2変数関数の微分について

 

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この記事は、1変数関数ではなく2変数関数の話です。

 

2変数関数には

スカラー値関数(Scalar valued function)

ベクトル値関数(Vector valued function)

があります。

 

線素にも、スカラー線素(Line element scalar)とベクトル線素(Line element vector)の2種類があるので、結局、2変数関数に対しては、以下の4つの微分を考えることができます。

 

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微分1.スカラー値関数(Scalar valued function)をスカラー線素(Line element scalar)で微分する

微分2.ベクトル値関数(Vector valued function)をスカラー線素(Line element scalar)で微分する

微分3.スカラー値関数(Scalar valued function)をベクトル線素(Line element vector)で微分する

微分4.ベクトル値関数(Vector valued function)をベクトル線素(Line element vector)で微分する

 

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微分1は、ふつうの「偏微分」です。

微分2は、ふつうの「ベクトル場の微分」です。

微分3は、なんというのかわかりませんが、結果はいわゆる「勾配ベクトル」になります。

微分4は、・・・難しいです。。。

 

今回、ちょっとこれらについて考察してみました。

そもそも・・・

(x,y)からなる2変数のスカラー値関数(Scalar valued function)とはどんなものかというと・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

のような式になります。

(x,y)に数値を入れると、ある数値(スカラー)がでてくる式になります。

こんな2変数スカラー値関数(Scalar valued function)が何をあらわしているかというと・・・

スカラー場です。

スカラー場とは、(x,y)座標の1点1点についてスカラー(数字)が設置されているような場です(下図のようなイメージ)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field1.png
それぞれの数字(スカラー)を"高さ"のようなものとみなし、その値を縦軸(z軸)にとれば、スカラー場は下記のような3次元空間に浮かぶ「曲面」と考えることもできます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral108.png

2変数スカラー値関数(Scalar valued function)の微分とは、この曲面の傾きを考えるもの・・・と言えるでしょう。

 

一方、2変数のベクトル値関数(Vector valued function)のイメージは、ベクトル場です。

式で表すと、たとえば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

みたいなものです。

(x,y)に数値を入れると、ベクトルになります。

ベクトル場とは、(x,y)座標の1点1点に二つの値が設定されているような場です(下図のようなイメージ)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field4.png
それぞれの数字のセットをベクトルとみなして矢印ベクトルであらわせば、この関数のイメージは下図のようなベクトルの集合になるでしょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/389.png

ベクトル値関数(Vector valued function)の微分とは、このベクトルの横向き(x軸方向)の変化の様子、縦向き(y軸方向)の変化の様子を考えることになります。

イメージするのはむずかしいです。

 

以上が、スカラー値関数(Scalar valued function)とベクトル値関数(Vector valued function)の概要です。

一方、

線素(Line element)にも、スカラー線素(Line element scalar)とベクトル線素(Line element vector)があります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/392.png

これらの組み合わせにより、以下の4つの微分を考えることができます(積分を考えることもできます)。


微分1.スカラー値関数(Scalar valued function)のスカラー線素(Line element scalar)による微分

微分2.ベクトル値関数(Vector valued function)のスカラー線素(Line element scalar)による微分

微分3.スカラー値関数(Scalar valued function)のベクトル線素(Line element vector)による微分

微分4.ベクトル値関数(Vector valued function)のベクトル線素(Line element vector)による微分


https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral144_20210316162501.png

 

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微分1は、一般には偏微分といわれる微分です。偏微分の結果は2つのスカラーになります。微分によって得られた2つのスカラーは偏微分係数とよばれます。全微分に必要な係数です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/379.png

微分2の結果は、2つのベクトルになります。いわゆるベクトル場の微分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/380.png

微分3の結果は、微分1の結果をベクトルにまとめたもので、ひとつのベクトルになります。勾配ベクトルとよばれます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/381.png

本質的に ∇(ナブラ)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative1.png

を2変数のスカラー値関数(Scalar valued function)に作用させることと同じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative5.png

微分4の結果は・・・難しいです。

微分2の結果がまとまり、ひとつのテンソルになります。ヤコビ行列はこうして得られるテンソルの代表例です。このように、ベクトル場をベクトル線素で微分するとひとつのテンソルになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/383.png

 

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具体例をみてみましょう。

次のような2変数関数を考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/384.png

スカラー値関数(Scalar valued function)とベクトル値関数(Vector valued function)です。

 

微分1

スカラー値関数(Scalar valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative2.png

をスカラー線素(Line element scalar)で微分してみましょう。

すると、以下のように、2つのスカラー値関数数(Scalar valued function)になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/385.png

たとえば、点(2,3)で微分した結果は、x方向への傾きが7,y方向への傾きがー1という2つの数値です。これを偏微分係数といったりします。

 

微分2

ベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative3.png

をスカラー線素(Line element scalar)で微分してみましょう。すると、以下のように、2つのベクトル値関数(Vector valued function)になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/409.png

あまりはっきりと述べられることはありませんが、まぁ、いわゆるふつうのベクトル場の微分です。

このベクトル場では、x方向へのベクトルの変化は(2,1)、y方向へのベクトルの変化は(1,ー1)であることがわかります。

 

微分3

スカラー値関数(Scalar valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative2.png

をベクトル線素(Line element vector)で微分してみましょう。すると、1つのベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/387.png

となります。

∇(ナブラ)を作用させることと同じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative4.png

たとえば点(2,3)における勾配ベクトルは(7,ー1)です。これを勾配ベクトルといったりします。

 

微分4

ベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/derivative3.png

をベクトル線素(Line element vector)で微分してみましょう。すると、以下のような、ひとつのテンソル(2,1,1,ー1)が得られます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/410.png

この意味するところは難しいです。

ヤコビ行列といったりするものに相当するでしょうか。

テンソルとは何なのか?については → こちら

 

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【図解】線積分の絵的な意味

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/2_20210318144401.png

この記事を読むには2変数関数の知識が必要となります。(2変数関数に関するやさしい話は ⇒ こちらをご参考に)

線積分とは2変数関数の積分だからです。

積分については、ふつうの積分(単積分、一重積分、一次元積分)の知識で充分です。重積分の知識は必要ありません。

繰り返します。本記事であつかう線積分は「2変数関数の単積分」のことをいいます。

 

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2変数関数には

スカラー値関数(Scalar valued function)

ベクトル値関数(Vector valued function)

があります。

つまり、これらを積分する線積分には、スカラー値関数(Scalar valued function)の積分と、ベクトル値関数(Vector valued function)の積分があることになります。

 

スカラー値関数(Scalar valued function)とは、以下のような関数です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

2つの変数xとyに数字を入れると、あるスカラー(数字)になります。だからスカラー値関数(Scalar valued function)といいます。

 

一方、ベクトル値関数(Vector valued function)とは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

みたいな関数です。

2つの変数xとyに数字を入れると、あるベクトル(数字のペア)になります。だからベクトル値関数(Vector valued function)といいいます。

 

ところで、積分に使われる線素(Line element)にも、スカラーとベクトルがあります。線素スカラー(Line element scalar)と線素ベクトル(Line element vector)です。

 

まとめると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral144_20210316162501.png

です。

 

線積分は、これらの組み合わせによって、次の4つを区別します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral100.png

Cというマークは、これが線積分であることを示す記号です。

線積分は、Cについての定義がなければ解けません。かならず、積分とは別にCについて(xとyの関係式を)記述します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral105.png

のように。

この連立方程式を解くのが線積分です。

 

では、これら4つの線積分の一番の違いは何かというと、出力される結果が違います。出力の違いに注目してまとめると以下のようになります(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral101.png

 

いちばん上が、いわゆる「ふつうの線積分」です。

「ふつうの線積分」と非常に紛らわしいのが一番下の「接線線積分」です。

どちらの結果もスカラー値(数字)になります。

本記事では、この「ふつうの線積分」と「接線線積分」の図形的な意味について解説してみたいと思います。

 

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まずは・・・「ふつうの線積分」から。

スカラー値関数(Scalar valued function)に対する積分です。

スカラー値関数(Scalar valued function)とは、以下のような関数です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

スカラー値関数(Scalar valued function)のイメージは、下記のような3次元空間に浮かぶ「曲面」です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral108.png

このようなスカラー値関数(Scalar valued function)に対して線積分をおこなうと、どういう図形的意味が得られるのでしょう?

たとえば、Cについて、今

線C:y = x を考えましょう。

式であらわすと

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral104.png

です。

この連立方程式の答えがあらわしているものは何でしょうか?

いつものように結論から言います。

上図のスカラー値関数(Scalar valued function)と、線C:y = x との線積分の結果は、以下の黄色の部分の面積になります(0≤x≤1の範囲で線積分した場合(注2))。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20210318144401.png

青い線が、線C:y = x です。見えていますか?

線積分があらわしているのは、線C:y = x と局面にはさまれている領域(黄色のところ)です。

ここの面積です。これが「ふつうの線積分」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral104.png

の結果です(実際の計算は、注2)。

 

ちなみに、線Cは直線である必要はありません。

たとえば線C:y = x2 との線積分(範囲:0≤x≤1の範囲)の答えは下図の黄色部分の面積です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/2_20210318144401.png

これを式で表すと、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral105.png

です(注3)。

このように、線積分の結果(面積)は沿う線によって異なるのがふつうです。

これが「ふつうの線積分」のイメージです。

次は「接線線積分」について。

 

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https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field10.png

 

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では、接線線積分のイメージはどういうものでしょうか?

接線線積分は、ベクトル値関数(Vector valued function)に対して行います。

ベクトル値関数(Vector valued function)とは、たとえば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

という関数です。この関数のイメージは下図のようなベクトルの集合(ベクトル場)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral30.png

ベクトル値関数では、xy平面上のすべての点に対して2つの値が設定されています(スカラー値関数では1つの値)。

このベクトル場に対して、たとえば線C(y=x)にそった線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral106.png

を考えるのが接線線積分です。

内積の記号「・」が使われているのは、ベクトル値関数(Vector valued function)と線素ベクトルのどちらもベクトル同士だからです。

(同様に外積の記号を使えば、ベクトル値関数(Vector valued function)と線素ベクトルの(ベクトル同士の)外積の積分を考えることもできますが、この記事では扱いません)

たとえば範囲0≤x≤1の接線線積分であれば、計算式は以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral130.png

そのイメージは、接線ベクトル線素がその場その場のベクトルとの内積をとりながら、下図のベクトル場(上図を拡大しています)を、(0, 0)から(1, 1)に移動したときの内積の総和です(注4)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/3_20210318104301.png

といわれても、ベクトル場で内積をとりながら移動する・・・

この図形的なイメージはわかりにくいです。

しかし、後述するように、この線積分も実に簡単明快な図解イメージがあるのです(むしろ、こっちのほうがカンタン?)。

ひとつひとつ確認していきます。

よくみると

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

の部分は先ほどのスカラー値関数(Scalar valued function)の線積分になっており、前述した3Dイメージが可能ではないでしょうか。

ただし、スカラー線素がdsではなく、dxやdyとなっている点に注意します。

まず、スカラー線素dsを使った「ふつうの線積分」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral109.png

を考えると、そのイメージはスカラー値関数(2x + y)があらわす面と、線 (y = x)に挟まれた下図の黄色の部分です(注5)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/5_20210318132001.png

では、この「ふつうの線積分」のdsをdxにおきかえた

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral145_20210316172101.png

があらわすイメージは何か?というと、上述の黄色のエリアをxz平面に投影したものなんです。イメージは下図のグリーンの部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/6_20210318132001.png

これがdsに沿った線積分と、dxに沿った線積分の違いのイメージです。

同様に、線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral146_20210316172101.png

を考えましょう。

まず、dsをつかった「ふつうの線積分」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral111.png

のイメージは?

スカラー値関数(x - y)があらわす面と、線 (y = x)に挟まれた下図の黄色の部分です(注6)。ちょうど線状になっていて面積はゼロになってしまい、わかりにくいですが。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral159.png

このエリアをyz平面に投影したもの(面積)が、dsをdyにおきかえた線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral146_20210316172101.png

の結果です。下図のグリーン部分です・・・こちらも線状でグリーンがほとんどみえませんが・・・面積はゼロです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral160.png

これがdsに沿った線積分と、dyに沿った線積分の違いのイメージです。

結局、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

とは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral133.png

をxz平面へ、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral134.png
をyz平面に投影した両者の投影面積をたしたものです(注4)。

 

これがベクトル値関数(Vector valued function)の接線線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral130.png

の図形的な意味になります。

しかし、それでもわかりにくいですよね。

 

実は、この接線線積分のイメージにはもっと明快なものがあります。

下図の曲面に描かれた線分(黄色の線)の始点と終点の高さの差(つまり、黒矢印の長さ)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/9_20210318120501.png

突然出てきたこの曲面は一体なんだ?

という声が聞こえてきそうですが、これはベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

を、ある方法(注10)で積分して得られたスカラー値関数(Scalar valued function)です。

その式を参考までにお示しすると

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

です。あれ?どこかでみたことありますね?

