初学者が混乱するポイントが2つあると思います。
1.ベクトルには2種類ある ⇒ 反変ベクトルと共変ベクトル
2.ベクトル表示にも2種類ある ⇒ 反変表示と共変表示
ポイントは、1と2は別々の話であるということです。反変ベクトル は 反変表示、共変ベクトル は 共変表示、などという単純な話ではありません。
反変ベクトル、共変ベクトルのどちらにも、反変表示と共変表示という2つの表示があります。
全体の関係は・・・
反変ベクトル |
↔ |
共変ベクトル |
反変表示 |
↔ |
共変表示 |
共変表示 |
↔ |
反変表示 |
みたいになってます。
こんな全体の関係図を、頭の片隅に置いて勉強するのが理解の早道だと思います。
(最初は意味なんてまったくわからなくても)
というか・・・この表がけっこう結論・・・というウワサも (^▽^;)

さて。
空間に浮かんでいる矢印。

ここに、座標軸を置いてみます。すると・・・

矢印の大きさや方向をあらわすことができます。
この座標軸がくるっと動いても・・・

矢印は動かない・・・とします。
このように、座標軸の動きに影響をうけない「もの」をベクトルとかスカラーとかテンソルと言うなら、この赤い矢印はベクトルと呼んでもいいのではないでしょうか。
少なくとも、座標軸と一緒に動いてしまうものはベクトルとは言いません。
ベクトルとは、座標系に依存しない、座標を超越した存在です。
重要なことなので繰り返します。
ベクトルは、座標軸がうごいても(それだけでは)、まったく"回転しない”し、”歪まない"し、"動きません"。このことを肝に銘じておいてください。

さて、ここからは2次元世界で考えます。今、平面上に下図のようなベクトルがあるとします。

このベクトルの大きさと方向を表現したいなら、何か座標軸を与えるのが流儀です。適当に、x軸、y軸をとります。

べつにx軸が水平でなくてもいいのです。
この座標のとりかたは、自由です。直交でなくても。下図のように設定してもいいでしょう。

ま、しかし・・・こうすると面倒くさいだけなので、ここでは、とりあえずベクトルの端を原点に合わせましょう。

次に、基底(目盛り)を2方向(上下方向、左右方向と二次元ですから2方向)とると、ベクトルの2つの成分が決まります。基底(目盛り)の大きさは自由ですが、1つの目盛りを「1」とします。

こうやってはじめて、このベクトルを、"この座標系" で(2,3)とあらわすことができます。
では、座標系というか、基底を下図のように設定したら、ベクトルはどうなるでしょう?

座標の基底(赤い矢印)が変わりました。
しかし、緑の矢印の大きさや方向(ベクトル)に変化はありません。
新しい座標では、この赤い矢印を、それぞれサイズ「1」の基底と考えます。
すると、このベクトルは(0.6,0.8)などと表示されることになるでしょう。

このベクトル(0.6, 0.8)は、さきほどのベクトル(2, 3)と同じベクトルです。
よね・・・?
こういわれるとわからなくなる人がいるようですが、"ベクトル"とはこの図の緑の矢印本体のことです。
その成分表示が(2, 3)から(0.6, 0.8)へ変わったからといって、ベクトル(緑色の矢印)そのものが変化したわけではありません。
変わったのは基底であって、ベクトルは変化していません。
基底の変化によって、成分表示が変化してしまっただけです。
これを、
(2,3)=(0.6,0.8)
と、表現してしまうと、おかしなことになります。
きちんと表そうと思えば、
新しい基底(赤い矢印)を、元の基底(青い矢印)であらわすと(2,1)と(1,3)であることを調べ、
そこをふまえて、
2(1,0)+3(0,1)=0.6(2,1)+0.8(1,3)
みたいに書かなければいけません。
このように・・・
座標軸(基底)が変わったとき、いったい、どのように成分を変化させれば、ベクトルを動かさずにあらわし続けることができるだろうか? ⇐こういうのがベクトルやテンソルの勉強です。
ちなみに、上の図のような矢印ベクトルを、反変ベクトルといいます(基底のサイズが大きくなるにつれて、表示される成分の値が小さくなるので反変というそうですが、いまいちピンときませんよね、反変、共変は意味なく覚えてしまってください、以後同)。
「反」という字がついていますが、ふつうのベクトルです。みなさんが中学・高校で習ったベクトルはすべて反変ベクトルです。
また、この反変ベクトルを表示するときに基準となった基底(前述の青い基底や赤い基底)を共変基底といいます。みなさんが中学・高校で習った基底はすべて共変基底です。
そして、共変基底でベクトルのサイズと方向をあらわすことを反変表示といいます。みなさんが中学・高校で習ったベクトル表示はすべて反変表示です。
つまり、みなさんが高校で習ったベクトルは、反変ベクトルの共変基底による反変表示なのです。
なんで、今、名前にこだわっているのかというと・・・共変基底には、その対になる反変基底が存在するからです。
(専門書では、共変基底を ex、ey、反変基底を εx、εy などと記号であらわして解説をすすめることが多いですが、本記事ではなるべく記号を使用しないようにします)
反変基底とは
さぁ、ここから、少しややこしい話になります。たとえば上図で示した赤い共変基底について、

その反変基底がどこにあるかというと・・・ここにあります。

この黄色い点線の上です。黄色い点線は、互いに赤い共変基底と直交しています。わかりますか?どことどこが直交しているのか、よ~くみないとわかりませんよ。そして・・・

これが反変基底です。大きさは、赤い共変基底(直交していないほう・・・)との内積が「1」になるように決定します(注1)。
(反変基底は、わざわざ作図しなくても、勉強すれば共変基底から計算で求めることができるようになります)
では、この反変基底で緑の矢印ベクトルをあらわすとどうなるのでしょう?

