

ex =(1,0)

ey =(0,1)

です。

この座標系全体が+30度回った状態というのは、上記の基底が、

e'x =(√3/2,0.50)

e'y =(-0.5,√3/2)

という新しい基底に変換されたということと同義です。

座標系全体が+30度回転した座標系では、この新しい基底が

ex =(1,0)

ey =(0,1)

という新たな直交基底になります。

少し注意してほしいのは、基底はテンソルではなく、動いているという点です。

基底は座標の方についてまわります。

座標が動き、基底がうごく。テンソルの成分(数字、みため)は基底の変化にカウンターをあてるように変わる。その結果、テンソルがあらわそうとしている "何か" は変化しないですむ・・・という感じです。

まぁしかし、座標全体が+30度回っても、直交座標であることにかわりはありません。

しかし、これが斜交座標への変換になると・・・やっかいなことがおこります。


関連記事

【図解】共変ベクトル・反変ベクトル


斜交座標には、「反変基底」や「共変基底」という2種類の「基底」があらわれます。

実は今まで基底だと思っていたものは共変基底で、その影に反変基底が隠れていたんだな、って感じです。

直交座標では、反変基底は、まったくみえませんでしたし、意識する必要もありませんでした。

 

共変基底、反変基底を具体例でみていきます。

たとえば、x軸が+20度(反時計回りに20度)、y軸がー30度(時計回りに30度)回転すると、直交座標ではなく座標が歪んだ斜交座標になります。

この新しい斜交座標の基底は、

e'x =(0.94,0.34)

e'y =(0.5,0.87)

という共変基底(元の直交座標を利用して表現しています)と、

ε'x =(1.34,-0.78)

ε'y =(-0.53,1.46)

という反変基底です(元の直交座標を利用して表現しています)。

共変基底、反変基底という2種類の基底を使い分けることになります。

すると、

正規直交座標で

1 2

||

[1ex + 2ey]

とあらわされていたベクトルは、新しい斜交座標では二つの表示方法が可能になります。

ベクトル

-0.21 2.39

||

[-0.21e'x + 2.39e'y]

という共変基底を基準にした表示と、

1.62 2.23

||

[1.62ε'x  + 2.23ε'y]

という反変基底を基準にした表示です。

同じベクトルを裏表からみたイメージでしょうか。

この2つの表示の内積をとってみると、元のベクトルの内積に一致します。

(-0.21)*(1.62) + (2.39)*(2.23) =5

2*2 + 1*1=5

空間幾何において内積が最も重要なスカラーであることを知っていると、

なるほど、すごいね・・・なんて感じる人もいるかもしれません。

たとえばアインシュタインは光速を内積で表現することによって光速度不変の原理を数式化したわけです。

しかし(でも、それだけのこと?)と思っていると、ここでめちゃくちゃ大切なことがでてきます。

計量テンソルです。

さきほどのベクトル

-0.21 2.39

||

[-0.21e'x + 2.39e'y]

と、ベクトル

1.62 2.23

||

[1.62ε'x  + 2.23ε'y]

の間を結びつけている何かがあります。

この例で言うと、

1 0.77
0.77 1

です。

これを「計量テンソル」といいます。

計量テンソルは

反変表示

計量テンソル

共変表示

のように、

共変基底をもとにしたベクトル表示(反変表示といいます)と、

反変基底をもとにしたベクトル表示(共変表示といいます)の

間を取り持つ仲介役といえます(注5)。

計量テンソルは、共変基底さえわかれば、公式を使って一発で算出できます。

 

具体例をみてみましょう。

正規直交基底

ex =(1,0)

ey = (0,1)

が、

e'x =(2,1)

e'y =(-0.5,0.25)

という新しい共変基底に変換されると、

ε'x =(0.25,0.5)

ε'y =(-1,2)

という反変基底があらわれます(どちらも元の直交基底をつかってあらわされています)。

この座標変換によって、計量テンソルは、正規直交座標をあらわす

1 0
0 1

から

5 -0.75
-0.75 0.31

に変換されます。また、この座標変換によって、もとの直交座標で

4
-1

||

[4ex - 1ey]

とあらわされていたベクトルは、新しい座標系では、ベクトル

0.5 -6

||

[0.5e'x - 6e'y]

とあらわされることになります。

これを反変表示といいます(反変表示は共変基底をつかってあらわされます)。

新しい反変基底をもとにすると、ベクトル

7 -2.25

||

[7ε'x - 2.25ε'y]

になります(共変表示といいます)。

この反変表示

0.5 -6

||

[0.5e'x - 6e'y]

と共変表示

7 -2.25

||

[7ε'x - 2.25ε'y]

の間を結んでいるのが、計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.31

だ、というわけです。

 