この話は、考察(後述)にてもう少しくわしく説明します。

ここで気づいてほしいのは、ベクトル値関数(Vector valued function)の接線線積分の解き方です。

ベクトル値関数(Vector valued function)を解こうと思えば、まずある方法で積分して(注10)、得られた関数にCの始点と終点の値を入れ、その差を求める・・・というカンタンなテクニックがあるということ。

 

さて。

ベクトル値関数(Vector valued function)に対する接線線積分でも、積分に使う線Cは自由に選ぶことができます。

たとえば線C(y = x2)に沿った線積分は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral107.png

です。線C(y = x2)に沿って、0≤x≤1の範囲で線積分した結果は、ベクトルとの内積をとりながら(0, 0)から(1, 1)に移動した場合の内積の総和です(注7)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/4_20210318110301.png

これも先ほどの3Dイメージで考えてみましょう。

考えるのは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral132.png

です。特に、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

の部分は、スカラー値関数(Scalar valued function)の線積分になっています。

ただし、スカラー線素がdsではなく、dxやdyとなっている点に注意します。

まず、スカラー線素dsによるふつうの線積分(注8)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral113.png

を考えます。そのイメージは下図の通りです(黄色のエリア)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/11_20210318124401.png

これをxz平面に投影したもの(面積)が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral147_20210316172101.png

です。イメージは下図です(グリーンの部分)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/12_20210318151701.png

これがdsに沿った線積分と、dxに沿った線積分の違いのイメージです。

次に、線積分(注9)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral115.png

を考えます。そのイメージはここ(下図の黄色部分)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/13_20210318125501.png

これをyz平面に投影したもの(面積)が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral148_20210316172101.png

です。そのイメージは下図のグリーン部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/14_20210318132201.png
これがdsに沿った線積分と、dyに沿った線積分の違いのイメージです。

したがって、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral131.png

の意味とは、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral133.png

をxz平面へ、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral134.png
をyz平面に投影した両者の面積をたしたものに相当します。

これが

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral132.png

の図形的な意味になります(注7)。

それでもわかりにくいですよね。

 

実は、この接線線積分のイメージにも、前述の接線線積分のイメージと同様なもっと明快なものがあります。

下図の曲面に描かれた線分(黄色の線)の始点と終点の高さの差(つまり、黒矢印の長さ)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/10_20210318120501.png

この曲面は、先ほどもでてきましたが、ベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

をある方法(注10)で積分して得られたもので、その式は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

です。

気づいてほしいのは、ベクトル値関数(Vector valued function)の接線線積分の解き方です。

ベクトル値関数(Vector valued function)を解こうと思えば、まずある方法で積分し(注10)、得られた関数にCの始点と終点の値を入れ、その差を求める・・・つまり、Cの始点と終点だけがわかればいいということ・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/15_20210318133101.png

 

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~考察~

あるベクトル場の線積分(接線線積分)が、あるスカラー場の高低差になる話について、少しくわしく説明してみたいと思います。

この話、どういうことかというと、そういう理論があるんです。こういってしまうと身も蓋もありませんが(汗)

ただし、そのベクトル場(ベクトル値関数 F )とスカラー場(スカラー値関数 F )との間に

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral126.png

という関係が成り立つ場合の話です。

本記事の例の場合をみてみましょう。

スカラー値関数(Scalar valued function)は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

ですので、これに∇を作用させてみます。

(∇とは、2変数のスカラー値関数(Scalar valued function)をベクトル線素で微分することです。→ こちらを参照ください)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral128.png

となり、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

ですから、たしかに

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral127.png

が成り立っています。

この関係が成り立つ場合、ベクトル場の線積分(接線線積分)は、そのスカラー場の高低差におきかえることができます。

 

つまり、ベクトル値関数(Vector valued function)の接線線積分を計算するときは、先に

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral127.png

の関係が成り立つようなスカラー値関数(Scalar valued function)を手に入れてしまえば(手に入れる方法は、注10を参照)、スカラー値関数(Scalar valued function)の式にxとyの値(始点の値と終点の値)を代入するだけで接線線積分の答えが得られます。

 

つまり、線積分とは言いながら、その計算結果は、線(経路)に依存せず、始点と終点の高さの差になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/15_20210318133101.png

こう考えると、先ほどの2つの接線線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral130.png

と、接線線積分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral132.png

の結果が一致した理由が図形的によく理解できるのではないでしょうか?

 

 

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(注1)

それぞれの計算の仕方は以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral103.png

 

(注2)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral135.png

 

(注3)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral154.png

 

(注4)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral153.png

 

(注5)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral139.png

 

(注6)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral152.png

 

(注7)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral151.png

 

(注8)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral149.png

 

(注9)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral155.png

 

(注10)

ベクトル場をあらわすベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral120.png

の成分、f(x, y)、g(x, y)をとりだし、f(x, y)はそのまま、g(x, y)にはx=0を代入し、次の積分を実行します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral121.png

すると、あるスカラー値関数(Scalar valued function)=F(x, y) を得ることができます。

たとえば、この手順をベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png
に対して実行してみると、

得られるスカラー値関数(Scalar valued function)は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

です。

この2つの関数、元になったベクトル値関数(Vector valued function)と、得られたスカラー値関数(Scalar valued function)の間には特別な関係があります。

ベクトル値関数(Vector valued function)を線素ベクトル(Line element vector)で積分すると、その関係が判明します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral124.png

すなわち

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral125.png

つまり

スカラー値関数(Scalar valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

を微分したものが、ベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

になります。

式で表すと

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral127.png

です。

 

スカラー値関数(Scalar valued function)をベクトル線素(Line element vector)で微分するとベクトル値関数(Vector valued function)になります。

このとき、スカラー値関数(Scalar valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

をベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

のスカラーポテンシャルと言ったります。

ベクトル値関数(Vector valued function)と、そのスカラーポテンシャルの関係は、図でみる方がわかりやすいです。

まず、スカラー値関数(Scalar valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral61.png

があらわすスカラーポテンシャルは下図のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field7.png
上図のスカラーポテンシャルを微分して得られたベクトル値関数(Vector valued function)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral62.png

を図であらわすと、下図のベクトル場になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field11.png

下図は、スカラーポテンシャルをZ軸方向からみたものです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field8.png

このスカラーポテンシャルに、ベクトル値関数(Vector valued function)があらわすベクトル場を重ね合わせてみると、下図のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field9.png

等高線と矢印がたがいに直行していることがわかるでしょうか?

スカラーポテンシャルを等高線だと考えると、接線線積分の答えは、横切った等高線の本数に一致します(なので経路に依存しません)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral169.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral173.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral172.png

ベクトル場とスカラーポテンシャルの関係は、反変ベクトル共変ベクトルの関係に相当します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field9.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field10.png

反変ベクトル場をスカラーポテンシャルを介さずに、一気に共変ベクトル場に変換すればこうなります。スカラーポテンシャルとベクトル場、共変ベクトル場の関係はこうしてみるとよくわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral158.png

ベクトル場が示す方向は、スカラーポテンシャル(空間に浮かぶ曲面)のその場その場の最も急峻な方向を示していると言えます。

 

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たぶんこの世で3番目ぐらいにやさしいテンソルの話 ~具体例をみてみる編~

テンソルの解説では、めったにみない具体例なテンソルの作り方を解説します。もしかしたらこんな解説、世界初かも?(苦笑)

さすがにテンソルを作るだけではあっという間に話が終わってしまいますので、ほんとにそれ テンソル?

というところまで踏み込んでみたいと思います。

ちなみに、本記事で扱うテンソルは、基本中の基本、2階のテンソルです。

 

なんでこんな解説を試みたのかというと・・・「テンソルの具体的な作り方」とか「ほんとに、それテンソル?」という解説を読むことによって「テンソルとは何か?」を感じることができるのでは?と思ったからです。

ステップ1〜15にわけました vヾ(´∀`○)ノ♪

 

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ステップ1

次のような2つのベクトル(V1とV2)を用意します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor20.png

ベクトルV1

2 3

ベクトルV2

6 -1

このベクトルV1とV2からテンソルをつくりましょう。

単に成分同士を掛け合わせるだけです(テンソル積)。

すると・・・

12 -2
18 -3

という数字のセットができます。

めでたくテンソルができました(注1)。

テンソルって、実はこれだけの事なんですけど。

 

しかしこれ、ほんとうにテンソルなんでしょうか?

これがテンソルかどうか、どうすれば確かめることができるのでしょう?

それを確かめるために・・・

 

 

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ステップ2

まず、正規直交座標を「斜交座標1」に変換します。

初学者は「え?」と思うかもしれませんが、これがテンソル解説の常套手段です。

ここでは、新しい斜交座標1を以下のように設定してみましょう。

正規直交座標

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor22.png

斜交座標1

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor23.png

もとの正規直交座標を使ってこの斜交座標1の基底ベクトルをあらわすと(2,1)と(-0.5,0.25)です。

そのような新しい斜交座標1を設定してみました。

この斜行座標1では、新しい基底ベクトルを(1,0)と(0,1)として、すべてのベクトルが表わされることになります。

 

座標軸が動いても「ベクトルは動かない」というのがベクトルの大原則ですから

この座標軸の変化によって・・・ベクトルV1とV2の「成分」が変化します。

このようすを図にすると…

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor20_20210725002001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor21_20210725002001.png

こんな感じです。

これでベクトルの成分がどのように変化するか?

というのがベクトルの勉強なのですが、それはベクトルの座標変換公式にしたがいます。

 

ベクトルV1については

反変表示は

2 4

共変表示は

7 -0.25

に変換されます。

反変表示、共変表示がよくわからないという人はこちらをご覧ください ⇒ 【図解】共変ベクトル・反変ベクトル

わからなくても大丈夫です。

斜交座標では、ベクトルに2種類の表示があるんだな・・・と思ってもらえば、本記事ではことたります。

 

同様に、ベクトルV2については、

反変表示は

1 -8

共変表示は

11 -3.25

に変換されます。

 

ーーーーー(自分用メモ)ーーーーー

正規直交座標から斜交座標1へベクトルの成分変換を担う変換行列は以下の通り(公式)。

共変成分の変換行列(基底ベクトルを横に並べたもの)

2 1
-0.5 0.25

反変成分の変換行列(上の行列を転置した行列の逆行列)

0.25 0.5
-1 2

 

もとの正規直交座標系の計量テンソルを

1 0
0 1

とすると、斜交座標1の計量テンソルは

5 -0.75
-0.75 0.3125

と決まる(公式(余談2と3参照))。計量テンソルはベクトルの反変表示と共変表示を入れ替える。

 

 

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ステップ3

さて。ステップ2で得られた、ベクトルV1とV2の新しい座標での表示を、以下に再掲します。

ベクトルV1

反変表示

2 4

共変表示

7 -0.25

 

ベクトルV2

反変表示

1 -8

共変表示

11 -3.25

では、これらベクトルV1とV2からもテンソルをつくってみましょう。

なんで?ときかないでください。すべての学生がここを通ります。

テンソルを作るのは簡単で、単に成分同士を掛け合わせるだけです(テンソル積)。

ベクトルの組み合わせによって、以下の4つのテンソル(数字のセット)がつくられます。

1.反変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

2.反変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

3.共変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

4.共変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

4種類のテンソルV12が造られました。

ステップ1ではふたつのベクトルから1つのテンソルしかできませんでしたが、今回は、2つのベクトルから4つのテンソルがつくられました。

でも、この4つの数字のセット・・・ほんとうにテンソルなんでしょうか?

どうすればそれを確かめることができるでしょう?

それを確かめるために・・・

 

 

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ステップ4

さらに新しい「斜交座標2」を設定します。

「え~!?また!?」と言わないでください。めんどくさいのですが、こうするのが常套手段なんです。

ここでは、斜交座標1の基底ベクトルを(1,0)と(0,1)とすると、新しい座標ではその基底ベクトルが(2,1)および(1,3)となるような、そんな斜交座標2を設定してみました。

斜交座標1

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor23.png

斜交座標2

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor24_20210725014501.png

すると・・・またまたベクトルV1とV2の「成分」が変化します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor21_20210725002001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor25_20210725014501.png

どのように変化するかというと、ベクトルの座標変換公式(後述)にしたがって・・・

ベクトルV1の反変表示は

0.4 1.2

共変表示は

13.75 6.25

に変換されます。

 

ベクトルV2も、その反変表示は

2.2 -3.4

共変表示は

18.75 1.25

に変換されます。

 

ーーーーー(自分用メモ)ーーーーー

斜交座標1から斜交座標2へのベクトルの成分変換を担う変換行列は以下の通り(公式)。

共変成分の変換行列(基底ベクトルを横に並べたもの)

2 1
1 3

反変成分の変換行列(上の行列を転置した行列の逆行列)

0.6 -0.2
-0.2 0.4

 

斜交座標1の計量テンソルを

1 0
0 1

とすると、

斜交座標2の計量テンソルは

5 5
5 10

である(公式(余談2と3参照))。計量テンソルは、ベクトルの反変表示と共変表示を入れ替える。

 

 

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ステップ5

さて、この新しく表示されたベクトルV1とベクトルV2から、さらに新しいテンソル(新)をつくってみましょう。

文句を言わず・・・(苦笑)

 

つくり方は成分同士を単に掛け合わせるだけ(テンソル積)です。

1.反変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

2.反変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変共変テンソルV12(新)

7.5 -0.5
22.5 1.5

3.共変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変反変テンソルV12(新)

30.25 -46.75
13.75 13.75

4.共変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変共変テンソルV12(新)

257.8125 17.1875
117.1875 7.8125

4種類のテンソルV12(新)ができました。

さぁ、これで準備完了です!

 

 

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ステップ6

考察です。

ステップ3(斜交座標1)でつくられた4種類のテンソルV12と、ステップ5(斜交座標2)でつくられた4種類のテンソルV12(新)を比較します。

成分を一つ一つ比較するなんてめんどくさいですが、ここはテンソルの勉強をしている人の全てが通る道です(賢い人は抽象的に一瞬で比較してしまいます・・・)。

 

わかりやすくするため、再掲しましょう(サービス)。

ステップ3(斜交座標1)でベクトルV1とV2からつくられた4種類のテンソルV12を再掲します。

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

 

ステップ5(斜交座標2)でつくられた4種類のテンソルV12(新)を再掲します。

反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

反変共変テンソルV12(新)

7.5 -0.5
22.5 1.5

共変反変テンソルV12(新)

30.25 -46.75
13.75 13.75

共変共変テンソルV12(新)

257.8125 17.1875
117.1875 7.8125

これらを比較します。

まず、一見してわかると思いますが、ずいぶん成分が違ってみえます。

 

しかし、元はと言えば、どちらも同じベクトル(V1とV2)からつくられたものです。

なので、もし、ステップ3で造られたテンソルV12と、ステップ5で造られたテンソルV12(新)が両者ともほんとうにテンソルであれば、それぞれの成分の間に「座標変換にともなう成分変換式」が存在するはずです。

ベクトルに「座標変換にともなう成分変換式」があるのと同じ理屈です。

あたりまえと言えばあたりまえのような・・・しかし、ここがテンソル理解の鍵です。

座標変換にともなう成分の変換式。その存在をもって、テンソルであることを証明するのです。

そもそも、そういう変換式に従って成分が変換される数字のセットのことをテンソルとかベクトルという、という定義もあるぐらいですから。

変換式が存在しなければ、ステップ3(斜交座標1)でつくられた

4種類のテンソルV12

と、ステップ5(斜交座標2)でつくられた

4種類のテンソルV12(新)

は、テンソルではありません。

 

で・・・

結論はどうなのかというと、

変換式はあります。

その変換式とは以下のようなものです。

反変反変テンソルV12 を 反変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

反変共変テンソルV12 を 反変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

共変反変テンソルV12 を 共変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式3

1.2 -0.4 0.6 -0.2
-0.4 0.8 -0.2 0.4
0.6 -0.2 1.8 -0.6
-0.2 0.4 -0.6 1.2

共変共変テンソルV12 を 共変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

 

しかし、この変換式によって、本当にテンソルV12の成分がテンソルV12(新)に変換されるのでしょうか?

検証してみます。

ここでは、まず一例として、ステップ3(斜交座標1)で造られた反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

を、変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

に掛け合わせてみましょう(え?どう掛け合わせるの?という人は注1参照)。

すると・・・

0.88 -11.36
2.64 -4.08

という数字のセットが得られます。

この数字のセットは、スッテプ5(斜交座標2)で造られた反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

と見事に一致していますよね?