2つの反変基底のサイズを「1」として目盛りをうちなおします。すると・・・

ベクトル(7,11)になります。
このように、矢印ベクトルを、反変基底であらわすことを共変表示といいます(共変基底のサイズが大きくなるにつれて反変基底が小さくなり、結果として表示される成分の値が大きくなるので共変というそうです)。
つまり・・・
共変基底によってベクトル(0.6, 0.8)と反変表示されていた同じベクトルが、
反変基底を用いるとベクトル(7,11)と共変表示される
という話です。
ややこしい話ですよね。
このように斜交座標でベクトルをあらわすと、2種類の表示方法があります。
直交座標では、それらが一致するので区別する必要がなかったんです。
実はこの共変表示(7,11)は、この座標の計量テンソル
を使えば、さきほどの反変表示(0.6,0.8)から一発計算で求めることができます。
以上は、反変ベクトルの反変基底による共変表示の話です。
反変ベクトルの話をまとめます。
反変ベクトル
共変基底による反変表示
反変基底による共変表示
共変ベクトルとは
さて、これまでの解説は、ややこしいと言いながらも、少し勉強したことがある人なら、すいすい読めたかもしれません。他のサイトやテキストの内容とも大差ありません。
しかし。
ここから、もう一段、話がややこしくなります。
みなさん、共変ベクトルを図示せよ・・・といわれたら、どんなベクトルを描きますか?
共変+ベクトル・・・なんだから下図のような「共変表示されたベクトル」をイメージすればいいのでしょうか?

違うんです。これでは共変ベクトルを図示したとは言えません。
実は、
共変ベクトルのイメージは、こういう矢印ベクトルではちょっとダメなんです。世の中の解説の多くはここで混乱していると思います(・・・でなければ、読者を混乱させています(^~^;))。
いやいや、おマエさんが、これを「共変表示」と言ったではないか!とお叱りをうけそうですが、ベクトル(7, 11)・・・は、たしかに反変ベクトルの「共変表示」です。しかし、「共変ベクトル」を図示したものとは言えません。
ここがややこしいところで、ベクトル(7, 11)をそのまま矢印ベクトルとして図示してしまっては、共変ベクトルのイメージとはほど遠いものになります。
ややこしい話はすっ飛ばして、いつものように結論から述べましょう。
共変ベクトルをあえて図示すると、次の水色の等高線(みたいな縞模様)になります(注2)。

は?これがベクトル?
という声が聞こえてきそうですが・・・はい、これが「共変ベクトル」のイメージです。実は、共変ベクトルは矢印ではうまく図示できません。
ベクトル(7, 11)をそのまま矢印ベクトルとして図示してしまっては、反変ベクトル・・・になってしまいます。
共変ベクトルは、その元になっている反変ベクトル(下図)

とは、似ても似つかぬ姿・イメージをもっています。
ぜんぜん似ていませんが、しかし、もちろんお互い関係があります。
まず、方向です。
反変ベクトルの方向と共変ベクトル(上の図の等高線(みたいな縞模様))の方向は互いに直交します。平行というべきかもそれません。要するに、矢印の軸が縞模様の線と直交します。
次にサイズです。
反変ベクトルのサイズと共変ベクトル(等高線(みたいな縞模様))の間隔には、
1/反変ベクトルの成分 = 共変ベクトル(等高線(のような縞模様))の間隔
という関係があります。

反変ベクトルの反変表示は(0.6,0.8)ですから、まず
1/反変ベクトルの成分
を求めると、
1/0.6 = 1.67倍
1/0.8 = 1.25倍
となります。
反変基底にこの倍数を掛けると、共変ベクトル(等高線(のような縞模様))の間隔となります。

こんな感じで、共変ベクトルを斜交座標上に図示できます。
(図中の εx とか εy は反変基底のことです。1.67εx は、反変基底 εx の1.67倍のサイズ、1.25εy は、反変基底 εy の1.25倍のサイズです)
ちなみに、この 1.67 と 1.25 は、この共変ベクトルの成分ではありません(注3)。
本記事では、反変基底をつかって共変ベクトルを作図しましたが、実は、共変ベクトルは共変基底をつかって作図することもできます(注3)。
もし、斜交座標上にこれらの反変ベクトルと共変ベクトルを図示せよ・・・という問いがあれば、下記がその答えというか、その絵的な表現になるでしょうか。
反変ベクトル