さて・・・いよいよ話も佳境に入ってきました。

テンソルにはもうひとつ不思議な能力があります。

それは、スカラーやベクトルを生み出す「作用素」(=関数、写像)としての働きです。

わかりにくい話ですが、すごい話です。

どういうことかというと、

テンソルに、スカラーやベクトルなどの数字のセットを掛け合わせて、別の数字や数字のセットをつくったとき、

その、つくられた数字や数字のセットが座標系に依存しない、という話です。

いうなれば、

テンソルにスカラーやベクトルを作用させると異なるスカラーやベクトルが生成される

といえます。

座標系が異なっても、まったく同じものが生成されます。

なんか、伝わっていない気がしますが、すごい話なんです。

 

どうしてそんなことがおこるのかというと、

まずは、テンソルの成分が、そうなるよう、うまい具合に座標変換されます。

作用素自体(テンソル)が座標系に依存しないんです。

座標系に依存しない「作用素」はめちゃくちゃ役に立ちます。

このあたりは、もう、想像を絶する凄さなのですが、文章ではなかなかうまく伝えることができません。

 

がんばって具体例で話をしてみます。

たとえば正規直交座標のテンソル

5 -1
3 4

を考えてみます。このテンソルにベクトル

2 3

||

[2ex + 3ey]

を掛け合わせると、別の新しいベクトル

7 18

||

[7ex + 18ey]

がつくられます。行列にベクトルを掛け合わせただけのようにみえますが、

このプロセスが「座標系に依存しない」という話をしています。

どういうことかというと・・・

とりあえず、百聞は一見し如かず。

上記と同じことをまったく違う座標でやってみましょう。

まず、座標変換してみます。

正規直交座標の

ex =(1,0)

ey = (0,1)

という基底を、

e'x =(2,1)

e'y =(-0.5,0.25)

という共変基底に変換してみます。

すると、正規直交系で先ほど

5 -1
3 4

とあらわされていたテンソルが、新しい座標系では

7.25
-0.94
11 1.75

と表示されることになります(注6)。また、正規直交系のベクトル

2 3

||

[2ex + 3ey]

は、新しい座標系ではベクトル

2
4

||

[2e'x + 4e'y ]

と表示されます。では、この新しいベクトル

2
4

||

[2e'x + 4e'y ]

に新しいテンソル

7.25
-0.94
11 1.75

を掛け合わせてみましょう。すると、新しい別のベクトル

10.75
29

||

[10.75e'x + 29e'y ]

が得られます。このベクトルが、正規直交系のベクトル

2 3

||

[2ex + 3ey]

をテンソル

5 -1
3 4

に掛け合わせて生成されたベクトル

7 18

||

[7ex + 18ey]

とまったく同じなのだという話をしています。

 

ほんとうでしょうか?

確かめてみましょう。正規直交系のベクトル

7 18

||

[7ex + 18ey]

を新しい座標系で表示してみると、たしかに

10.75
29

||

[10.75e'x + 29e'y ]

という表示になります。つまり、

5 -1
3 4

は、ベクトル(座標系に依存しない存在)に作用して新しいベクトル(座標系に依存しない存在)を生成する能力をもち、かつ、その能力が座標系に依存しません。

このように「座標系に依存しない」能力はテンソルの最大の特徴だと言えます。

「と言えます」・・・などという言い方になるのは、

テンソルとは、そういう数字のセットに付けられた名前ではなく、数字のセットに対する「考え方」とか「テクニック」につけられた名前だと思うからです。

どんな行列でも、整然とした座標変換規則と結びついていれば、それはテンソルである・・・

といえるのではないでしょうか。

 

文章で説明していると、だんだんわけがわからなくなってきます。

が、いずれにしろ、このように、座標変換にともない適切に成分変化させよう!そうやって物理量を不変に維持しよう!ってのがテンソルの気持ちです。

アインシュタインがテンソルを使って一般相対性理論を完成させたのもそういうモチベーションだったと思います。

テンソルと行列の違いがわかれば、テンソルを使ってみようかな?

という気がしてくると思います。

興味がわいたら専門書を開きましょう。いっぱい添字がでてきて天手古舞するかもしれませんが、しかし、本来、添え字の上げ下げなんて、枝葉末節なことなんです(注7)。

(なんて言うと、専門家から怒られますかね・・・汗)

テンソルの定義や壁にぶちあたり、そこで無用に長い時間を消耗するのはもったいないと思います。

テンソルとは何?という状態から1日でも早く脱出し、できるだけテンソルを使いこなす側にまわりたいものです。

 


 

リンク:アインシュタインの一般相対性理論

 



(注1)

基底には「かたち」があります。

どういうことかというと・・・

ベクトルでは、「縦ベクトル」と「横ベクトル」のようにベクトルの「かたち」を区別することがありますよね?