これは偶然ではありません。

反変反変テンソル以外のテンソルV12(反変共変テンソル、共変反変テンソル、共変共変テンソル)でもこうなります。

すなわち、テンソルV12 はたしかにテンソルなのです。

念のため言っておきますが、上記の4つの変換式は、テンソルV12の変換のために都合よくつくられたのではありません(変換式の作り方は注2を参照してください)。

これらの変換式は、斜交座標1のどんなテンソルでも斜交座標2のテンソルに変換してしまいます。

信じられない人は自分でベクトルを2つ用意して試してみてください。

試したくない人は・・・信じるしかありません(苦笑)。

 

テンソルの定義は、

1.テンソル積で造られたもの

2.変換式で変換できるもの

3.ベクトルに作用させるとベクトルをつくるもの

の3つがありますが、このようにテンソル積で造られたもの(1)は必ず変換式で変換できます(2)。

ここへんを少し詳しくみたい人はこちらをご参照ください ⇒ たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ゆる~く計算してみる編~

 

 

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ステップ7

さて、斜交座標1で造られたテンソルV12と斜交座標2で造られたテンソルV12(新)の間に変換式が存在することが確認されましたが、テンソルの変換式は、実は、正規直交座標と斜交座標1の間にも存在します。それは以下の通りです。

 

反変反変テンソルを反変反変テンソルに変換する

変換式1

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

反変共変テンソルを反変共変テンソルに変換する

変換式2

0.5 0.25 1 0.5
-0.125 0.0625 -0.25 0.125
-2 -1 4 2
0.5 -0.25 -1 0.5

共変反変テンソルを共変反変テンソルに変換する

変換式3

0.5 1 0.25 0.5
-2 4 -1 2
-0.125 -0.25 0.0625 0.125
0.5 -1 -0.25 0.5

共変共変テンソルを共変共変テンソルに変換する

変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

変換式のつくりかたについては(注3)をご参照ください。

 

では、これらの変換式がほんとうに正規直交座標でつくられたテンソルにうまく作用するのかどうか、確認してみましょう。

ステップ1でいちばん最初に用意したベクトルV1とベクトル2

ベクトルV1

2 3

ベクトルV2

6 -1

からつくられたテンソル

12 -2
18 -3

と、これらの変換式1~4を掛け合わせてみます。

すると、以下の4種類の数字のセットが得られます。

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

これらが、ステップ3(斜交座標1)でベクトルV1とV2からつくられた4種類のテンソルV12(下記)とまったく同じであることを確認してください。

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

 

何が言いたいのかと言うと、正規直交座標で造られたテンソルV12

12 -2
18 -3

は1つにみえましたが、実は、

反変反変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもあり

反変共変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもあり

共変反変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもあり

共変共変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもある・・・つまり成分がまったく同じ4つのテンソルだったのです。

どれも成分が同じなので1つにみえていただけです。   

 

 

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ステップ8

さて。

ここで、少し頭をリフレッシュし、いったん正規直交座標に戻ります。

そして、適当な4つの数字のセットを用意しましょう。

たとえば

4 -1
5 3

のような数字のセットです。

まったくランダムな数字のセットです。

 

これをテンソルT1とします。

えっと・・・しかし、これ、ほんとうにテンソルなんでしょうか?

それを確かめるためには、どうしたらいいでしょう?

一番簡単なのは、このテンソルT1のもとになっている2つのベクトルを見つけることですよね?

これまでの考察で、「2つのベクトルから(テンソル積によって)造られた数字のセットはテンソルである」ことがわかっているのですから。

テンソルT1の元になっている2つのベクトルが見つかれば、テンソルT1はテンソルだと言えます。

しかし、このテンソルT1は、どうやっても2つのベクトルに分解できません。

ランダムな数字のセットは、2つのベクトルに分解できるとは限らないのです。

そのようなランダムな数字のセットの場合、それがテンソルであるかどうか(テンソルとしてふるまうかどうか)、どうすればわかるのでしょう?

ヒントを先に言ってしまうと・・・

テンソルT1の成分が、ステップ7の変換式1~4によって斜交座標1のテンソルに「適切」に変換されれば、テンソルT1はテンソルだと言えそうです。

しかし、その成分変換が「適切」かどうか・・・どうやったらわかるのでしょうか?

そのための準備として・・・

 

 

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ステップ9

正規直交座標で用意されたテンソルT1

4 -1
5 3

に、ベクトルV1(どんなベクトルでもOKです・・・)

2 3

を掛け合わせてみます。

すると・・・

5 19

という新しいベクトルが作られます。これを、べクトルV3とします。

今やったことは、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

という、なんてことない計算です。

 

なんでこんなことをしたのか?というと・・・

この計算

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

が、異なる座標系でも成り立つか?

を気にしています。

もし座標系の違いを超えて成り立てば、テンソルT1

4 -1
5 3

はたしかにテンソルであると言えるのです。

なぜかというと・・・

座標系が変化するとベクトルV1とベクトルV3の成分表示は「適切」に変化するはずですよね。ベクトルなのですから。

ならば、座標系が変化しても

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

が常に成り立つ条件は何か?という話です。

当然ですが、テンソルT1の成分表示が「適切」に変化しなければ成り立つはずがありません。

なので、もし

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

という関係が座標系に依存せず常に成り立つなら、

テンソルT1の成分は、座標変換にともない「適切」に変換されている、

つまり、テンソルT1はテンソルといえる、というわけです。

くどくど言う前にやってみましょう。

座標がかわってもこの計算は保たれるのだろうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/4_20240416151501.png

 

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ステップ10

まず、座標の変換です。

正規直交座標をステップ2で使用した「斜交座標1」に変換してみます。

すると・・・

正規直交座標のベクトルV1の表示は

2 3

は反変表示

2 4

と共変表示

7 -0.25

に変換されます。

 

正規直交座標のベクトルV3の表示は

5 19

は反変表示

10.75 33

と共変表示

29 2.25

に変換されます。

 

 

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ステップ11

次に、正規直交座標に用意されたテンソルT1

4 -1
5 3

に、ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4を掛け合わせてみたいと思います。

しかし・・・

このテンソルT1はいったい何テンソルなんでしょう?

成分変換式1~4のどの変換式を作用させればいいのでしょう?

 

結論から言うと、テンソルT1

4 -1
5 3

は、反変反変テンソルでもあり、反変共変テンソルでもあり、共変反変テンソルでもあり、共変共変テンソルでもあります。

正規直交座標では、それらを区別する必要がありません。

なので、テンソルT1

4 -1
5 3

には、ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4のすべてを作用させる(掛け合わせる)ことができ、その結果、テンソルT1は斜交座標1では下記の4種類のテンソルとして表すことができます。

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

斜交座標1に座標変換された4種類のテンソルT1が得られました。

しかし、この4種類のテンソルT1は「適切」に変換されているのでしょうか?

確認してみます・・・

 

斜交座標1でもこの計算が成り立つのだろうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20240412162001.png

 

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ステップ12

面白いことに、斜交座標1の

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

に作用させると

10.75 33

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の反変表示です。

 

ベクトルV1の反変表示

2 4

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

に作用させると

10.75 33

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の反変表示です。

 

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

に作用させると

29 2.25

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の共変表示です。

 

ベクトルV1の反変表示

2 4

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

に作用させると

29 2.25

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の共変表示です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/2_20240412162001.pngつまり、斜交座標1でも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は見事に成り立たっている、と言えます。

これは偶然ではありません。

逆に言うと、斜交座標1で

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

を成り立たせるテンソルの変換式は、ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4でいいのです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/3_20240412162001.png

 

 

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ステップ13

さらに、斜交座標1を「斜交座標2」へ座標変換してみましょう。すると・・・

ベクトルV1の反変表示は

0.4 1.2

共変表示は

13.75 6.25

になります。

 

ベクトルV3の反変表示は

-0.15 11.05

共変表示は

60.25 35.75

になります。

 

 

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ステップ14

ステップ6で求めた変換式(テンソルV12の成分表示を斜交座標1から斜交座標2へ変換する変換式1~4)を斜交座標1のテンソルT1

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

に作用させてみます。

すると、以下の4つのテンソルT1(新)に変換されます。

反変反変テンソルT1(新)

0.38 -0.86
0.34 1.02

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

共変反変テンソルT1(新)

8.5125 -9.0875
3.2875 -1.5125

共変共変テンソルT1(新)

95.6875 18.3125
48.3125 13.6875

4種類のテンソルT1(新)が造られました。

 

 

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ステップ15

面白いことに、斜交座標2のベクトルV1の共変表示

13.75 6.25

反変反変テンソルT1(新)

0.38 -0.86
0.34 1.02

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の反変表示

-0.15 11.05

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

0.4 1.2

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の反変表示

-0.15 11.05

が得られます。

 

ベクトルV1の共変表示

13.75 6.25

共変反変テンソルT1(新)

8.5125 -9.0875
3.2875 -1.5125

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の共変表示

60.25 35.75

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

0.4 1.2

共変共変テンソルT1(新)

95.6875 18.3125
48.3125 13.6875

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の共変表示

60.25 35.75

が得られます。

このように、斜交座標2でも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は見事、成り立っています。

これは偶然ではありません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/3_20240412162001.png

逆にいうと、やはり斜交座標1から斜交座標2に座標変換しても

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

を成り立たせるテンソルの変換式は、ステップ6で求めた変換式1~4でいいのです。

ステップ6で求めた変換式1~4は、どんなランダムなテンソルに対してもそれを斜交座標1から斜交座標2へ「適切に」座標変換することができます。

よって、ランダムな数字のセットもテンソルと考えてよいことがわかりました。

 

 

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まとめ

結局、テンソルとは何か?

といわれると、どんな数字のセットもテンソルといえるのです。

肝心なのは、それがテンソルなら、座標変換に際しどのように成分が変換されるのか?ということのほうです。

ベクトルとは何か?

といわれると、どんな数字のセットもベクトルですよね。

ベクトルをベクトルたらしめているのは、各成分が座標変換に際し「適切に」変換されるからです。

テンソルも同じです。というか、ベクトルはテンソルの一種です。

ベクトルやテンソルには、座標を超越した性質があります。

そのような性質をあわせ持つ数字のセットのことをベクトルやテンソルといいます。

専門書では、これらの解説を、記号や添字を使って

「あっ!」

と言う間に終わらせてしまいます。

本記事は、そこのところに、ちょっとしたヘルプ、具体的な解説ができないかな?と思って書いてみました。

書き始めはこんな大変な作業になるとは思いませんでした。計算が思ったよりめっちゃめんどくさかったです。

たぶん、数学の得意な人が読んだら「ご苦労様・・・」と一笑に付されるような内容だったかもしれません。

なんか、書いたとたん消したくもなりました(汗)。

しかし、もしかしたら、誰かの役に立つかも・・・と、しばらくは消さずに残しておこうと思います。

閲覧数が減れば消去します。

そうなるとこの世で3番目ぐらいに無駄なテンソルの話になるかもしれません・・・(:-))| ̄|_ぐったり

おしまい

 

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(注1)

ここでは、得られた数字のセットを

12 -2
18 -3

と、まるで2x2行列のように書きあらわしましたが、あくまで(12,ー2,18,ー3)という数字のセットにすぎません。

つまり、

12 -2
18 -3

or

12
-2
18
-3

or

12 -2 18 -3

or

12 18
-2 -3

だと思ってください。

この数字のセットを「4x4行列の変換式」

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

と掛け合わせて新しい数字のセットを得る場合には、

12
-2
18
-3

の形式を使い、

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

×

12
-2
18
-3

||

2
-16
4
-32

と、計算します(スッテプ6,ステップ7,ステップ11,ステップ14など)。

この計算の結果を、記事中では

2 -16
4 -32

と2x2行列のように記述しましたが、あくまで

(2,ー16,4,ー32)

という数字のセットにすぎません。

つまり、

2
-16
4
-32

or

2 -16
4 -32

or

2 -16 4 -32

or

2 4
-16 -32

と、思ってください。

本記事では、基底を極力意識しないでいいように、テンソルの成分とその座標変換に注目した解説を試みています。

 

なんか行列の形式を都合よく考えるところが恣意的で気持ち悪いでしょうか・・・

でも、ベクトルだってそうですよね?

たとえばベクトル

(2,3)

を成分変換式

4 -1
5 3

に作用させて新しいベクトルを得よ、と言われれば、ベクトル(2,3)を勝手に(恣意的に)

2
3

の形式にして

4 -1
5 3

×

2
3

||

5
19

としませんか?