共変ベクトル

こんな等高線(みたいな縞模様)がベクトルといわれて、納得できない人もいるかもしれません。
しかし、これが共変ベクトルのイメージなんです。
が、注意してください!
共変ベクトルが持っている情報は、座標全体の情報ではなく、ある特殊な領域に関する情報です。
その領域とは?
共変ベクトルの起点です。
共変ベクトルにも反変ベクトルのように起点があるんです。
えっと、それはどこでしょうか?上の絵ではわかりません。
何か座標上の点(7, 11)や点(0.6, 0.8)に関係しているのでは?と思うかもしれませんが、そうではありません。
反変ベクトルの起点と同じです。
上の図でいえば、座標軸の原点(緑の矢印の起点)が共変ベクトルの起点です。
なので、ほんとうは下図のように描いたほうがより正しいイメージに近いかもしれません・・・

考えてみれば、反変ベクトルを(0.6,0.8)などと表示するときも、その成分は矢印ベクトルの起点に関する情報であり、
ベクトル先端の点(0.6,0.8)の情報ではありませんよね。
共変ベクトルも反変ベクトルも、ベクトルが示しているのは、その起点の情報です。
このようにベクトルにはそもそも2種類あるのです。
ところで。
以下の二つのベクトルは、同じベクトルです。

||

斜交座標の都合上、反変表示(0.6, 0.8)あるいは共変表示(7, 11)と、表示形式が違うだけです。
なので、その内積は「ベクトルの大きさ」の2乗になります。
同じベクトル同士の内積は、その「ベクトルの大きさ」の2乗に一致する・・・というのは高校数学で習いましたよね?(習ったはずです・・・(;´^_^`))
すなわち、
(7,11)・(0.6,0.8) = 13
です。
つまり、このベクトルの大きさは√13です。
不思議なことに・・・
共変ベクトルと、元になった反変ベクトルを重ね合わせると、矢印が貫く等高線の数が「ベクトルの大きさ」の2乗に必ず一致します。

これは偶然ではありません。
一般に、どんな反変ベクトルでも、その共変ベクトルを重ねると、その矢印が貫く等高線(のような縞模様)の数はそれらのベクトルの「内積」に一致します(注4)。
なので、同じ由来である共変ベクトルと反変ベクトルを絵的に重ね合わせると、矢印が貫く等高線の数が「ベクトルの大きさ」の2乗に一致するのは・・・実はこれ、不思議ではなくあたりまえのことなんです。
さて、これまでの話で、以下の二つのベクトルが同じベクトルであるという話をしてきました。

||

むずかしい用語を使って言うと、
同じ反変ベクトルが、
斜交座標では反変表示(0.6, 0.8)とあらわされ
直交座標では反変表示(2, 3)とあらわされています。
では・・・
斜交座標で共変表示(7, 11)とあらわされている反変ベクトル(下図)は、直交座標では何とあらわされるでしょうか?

||
直交座標では?
?
答えは、共変表示(2, 3)です(下図)。

むずかしい用語を使ってまとめてみると・・・
斜交座標の反変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)
斜交座標の共変表示(7, 11)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)
です。
直交基底では共変基底と反変基底が一致するため、反変表示と共変表示も一致します。
直交座標上、反変表示(2, 3)のベクトルと、共変表示(2, 3)のベクトルは、どちらも同一の反変ベクトルであり、したがって、その内積は「ベクトルの大きさ」の2乗になります。
(2,3)・(2,3) = 13
直交座標上の内積では、反変表示と共変表示を区別する必要がありません。
では、先ほど、斜交座標で考えた共変ベクトル(下図)は、直交座標ではどのように表されるのでしょう?

実は、共変ベクトルを考えるのに何もわざわざ斜交座標で考える必要はありません(注5)。
共変ベクトルは、直交座標においてもまったく同じように図示することができます(下図)。

ただ、直交座標で共変ベクトルを説明しようとすると、反変表示と共変表示が同じになってしまい、話がかえってややこしくなります。
なので、共変ベクトルについてはわざわざ斜交座標を導入して理解する、というのが、まぁ、常套手段なんです。
反変ベクトルも共変ベクトルも直交座標上にあたりまえのように存在するのです。

後半、何が言いたいのか、伝わってない気もしますが・・・(汗)
ベクトルにとって、座標軸はどうでもいいのです。
絵的に考えれば、反変ベクトルと共変ベクトルの関係は、非常にシンプルで、
1.互いに直交(というか平行?)
2.「反変ベクトルが共変ベクトルを横切る数」= (反変ベクトルのサイズ)2
というだけです(注7)。
最後に簡単なクイズをだして終わりにします。下図に、反変ベクトルとその共変ベクトルを示します。この反変ベクトルのサイズはいくつでしょうか?