その「縦ベクトル」と「横ベクトル」の基底(ex、ey、εx、εy)は以下のように考えることができます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20210301161201.png
この考え方がテンソルの基底に深く関係しています。

ベクトルの基底を考えると「縦ベクトル」と「横ベクトル」の2つのベクトルを区別するのと同様に・・・

テンソルの基底を考えると、4つのテンソルを区別できます。

どういうことかというと・・・

4つの成分をもつテンソルについて、縦基底と横基底の組み合わせを考慮するのです。

すると、以下のように16種類の基底のパターンというか「かたち」を考えることができます。

「横ベクトルが縦に並んだ2x2型」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensorbase1.png

「縦ベクトルが横に並んだ2x2型」

Tensorbase2_20201110005501

「縦ベクトルが縦に並んだ4x1型」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensorbase3.png

「横ベクトルが横に並んだ1x4型」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensorbase4.png

下付き文字で縦基底、上付き文字で横基底を区別しました。

この基底の「かたち」を踏襲してテンソルを表現すると、全体として以下の4種類のテンソルの「かたち」を区別することができます。

A exεx     B exεy 
C eyεx     D eyεy 

||

A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy

 

A εxex
B εxey
C εyex
D εyey

||

A εxex + B εxey + C εyex + D εyey

 

A exex
B exey
C eyex
D eyey

||

A exex + B exey + C eyex + D eyey

 

A εxεx     B εxεy C εyεx     D εyεy

||

A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy

上から

(1,1)-テンソル

(1,1)-テンソル

(2,0)-テンソル

(0,2)-テンソル

などともよばれます。

初学者的には、こういうテンソルの「かたち」を丁寧に区別しながら説明してくれる解説がもっとも親切な解説でしょう。

しかし、これらテンソルの「かたち」をいちいち絵的に区別して表現するのはなかなか煩雑です。

なので、基底を区別したうえで、以下のように2x2型で表記してしまうのがふつうです。

A B
C D

||

A (xx) + B (xy)  + C (yx) + D (yy)

くわしく基底をつけてみると・・・

(1,1)-テンソル

A (exεx) B (exεy)
C (eyεx) D (eyεy)

||

A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy

 

(1,1)-テンソル

Axex) Bxey)
Cyex) Dyey)

||

A εxex + B εxey + C εyex + D εyey

 

(2,0)-テンソル

A (exex) B (exey)
C (eyex) D (eyey)

||

A exex + B exey + C eyex + D eyey

 

(0,2)-テンソル

Axεx) Bxεy)
Cyεx) Dyεy)

||

A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy

です。

一見、どれも同じ

A B
C D

にみえます。

が、基底さえ併記しておけば、もともとのテンソルの「かたち」はわかる人にはわかるはずなので(例えばこの注1を一度でも読んだ人には)、それでいいのです。

ベクトルだって同じですよね。基底さえ区別されていれば、いちいち「縦ベクトル」とか「横ベクトル」を絵で描かなくてもわかる人にはわかります。

専門書も、テンソルの「かたち」を絵的には区別してくれません。しかも、多くの場合、基底の併記すらありません。ではどうやって4種類のテンソルを区別しているのかというと、"添字"というテクニックで区別します。

 

(注2)

たとえば、

Aex + Bey

x + Dεy

という2つのベクトルがあるとします。つまり、

基底 ex の係数 = A

基底 ey の係数 = B

基底 εx の係数 = C

基底 εy の係数 = D

です。

この二つのベクトルから

無理やり exεx、exεy、eyεx、eyεy

という基底をつくろうとおもえば、その係数は・・・

基底 exεx の係数 = AC

基底 exεy の係数 = AD

基底 eyεx の係数 = BC

基底 eyεy の係数 = BD

になります。

つまり

AC exεx、AD exεy、BC eyεx、BD eyεy

です。

なので、逆から考えると、

5、ー1、3、4

という数字の組み合わせを考えるということは、

5exεx、ー1exεy、3eyεx、4eyεy

を考えることであり、すなわち

AC = 5

AD = -1

BC= 3

BD = 4

となるA, B, C, Dを考えている、ということです。

しかし、念のため言っておきますが、そういうA、B、C、Dはありません。

連立方程式は解けないのです。

にもかかわらず・・・

それが存在すると考えることによって、どういうわけか(AC, AD, BC, BD)=(5,-1,3,4)の座標変換が可能になるのです。

 

(注3)

たとえば、ベクトル

2 3

は、x方向に1つの成分、y方向にも1つの成分を含む物理量です。

では、x方向に2つの成分、y方向にも2つの成分を含む物理量はどうあらわしたらいいでしょうか?

たとえばx方向に

5 -1

という成分、y方向に

-1 4

という成分を持つ物理量です。

こういう成分をどうあらわしたらいいでしょうか?

これを・・・まるで

5
-1

を一塊とみなし、

3
4

も一塊とみなし、それを横ベクトルのように並べて

5
-1
3
4

としてあらわしてみたらどうだろう?