あたらしく得られたベクトルは、

5
19

or

5 19

であって、あくまで

(5,19)

という数字のセット(ベクトル)に過ぎません。

縦ベクトルにするか横ベクトルにするかは基底が決めることです。

逆に言えば、「基底の種類」さえしっかりわかっていれば、座標変換行列とのかけ算において、縦とか横とか行列の形にこだわる必要はないのです。

ベクトルもテンソルも。

(基底の種類には、共変基底とか、反変基底とか、共変共変基底、共変反変基底、反変共変基底、反変反変基底とか、いろいろあります。みなさんが高校で習ったベクトルの基底は、共変基底です)

成分変換に着目する限り、行列との掛け算が必要なら、行列との掛け算に都合よい形式(行列計算できる形式)にしてしまいます。

なぜなら、その計算の目的は、結局

(旧)第一成分 → (新)第一成分

(旧)第二成分 → (新)第二成分

(旧)第三成分 → (新)第三成分

(旧)第四成分 → (新)第四成分

・・・

とすべての成分を獲得することです。

すべての成分が「適切」に変換されているかどうかを気にしています。

ちなみに、ここでいう「適切」というのは、ベクトルの座標変換前後で

旧ベクトルV1 + 旧ベクトルV2 = 旧ベクトルV3

新ベクトルV1 + 新ベクトルV2 = 新ベクトルV3

と、きちんと対応していることです。

つまり

旧ベクトルV1 ⇒(変換式)⇒ 新ベクトルV1

旧ベクトルV2 ⇒(変換式)⇒ 新ベクトルV2

旧ベクトルV3 ⇒(変換式)⇒ 新ベクトルV3

という変換式が存在していればいいのです。

 

(注2)

斜交座標1から斜交座標2へのベクトルの反変成分の変換行列

A'

0.6 -0.2
-0.2 0.4

と、その逆行列(ベクトルの共変成分の変換行列を転置したもの = 共変基底ベクトルをただ縦に並べたもの)

B'

2 1
1 3

を用意し、A'⊗A'、A'⊗B'、B'⊗A'、B'⊗B'・・・と、それぞれのテンソル積をとる(成分をひとつひとつ掛け合わせていく)と、本文中にも掲載した以下の4つの変換式1~4が手に入ります。

 

反変反変テンソルV12 を 反変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

反変共変テンソルV12 を 反変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

共変反変テンソルV12 を 共変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式3

1.2 -0.4 0.6 -0.2
-0.4 0.8 -0.2 0.4
0.6 -0.2 1.8 -0.6
-0.2 0.4 -0.6 1.2

共変共変テンソルV12 を 共変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

 

(注3)

正規直交座標から斜交座標1へのベクトルの反変成分の変換行列

A

0.25 0.5
-1 2

と、その逆行列(ベクトルの共変成分の変換行列を転置したもの= 共変基底ベクトルをただ縦に並べたもの)

B

2 -0.5
1 0.25

を用意し、A⊗A、A⊗B、B⊗A、B⊗B・・・と、それぞれのテンソル積をとる(成分をひとつひとつ掛け合わせていく)と、本文中にも記載した以下の4つの変換式1~4が得られます。

 

反変反変テンソルを反変反変テンソルに変換する

変換式1

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

反変共変テンソルを反変共変テンソルに変換する

変換式2

0.5 0.25 1 0.5
-0.125 0.0625 -0.25 0.125
-2 -1 4 2
0.5 -0.25 -1 0.5

共変反変テンソルを共変反変テンソルに変換する

変換式3

0.5 1 0.25 0.5
-2 4 -1 2
-0.125 -0.25 0.0625 0.125
0.5 -1 -0.25 0.5

共変共変テンソルを共変共変テンソルに変換する

変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

 


追記1

本文中では、反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

に、変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

を作用させて、反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

を造りました。

 

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

は、反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

にベクトルの成分変換行列

F

0.6 -0.2
-0.2 0.4

と、その逆行列

F-1

2 1
1 3

を掛け合わせて

反変共変テンソル(新)=(F-1)(反変共変テンソル)(F)

として求めることもできます。

どちらの方法でも同じ反変共変テンソル(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

が得られます。

 


追記2

正規直交座標の計量テンソル

1 0
0 1

に、斜交座標1で共変共変テンソルを得る変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

を作用させると、斜交座標1の計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.3125

が得られます。ということは、斜交座標1の計量テンソルは共変共変テンソルだということです。

斜交座標1の基底を新しく

0 1

 

1 0

と定義すれば、斜交座標1の計量テンソルは

1 0
0 1

になります。その計量テンソル

1 0
0 1

に、斜交座標1の共変共変テンソルを斜交座標2の共変共変テンソルに変換する変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

を作用させると、斜交座標2の計量テンソル

5 5
5 10

が得られます。

このように計量テンソルは共変共変テンソルの性質を有していることがわかります。

事実、計量テンソルは共変基底同士のテンソル積「共変基底⊗共変基底」で求めることもできます。

たとえば、斜交座標1の共変基底を横に並べたもの

2 1
-0.5 0.25

にその転置行列

2 -0.5
1 0.25

をかけるだけで、斜交座標1の計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.3125

が得られます(余談3)。

 


追記3

斜交座標2の計量テンソル

5 5
5 10

の最も教科書的な求め方は、

ベクトルの反変成分を変換する行列

F

0.6 -0.2
-0.2 0.4

の逆行列

F-1

2 1
1 3

と、その転置行列

F-1・T

2 1
1 3

を、正規直交系の計量テンソル

1 0
0 1

掛け合わせて

計量テンソル=(F-1・T)x(F)x(正規直交系の計量テンソル)

とする方法です。

 

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【図解】極座標基底によるベクトル表示

 

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正規直交座標があるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/16_20210131182401.png

こういう座標における基底は、座標のありとあらゆる場所で、どこでも同じ大きさと方向をもっています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/17_20210131182401.png

なので・・・

下図のようなベクトルの大きさと方向を表示しようとすれば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20210131171801.png

どの基底を選んでも

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/18_20210131182401.png

結果は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/19_20210131182401.png

同じになるでしょう。しかし、下図のような極座標では

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/38.png

基底(極座標基底)の大きさや方向が

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/42_20210205103801.png

ところによってバラバラです。なので、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/40_20210205103801.png

ベクトルの大きさや方向を表示しようと思っても

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/41_20210205103801.png

どの基底を選ぶかで結果が変わってきます。

たとえば前述のベクトル(2,3)は、次の基底を選ぶと

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/25_20210131182402.png

必ずしも(2,3)になるわけではありません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/26_20210131182401.png

計算してみると、ベクトル(3.23,0.8)となります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/32_20210131225501.png

これが"極座標基底によるベクトル表示"です。

 

ちなみに・・・

高校数学で習う

ベクトル(r,θ)= ベクトル(2,0.52)

みたいな表示は単なる"ベクトルの極座標表示"です。"極座標基底によるベクトル表示"とは全く異なるものです。

注意しましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/28_20210131182401.png

おしまい!

 

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といいたいところですけど・・・w(゚o゚)w・・・

ちょっと説明不足ですかね

もう少し具体的に説明すると

上述したベクトル(3.23,0.8)は、どのようにしたら求まるのでしょう?

計算の方法があるのです。

まず、選んた "基底の場所" を極座標(r,θ)であらわします。

この点(r,θ)に存在する基底を、極座標基底(erとeθ)といいます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43_20210205161201.png

ベクトルを、この極座標基底(erとeθ)を使ってあらわすのが"極座標基底によるベクトル表示"です。

極座標基底(erとeθ)の場所が、原点から(r,θ)だけ離れていることに注意してください。

難しいのは、

極座標基底(erとeθ)を、正規直交基底(exとey)であらわすところです。

先に答えを言ってしまうと・・・

er = (cosθ,sinθ)= (cosθ)ex + (sinθ)ey

eθ =(-rsinθ,rcosθ)= -r(sinθ)ex + r(cosθ)ey

です。必ずこうなります。

考え方は下図を参照ください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31_20210131184701.png

つまるところ「極座標基底によるベクトル表示」とは、

正規直交基底(exとey)であらわされているベクトル(A,B)が、極座標基底(erとeθ)では、どう表されるか?

という問題です。

(たくさんの人が誤解していますが、ベクトルをrとθであらわす「ベクトルの極座標表示」ではありません!)

答えは

Acosθ + Bsinθ -(A/r)sinθ + (B/r)cosθ

です(注1)。

これだけ覚えれば済む話です。

ベクトルの変換式は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/polar-translation.png

です。

(A,B)は正規直交座標であらわされた(2,3)のような数値の組み合わせ、あるいは(2x + y, x - y)のような関数でも構いません。

前出の図からもわかるように

er = (cosθ,sinθ)= (cosθ)ex + (sinθ)ey

eθ =(-rsinθ,rcosθ)= -r(sinθ)ex + r(cosθ)ey

となるように erとeθ を決定しています。ルール上、erとeθは直交し、erのサイズは「1」、eθのサイズは「r」と決まっています。

 

具体例で考えてみましょう。

たとえば先ほどの正規直交系のベクトル(2,3)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/19_20210131182401.png

このベクトルを、点(r,θ)= (2,0.52)を起点とする下図の極座標基底であらわすとどうなるか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43_20210205161201.png

 

という問題を考えてみましょう。

やることは簡単で、先ほどの公式

Acosθ + Bsinθ -(A/r)sinθ + (B/r)cosθ

を使います。

これに

正規直交座標でのベクトル表示(A, B) = (2,3)

極座標基底の場所(r,θ) = (2,0.52)

を代入すればいいだけの話です。

答えは、ベクトル(3.23,0.8)となります(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/32_20210131225501.png

すなわち、

2ex + 3ey  = 3.23er + 0.8eθ

です。

逆に言うと、この式が成立するように erとeθ が決定されています。極座標基底 erとeθ を求める式は

er = (cosθ,sinθ)= (cosθ)ex + (sinθ)ey

eθ =(-rsinθ,rcosθ)= -r(sinθ)ex + r(cosθ)ey

です。

これが"極座標基底によるベクトル表示"です。

 

もう一つ例を考えてみましょう。

たとえば正規直交系で(4,-1)とあらわされているベクトルは

点(r,θ)= (2,0.52)を起点とする極座標基底をつかうと、どうあらわされるでしょうか?

やることは単純です。

(A, B) = (4,-1)

(r,θ) = (2,0.52)

Acosθ + Bsinθ -(A/r)sinθ + (B/r)cosθ

に代入すればいいだけの話です。

答えは、ベクトル(2.96,-1.43)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/36_20210204023101.png

すなわち

4ex - 1ey  = 2.96er - 1.43eθ

です。

 

さて。

こんなことをして、いったい何になるのでしょう?

これも答えを言ってしまうと、こうすることによってベクトル表示をテンソルとして扱うことができるようになるんです(テンソルってなに?という方はこちらをご参照ください)。

 

ちなみに・・・何度も言いますが

ベクトル(r,θ)

のようにベクトルを極座標で表示したものは、"極座標基底によるベクトル表示"ではありません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/28_20210131182401.png

なので"ベクトルの極座標表示"は当然テンソルにもなりません。

ベクトルの極座標表示

極座標基底によるベクトル表示

名前が似ているので注意しましょう(注3)。

 

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(注1)

正規直交座標パラメータ(ⅹ,y)から極座標パラメータ(r,θ)への座標変換は、公式に従うと、以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/300.png

ここで

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301.png

ですから・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/302.png

です。結果として、以下の成分変換式が成り立ちます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/318.png

くどいようですが・・・

ベクトル(A,B)は正規直交座標であらわされたベクトルです。

そのベクトルの起点が(x,y)です。この起点(x,y)を極座標表示であらわすと起点(r,θ)です。

その起点に設置されているのが極座標基底(er、eθ)です。

ルール上、erとeθは直交し、erの方向はr方向、サイズは「1」、eθのサイズは「r」と決まっています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43_20210205161201.png

この極座標基底(erやeθ)を使うとベクトル(A,B)はどう表されるのか?という問題です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/26_20210131182401.png

その答えは、

(Acosθ + Bsinθ -(A/r)sinθ + (B/r)cosθ)

です。

ベクトル(A,B)の極座標表示を知りたいのではありません。

 

(注2)

ベクトル(3.23,0.8)は反変表示です。その共変表示は(3.23,3.2)です。したがって、ベクトルのサイズは不変に保たれています。

√(22+32)= √13

√((3.23)*(3.23)+(0.8)*(3.2))=√13

 

(注3)

たとえば、ベクトル(2,3)の極座標表示(r,θ)は(3.61,0.98)、ベクトル(4,-1)の極座標表示(r,θ)は(4.12,6.04)だから・・・

2ex + 3ey  = 3.61er + 0.98eθ

4ex - 1ey  = 4.12er + 6.04eθ

などとしても、そういうerやeθは見つかりません。そもそも極座標表示(r,θ)は ベクトル(テンソル)ではありません。極座標表示(r,θ)と"極座標基底(erやeθ)によるベクトル表示"の違いにはくれぐれも注意しましょう。

 

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たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ~ゆる~く計算してみる編~

以前、テンソルについてできるだけ数式を使わない解説を試みましたが、今回、少しだけ計算式を使って説明してみることにしました。

縮約はでてきません。省略もしません。2次元座標に限ります。xとyを1と2に変換したりもしません。

 

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本解説を読破するために最低必要な事前知識は以下の3つでしょうか・・・。

1.全微分の公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/159.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/70.png

2.全微分の変数変換公式

座標(基底)を変換する場合は、合成関数の微分(いわゆる連鎖律)によって偏微分係数を変換します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/72.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/122.png

3.ベクトルの成分変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.png

この3つが理解できたら準備完了です。

 

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【1日目】

XY座標にふたつのベクトルを用意します。ベクトルV1とV2です。V1=(2,3)とか V2 =(4、-1)とか、なんでも構わないのですけど、ちょっとカッコつけて文字表記にします(文字表記はイヤだ・・・という人は下記「おまけ」具体例バージョンをご覧ください)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/120.png

上段がベクトルV1、下段がベクトルV2です。

では、このベクトルV1とV2からXY座標でテンソルV12をつくってみましょう。

テンソルをつくるのはカンタンで、ベクトルの成分同士を"すべて掛け合わせてならべるだけ"です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/238.png

この一番右辺・・・4つの数字のセット・・・がテンソルになります。

次に、座標を変換します。

ベクトルの成分変換公式によって、ベクトルV1とV2の表示が下記のように変換されたとしましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/125.png

これらベクトルの座標変換前後の各成分には以下の関係式が成り立っているはずです(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/119.png

行列でまとめると以下のようになります。別にまとめなくてもいいですが・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/123.png

上段がベクトルV1、下段がベクトルV2です。

つまり、これが

Rθ座標(座標変換後)のベクトル表示とXY座標(座標変換前)のベクトル表示の関係です。

以上をふまえて、Rθ座標でもテンソルV12をつくってみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/211.png

できました。右辺の4つの数字のセットがテンソルです。

これから、

このテンソルV12(Rθ座標)を、ベクトルV1とV2のXY座標成分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/120.png

を使ってあらわしてみたいと思います。

なぜ、そんなことをするのかというと・・・

最初に造ったテンソルV12と新しく造ったテンソルV12は、どちらも同じベクトルからつくられたものです。

なので"みため"(=成分)は違っても、同じテンソルであるはずです。

なのでどちらも同じ名前(テンソルV12)としたわけです。が、

ところが。

厳密な専門家たちにとっては、このふたつのテンソルが、ほんとうに同じものか?

いや、そもそもテンソルなのか?が自明ではありません。

どういうことかというと・・・

「もし、このふたつのテンソル(ベクトルV1とV2からXY座標でつくられたテンソルV12と、Rθ座標でベクトルV1とV2からつくられたテンソルV12)の間に座標変換式が存在すれば、それらは確かにテンソルだろう。したがって、まぁ両者は同じものといってよいだろう・・・、しかしそれまでは軽々しく同じ名前であらわしたり、そもそもテンソルという敬称で呼ぶな」

というわけです。

しかし、これらがテンソルであることは数々の専門書ですでに証明済みのことですし・・・

と言いたい気持ちをグッと抑えて、ここは、テンソルV12が確かにテンソルであることを確認してみたいと思います。

具体的には、「変換式があるかどうか」を確認するのです。

では、いよいよ

テンソルV12(Rθ座標)を、ベクトルV1とV2のXY座標成分を使ってあらわしてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/78.png

式を展開すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/79.png

ややこしくなってきましたが、行列を使ってまとめると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/147.png

左辺はテンソルV12(Rθ座標)そのものです。

さらにまとめると、最終的に次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

できました (o^-‘)bグッ!!