簡単ですね。サイズは√10です。10本貫いてますからね(間隔が10)。
面白いですよね。
座標軸もないのにサイズがわかるのです。
逆に、ベクトルのサイズが決まっているなら、共変基底を与えるだけで、反変基底、座標軸などはあとから自動的に定まります。
ベクトルは反変ベクトルと共変ベクトルという一組のセットで座標系から完全に独立します。
というより、
ベクトルは座標を超越した存在なんです。
(おしまい)
反変ベクトル |
↔ |
共変ベクトル |
共変基底による反変表示 |
↔ |
反変基底による共変表示 |
反変基底による共変表示 |
↔ |
共変基底による反変表示 |
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(注1)
反変基底を作図するためには、まず、ふたつの赤い共変基底(exとey)のサイズを決定する必要があります。ここは一番わかりにくいところです。このふたつの赤い共変基底は、その座標系においては(1, 0)と(0, 1)という基底であり、そのサイズはその座標系においては両方とも「1」です、とはいうものの、私たちの眼には(というか、作図上)、ふたつの赤い共変基底(exとey)の "みため" のサイズは違ってみえます。なので、作図の都合上、両方とも「1」とするわけにはいきません。どちらかを「1」として作図するか、あるいは「作図上の1」を別個に人為的に定義して・・・とか、何とかうまく対処しなければ反変基底を作図できません。そこで、ここでは大元になった直交座標を流用します(何を基準にしてもいいはずです)。その基底のサイズを「作図上の1」とします。すると、このふたつの赤い共変基底(exとey)のサイズは、作図上、√5と√10とみなせます。こうしてはじめて、反変基底(εxとεy)のサイズを、作図上、赤い共変基底との内積が「1」になるように決定することができます。非常に面倒くさいことを言っていますが、結局、大元になった直交座標を作図上の基準として流用し、赤い共変基底(exとey)のサイズをそれぞれ√5と√10であると(作図上)求めるだけです。こうすることによって、赤い共変基底(exとey)は、作図上(2,1)と(1,3)というふたつのベクトルと同じ大きさと方向をもつものとみなすことができます。また、内積を使っていとも簡単に反変基底(εxとεy)と同じ大きさと方向をもつベクトルを決定、作図することができます。共変基底と直交している反変基底との内積は「0」、直交していない反変基底との内積は「1」となるのが原則ですから、そうなるようにうまく計算して反変基底と同じ大きさと方向をもつベクトルを決めてあげます。
具体的にいうと、
ex・εx =(2,1)・ εx =「1」
ex・εy =(2,1)・ εy =「0」
ey・εx =(1,3)・ εx =「0」
ey・εy =(1,3)・ εy =「1」
となるように εx と εy の成分を決定してあげるのです(実務的には行列(2,1,1,3)の逆行列を求めるだけ・・・)。
すると、こうなります。
ex・εx =(2,1)・(0.6,-0.2)=「1」
ex・εy =(2,1)・(-0.2,0.4)=「0」
ey・εx =(1,3)・(0.6,-0.2)=「0」
ey・εy =(1,3)・(-0.2,0.4)=「1」
こうすることによって、作図上、反変基底(εxとεy)を、ベクトル(0.6,-0.2)とベクトル(-0.2,0.4)として、直交座標上に表現できます。

実は、共変基底と反変基底は入れ替えることができます。下図のピンクの基底を共変基底と考えると反変基底は赤の基底になります。

こうすると本文中の反変ベクトルの反変表示は(7, 11)、共変表示は(0.6, 0.8)と表示が入れ替わります。
(注2)
この等高線(みたいな縞模様)がベクトルである・・・ということは、つまり、この等高線(みたいな縞模様)も座標変換に対してまったく"回転せず”、”歪まず"、"動きません"。



反変ベクトル起始部の情報であることを強調すれば以下のように描いたほうがより正確なイメージに近いかもしれません。



矢印ベクトル(反変ベクトル)に対し、このような等高線(みたいな縞模様)ベクトルを余ベクトル covector(共変ベクトル)とよんだりします。
(注3)
本文記事では、共変ベクトルの成分(反変表示、共変表示)については一切ふれませんでした。
あまりにも複雑だからです。
しかし、反変ベクトルに反変表示と共変表示があるように、共変ベクトルの成分表示にも反変表示と共変表示があります。
結論から先に示すと、
つぎのような全体像になっています。
反変ベクトル |
↔ |
共変ベクトル |
共変基底による反変表示 |
↔ |
反変基底による共変表示 |
反変基底による共変表示 |
↔ |
共変基底による反変表示 |
本文中のベクトルを、この表にあわせて表示すると・・・こんな感じになります。

ベクトルの成分表示は、反変ベクトルと共変ベクトルで入れ替わります。
共変基底、反変基底を入れ替えると、成分表示が入れ替わる・・・とも言えるでしょう。
しかし、共変ベクトル(等高線(みたいな縞模様))の成分って、いったいどのように考えるといいのでしょうか?
これはとてもややこしい話になります。
本文中では省略しましたが、ここで解説してみます。
ややこしさの根源は、
等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変ベクトル
を
等高線(みたいな縞模様)であらわされた反変基底
や
等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変基底
であらわすややこしさです。
つまり、等高線と等高線を組み合わせて新たな等高線を表現し、かつ、その成分を考えるややこしさです。
今まで矢印のイメージで考えていたベクトルを、全部、等高線みたいなものに変換しなければいけません。
ゆっくり解説してみます。
まず、矢印であらわされている反変基底ベクトルを、等高線(みたいな縞模様)であらわされた反変基底ベクトルに変換します。
矢印反変基底(εx)と等高線反変基底(εx)
矢印反変基底(εy)と等高線反変基底(εy)
の関係をあらわしたのが下図です。