というアイデアがテンソルの源流にあると思います。

基底をつけてみると・・・

5
-1

||

5 ex -1 ey

 

3
4

||

3 ex + 4 ey

ですよね?これを無理やり横に並べてみると

5
-1
3
4

||

(5,-1) εx + (3,4) εy

となります。わかります?縦と横の基底を区別しました。

これを展開すると、

(5 ex -1 ey )εx +(3 ex + 4 ey )εy

||

5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey

||

5 εxex
-1 εxey
3 εyex
4 εyey

となります。

基底のセット

εxex
 εxey
εyex
εyey

 

はこうして作られます。

この

5 εxex
-1 εxey
3 εyex
4 εyey

5 -1
3 4

||

5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey

とあらわしても、べつに基底をつけてあらわせば何ら問題はありません。

いや、そうすると縦にみるのか横にみるのか混乱するなぁ・・・というクレームを避けるために、専門家は添字というテクニックを使ってこれらを巧みに区別します。

なんかふ~んって感じかもしれません。が、

このようにあらわすと、何かとうまく表現できる物理量があるんです。

同様に、ある座標系で、x方向に(5,-1,2)、y方向に(3,4,1),z方向に(2,-3,5)みたいな物理量を、とりあえず

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

のようにあらわすわけです。

このとき頭の中にあるのは、

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

です。

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

||

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

です。ひとつひとつ説明すると、

5
-1
2

||

5ex -1ey + 2ez

 

3
4
1

||

3ex + 4ey + 1ez

 

2
3
5

||

2ex -3ey + 5ez

という3つの「縦ベクトル」を3つの数字とみなし「横ベクトル」をつくります。縦ベクトルの基底を(ex、ey、ez)、横ベクトルの基底を(εxεyεz )とします。すると・・・

5
-1
2
3
4
1
2
3
5

||

5 ,-1,2)εx  + (3,4,1)εy  + (2,-3,5)εz

||

5ex ,-1ey ,2ez)εx  + (3ex ,4ey ,1ez)εy  + (2ex ,-3ey ,5ez)εz

||

5ex -1ey + 2ezεx  + (3ex + 4ey + 1ezεy  + (2ex -3ey + 5ezεz

||

(5εxex -1εxey + 2εxez) + (3εyex + 4εyey + 1εyez)  + (2εzex -3εzey + 5εzez

||

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

になりますよね?これを・・・

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

||

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

とあらわすわけです。

もし、

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

とだけしか情報がなければ、

5exεx -1exεy + 2ex εz + 3eyεx + 4eyεy + 1eyεz + 2ezεx -3ezεy + 5ezεz

なのか

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

なのか

5exex -1exey + 2exez + 3eyex + 4eyey + 1eyez  + 2ezex -3ezey + 5ezez

なのか

5εxεx -1εxεy + 2εxεz + 3εyεx + 4εyεy + 1εyεz + 2εzεx -3εzεy + 5εzεz

なのか・・・それ以上は、わかりません。

でも、その基底の組み合わせが ε e だとわかれば、その正体は

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

||

5
-1
2
3
4
1
2
3
5

だな・・・

ということがわかり、x方向に(5,-1,2)、y方向に(3,4,1),z方向に(2,-3,5)みたいな物理量かな・・・と考えることができます。

慣れないうちは、ひとつの方向に複数の成分を考えるのは難しいかもしれません。

しかし、それがテンソルの絵的なイメージの源流にあると思います。

 

(注4)

実はこのとき、

2.61 -1.66
3.80 6.39

||

[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80 e*yε*x + 6.39e*yε*y]

 

の他に、もうひとつ、

7.38 -2.42
4.56 1.62

||

[7.40ε*xe*x - 2.42ε*xe*y + 4.56ε*ye*x + 1.62ε*ye*y]

というテンソルができています。というか、このふたつのテンソルは、表示が違うだけでどちらも同じテンソルです。同じテンソルに2種類の表示ができてしまうのです。

斜交座標ではこういうことがおこります。

 

(注5)

斜交座標では、共変基底と反変基底がでてきて非常に面倒なのですが、共変基底による成分表示を一発で反変基底による成分表示に変換する便利な行列関数があります。それが計量テンソルです。共変基底や座標軸の傾き情報が与えられると、計量テンソルは一発で計算できます。

たとえば、x軸から30度、y軸から30度歪んだ座標系の計量テンソルは、

1 √3/2
√3/2 1

です。この計量テンソルをつかえば、共変基底による成分表示から反変基底による成分表示に一発で変換できます。計量テンソルは、このように何か間をとりもつ関数みたいなものですが、実は、計量テンソルこそが座標の性質のすべてを決める主役なのです。

 

(注6)

注4で述べた理由と同じ理由により、テンソル

7.25
-0.94
11 1.75

は、同時に

4.25
-9
0.31 4.75

とも表示できます。見た目が違いますが、どちらも同じテンソルです。

両者を基底をつけてあらわすと、

7.25
-0.94
11 1.75

||

[7.25e'xε'x - 0.94e'xε'y + 11e'yε'x + 1.75e'yε'y]

4.25
-9
0.31 4.75

||

[4.25ε'xe'x - 9ε'xe'y + 0.31ε'ye'x + 4.75ε'ye'y]

です。このテンソル

4.25
-9
0.31 4.75

に、ベクトル

2
4

||

[2e'x + 4e'y]

の共変表示

7
-0.25

||

[7ε'x - 0.25ε'y]

を掛け合わせると、ベクトル

32
1

||

[32ε'x + 1ε'y]

が得られます。本文中のベクトル

10.75
29

||

[10.75e'x + 29e'y]

の共変表示は

32
1

||

[32ε'x + 1ε'y]

です。すごいですよね。

このあたりが理解できてくると、テンソルに何ができるのか?