右辺にテンソルV12(XY座標)が現れました。

そして、みごとに、テンソルV12(XY座標)からテンソルV12(Rθ座標)への変換式になりました。

これが、テンソルV12がテンソルであること(=成分変化が整然と規則的に無機的に生じていること)を証明しています。

どういうことかというと、

もし次のように「C」などという余計な項がつくようであれば、それはテンソルではなかった(←座標を超える線型性はないだろう)・・・というわけです(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/237.png

しかしそうではなかったわけですから、テンソルV12(Rθ座標)とテンソルV12(XY座標)はともにテンソルであり、したがってそれらは(成分表示が違うだけで)同一のものとみなしてよい・・・と結論できます。

 

(注1)

なぜこうなるかというと、以下ご参照ください。基底ベクトルを変換する公式が使われます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/304.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/305.png

なお、Rとかθはふつう極座標基底に用いられますが、この記事では単に基底を区別するための文字として使用しています。もちろん極座標基底としても構いません。極座標基底によるベクトル表示についてはこちらをご参照ください。

(注2)

テンソルには、ある座標で

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/296.png

であれば、他のすべての座標で

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/296.png

でなければならないという一丁目一番地ともいうべき決まりがあります。なので変換式に定数Cなどあってはならないのです。

 

 

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おまけ

文字表記がイヤだ!という人のために、具体的な数字で考えてみます。

下記のようなベクトルV1とV2を考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector-163.png

ベクトル(2,3)と(4,-1)です。

このベクトルは、勝手につくりました。みなさんも勝手につくってみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/241_20210129233701.png

つづいて座標変換をおこないます。

基底ベクトルが、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/320.png

から

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/321.png

へ、かわったとしましょう。

ベクトルはそのまま、座標軸のみ動かします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector-161.png

すると、この座標変換によって、ベクトル表示が、以下の式に従って変化します(ベクトルの座標変換ですね)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/242_20210129233701.png

その結果、新しい座標(Rθ座標)におけるベクトルV1とV2の表示は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/319.png

となりました。

さぁ、これで下準備完了です。

では、XY座標のベクトル(2,3)と(4,-1)から、テンソルV12(XY座標)をつくってみましょう。

ベクトルV1とV2のXY座標成分を順次掛け合わせて並べるだけです。

2x4=8,2x-1=ー2,3x4=12、3x-1=ー3・・・

つまり

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/249_20210129233701.png

です。これが、テンソルV12(XY座標)です。

同様に、Rθ座標で表示されているベクトルV1(0.6,0.8)とV2(2.6,-1.2)からもテンソルV12(Rθ座標)をつくってみましょう。

ベクトルV1とV2のRθ座標成分をすべて掛け合わせて並べるだけです。

0.6x2.6=1.56,0.6xー1..2=ー0.72,0.8x2.6=2.08,0.8xー1.2=ー0.96・・・

つまり

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/250_20210129233701.png

です。これがテンソルV12(Rθ座標)です。

この4つの数字を覚えておきます。

つぎに、ちょっと天下り的 ~ 唐突ですが、以下の行列を考えてみましょう(なんで?と聞かず苦笑)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/240_20210129232901.png
ベクトルの座標変換の公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.pngと、今回の座標変換の式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/242_20210129233701.png
の係数を見比べることによって

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/245_20210129233701.png

であることがわかります。これをもとにひとつひとつ計算していくと・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/246_20210129233701.png

であることがわかります。

これをテンソルV12(XY座標)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/249_20210129233701.png

に作用させてみましょう(作用とは、掛け算のことです)。すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/252_20210129233701.png

となり、なんと、先ほど得られていたテンソルV12(Rθ座標)https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/250_20210129233701.png

と全く同じものが得られました。

これは偶然ではありません。

このことから、先ほどの

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/246_20210129233701.png

がテンソルの変換式であることが判明したと同時に、ベクトルV1とV2の成分をすべて掛け合わせて作られたテンソルV12は確かにテンソルといえるのです。

また、余談ですが

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/253_20210129234401.pngは、テンソルに作用して別のテンソルを作りだしたことになります。このように「テンソルに作用して別のテンソルをつくるもの」ものをテンソルという、というテンソルの定義があります。

するとこの行列(数字のセット)もテンソルといえます。

鶏と卵みたいな話ですが・・・

 

このような具体的な説明が好みの方は、ぜひ、こちらもご覧ください

 

 

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【2日目】

前述したXY座標でつくられたテンソルV12とRθ座標でつくられたテンソルV12の関係を再掲します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

この式を特殊な方式で書くと、以下のようになります(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/144.png

えっと・・・目が点になっている人が多いと思いますが、この式を信じる信じないはおいといて・・・今からルールにしたがって少しずつ式を展開していきますのでその様子をご確認ください。三つの⊗がありますが、まず、両サイドの⊗を処理します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/146.png

次に真ん中の⊗を処理すると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/129.png

最後の⊗を処理すると、最終的に次式を得ます。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

前述したテンソルの座標変換式とまったく同一のものが得られました。

この特殊な式の正当性をご理解いただけたところで、

では・・・・

テンソルの座標変換とベクトルの座標変換の係数を比較してみましょう。

テンソルの座標変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/144.png

ベクトルの座標変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/196.png

こうしてみると、テンソルの座標変換は、ベクトルの座標変換に完全に依存していることが見てとれます。

つまり、ベクトルの座標変換が成り立つ限り、テンソルの座標変換も必ず成立するのです。

 

(注1)

この形式は厳密ではないかもしれませんし、あるいは、すでに誰かが開発している確かな方法なのかもしれませんが、従来より管理人が個人的に勝手に愛用している方法で、区分行列を一つの成分とみなしながら、クロネッカー積のような積を外側から処理していく方法です。非常に見通しがよく今のところ常に正しい変換行列を得るので利用しています。ただし、決して、正式な場で使用しないでください。

 

 

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【3日目】

今回は計量テンソルについて考えてみます。正規直交座標で成り立つ三平方の定理

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/174.png

は本当は以下のような形をしていると、専門書は言います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/92.png

は?って感じです。専門書によると正規直交系では計量テンソルの働きによってdxdyやdydxの項がゼロになっているから簡単にみえるのだと・・・。

どういうことなのでしょう?

まず、全微分の公式を使って、dxとdyを別の基底で書き変えてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/130.png

これらの公式を使って前述の式の右辺を書き変えると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/131.png

さらに展開します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/132.png

この展開式を、係数に注意しながら、さらに次のように変形します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/152.png

行列でまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/137.png

この式を特殊な方法で書くと・・・次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/202.pngさらにまとめていくと・・・ちょっと途中で長くなってしまいますが、次のようになります・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/203.png

最終的に、以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/204.png次の部分がいわゆる計量テンソルを構成する部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

XY座標からRθ座標への基底変換の式(以下)とよ~く見比べてください。係数が完全に一致しているわけではありませんが・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/157.png

計量テンソルは、この基底変換に使われる係数に100%支配されていることがわかると思います。

計量テンソル構成する4つの成分は次の式をみればわかります(前述の式を再掲)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/152.png

この式が、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/302_20211101115401.png

という形になっていることに注目してください。

つまり、冒頭の式は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/300_20211101114501.png

と書き変えることができます。(1  0  0  1)とか(A B C D)の部分がズバリ「計量テンソル」です。直交基底のときは計量テンソルが(1  0  0  1)になり、典型的な三平方の定理

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/174.png

となります。

 

 

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【4日目】

今回は共変ベクトルをふたつ(V1とV2)用意します。そのXY座標での座標表示、Rθ座標表示を以下のように定めます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/162.png

共変ベクトルの成分変換は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.png

ではなく、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/160.png

であることに注意しましょう。ベクトルV1およびV2の成分も、この法則に従い、以下のように変換されるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/164.png

つまり、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/165.png

です。ここからテンソルV12をつくります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/178.png

できました。成分が違いますが両者とも同じテンソルです。その証拠にそれぞれのテンソル成分には以下の関係式が成り立っているはずです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/193.png

式を一度展開してみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/179.png

まとめなおすと以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/177.png

テンソルの成分表示が、基底変換に応じて整然と規則的に変化することがわかります。

これを特殊な形式であらわすと・・・以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/169.png

ベクトルの座標変換公式と見比べてみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/199.png

それぞれの係数比較により、テンソルの座標変換がベクトルの座標変換に完全に依存していることがわかります。また、今回は計量テンソルを構成する成分(以下参照)とも比べてみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

計量テンソルと共変テンソルの密接な関係が見えてきます。

 

 

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【5日目】

今回は、基底を入れて考えてみます。基底を導入すると式が非常に複雑になるので逃げたい気分なんですが、ちょっと頑張ってみます。1日目で考察したベクトルVとV は基底を使えば以下のようにあらわせます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/219.png

ベクトルVとV のRθ座標は、XY座標表示を使って以下のようあらわされます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/306.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/307.png
ベクトルVとV からテンソルV12(Rθ座標)をつくります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/231.png

式を展開します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/310.png

基底の変換には以下の式を適用します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/283.png

これを前述の式に代入します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/309.png
式を部分的に展開し、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/285.png
行列の形にします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/286.png
特殊な形式でまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/287.png

さらにまとめていくと・・・https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/288.png

途中、式がやたらと長くなりますが、最終的には以下のようにまとまります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/290.png

これがテンソルの変換式です。

基底をつけて計算するとこのように複雑になります。

ベクトルVとVからつくられるテンソルV12についても同様の考察が可能です。

複雑すぎて書きたくないので(苦笑)最終的な変換式のみ示します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/291.png

共変テンソルの変換式には、計量テンソルで考察した次の式をそのまま適用できることがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

 

 

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おまけ

既出の反変テンソル、共変テンソルの座標変換に加え、混合テンソルについても変換式だけアップしておきます。

 

(2,0)テンソルの座標変換

「反変ベクトル⊗反変ベクトル」としてつくられた反変テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/235.png

 

(0,2)テンソルの座標変換

「共変ベクトル⊗共変ベクトル」としてつくられた共変テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/192.png

 

(1,1)テンソルの座標変換

「反変ベクトル⊗共変ベクトル」としてつくられた混合テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/182.png

 

「共変ベクトル⊗反変ベクトル」としてつくられた混合テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/239.png


 

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線型性とは?

線型性についてちょっと説明してみます。

正確さを犠牲にしてわかりやすく説明しますので、その点、ご了承ください。


線型性とは?(線形性とも書くようです)

「個々の変化 の和」が「個々の和 の変化」と一致することです。

どういうことかというと

たとえば

チーズバーガー1個の値段が、ハンバーガー2個と同じとき

チーズバーガー2個の値段が、ハンバーガー4個と同じ

であれば線型性があります。

つまり、あたりまえのこと。

ちょっと数学的に言えば、一次的な比例関係が成立します。

さらに

ダブルチーズバーガー1個の値段が、ハンバーガー3個と同じであれば

先ほどの例と併せて

チーズバーガー1個とダブルチーズバーガー1個のセットの値段が、ハンバーガー5個の値段と同じ

であるとき、

そういうとき「線型性があるな~」と感じるのです。

そう。それだけのことです。

線型性=あたりまえな話=です。

日常生活にある、ありとあらゆる「あたりまえ」を、わざわざ線型性と言っています。

もし「チーズバーガー1個とダブルチーズバーガー1個のセット」の値段が、ハンバーガー4個と同じ値段だったら「あれ?線型性がないなぁ・・・」と。

あたりまえの感覚ですよね。

そして。

この関係性が日本だけではなく、通貨が違う国、たとえばアメリカなどでも成り立っていると「まるでベクトルとかテンソルみたいだなぁ」と感じるわけです。

通貨(座標)の違いを超えて線型性が保たれている感じです。

たとえばハンバーガー1個が日本では100円、アメリカでは1ドルだとしましょう。

このとき。

「チーズバーガー1個とダブルチーズバーガー1個のセット」の値段が日本では500円なのにアメリカでは6ドルだったら・・・「あれ?なんかおかしくない?」と思うわけです。

ベクトルとかテンソルであれば「個々の和の変換値」と「個々の変換値の和」が一致するはずです。

こういう関係が、すべての国、いや宇宙中で保たれているのがベクトルやテンソルの世界観です。

線型性があると、国をまたいだ価格の変換公式とか、つくりやすくなります。

線形性ががあてはまらない国では「あれ?この国の計量は曲がってるなぁ~」なんて。

線型性って、ちょっと難しい響きがありますけれども「あたりまえ」というぐらいの意味で、落とし穴がありません。

なんかあたりまえすぎてわかりにくくなっている概念だと思います。

・・・ちょっとだけ共変微分(´~`)

 

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今日、ちょっとだけ変な微分を勉強してみましょう!

アインシュタインの一般相対性理論にでてくる共変微分です。なお、共変微分と共変ベクトルには何の関係もありません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/342.png

こういうベクトル場で、縦方向(y方向)や横方向(x方向)にどんな感じでベクトルが変化しているのか?を調べます。あなたならどうしますか?

 

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あるベクトル場vが

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301_20210722224201.png
と、あらわされているとします。

(具体的な数字で勉強したい人は後述した「注1」をどうぞ!)。

このベクトル場で、縦方向(y方向)や横方向(x方向)にどんな感じでベクトルが変化しているのか?を知るために

このベクトル場vを、x方向とy方向に微分します。

すると、以下のような結果を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/298_20210315185001.png

上段がベクトル場vのx方向への変化(x方向への微分)

下段がベクトル場vのy方向への変化(y方向への微分)

です。

基底ベクトルを使ってあらわすと次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/25.png

まとめると・・・https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31.png

です。

これが、いわゆるふつうのベクトル場の微分です(注1)。

縦方向(y方向)や横方向(x方向)にどんな感じでベクトル場が変化しているのか?をあらわすテクニックです。

 

では、共変微分とはどんな微分でしょう?

共変微分をひとことで言うと、ベクトル場の微分を「どんな座標軸でも使える」ように工夫したものです。

前述した、ふつうのベクトル場の微分は、正規直交座標でなければ使えません。

座標軸が曲がっていると、ふつうのベクトル場の微分では、縦方向(y方向)や横方向(x方向)にどんな感じでベクトルが変化しているのか?はわからないのです。

座標軸の変化(計量テンソルの変化)を取り除く(または加味する)必要があります。

・・・なんて言われても意味がわかりませんよね?

 

共変微分を理解する近道は、具体的な手順を知ることです。

それを、わかりやすく以下に示します。

まず、先ほどのベクトル場v

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301_20210722224201.png

を基底ベクトルを使ってあらわします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/302_20210722224201.png

ここが最も大事なステップです。

このときの基底ベクトル(ex, ey)は、正規直交基底((1,0)とか(0,1)とか)みたいな単純なものではありません。

複雑な式になっていたりします(斜交座標とか極座標とか・・・)。

 

くり返します。ベクトル場v

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/302_20210722224201.png

を、"基底ベクトルも含めて"まるごと微分する のが共変微分です。

具体的には、以下のように微分します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/34.png

上段がベクトル場vのx方向への微分

下段がベクトル場vのy方向への微分

です。

連鎖律(合成関数の微分)によって、成分(vx、vy)だけではなく、基底ベクトル(ex, ey)も微分されているのがわかりますか?