ピンクの矢印が矢印型の反変基底(εx と εy)
黄色の等高線が等高線タイプの反変基底(εx と εy)
です。
ちょっと図がごちゃごちゃしてるので、εx と εy について別々にわけてみましょう。
まず、εx だけを描いてみます(下図)。
ピンクの矢印が矢印タイプの反変基底(εx)
黄色の等高線が等高線型の反変基底(εx)
です。
矢印型の反変基底(εx)と等高線型の反変基底(εx)

次に、εy だけを描いてみます(下図)。
ピンクの矢印が矢印タイプの反変基底(εy)
黄色の等高線が等高線タイプの反変基底(εy)
です。
矢印型の反変基底(εy)と等高線型の反変基底(εy)

ここには共変基底は描かれていないことに気をつけてください。
矢印型の基底も、等高線(みたいな縞模様)であらわされた基底も、どちらも反変基底です。
どちらも εx と εy とあらわすので、ここらへん解説もごっちゃにしているものが多いです。
今、何の話をしているかというと(自分ですら、話を見失いそうになります・・・)
反変基底のうち、黄色の等高線(みたいな縞模様)タイプの反変基底だけをつかって、それらをどう組み合わせれば、以下のような共変ベクトルを作図できるのか?という話です。

和を使います。
等高線(みたいな縞模様)ベクトルも矢印ベクトルのように足したり引いたりできるのです。
つまるところ、
共変ベクトル = 「εx 成分」+ 「εy 成分」
これらがすべて等高線で、その成分(係数)をどう決定するか・・・という問題です。
ちょっと難しいですよね。
共変ベクトルの成分表示を説明しようと思えば、その説明に共変ベクトルの知識を使わなければならない・・・
というジレンマがあり、本文中ではそれを避けました。が、
ここではそのジレンマをいったん横において、この問題を解決してみます。
等高線(みたいな縞模様)の間隔をどう調整すればよいのでしょうか?
反変ベクトルの反変表示成分(0.6,0.8)を利用します。

反変ベクトルの「ex 成分」は0.6ですよね?
その逆数をとります。
1/0.6 =1.67
今、反変基底 εx の方向に、間隔が εx の 1.67倍である等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。この等高線(の間隔!)が目的とする(図示したい)共変ベクトルの 「εx 成分」なんです。

しかし、この等高線(みたいな縞模様)の間隔が共変ベクトルの「εx 成分」だと言われても・・・
数式としては、どうあらわしたらいいのでしょう?
間隔を矢印基底の長さの1.67倍にしたのだから
1.67εx でしょうか?
いいえ。
一般に、共変ベクトルの係数う(大きさ)は、等高線(みたいな縞模様)の間隔の広さに「反」比例します。
したがってこの場合、εx 成分の大きさ(係数)は 1.67 倍になったのではなく、1.67 の逆数、すなわちもとの等高線(みたいな縞模様)の0.6 倍であると考えます。
すなわち、目的とする共変ベクトルの「εx 成分」 は 0.6 です。
間隔があいているのに係数が小さくなるのが納得いかない人は、勾配と考えてください。
等高線の間隔は、あけばあくほど勾配が緩やかになる・・・と考えるといいかもしれません。
同様に、共変ベクトルの「εy 成分」を求めてみます。
反変ベクトルの反変表示(0.6,0.8)の「ey 成分」である 0.8の逆数をとります。
1/0.8 =1.25
次に、反変基底 εy の方向に、間隔が 1.25倍 にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。この間隔が目的とする共変ベクトルの「εy 成分」です。

この間隔、つまり「εy 成分」を、数式であらわすと 1.25εy ではなく、1.25の逆数を用いて、0.8εy とあらわされます。
すなわち、目的とする共変ベクトルの「εy 成分」は 0.8 です。
結局、目的とする共変ベクトルは、
0.6εx + 0.8εy
と、あらわされます。
ちなみに、これらを重ね合わせると、見事、目的の共変ベクトルになります。

すなわち、この共変ベクトルの成分は(0.6,0.8)です。
これが、反変基底を使った「共変表示」の絵的なイメージです。
では、この共変ベクトルを共変基底を使って「反変表示」すると、どうなるでしょう?
まず、矢印で描かれた共変基底(exとey)を、等高線(みたいな縞模様)基底に変換します。
赤の矢印が矢印型の共変基底(ex)
黄色の等高線が等高線型の共変基底(ex)
です。
矢印型の共変基底(ex)と等高線型の共変基底(ex)