がみえてくると思います。

そういうことを可能にするのがテンソルです。

 

(注7)

座標上の2つのベクトルを比べるとき、もし両者の基底ベクトルが同じなら、成分の違いはベクトルの違いを意味します。しかし、極座標のように座標とに基底ベクトルが異なる場合には、成分の違いが必ずしもベクトルの違いをあらわしているとは限りません。そのため、異なる基底ベクトルをもつ2つのベクトルを比較するときは、基底の違いを補正する必要があります。その係数が補正係数クリストッフェルです。これによって正味の成分変化を知ることができるようになります。

たとえば、直交座標で点(2,1)を起点とするベクトル

1 1

と、直交座標で点(3,2)を起点とするベクトル

1 1

は、両方とも同じ大きさと方向をもつベクトルであることが一目瞭然です。

これは、直交座標上の点(2,1)と点(3,2)では、どちらも、基底が

ex =(1,0)

ey =(0,1)

であるために、成分が素直にベクトルの違いを反映するためです。

しかし、極座標では、直交座標上の点(2,1)は点(2.24,0.46)とあらわされ、その基底ベクトルは、

e'x =(0.89, 0.45)

e'y =(-1, 2)

です。

また、直交座標の点(3,2)は、極座標では点(3.61,0.59)であり、その基底は、

e'x =(0.83, 0.56)

e'y =(-2, 3)

になります。

このように極座標では局所局所によって、基底ベクトルが異なります。

これがベクトルの比較を非常に難しくします。

直交座標で点(2,1)を起点とするベクトル

1 1

||

[1ex + 1ey]

は、極座標からは、点(2.24,0.46)を起点とするベクトル

1.34 0.20

||

[1.34e'x + 0.20e'y]

にみえ、

直交座標で点(3,2)を起点とするベクトル

1 1

||

[1ex + 1ey]

は、極座標からは、点(3.61,0.59)を起点とするベクトル

1.39 0.08

||

[1.39e'x + 0.08e'y]

にみえます。

直交座標では同じ大きさと方向をもつことが一目瞭然である2つのベクトル

1 1

||

[1ex + 1ey]

が、極座標であらわされると、

1.34 0.20

||

[1.34e'x + 0.20e'y]

とか、

1.39 0.08

||

[1.39e'x + 0.08e'y]

のように、成分のみためがぜんぜん違うベクトルのような表現になってしまいます。

しかし、ほんとうは、これらは同じ大きさ、同じ方向をもつベクトルなのです。

極座標では局所局所によって基底が変化してしまうため、このような事態がおこります(極座標については⇒こちら)。

この基底の変化を補正し、ベクトルの比較を容易にするのが共変微分です。

 

(注8)

座標の1点1点に値(スカラー)が設定されているものをスカラー場といいます。

点 =「数字が入っている箱」と考えるとこんな感じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field1.png

スカラー場のある1点から上下左右をみると、上下左右に違う数字がみえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field2.png

その上下の差と左右の差を1組にして数字のセットとすると、1点1点ごとに、1組の数字のセットを設定することができます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field3.png

このように、1点に1組の数字のセットが設定されている・・・それをベクトル場といいます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field4.png

スカラー分布が滑らかで微分可能な時、スカラー場を微分するとベクトル場になります。

つぎに、あるベクトル場の1点(スカラー場の1点ともいえます)から上下左右をながめると、上下左右に違うベクトルがみえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field5.png

その上下の差と左右の差を数字のセットとして、1点1点ごとに、上下左右のベクトルの差を意味する数字のセットを設定します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field6.png

すると、テンソル場になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field7.png

ベクトル分布が滑らかで微分可能な時、ベクトル場を微分するとテンソル場になります。

 

(注9)