共変微分の手順は、本質的にはこれでおわりです。

つまり結果だけを書くと・・・

ベクトル場vの共変微分は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/40.png

です。

式を整理して次を得ます。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/200.png

これが共変微分です。完!

 

・・・と言いたいところですが、専門家は、ここからすごいことをします。

ある「魔法の式」を使って、式の後半にある「∂ex」と「∂ey」(基底ベクトルの微分)を消してしまうんです。

その「魔法の式」とは以下のようなものです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/27.png

式の中にある見慣れない記号 Γ をクリストッフェル記号と言います。

詳細は省きますが、今のところは別途(比較的カンタンに)算出できる、ただの数字(係数)と思ってください(注2)。

この「魔法の式」を先ほどの共変微分の結果に代入し、式を整理すると以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/19.png

逆にわかりにくくなったと思うかもしれませんが、よ~く見てください。

見事、「∂ex」と「∂ey」がなくなって、きれいなベクトル形式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/294.png

になっています。

魔法の式で「∂ex」と「∂ey」(基底ベクトルの微分)を消してしまう・・・これぞ共変微分の真骨頂です。

(なぜか専門書では、ほとんど強調されませんが...)

カッコの中身は全部同じ形なので、下記のように書き変えるのが流儀です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/21.png
共変微分としてよく教科書に紹介されている式はこの部分です(これが共変微分だといわれても初学者には意味が分かりませんよね)。

結論です。

ベクトル場 v の共変微分は次のようにあらわされます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/9.png

完!!

・・・

なんだか今ひとつ重要性が伝わってない気がするので、もう一度強調しておきます。

この形式であらわすことによって

ふつうのベクトル場の微分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31.png

と、ベクトル場の共変微分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/9.png

の結果を比較しやすいですよね。

共変微分の成分は、ふつうの微分の成分に補正係数(Γ)を足したものになっています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/21.png

です。

これで正真正銘

完!!!

です。

どうしても、ピンと来ない方は以下の注で具体例を読んでみてください。

 

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なお、本記事は平面上に描かれた座標における共変微分を紹介しました。しかし、ここで紹介したクリストッフェル記号(Γ)はすごいです。なんと、曲面上に描かれた座標でさえ共変微分を可能にしてしまいます。非常に不思議なんですがクリストッフェル記号(Γ)は平面世界を突破するんです。ほんとびっくりです。

 

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(注1)

ベクトル場v

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301_20210722224201.png
は、たとえば、vx = 2、 vy = 1であれば

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

です。

正規直交座標に描かれたベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

をふつうに微分すると、以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/330.png

すなわち、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/334.png

です。

x方向へもy方向へもゼロになります。

x方向にもy方向にもベクトルの変化がみられないという意味です。

このベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329.png

を図示してみると、以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/326.png

たしかに、このベクトル場、x方向にもy方向にも変化がみられませんよね?

こういうベクトル場をふつうに微分すると、x方向であれ、y方向であれ、全方向でゼロになるのは直感的に納得できると思います。

くり返しますが、微分がゼロ、すなわち、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/334.png

というのは、x方向にもy方向にもベクトルの変化がみられないことを意味します。

 

しかし、ベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/348.png

ではどうでしょう?

vx = 2x + 1、

vy = x - y

です。

このベクトル場を図示すると、次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/347.png

こんなベクトル場では、ふつうの微分がx方向にもy方向にもゼロにはならないことが予想できます。

では実際に、このベクトル場をふつうに微分してみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/349.png

すなわち、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/350.png

です。

予想通り、x方向へもy方向にもゼロにはなりませんでした。

 

では、次のようなベクトル場はどうでしょう?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329.pnghttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/346.png

ベクトル場は一様でないようにみえます。

ふつうの微分はどんな値になるでしょう?

計算・・・難しそう?

いえ、わざわざ計算する必要ありません。結果は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/334.png

です。x方向へもy方向へも変化していません。

なぜなら、図示したベクトル場の直前の行(図の真上)を見てください。

そこに

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329.png

と書いてあるではないですか!

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/301_20210722224201.png

なのですから、vx =2,vy =1なんです。つまり、vx も vy も微分したらゼロです。

もしも、この座標世界の内側に入り込むことができたら?

そこからみたベクトル場はこんな感じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/326.png

一様です。x方向へもy方向へも変化していません。

一様ではないようにみえたのは、座標軸のゆがみの影響を受けていただけです。

内部世界の住人は、まさか自分たちの座標が外からみると歪んでいるなんて思っていないでしょう。

ふつうの微分は、この内部世界の「みため」をあらわしているんです。

一方、共変微分は外部世界からみた「みため」をあらわします。

座標軸の歪みのせいで、ベクトル場が歪んでましたよね?

そうのようなとき、共変微分の結果はx方向にもy方向にもゼロになりません。

内部世界の座標軸が外部世界からみて歪んでいる場合、ふつうの微分と共変微分の結果が一致しないのです。

共変微分とは、誤解を恐れずに言えば、内部世界から飛び出して、外の視点で微分することです。

外部世界からみると、基底そのものの変化(座標軸の曲がり)が検出されます。

逆に、ふつうの微分とは、内部世界からみた微分です。

この例の場合、ふつうの微分はx方向にもy方向にもゼロですが、共変微分の結果はx方向にもy方向にもゼロになりません(計算略)。

 

もう一つだけ、例をみておきましょう。

次の絵は、あるベクトル場を外部世界から観察した様子です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/361.pnghttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/360_20211116230501.png

このベクトル場のふつうの微分は以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/362_20211116230901.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/363.png

x方向にもy方向にもゼロにはなりません。

ふつうの微分とは内部世界からみた微分です。

この内部世界に入り込むと、このベクトル場はこうみえています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/360_20211116230501.png

外部世界からみた場合と同じです。

このように、内部世界の「みため」が外部世界からみた「みため」と一致している場合、共変微分はふつうの微分と一致します。

くどくどと説明しましたが、共変微分とは、まぁ、そういう微分です。

 

 

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(注2)

クリストッフェル記号(Γ)の値は計量テンソルgから求めます。gxxは計量テンソルの第一成分、gxyは第二成分、gyxは第三成分、gyyは第四成分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/54.png

計量テンソルには添字が上付きのモノと下つきのものがあります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/55.png

計量テンソルからクリストッフェル記号(Γ)の値を求める式を記しておきます。二次元では8つあります。超めんどくさそうにみえますが、計量テンソルgの値さえわかればすべての値を一発で計算できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/53.png

ためしに、極座標基底におけるクリストッフェル記号(Γ)の値をひとつだけ計算してみましょう。極座標の計量テンソル(第一成分、第二成分、第三成分、第四成分)は以下の通りです。ただし、極座標ですから(x,y)を(r,θ)に書き換えています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/194.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/61.png

この計量テンソルの情報から次のようなことがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/62.png

これらの情報を利用して、クリストッフェル記号(Γ)の値を計算します。ここでは一つだけ計算しますが、他の記号も簡単に計算できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/67.png



 

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追記1

ベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

を正規直交基底で図示すると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/351_20211116131801.png

しかし、同じベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

を極座標基底で表示すると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/345.png

のように渦を巻きます。

同じベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

でも、用いる基底ベクトルによって、あらわれるベクトル場はこんなにも違います。

 

正規直交座標では、座標全体を通して基底ベクトルに変化が生じません。

したがって基底ベクトルの微分「∂e」は必ずゼロ(Γ = 0)になり消失します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/25.png

その結果、共変微分は、成分のみを微分したふつうの微分に一致します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/31.png

ところが、極座標の場合、基底ベクトルの大きさや方向が場所から場所で変化します。

したがって基底ベクトルの微分がゼロになりません(Γ ≠ 0)。

つまり、極座標基底であらわされたベクトル場 vhttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/41.png

を共変微分した結果は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/195_20210125234101.png

とはなりません。

実際に極座標基底であらわされたベクトル場 v の共変微分を計算してみましょう。

本文中でやったようにベクトル場 v をr方向とθ方向に、基底も含めて、微分します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/42.png次の式を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/43.png

基底ベクトルの微分をクリストッフェル記号(Γ)で置き換えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/44.png次の式を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/312.png

目的のベクトルは次のように表されます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/48.png

ただし、真ん中の行列の成分は以下の公式から求めます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/311.png

クリストッフェル記号(Γ)を計算し、以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/50.png

最終的に以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/358.png

これが、極座標基底であらわされたベクトル場 v の共変微分です。

展開すると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/359.png

こうなります。これがベクトル場vを共変微分した結果です。

 

 

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追記2

極座標基底で表示されたベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

で、ふつうの微分と共変微分を比べてしてみましょう。

極座標基底であらわされたベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

を図示すると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/345.png

まず、ふつうの微分をしてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/355.png

すなわち、結果は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/356.png

と、r方向もθ方向もゼロになりました。

これはどういう意味でしょう?

もし、この極座標の中に入り込むことができれば、内部世界の住人にはこのベクトル場はこうみえているのです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/326.png

そもそも、すべてのベクトルは

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

なのですからあたりまえと言えば、あたりまえです。

このベクトル場のベクトルは各々の基底からみるとすべて同じなんです。

渦を巻いてみえるのは、実は基底の影響をうけて大きさや方向が違ってみえるだけ、ということです。

 

次に、共変微分をしてみましょう・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/353.png

すなわち、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/354.png

となります。r方向もθ方向もゼロにはなりません。

ふつうの微分がゼロなのに、共変微分がゼロでないというのは、基底そのものが場所から場所で変化していることを意味します。

共変微分は、外の視点(外にある正規直交座標系)を使ったベクトル場の微分です。

繰り返しになりますが、このベクトル場は、外の視点からみるとこう見えています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/345.png

でも、極座標の中からはこうみえているのです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/326.png

 

 

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追記3

正規直交基底であらわされたベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png
https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/339.png

の共変微分はふつうの微分に一致し、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/334.png

です。

しかし、極座標基底であらわされたベクトル場の共変微分は、クリストッフェル記号(Γ)にゼロ以外の値がはいるため、ふつうの微分

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/195_20210125234101.png

とは一致しません。

 

 

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追記4

正規直交座標におけるベクトル場(A,B)を考える。A、Bは定数とする。

これを極座標基底であらわすと以下のようになる。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/313.png

たとえば、外部世界に設定されている正規直交座標におけるベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.pnghttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/351_20211116131801.png
があるとする。ここから座標軸を取り除き、ベクトル場だけをとりだしてみる・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/407_20211228125501.png

これを、そっと極座標基底に重ね合わせてみる。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/407.png

このベクトル場を、極座標基底をつかって再現するにはどうすればいいだろう?

ベクトル成分を

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

としたままでは

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/345.png

のようにベクトルが渦を巻いてしまう。

ここで先ほどのベクトルの変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/313.png

が役に立つ。

ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

を公式にしたがって

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/403.png

と変換してやる。

これをグラフにしてみよう・・・すると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/364.png

みごと、極座標の上にベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/407_20211228125501.png

を再現できた!

ベクトルの成分は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

からhttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/403.png

に変換されているが、

ベクトル場の "みため" は、正規直交座標におけるベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/351_20211116131801.png

と同じベクトル場だ。

 

 

 

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では、あらためてこのベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/403.pnghttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/364.png

を、ふつうに偏微分してみようと思う。

ベクトルは一様にみえるのでゼロになるだろうか?

確かめてみよう。

極座標基底であらわされているベクトル場をふつうに微分するのだから、このベクトル場を、r方向とθ方向に偏微分することになる。すると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/404.pngすなわち、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/405.pngとなる。

ゼロにはならなかった。

この意味するところは何だろう?

極座標基底からみると、このベクトル場は一様ではない、ということである。

実際、この極座標世界の「内部」に入り込むと、このベクトル場はこんな風にみえている・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/403.png

グラフにしてみると、こうだ。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/378.png

横軸が r、縦軸が θ だ。

これが、極座標の内部からみた、先ほどのベクトル場の様子である。

なるほど、まったく一様ではない。

ほんとうに同じベクトル場なのかと疑いたくなるほど違う。

そもそも極座標世界に住んでいる住人は、自分たちの世界を極座標世界だとは思っていない。彼らは自分たちは正規直交世界に住んでいると思っている。だから、こういうことがおこるのだ。

では、この一様でないベクトル場を、共変微分するとどうなるか。やってみると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/324.png

このように、みごと全部ゼロになる。つまり、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/325.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/406.png

である。

r方向とθ方向に共変微分した結果がゼロ・・・

何度も前述しているが、極座標基底そのもの(基底ベクトルの)の微分(Γ)はゼロではない。

にもかかわらず、ベクトル場

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/403.png

の共変微分の結果はそれを打ち消すようにゼロになった。

このベクトル場の r 方向と θ 方向への共変微分がゼロになることを一瞬でわかる人はそうそういないであろう。

この意味するところは、このベクトル場を外部世界からみると一様であるということだ。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/403.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/364.png

このように極座標を抜け出して、外部からみるのが共変微分だ。

r方向であろうがθ方向であろうが、全方向にベクトルの変化はみられない。

内部世界を無視すれば、このベクトル場はこういうことである。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/329_20211112000001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/351_20211116131801.png

もともと、正規直交座標上に描かれたベクトル場(2, 1)を元にした話だから、あたりまえか・・・

というか、共変微分の目的はそういうことなのだ。

共変微分とは、座標系を飛び出し、外の視点(外部世界に設定されている正規直交座標系)からベクトル場を観察することだ。

そう考えると、

あるベクトル場の共変微分がゼロならば、そのベクトル場は、他のどんな座標系で表示されていても、その共変微分はゼロになる

というのもあたりまえにきこえる。

共変微分をすれば、どんな曲がった座標系からも抜け出してしまうのだ。

共変微分とは、そういう微分だ。

 

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【図解】計量テンソルと格子定数

 

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斜交座標があるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/1_20200225134701.png

こういう斜交座標は、次の3つで定義できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/2_20200225134701.png

赤の長さ、青の長さ、赤と青の間の角度。

これを格子定数といいます。

計量テンソル(the metric tensor)と同じ情報量をもっています。

 

 

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ちょっとだけ共変微分(´~`)

共変微分とはベクトルの微分なんですけど、ただの微分ではなく格子定数(計量テンソル)の影響を加味した(あるいは取り除いた)微分です。

どういうことかというと・・・

格子定数(計量テンソル)は、座標が平面かつ座標軸が直線であれば、その座標系全体において一定不変です。

そういう座標で格子定数(計量テンソル)を微分するとゼロになります。

しかし、もし。

座標が曲がったりしている場合には(極座標など)、格子定数(計量テンソル)の微分はゼロになりません。

つまり、格子定数(計量テンソル)の微分がゼロかどうかで「座標の歪み」がわかります。

そう考えるのは自然なことです。

これが共変微分 ∇のアイデアにつながります。

 

ごくごく簡単に説明してみると・・・

(専門家の先生には突っ込みどころ満載かもしれませんが(汗))

下図のようなベクトル場がX方向やY方向にどんな風に変化しているかどうかを調べるのがふつうのベクトル場の微分 ∂(V)です(注)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20240310123301.png

ふつう、ベクトル場の微分∂(V) がゼロであればベクトルに変化なしです。下図のような感じ。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20240310123701.png

ゼロでなければベクトル場に変化あり・・・

と考えます。

しかし、ベクトル場に変化があるとして、それはもしかしたら平面が歪んでいるからではないでしょうか?