ここに反変基底は描かれていないことに注意してください。どちらも共変基底です。
上図では、等高線(みたいな縞模様)の間隔を赤い基底の1/5にしました。
赤い基底(2,1)のサイズは√5だからです。
同様に、
下図では、等高線(みたいな縞模様)の間隔を赤い基底の1/10にしました。
赤い基底(1,3)のサイズは√10だからです。
赤の矢印が矢印型の共変基底(ey)
黄色の等高線が等高線であらわされた共変基底(ey)
です。
矢印型の共変基底(ey)と等高線型の共変基底(ey)

共変基底(exとey)も、このように矢印タイプの共変基底と等高線(みたいな縞模様)タイプの共変基底の2つの方法であらわすことができます。
矢印基底も、等高線(みたいな縞模様)基底も、どちらも共変基底です。
くどいようですが、
ここに反変基底は描かれていません。どちらも ex とか ey という共変基底です。
今の目的は、
共変ベクトルを、等高線(みたいな縞模様)タイプの共変基底の和を使って表現すること
これが、共変ベクトルの共変基底を使った「反変表示」です。
この黄色の等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変基底をつかって、それらをどう組み合わせれば、目的の共変ベクトルを作図できるのでしょうか?
つまり・・・
共変ベクトル = 「ex 成分」+「ey 成分」
この成分をどう決定するか・・・という問題です。
その決定には、反変ベクトルの共変表示(7,11)を利用します。

この「εx 成分」 は7です。
その逆数をとります。
1/7
共変基底 ex の方向に、間隔が 1/7倍 にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。
これ(この間隔)が目的とする共変ベクトルの「ex 成分」です。

等高線(みたいな縞模様)の間隔は、共変基底 ex の大きさの1/7になっていますが、数式上は7ex とあらわされます。
これで共変ベクトルの「ex 成分」は7であることがわかりました。
次に、反変ベクトルの「εy 成分」を使って、共変ベクトルの「ey 成分」を求めます。
反変ベクトル共変表示(7,11)の「εy 成分」は11です。
その逆数をとります。
1/11
共変基底 ey の方向に、間隔が 1/11 倍にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。
これ(この間隔)が目的とする共変ベクトルの「ey 成分」です。

この等高線(みたいな縞模様)の間隔は、共変基底 ey の大きさの1/11になっていますが、実はサイズは11倍になっています。したがって、目的とする共変ベクトルの「ey 成分」は 11です。
これらのベクトルの和
「ex 成分の共変ベクトル」+「ey 成分の共変ベクトル」 = 7ex + 11ey
が、目的の共変ベクトルです。
重ね合わせると、見事、目的の共変ベクトルに一致します。
共変基底を使った「反変表示」は、(7,11)だといえます。
これまで述べてきた非常にややこしい話を表にまとめると以下のようになります。

このようにベクトルは、反変ベクトルか、共変ベクトルかどうかで、成分表示が入れ替わり、共変基底、反変基底を入れ替えると、成分表示が入れ替わります。
さて、以上で、
反変ベクトルを、共変基底(矢印タイプ)をつかって反変表示する(高校レベル)
反変ベクトルを、反変基底(矢印タイプ)をつかって共変表示する(本文で解説)
共変ベクトルを、反変基底(等高線タイプ)をつかって共変表示する(注3で解説)
共変ベクトルを、共変基底(等高線タイプ)をつかって反変表示する(注3で解説)
を理解できたと思います。
ここでは、ちまたのテキストブックでよくみる
反変ベクトルを、共変基底(等高線タイプ)をつかって反変表示する方法を解説したいと思います。
どのように考えるのかというと・・・
考える前に、やってみましょう。
まずは「εx 成分」から。
矢印の共変基底(ex)と等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底(ex)を用意します。先ほどと同じです。
矢印型の共変基底(ex)と等高線型の共変基底(ex)

等高線(みたいな縞模様)の間隔は、赤い基底の1/5にしました。
赤い基底(2,1)のサイズは√5だからです。
ここに、矢印ベクトルを絵的に重ね合わせてみます(下図)。

そして、緑の矢印が、共変基底(ex)を、何本貫いているかを数えます。
7本ですよね?
すると「εx 成分」にかかる係数は7なんです。
同様に・・・
矢印の共変基底(ey)と等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底(ey)を用意します(下図)。先ほどと同じです。
矢印型の共変基底(ey)と等高線型の共変基底(ey)

等高線(みたいな縞模様)の間隔を赤い基底の1/10にしました。
赤い基底(1,3)のサイズは√10だからです。
これに、矢印ベクトルを絵的に重ね合わせてみます(下図)。

緑の矢印が貫いている、共変基底(ey)の本数を数えます。
本数は11本ですね?
すると「εy 成分」にかかる係数は11になるんです。
したがって、緑の矢印ベクトル(反変ベクトル)の共変表示は
(7,11)
と表現できます。

実は、このように解説している(解説しようとしている?)テキストをよくみかけますが、どれも等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底を使っていないので非常にその意味するところがわかりにくいと思います。
以上、
反変基底による共変表示
だけでなく
共変基底による共変表示
もあるという話です。
いずれにしてもとてもとてもややこしい話です。
(注4)
数学者は、何かを与えると変数を返すものはなんでも関数と考えるようです。なので、共変ベクトルも、反変ベクトルを作用させると内積(スカラー)を返す「関数」である・・・と言われることがあります。
ちょっと絵で説明してみます。
たとえば・・・
次の2つのベクトルの「内積」は何でしょうか?