テンソルって何?という質問に対し、2つのベクトルを「ある特殊な掛け算」で掛け合わせてできたものだ!というきわめて抽象的な定義があります。

初めて聞いた人にはまったく意味不明・・・最悪中の最悪な定義でしょう。

けれども、これがもっとも恣意性のないテンソルの定義のような気がします。

テンソルを2つのベクトルの積からつくるのですが、内積でも外積でもありません。普通の積じゃないのです。

その特殊な掛け算を「テンソル積」といいます(計算式⊗)。

いいかえるとテンソルとはテンソル積(計算式⊗)という特殊な計算で造られた数字の組み合わせです。

テンソル積(計算式⊗)は、行列積と同じ?と思われることがありますが全然違います。

できあがったテンソルは、まるで行列と区別がつきません。行列同士との掛け算や和算など計算の仕方やルールなども、まるで行列です。

しかし、テンソル積(計算式⊗)は、ベクトルや行列で使われる、よくあるルールとは全く違った計算です。

よくよく注意してください。大事なところなので繰り返します。特殊な計算です。

特殊な計算・・・とは言っても、計算は極めて機械的で、ベクトルの成分をそれぞれ全部掛け合わせるだけ。

数字だけをみると、直積と同じです。

直積と違うのは「基底」を伴っている点です。

 

テンソル積(計算式⊗)の概念を無理やり図示してみると下記のようになります。成分の「1」はベクトルの第一成分、成分の「2」はベクトルの第二成分です。

「縦ベクトル」⊗「横ベクトル」

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product21_20200314040301.png

 

「横ベクトル」⊗「縦ベクトル」

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product22.png

 

「縦ベクトル」⊗「縦ベクトル」

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product23.png

 

「横ベクトル」⊗「横ベクトル」

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product24.png

気をつけてみてください。内積とも外積とも違いますよね?行列積ともまったく違います。ベクトルのふたつの成分同士をすべてかけ合わせて4つの数字をつくります。つまり、できあがる数字のセットは直積と同じです。しかし直積と違って、来上がった数字に基底の「かたち」(縦ベクトルか横ベクトルか・・・)が関連付けされます。

このように、もとになるベクトルが「縦ベクトル」か「横ベクトル」かを区別することによって、2つのベクトルから「テンソル積」によって4種類のテンソルが造られます。

専門家は「縦ベクトル」とか「横ベクトル」とか「かたち」などという野暮な表現を使いません。これらを添字で区別します。

(「縦ベクトル」と「横ベクトル」ではなく、共変ベクトル、反変ベクトルと言うことがあります・・・)

そもそも「縦ベクトル」と「横ベクトル」を区別して考えることができるなら、添字を使う必要はないんです・・・

できあがったテンソルをみると、最初に投入された2つのベクトルの縦横の違いによって、できあがったテンソルの「4つの成分」の並び方というか、基底の絡み方というか、テンソルの形に、4つのパターンが生じており、上から、

(1,1)-テンソル

(1,1)-テンソル

(2,0)-テンソル

(0,2)-テンソル

などともよばれます。

できあがったテンソルのカッコの中にもう一つかっこがあります。1つのかっこを1つの成分とみなせば、できあがったテンソルは、2つのベクトルを成分にもつベクトルとも言えます(ベクトル in ベクトル)。

(この「ベクトル in ベクトル」を専門用語で、区分行列とかブロック行列とか言うようです)

4つのテンソルをよ〜くみると、

「横ベクトルが縦に並んだテンソル」

「縦ベクトルが横に並んだテンソル」

「縦ベクトルが縦に並んだテンソル」

「横ベクトルが横に並んだテンソル」

になっていることがわかると思います。

上の図では、添字がに慣れてない人のために、添字をつかわず、「縦ベクトル」や「横ベクトル」を区別しながら、入れ子構造になったベクトルの並び方によってこの4つのパターンの違いを表現しましたが、専門家はこの4つの「かたち」を、すべて2x2行列で表現し、"添字" を使って区別します。

添字を使ったテンソルは、添字がふえていけばいくほど高階(立体的→4次元的→・・・)になっていきます。

「ベクトル in ベクトル」を使ったテンソルは、2次元的に展開できるスペースさえ与えられれば高階のテンソルをいくらでも紙上に図示できます。

そんな紙面の無駄を数学者や物理学者が好むはずもなく・・・

どの専門書もすべて同じ(2x2)形式であらわされ、「かたち」の違いは添字で区別する流儀です。

なので、初学者にはとてもわかりにくい。

非常に大事な4つの「かたち」を、みづらいほど小さな「添字」を使って区別する・・・

数学とは、わかる人だけついてこい、という冷たい学問であることを痛感する一例です。

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【図解】計量テンソルって? The Metric Tensor 基礎の基礎

計量テンソルって、簡単に言うと、あらゆる三角形で「三平方の定理」を成り立たせる魔法の数字なんですが・・・


ふつう、みなさんが習った「三平方の定理」はコレですよね?

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/1_20200131013801.png

直角三角形のときに成り立つ3辺(A,B,C)の関係式です。

同じような式が、直角三角形じゃなくても、成り立つんじゃないか?

そんなことを考えた数学者はいっぱいいました。

素人的には、下記の係数をいろいろ変えるとうまくいくかも?・・・と思いますよね?