下図のようなベクトル場があったとして、その一部はベクトル場が描かれている座標軸が歪んでいる可能性はないでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20240310123301.png

座標が歪んでいる場合には「座標の歪み」の影響を加味(または除去)しなければ真のベクトル場の変化の様子はわかりません。

先ほども言いましたが「座標の歪み」をあらわすのが、格子定数(計量テンソル)の微分です。

そこで、格子定数(計量テンソル)の微分を Γ(ガンマ)としましょう。

すると、「座標の歪み」を加味(または除去)した

∂(V)+ Γ(ガンマ)

または

∂(V)- Γ(ガンマ)

の値が、ほんとうのベクトルの変化に相当することになります。

このようにふつうのベクトルの微分 ∂(V)を、格子定数(計量テンソル)の微分 Γ(ガンマ) によって補正した微分を共変微分 ∇といいます。

共変微分 ∇ の結果

共変微分 ∇ ≠0であればベクトル場は(たとえ変化していないように見えても)変化しています(下図はその一例)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20240310125601.png

共変微分 ∇ =0なら、ベクトル場は(たとえ変化しているように見えても)変化していません(下図はその一例)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20240310125602.png

座標が歪んでいる場合、ベクトル場が変化しているようにみえるかもしれませんが、斜交定数(計量テンソル)の影響を取り除かなければ真のベクトル場の変化はのようすはわかりません。

もう少し詳しい共変微分 の話についてはこちらをご覧ください。

ちなみに共変微分 ∇ はテンソルで、座標軸の影響をうけません。すなわちある座標系で共変微分 ∇ が0なら、あらゆる座標系で0になります。∂(V) Γ(ガンマ) もテンソルではないのに、両者を足すとテンソルになるというのはなんかとても不思議です。

たとえばベクトルの式 V=(2x, 3y)であれば、下図のように、ベクトルの方向や大きさが、一見、座標点ごとに違ってみえますよね。でも、それほんとに違うの?格子定数のせいじゃないの?という疑問に答えるのが共変微分です。下図をみて、すべての矢印はほんとうは全部同じ方向、同じ大きさを向いているのではないか?土台になっている座標面のほうが湾曲してるんじゃない?という問いかけがテーマになっています。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/2x3y.png

 

 

リンク:アインシュタインの一般相対性理論

 

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【図解】共変ベクトルと反変ベクトル

 

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共変ベクトルについて図解してみたいと思います。

なお、共変ベクトルは共変微分とは何の関係もありません。

リンク:アインシュタインの一般相対性理論


https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field10.png


初学者が混乱するポイントが2つあります。

1つめは、ベクトルには2種類あるという話 ⇒ 反変ベクトル共変ベクトル

2つめは、ベクトルの"表示"にも2種類あるという話 ⇒ 反変表示共変表示

反変ベクトルと共変ベクトルのどちらにも、反変表示と共変表示という2種類の表示がある・・・という点は、どれほど強調しても強調しすぎることはないでしょう。

それぞれの関係は

反変ベクトル 共変ベクトル
反変表示 共変表示
共変表示 反変表示

みたいになってます。

この全体像を、頭の片隅に置いておくのが理解の早道だと思います。

とにもかくにも

反変ベクトル = 反変表示

共変ベクトル = 共変表示

ではありません。

 

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さて。

空間に浮かんでいる赤い矢印(ベクトル?)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector3.png

ここに、座標軸を置いてみます。すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector1.png

その赤い矢印の大きさや方向をあらわすことができます。

もしこの座標軸がくるっと動いたら・・・?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector5_20210106032601.png

この赤い矢印は、座標軸が設定される前からここにあったものです。なので座標軸の移動につられて動いたりはしないとしましょう。

このように座標軸の動きに影響をうけないものをベクトルとかスカラーとかテンソルと言うなら、この赤い矢印はベクトルと呼んでもいいのではないでしょうか。

少なくとも、座標軸と一緒に動いてしまうものはベクトルとは言いません。

ベクトルとは座標系に依存しない、座標軸を超越した存在です。

 

重要なことなので繰り返します。

ベクトルは、座標軸がうごいても(それだけでは)、まったく"回転しない”し、”歪まない"し、"動きません"。このことを肝に銘じておいてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector6.png

 

さて、ここからは2次元世界で考えます。今、平面上に下図のようなベクトルがあるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector1.png

このベクトルの大きさと方向を表現したいなら、何か座標軸を与えるのが流儀です。適当に、x軸、y軸をとります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector2.png

べつにx軸が水平でなくてもいいのです。

この座標のとりかたは、自由です。直交でなくても。下図のように設定してもいいでしょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector3.png

ま、しかし・・・こうすると面倒くさいだけなので、ここでは、とりあえずベクトルの端を原点に合わせましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector2.png

次に、基底(目盛り)を2方向(上下方向、左右方向と二次元ですから2方向)とると、ベクトルの2つの成分が決まります。基底(目盛り)の大きさは自由ですが、1つの目盛りを「1」とします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector144.png

こうやってはじめて、このベクトルを、"この座標系" で(2,3)とあらわすことができます。

では、座標系というか、基底を下図(赤い矢印)のように設定したら、ベクトルはどうなるでしょう?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector6.png

新しい座標では、この赤い矢印を、それぞれサイズ「1」の基底と考えます。

座標の基底が変わりましたが、緑の矢印(ベクトル)の大きさや方向に変化はありません。

すると、このベクトルは(0.6,0.8)などと表示されることになるでしょう(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector7.png

このベクトル(0.6, 0.8)は、さきほどのベクトル(2, 3)と同じベクトルです。

よね・・・?

こういわれるとわからなくなる人がいるようですが、"ベクトル"とは「緑の矢印」そのもののことです。

その成分が(2, 3)から(0.6, 0.8)へ変わったからといって、ベクトル(緑の矢印)そのものの大きさや方向が変化したわけではありません。

変わったのは基底であって、ベクトルではありません。

基底の変化によって、ベクトルの「表示」が変化してしまっただけです。

これを、

(2,3)=(0.6,0.8)

と、表現してしまうと、おかしなことになります。

きちんと表そうと思えば、

新しい基底(赤い矢印)が、元の基底(青い矢印)では(2,1)と(1,3)とあらわされることを調べあげ、

そこをふまえて、

2(1,0)+3(0,1)=0.6(2,1)+0.8(1,3)

みたいに書かなければいけません。

 

このように・・・

座標軸(基底)が変わったとき、いったい、ベクトルの表示をどのように変化させれば、ベクトルを動かさずにあらわし続けることができるだろうか? ⇐こういうのがベクトルやテンソルの勉強です。

 

ちなみに、上の図(緑の矢印)みたいな矢印ベクトルを、反変ベクトルといいます(基底のサイズが大きくなるにつれて、表示される成分の値が小さくなるので反変というそうですが、いまいちピンときませんよね、反変、共変は意味なく覚えてしまってください、以後同)。

みなさんが中学・高校で習ったベクトルはすべて反変ベクトルです。「反」という字がついていますが、ふつうのベクトルです。

また、この反変ベクトルを表示するときに基準となった基底(前述の青い基底や赤い基底)を共変基底といいます。みなさんが中学・高校で習った基底はすべて共変基底です。

そして、共変基底でベクトルのサイズと方向をあらわすことを反変表示といいます。みなさんが中学・高校で習ったベクトル表示はすべて反変表示です。

つまり、みなさんが高校で習ったベクトルは、反変ベクトルの共変基底による反変表示です。

なんで、今、名前にこだわっているのかというと・・・共変基底には、その対になる反変基底が存在するからです。

(専門書では、共変基底を ex、ey、反変基底を εx、εy などと記号であらわして解説をすすめることが多いですが、本記事ではなるべく記号を使用しないようにします)

 

反変基底とは

さぁ、ここから、少しややこしい話になります。たとえば上図で示した赤い共変基底について、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector92.png

その反変基底がどこにあるかというと・・・ここにあります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector9.png

この黄色い点線の上です。黄色い点線は、互いに赤い共変基底と直交しています。わかりますか?どことどこが直交しているのか、よ~くみないとわかりませんよ。そして・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector10.png

これが反変基底です。大きさは、赤い共変基底(直交していないほう・・・)との内積が「1」になるように決定します(注1)。

(反変基底は、わざわざ作図しなくても、勉強すれば共変基底から計算で求めることができるようになります)

では、この反変基底で緑の矢印ベクトルをあらわすとどうなるのでしょう?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector11.png

2つの反変基底のサイズを「1」として目盛りをうちなおします。すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector12.png

ベクトル(7,11)になります。

このように、矢印ベクトルを、反変基底であらわすことを共変表示といいます(共変基底のサイズが大きくなるにつれて反変基底が小さくなり、結果として表示される成分の値が大きくなるので共変というそうです)。

つまり・・・

共変基底によって(0.6, 0.8)と反変表示されていたベクトルが、

反変基底を用いると(7,11)と共変表示される

という話です。

どちらも同じベクトルです。

ややこしい話ですよね。

このように1つのベクトルには常に2つの表示方法があります。

みなさんが高校数学でならう範囲(直交座標)では、それらの表示が一致するので区別する必要がなかっただけです。

 

実はこの共変表示(7,11)は、この座標の計量テンソル

5 5
5 10

を使えば、さきほどの反変表示(0.6,0.8)から一発計算で求めることができます。

以上は、反変ベクトルの反変基底による共変表示の話です。

 

ここでいったん反変ベクトルの話をまとめます。

反変ベクトル

共変基底による反変表示

反変基底による共変表示

さて、つぎは共変ベクトルです。

 

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共変ベクトルとは

さて、これまでの解説は、ややこしいと言いながらも、少し勉強したことがある人なら、すいすい読めたかもしれません。他のサイトやテキストの内容とも大差ありません。

しかし。

ここから、もう一段、話がややこしくなります。

みなさん、共変ベクトルを図示せよ・・・といわれたら、どんなベクトルを描きますか?

共変+ベクトル・・・なんだから下図のような「共変表示されたベクトル」をイメージすればいいのでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector65.png
違うんです。これではまったく共変ベクトルとは言えません。

実は

共変ベクトルのイメージは、こういう矢印ではあらわせません。

世の中の解説の多くはここで混乱していると思います(・・・でなければ、読者を混乱させています(^~^;))。

いやいや、さっきこれを「共変表示」と言ったではないか!とお叱りをうけそうですが、ベクトル(7, 11)・・・は、たしかに反変ベクトルの「共変表示」です。しかし、「共変ベクトル」とは言えません。

何を言っているかわからないですよね。

ややこしい話はすっ飛ばして、いつものように結論から述べましょう。

共変ベクトルをあえて図示すると、次の水色の等高線(みたいな縞模様)になります(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector71.png

え?これがベクトル?

という声が聞こえてきそうですが・・・はい、これが「共変ベクトル」のイメージです。

共変ベクトルは矢印ではうまく図示できません。

ベクトル(7, 11)をそのまま矢印ベクトルとして図示してしまっては、共変ベクトルのイメージではなく反変ベクトル・・・になってしまいます。

共変ベクトルは、その元になっている反変ベクトル(下図)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector1.png

とは、似ても似つかぬ姿・イメージをもっているんです。

ぜんぜん似ていませんが、しかし、もちろんお互い関係があります(ただし慣れてくると同じものにみえます)。

まず、方向です。

反変ベクトルの方向と共変ベクトル(上の図の等高線(みたいな縞模様))の方向は互いに直交します(慣れた目には平行にみえます)。

要するに、矢印の軸が縞模様の線と直交します。

次にサイズです。

反変ベクトルのサイズと共変ベクトル(等高線(みたいな縞模様))の間隔には、

1/反変ベクトルの成分 = 共変ベクトル(等高線(のような縞模様))の間隔

という関係があります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector35.png

反変ベクトルの反変表示は(0.6,0.8)ですから、まず

1/反変ベクトルの成分

を求めると、

1/0.6 = 1.67倍

1/0.8 = 1.25倍

となります。

反変基底にこの倍数を掛けると、共変ベクトル(等高線(のような縞模様))の間隔となります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector83.png

こんな感じで、共変ベクトルを斜交座標上に図示できます。

(図中の εx とか εy は反変基底のことです。1.67εx は、反変基底 εx の1.67倍のサイズ、1.25εy は、反変基底 εy の1.25倍のサイズです)

ちなみに、この 1.67 と 1.25 は、この共変ベクトルの成分ではありません(注3)。

本記事では、反変基底をつかって共変ベクトルを作図しましたが、実は、共変ベクトルは共変基底をつかって作図することもできます(注3)。

 

もし、斜交座標上にこれらの反変ベクトルと共変ベクトルを図示せよ・・・という問いがあれば、下記がその答えというか、その絵的な表現になるでしょうか。

反変ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector94.png

共変ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector93.png

こんな縞模様がベクトルといわれて、納得できない人もいるかもしれません。

しかし、これが共変ベクトルのイメージなんです。

考えてみると、反変ベクトルと共変ベクトルは同じような情報量を持っています。

この縞模様を等高線だと考えれば、共変ベクトルがあらわしているのは、傾斜の「方向と大きさ」です。

ただし、注意してください!

この絵では、まるでこの絵全体がベクトルのような感じがするかもしれませんが

今、この共変ベクトルが表しているのは、ある特殊な領域(1点)に関する情報です。

その領域とは?