・・・といわれても、座標がわからなければ計算のしようがありませんよね?
では、座標を設定しましょう。

こうすると、それぞれのベクトルが(2, 3)と(4, -1)であることがわかります。
すると、
(2, 3)・(4, -1)=5
と「内積」を求めることができました。
では次のような座標が与えられたらどうでしょう?正規直交座標から基底を(2,1)と(1,3)に動かしました。

ベクトル自体は動いていません。
緑が(0.6,0.8)、赤が(2.6,-1.2)というところまでは何とか求めることができるかもしれません。
では内積は?
次の公式を使います。
ベクトル(A,B)とベクトル(C, D)の内積は、計量テンソル(a, b, c, d)を間に挟んで計算するのが正式です。
そうすると、この斜交座標の計量テンソルが
であることがわかれば、やっと
(0.6, 0.8)・(7, 1)=5
と内積を求めることができます。
ところが・・・共変ベクトルを使うとこんな計算は不要になります。
どういうことかというと・・・
たとえば、上図の「緑のベクトル」だけを等高線(みたいな縞模様)ベクトルに変更してみましょう・・・
すると次のようになります。

緑のベクトルが消え、等高線(みたいな縞模様)になりました。
赤い矢印が貫く等高線(みたいな縞模様)の数を数えてみてください。
「5本」ですよね?
この数が「内積」に一致します。
ですので「内積」は5です。
これがどんな座標系であっても成り立ちます。
「赤いベクトル」を共変ベクトルに変更しても結果は同じです。

数えてみてください。
「5本」ですよね?
この数が「内積」に一致します。
共変ベクトルを使うと「内積」を求めるのに計算は不要です。
というか・・・
座標軸さえ不要です。
矢印が等高線(みたいな縞模様)を乗りこえる数を数えるだけです。
内積はまんが(絵)でわかるのです。
数学の世界では
「内積」=一定
という式によって、直線や平面をあらわしますが、
共変ベクトルを持ち込めば、直線や平面を座標系を使わずに表すことができます。
反変ベクトル・共変ベクトル
= 矢印・等高線(みたいな縞模様)
= 矢印が等高線(みたいな縞模様)を貫いた数
= スカラー(内積)
みたいな感じです。
この意味で使うとき、この等高線(みたいな縞模様)を、1形式(one form)とか、線型汎関数とか、線形写像とか、線形作用素とかいいます。
ちなみに、1形式(one form)とは、ひとつのベクトルとの「内積」により、スカラーを返すものです。共変ベクトルはまさにその例です。同様に、2形式(Bilinear form)とは、ふたつのベクトルとの「内積」により、スカラーを返すものです。その例は計量テンソルです。
結局、この等高線(みたいな縞模様)をベクトルとみるか、関数とみるかによって、呼び方がかわります。双対ベクトル dual vectorとか、余ベクトル covectorとか、1形式(one form)とか、線型汎関数とか、線形写像とか、線形作用素とか・・・
そして、双対ベクトルの双対ベクトルはベクトルに戻るのです。不思議ですよね。というか、本来同じもの(の裏表)ではないか?と思えてなりません。
話がそれました。
言いたかったのは、共変ベクトルと反変ベクトルがあれば座標軸は不要である・・・というなんか爽快な話です。
(注5)
本文記事中に、反変ベクトルについては、
斜交座標の反変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)
斜交座標の共変表示(7, 11)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)
と記述しましたが、共変ベクトルについては、
斜交座標の反変表示(7, 11)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)
斜交座標の共変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)
となります。
その理由を説明します。
直交座標で考えると、共変ベクトルをあらわす等高線(みたいな縞模様)の間隔は、
x軸方向に 1/2 = 0.5
y軸方向に 1/3 = 0.33
という関係になっていて、x軸方向に0.5、y軸方向に0.33 の間隔です。


これが、直交座標から求めた共変ベクトルです。
この共変ベクトルの成分表示を考えます。
この等高線(みたいな縞模様)の間隔は 0.5εx と0.33 εy です。
しかし、共変ベクトルの成分表示は(0.5,0.33)ではありません。
(注3)で述べた理由により、それぞれの逆数、すなわち、2と3が共変ベクトルの成分になります。
共変ベクトルの係数(成分の大きさ)は、等高線(みたいな縞模様)の間隔の広さではなく、等高線(みたいな縞模様)を基底ベクトルが貫いている数に比例します。
下図からもあきらかだと思います。