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-5.png

実際、まぁそんな感じで・・・

今では、

つぎの式が「どんな三角形」でも成り立つことがわかっています。

aA・A  +  bA・B  +  cB・A  +  dB・B = C2

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-6.png

先に言っちゃうと計量テンソルはこの係数と深い関係があります。覚えておいてください)

この式が、ありとあらゆる三角形で成り立つわけです。まさに三平方の定理「上級バージョン」です。

aA・A  +  bA・B  +  cB・A  +  dB・B = C2

4つの係数(abcd)の値は三角形ごとに異なりますが、カンタンに求めることができます。

 

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-4.png

行列を使って式を書き直すと、もっとスッキリします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/3_20200131013801.png

三平方の定理「上級バージョン」のスッキリ系です。

わかりやすくなったような、わかりにくくなったような・・・

先にも述べたように、この行列というか係数(a、b、c、d)

a b
c d

は、三角形をみただけでカンタンにわかります。

 

言い方をかえれば、この(a、b、c、d) 

a b
c d

が、三角形の形を決めている、ともいえるのです

 

たとえば、∠AB の外角が cosθ だけ歪んでいる三角形の場合、(a、b、c、d) は、

1 cosθ
cosθ 1

になります(証明は下図参照。または余弦定理から求めることもできます)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/6_20200131013801.png

つまり、あるひとつの外角 「θ」。

これさえわかれば、一発で(a、b、c、d) の値 を求めることができます。

たとえば、θ=60°の場合、(a、b、c、d) の値は、

1 0.5
0.5 1

です(cos60° = 0.5)。

つまり、

θ=60°であれば、どんな三角形でも、必ず、

1A・A  +  0.5A・B  +  0.5B・A  +  1B・B = C2

が成り立ちます。(┓゜A゜)┓

ウソだと思う方は、適当に自分で三角形の絵をかいて確かめてみてください。

必ずそうなります。

自分で確かめたくない方は・・・

信じてもらうしかありません(苦笑)。

 

これがわかってくると、逆に、

1A・A  +  0.5A・B  +  0.5B・A  +  1B・B = C2

という式、あるいは、

1 0.5
0.5 1

という係数をみただけで、どんな三角形の話をしているのかわかるようになります。

 

たとえば(a、b、c、d) が

1 0
0 1

なら、直角三角形(∠AB = 90°)です。

その証拠に、式を展開すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/7_20200131013801.png

と、典型的な三平方の定理になります。

極論すると、みなさんが学校で習った三平方の定理は、

aA・A  +  bA・B  +  cB・A  +  dB・B = C2

の特殊バージョンにすぎないわけです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/ver2-7.png

ーーーーー ーーーーー ーーーーー

 

さて・・・

ここで、ちょっとだけ頭を切りかえましょう。

今まで、三角形で話をすすめてきましたけど、

下の図をみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-1.png

三角形をベクトルに置き換えました。

よ~くみると、三角形の辺Aと辺Bの長さって、ベクトル C の成分と考えることができますよね?

すると、

A2 + B2 = C2

という式は、

ベクトルの成分と大きさの関係をあらわしている

とも、いえます。https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-7.png

よね? では・・・

こういう式が成り立つのは座標が直交しているときだけでしょうか?

今のあなたは、こうも考えることができるのではないでしょうか?

座標が直交でないときにでも、(a、b、c、d)をうまく選べば、次の式が成り立つはずだ・・・と。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-2.png

(A,Bはベクトルの成分、Cはベクトルの大きさ)

数学者もそう考えました。

先ほど、三角形の形を決めていると述べた係数(a、b、c、d)

a b
c d

は、斜交座標の角度に関係しているはずです。

その意味で使うとき、係数(a、b、c、d) を

a b
c d

を計量テンソル the metric tensor といいます。

座標ごとに定まる数字の組み合わせです。

この数字(a、b、c、d)が座標の形を決めている・・・

ともいえるのです。

たとえば、直交座標では、(a、b、c、d) の値は

1 0
0 1

になります。

しかし、斜交座標では、そうはなりません。

たとえば、下図のようなx軸とy軸の角度がθのとき、その座標の計量テンソルは

1 cosθ
cosθ 1

になります(注1)。https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-3.png

三角形の外角(θ)が、ちょうどx軸とy軸の角度(θ)と一致します。三角形のときと同じ話をしていることがわかるはずです。

三平方の定理「上級バージョン」は、ベクトルの成分とサイズの間の関係式としても成立するのです。

 

具体例でみていきましょう。

上図で x軸とy軸の角度 θ=60°の場合、計量テンソルは、

1 0.5
0.5 1

ですよね。

すると、この座標系では"どんな"ベクトルでも、

1A・A  +  0.5A・B  +  0.5B・A  +  1B・B = C2

が成り立ちます。

 

ほんとうでしょうか?