上図であらわされている等高線(みたいな縞模様)は、ベクトル2εx です。

上図であらわされている等高線(みたいな縞模様)は、ベクトル 3εy です。

したがって、この共変ベクトルの成分表示(反変基底による共変表示)は
2εx + 3εy = (2,3)
です。
共変ベクトルの共変基底による反変表示にも同様の考察が適用され、
2ex + 3ey = (2,3)
です。
共変ベクトルそのものは、斜交座標上で求めた共変ベクトルと同じです。
ベクトルは座標の影響をうけません。
直交座標で考えるなら、実は直線の式 2x+3y = c(cは変数)を使うだけで簡単に共変ベクトルを描くことができます(共変ベクトル(a,b)の成分が直線の式 ax+by = cのaとbになります)。
(注6)
直交座標では、原点からx方向の基底2に対し4本の等高線、y方向の基底3に対し9本の等高線、すなわちベクトル(2,3)の方向で合計13本の等高線を、矢印が横切ることになります。

上図の4と9という数字は基底が乗りこえる等高線の数で、座標表示ではないことに注意してください。
では、記事本文中にでてきた斜交座標では、矢印が横切る等高線の数は何本でしょうか?
計算してみると・・・
7/(1/0.6) = 4.2
11/(1/0.8) = 8.8
下図からもわかりますが、εx 基底7に対し等高線4.2本、εy 基底11に対し等高線8.8本、すなわちベクトル方向(7, 11)で合計13本です。

注3と注5を読まれた方なら、共変ベクトルを εx 方向と εy 方向の等高線(みたいな縞模様)に分割してみるともっとよくわかります。

注意してほしいのは、上の図の4.2と8.8という数字はベクトルの座標表示ではなく、反変基底εx7に対する等高線が4.2本、反変基底εy11に対する等高線が8.8本であることをあらわしています。
座標軸にかかわらず合計13本です。
等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変ベクトルが、反変ベクトルと同様、座標変換に対して不変であることに着目してください。
乗りこえる等高線を数えるのに共変基底を用いることもできます。
計算してみると・・・
0.6/(1/7) = 4.2
0.8/(1/11) = 8.8

注3、注5を読まれた方なら、共変ベクトルを ex 方向と ey 方向の等高線(みたいな縞模様)に分割してみるともっとよくわかります(ん?・・・この場合はこっちの方がわかりにくいかもですね(汗))。

共変基底 ex0.6に対する等高線の本数は4.2本、共変基底 ey0.8に対する等高線の本数は8.8本、合計13本です。
共変基底が乗りこえる等高線の数は、反変基底が乗りこえる等高線の数と一致します。
あたりまえのような不思議なような話です・・・
(注7)
等高線(みたいな縞模様)と矢印の方向は直交している・・・といわれると、
もしかしたら偏微分や勾配ベクトルを知っている人なら
反変ベクトル = 勾配ベクトル(∇f)
とイメージできるかもしれません。まさにそのイメージでいいと思います。

あえて3Dっぽく絵に描けば・・・

ある1点を起点とする、こういう空間に浮かぶ面の勾配が反変ベクトルによって表現されているともいえます。
そして・・・ピンときた人もいると思いますけれど、
全微分を知っている人にとっては、
共変ベクトル = 全微分(df)
と、考えることもできると思います。
ある1点を起点して空間に浮かぶ下図のような面の等高線が共変ベクトルによって表現されているといえます。
こういう平面を真上からみたときの高さの変化が共変ベクトルという等高線(みたいな縞模様)であらわされている・・・と想像すればいいのです。

たとえば、f(x,y) = x2 + y2
という曲面があるとき、その点(1, 1.5, 3.25)における全微分は、
df = 2dx +3dy
です。本記事中で論じている共変ベクトルはちょうどこの全微分 df に相当します。

点(1, 1.5, 3.25)における接平面のスロープは、勾配ベクトル方向(2,3)への傾斜が一番きつく、x方向に2行くと4上昇し、y方向に3行くと9上昇、つまりベクトル(2,3)方向で合計13上昇する斜面です。

傾斜が一番きつい方向 = 反変ベクトルの方向です。

この等高線(みたいな縞模様)や矢印は、その様子を見事にあらわしています(注6)

共変ベクトルをスカラーポテンシャルと考えることもできるかもしれません。
2次元の存在と思っていたベクトルが実は3次元的な情報を持っているのは驚きです。
すべての反変ベクトルは、その起始部においてペアになる共変ベクトルをもっており、それらは双対関係にあるといいます。
双対ベクトル

面白いのは、これ、数学的につきつめていくと、どちらが矢印でどちらが等高線(みたいな縞模様)なのか、だんだんよくわからなくなるんです。みためはこんなに違うのに・・・。実は等高線(みたいな縞模様)も、まるで矢印ベクトルのように足したり倍にしたりできます。よくよく考えると、等高線(みたいな縞模様)の、そのまた等高線(みたいな縞模様)を考えることもでき、そのイメージはまた矢印に戻ります。いったい、どちらが元祖ベクトルなのか・・・鶏が先か卵が先かみたいな話です。

最後に、本記事をここまで・・・最後の最後まで読んでいただいた方に、共変ベクトル、反変ベクトルの究極のイメージ図を紹介したいと思います。

この図と、本記事冒頭にある図を照らし合わせてみて、共変ベクトル、反変ベクトルのイメージをつかんでいただけたら、と思います。
リンク:アインシュタインの一般相対性理論
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