たとえば、ベクトル(2.14,3.57)を考えてみましょう。

このベクトルを θ=60°の座標にプロットしてみると、ベクトルのサイズは5であることがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/ver5_1.png

しかし、いわゆる一般的な三平方の定理(ベクトルの成分と大きさの関係式)は成り立ちません。

(2.14) + (3.57) ≠ (5)

ところが・・・

さきほどの計量テンソル

1 0.5
0.5 1

を作用させると、

・(2.14) + 0.5・(2.14)・(3.57)+ 0.5・(3.57)・(2.14) +・(3.57) = (5)

と、見事に式が成立します。

 

つぎに、直交座標で考えてみます。直交座標の計量テンソルは

1 0
0 1

です。なのであらゆるベクトルに対して、

1A・A  +  0A・B  +  0B・A  +  1B・B = C2

が成り立つはずです。

たとえば、ベクトル(4,3)の場合・・・

1・(4) + 0・(4)・(3)+ 0・(3)・(4) +1・(3) = C2

なので

(4) + (3) =  C2

故に

C = 5

と、ベクトル(4,3)のサイズは5であることが予測されます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/ver5_2.png

実際、直交座標のベクトル(4,3)のサイズは5です。

このように、計量テンソルがわかると、ベクトルのサイズを計算することができます。

 

ベクトルのサイズを測る

というのは、

2点間の距離(サイズ)を計るーーー計量するーーーことと同じです。

 

実は、

このベクトル(4,3)@ θ = 90°

と、

前述したベクトル(3.57,2.14)@ θ = 60°

は、

成分としての表示が違ってみえますが、実は、

全く同じベクトルです。

 

同様に・・・

斜交座標( θ=60° )の計量テンソル

1 0.5
0.5 1

と、

直交座標( θ=90° ) の計量テンソル

1 0
0 1

も、違ってみえますが、実は両方とも

1 cosθ
cosθ 1

という同じテンソルだといえます(ここはちょっと異論がある専門家もいるかも・・・)。

 

いずれにしろ、

ベクトルも計量テンソルも、座標変換に応じて自動的にその成分が変換され・・・

結局、以下の式はいつでも成り立つ

といえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-2.png

ーーーーー ーーーーー ーーーーー

計量テンソルは"2点間の距離"を正しく測定する(どんな座標系においても三平方の定理を成り立たせる)ために欠かせない数字のセットです。

だから"計量"という言葉がついています。

しかも・・・

計量テンソルは、テンソルという名前がついているだけあって「テンソル」という"座標変換に耐える形式"になっているところがすごいところです。


なぜ「テンソル」だとすごいのか?・・・

テンソルについては → こちら


 

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そのほか、計量テンソルには・・・

ある計量テンソルにベクトルを作用させると、必ず元のベクトルになる(ベクトルを動かさない!)という驚くべき性質があります(注2)

数字でいうと「1」みたいなものです。

 

最後に、ちょっとだけ「内積」との関係について話をします。

「内積」って、直交座標でしか計算できないと思っていたら、次のように計量テンソルを挟み込むことによって、斜交座標でも計算できるんです(注3)。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20200706213201.pngベクトル(A, B)とベクトル(C, D) というベクトルの「内積」の上級バージョンというか・・・

こうやって計量テンソルを間にはさみ込む決まりにすれば「内積」の結果をどんな座標変換に対しても不変に保つことができます。

すごいと思いません?

だって、たとえば

「内積」=一定

という式によって、数学の世界では直線や平面をあらわすわけです。

なので、この「内積」 の上級バージョンを使えば、直線や平面を座標に依存しない形であらわすことができます。

アインシュタインは、計量テンソルのこの性質を利用して「空間の歪み」を座標系に依存しない形で表すことに成功したのです(一般相対性理論)。

 

リンク:アインシュタインの一般相対性理論

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-6.png


注1:この記事は、基底のサイズが常に「1」である場合を考えています。しかし、もちろん、基底のサイズは常に「1」である必要はありません。

計量テンソルは、座標軸の角度(θ)だけでなく、座標軸の基底のサイズの影響もうけます。たとえば、x軸が+30度、y軸が-30度偏位した座標の計量テンソルは、基底サイズが「1」のときは

1 √3/2
√3/2 1

です。しかし、たとえば、x軸が+30度、y軸が-30度偏位し、基底のサイズが「√2」のときは、その座標の計量テンソルは、

2 √3
√3 2

になります(いわゆるローレンツ変換をうけたような座標です・・・)。こういうのを勉強するのが計量テンソルの勉強です。

注2:厳密にいえば、斜交座標をあらわす計量テンソルにベクトルを作用させると、やはり、ベクトルの成分表示は変化してしまいます(変化したようにみえます)。しかし、ベクトル表示の形式が(反変表示から共変表示に、あるいは共変表示が反変表示に)変わっただけで、ベクトルの絶対的な方向や大きさは計量テンソル作用前と作用後で不変です。

共変ベクトル・反変ベクトルについては → こちら

注3:計量テンソルを挟み込む内積の上級バージョンは、一方のベクトル表示を反変表示⇒共変表示に変換、あるいは共変表示⇒反変表示に変換すれば、高校数学で教わったふつうの内積(ただの成分同士を掛け合わせ合算する)計算と同じになります。


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