共変ベクトルの起点です。

共変ベクトルにも反変ベクトルのように起点があるんです。

えっと、それはどこでしょうか?上の絵ではわかりにくいですよね。

座標上の点(7, 11)や点(0.6, 0.8)に関係しているのでは?と思うかもしれませんが、そうではありません。

答えは

反変ベクトルの起点

です。

上の図でいえば、座標軸の原点(緑の矢印の起点)が共変ベクトルの起点です。

なので、ほんとうは下図のように描いたほうがより正しいイメージに近いかもしれません・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector97.png


考えてみれば、反変ベクトルを(0.6,0.8)などと表示するときも、その成分は矢印ベクトルの起点に関する情報であり、

ベクトル先端の点(0.6,0.8)の情報ではありませんよね。

共変ベクトルも反変ベクトルも、ベクトルが示しているのは、その起点の情報です。

このようにベクトルにはそもそも2種類ある

という考え方を理解でしたでしょうか。

 

ところで。

以下の二つのベクトルは、同じベクトルです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector157.png

||

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png

よね?

斜交座標の都合上、反変表示(0.6, 0.8)あるいは共変表示(7, 11)と、表示形式が違うだけです。

その内積は「ベクトルの大きさ」の2乗になります。

同じベクトル同士の内積は、その「ベクトルの大きさ」の2乗に一致する・・・というのは高校数学で習いましたよね?(習ったはずです・・・(;´^_^`))

すなわち、

(7,11)・(0.6,0.8) =  13

です。

つまり、このベクトルの大きさは√13です。

 

不思議なことに・・・

共変ベクトルと、元になった反変ベクトルを重ね合わせると、矢印が貫く等高線の数が「ベクトルの大きさ」の2乗に必ず一致します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector75.png

これは偶然ではありません。

一般に、どんなベクトルでも、反変ベクトルと共変ベクトルを重ねると、その矢印が貫く等高線(のような縞模様)の数はそれらのベクトルの「内積」に一致します(注4)。

なので、同じ由来である共変ベクトルと反変ベクトルを絵的に重ね合わせると、矢印が貫く等高線の数が「ベクトルの大きさ」の2乗に一致するのは・・・実はこれ、不思議ではなくあたりまえのことなんです。

 

さて、これまでの話で、以下の二つのベクトルが同じベクトルであるという話をしてきました。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector157.png

||

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector143.png

むずかしい用語を使って言うと、

同じ反変ベクトルが、

斜交座標では反変表示(0.6, 0.8)とあらわされ

直交座標では反変表示(2, 3)とあらわされています。

では・・・

斜交座標で共変表示(7, 11)とあらわされている反変ベクトル(下図)は、直交座標では何とあらわされるでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png

||

直交座標では?




答えは、共変表示(2, 3)です(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector142.png

むずかしい用語を使ってまとめてみると・・・

斜交座標の反変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)

斜交座標の共変表示(7, 11)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)

です。

直交基底では共変基底と反変基底が一致するため、反変表示と共変表示も一致ししているだけなんです。

 

直交座標上、反変表示(2, 3)のベクトルと、共変表示(2, 3)のベクトルは、どちらも同一の反変ベクトルであり、したがって、その内積は「ベクトルの大きさ」の2乗になります。

(2,3)・(2,3) =  13

直交座標上の内積では、反変表示と共変表示を区別する必要がありません。

 

では、先ほど、斜交座標で考えた共変ベクトル(下図)は、直交座標ではどのように表されるのでしょう?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector93.png

実は、共変ベクトルを考えるのに何もわざわざ斜交座標で考える必要はありません(注5)。

 

共変ベクトルは、直交座標においてもまったく同じように図示することができます(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector78.png

ただ、直交座標で共変ベクトルを説明しようとすると、反変表示と共変表示が同じになってしまい、話がかえってややこしくなります。

なので、共変ベクトルについてはわざわざ斜交座標を導入して理解する、というのが、まぁ、常套手段なんです。

反変ベクトルも共変ベクトルも直交座標上にあたりまえのように存在するのです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector167.png

何が言いたいのか、伝わってない気もしますが・・・(汗)

ベクトルにとって、座標軸はどうでもいい

という話です。

 

絵的に考えれば、反変ベクトルと共変ベクトルの関係は、非常にシンプルで、

1.互いに直交(というか平行?)

2.「反変ベクトルが共変ベクトルを横切る数」= (反変ベクトルのサイズ)2

というだけです(注7)。

 

最後に簡単なクイズをだして終わりにします。下図に、反変ベクトルとその共変ベクトルを示します。この反変ベクトルのサイズはいくつでしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector88.png

簡単ですね。サイズは√10です。10本貫いてますからね(間隔が10)。

面白いですよね。

座標軸もないのにサイズがわかるのです。

逆に、ベクトルのサイズが決まっているなら、共変基底を与えるだけで、反変基底、座標軸などはあとから自動的に定まります。

ベクトルは反変ベクトルと共変ベクトルという一組のセットで座標系から完全に独立します。

というより、

ベクトルは座標を超越した存在なんです。

 

(おしまい)

 

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反変ベクトル 共変ベクトル
共変基底による反変表示 反変基底による共変表示
反変基底による共変表示 共変基底による反変表示

 

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(注1)

反変基底を作図するためには、まず、ふたつの赤い共変基底(exとey)のサイズを決定する必要があります。ここは一番わかりにくいところです。このふたつの赤い共変基底は、その座標系においては(1, 0)と(0, 1)という基底であり、そのサイズはその座標系においては両方とも「1」です、とはいうものの、私たちの眼には(というか、作図上)、ふたつの赤い共変基底(exとey)の "みため" のサイズは違ってみえます。なので、作図の都合上、両方とも「1」とするわけにはいきません。どちらかを「1」として作図するか、あるいは「作図上の1」を別個に人為的に定義して・・・とか、何とかうまく対処しなければ反変基底を作図できません。そこで、ここでは大元になった直交座標を流用します(何を基準にしてもいいはずです)。その基底のサイズを「作図上の1」とします。すると、このふたつの赤い共変基底(exとey)のサイズは、作図上、√5と√10とみなせます。こうしてはじめて、反変基底(εxとεy)のサイズを、作図上、赤い共変基底との内積が「1」になるように決定することができます。非常に面倒くさいことを言っていますが、結局、大元になった直交座標を作図上の基準として流用し、赤い共変基底(exとey)のサイズをそれぞれ√5と√10であると(作図上)求めるだけです。こうすることによって、赤い共変基底(exとey)は、作図上(2,1)と(1,3)というふたつのベクトルと同じ大きさと方向をもつものとみなすことができます。また、内積を使っていとも簡単に反変基底(εxとεy)と同じ大きさと方向をもつベクトルを決定、作図することができます。共変基底と直交している反変基底との内積は「0」、直交していない反変基底との内積は「1」となるのが原則ですから、そうなるようにうまく計算して反変基底と同じ大きさと方向をもつベクトルを決めてあげます。

具体的にいうと、

ex・εx =(2,1)・ εx =「1」

ex・εy =(2,1)・ εy =「0」

ey・εx =(1,3)・ εx =「0」

ey・εy =(1,3)・ εy =「1」

となるように εx と εy の成分を決定してあげるのです(実務的には行列(2,1,1,3)の逆行列を求めるだけ・・・)。

すると、こうなります。

ex・εx =(2,1)・(0.6,-0.2)=「1」

ex・εy =(2,1)・(-0.2,0.4)=「0」

ey・εx =(1,3)・(0.6,-0.2)=「0」

ey・εy =(1,3)・(-0.2,0.4)=「1」

こうすることによって、作図上、反変基底(εxとεy)を、ベクトル(0.6,-0.2)とベクトル(-0.2,0.4)として、直交座標上に表現できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector86.png

実は、共変基底と反変基底は入れ替えることができます。下図のピンクの基底を共変基底と考えると反変基底は赤の基底になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector96.png

こうすると本文中の反変ベクトルの反変表示は(7, 11)、共変表示は(0.6, 0.8)と表示が入れ替わります。

 

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(注2)

この等高線(みたいな縞模様)がベクトルである・・・ということは、つまり、この等高線(みたいな縞模様)も座標変換に対してまったく"回転せず”、”歪まず"、"動きません"。
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https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector79.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector80.png

反変ベクトル起始部の情報であることを強調すれば以下のように描いたほうがより正確なイメージに近いかもしれません。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector102.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector103.pnghttps://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector104.png

矢印ベクトル(反変ベクトル)に対し、このような等高線(みたいな縞模様)ベクトルを余ベクトル covector(共変ベクトル)とよんだりします。

 

 

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(注3)

本文記事では、共変ベクトルの成分(反変表示、共変表示)については一切ふれませんでした。

あまりにも複雑だからです。

しかし、反変ベクトルに反変表示と共変表示があるように、共変ベクトルの成分表示にも反変表示と共変表示があります。

結論から先に示すと、

つぎのような全体像になっています。

反変ベクトル 共変ベクトル
共変基底による反変表示 反変基底による共変表示
反変基底による共変表示 共変基底による反変表示

本文中のベクトルを、この表にあわせて表示すると・・・こんな感じになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector.png

ベクトルの成分表示は、反変ベクトルと共変ベクトルで入れ替わります。

共変基底、反変基底を入れ替えると、成分表示が入れ替わる・・・とも言えるでしょう。

しかし、共変ベクトル(等高線(みたいな縞模様))の成分って、いったいどのように考えるといいのでしょうか?

これはとてもややこしい話になります。

本文中では省略しましたが、ここで解説してみます。

 

ややこしさの根源は、

等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変ベクトル

等高線(みたいな縞模様)であらわされた反変基底

等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変基底

であらわすややこしさです。

つまり、等高線と等高線を組み合わせて新たな等高線を表現し、かつ、その成分を考えるややこしさです。

今まで矢印のイメージで考えていたベクトルを、全部、等高線みたいなものに変換しなければいけません。

 

ゆっくり解説してみます。

まず、矢印であらわされている反変基底ベクトルを、等高線(みたいな縞模様)であらわされた反変基底ベクトルに変換します。

矢印反変基底(εx)と等高線反変基底(εx

矢印反変基底(εy)と等高線反変基底(εy

の関係をあらわしたのが下図です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector122_20210113234901.png

ピンクの矢印が矢印型の反変基底(εx と εy

黄色の等高線が等高線タイプの反変基底(εx と εy

です。

ちょっと図がごちゃごちゃしてるので、εx と εy について別々にわけてみましょう。

まず、εx だけを描いてみます(下図)。

ピンクの矢印が矢印タイプの反変基底(εx

黄色の等高線が等高線型の反変基底(εx

です。

矢印型の反変基底(εx)と等高線型の反変基底(εx

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector155.png

次に、εy だけを描いてみます(下図)。

ピンクの矢印が矢印タイプの反変基底(εy

黄色の等高線が等高線タイプの反変基底(εy

です。

矢印型の反変基底(εy)と等高線型の反変基底(εy

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector156.png
ここには共変基底は描かれていないことに気をつけてください。

矢印型の基底も、等高線(みたいな縞模様)であらわされた基底も、どちらも反変基底です。

どちらも εx と εy とあらわすので、ここらへん解説もごっちゃにしているものが多いです。

今、何の話をしているかというと(自分ですら、話を見失いそうになります・・・)

反変基底のうち、黄色の等高線(みたいな縞模様)タイプの反変基底だけをつかって、それらをどう組み合わせれば、以下のような共変ベクトルを作図できるのか?という話です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector71.png

和を使います。

等高線(みたいな縞模様)ベクトルも矢印ベクトルのように足したり引いたりできるのです。

つまるところ、

共変ベクトル = 「εx 成分」+ 「εy 成分」

これらがすべて等高線で、その成分(係数)をどう決定するか・・・という問題です。

ちょっと難しいですよね。

共変ベクトルの成分表示を説明しようと思えば、その説明に共変ベクトルの知識を使わなければならない・・・

というジレンマがあり、本文中ではそれを避けました。が、

ここではそのジレンマをいったん横において、この問題を解決してみます。

等高線(みたいな縞模様)の間隔をどう調整すればよいのでしょうか?

反変ベクトルの反変表示成分(0.6,0.8)を利用します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector157.png

反変ベクトルの「ex 成分」は0.6ですよね?

その逆数をとります。

1/0.6 =1.67

今、反変基底 εx の方向に、間隔が εx の 1.67倍である等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。この等高線(の間隔!)が目的とする(図示したい)共変ベクトルの 「εx 成分」なんです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector118.png

しかし、この等高線(みたいな縞模様)の間隔が共変ベクトルの「εx 成分」だと言われても・・・

数式としては、どうあらわしたらいいのでしょう?

間隔を矢印基底の長さの1.67倍にしたのだから

1.67εx でしょうか?

いいえ。

一般に、共変ベクトルの係数う(大きさ)は、等高線(みたいな縞模様)の間隔の広さに「反」比例します。

したがってこの場合、εx 成分の大きさ(係数)は 1.67 倍になったのではなく、1.67 の逆数、すなわちもとの等高線(みたいな縞模様)の0.6 倍であると考えます。

すなわち、目的とする共変ベクトルの「εx 成分」 は 0.6 です。

間隔があいているのに係数が小さくなるのが納得いかない人は、勾配と考えてください。

等高線の間隔は、あけばあくほど勾配が緩やかになる・・・と考えるといいかもしれません。

 

同様に、共変ベクトルの「εy 成分」を求めてみます。

反変ベクトルの反変表示(0.6,0.8)の「ey 成分」である 0.8の逆数をとります。

1/0.8 =1.25

次に、反変基底 εy の方向に、間隔が 1.25倍 にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。この間隔が目的とする共変ベクトルの「εy 成分」です。
https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector120.png

この間隔、つまり「εy 成分」を、数式であらわすと 1.25εy ではなく、1.25の逆数を用いて、0.8εy とあらわされます。

すなわち、目的とする共変ベクトルの「εy 成分」は 0.8 です。

結局、目的とする共変ベクトルは、

0.6εx + 0.8εy

と、あらわされます。

ちなみに、これらを重ね合わせると、見事、目的の共変ベクトルになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector121.png

すなわち、この共変ベクトルの成分は(0.6,0.8)です。

これが、反変基底を使った「共変表示」の絵的なイメージです。

 

では、この共変ベクトルを共変基底を使って「反変表示」すると、どうなるでしょう?

まず、矢印で描かれた共変基底(exとey)を、等高線(みたいな縞模様)基底に変換します。

赤の矢印が矢印型の共変基底(ex

黄色の等高線が等高線型の共変基底(ex

です。

矢印型の共変基底(ex)と等高線型の共変基底(ex

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector145.png

ここに反変基底は描かれていないことに注意してください。どちらも共変基底です。

上図では、等高線(みたいな縞模様)の間隔を赤い基底の1/5にしました。

赤い基底(2,1)のサイズは√5だからです。

同様に、

下図では、等高線(みたいな縞模様)の間隔を赤い基底の1/10にしました。

赤い基底(1,3)のサイズは√10だからです。

赤の矢印が矢印型の共変基底(ey

黄色の等高線が等高線であらわされた共変基底(ey

です。

矢印型の共変基底(ey)と等高線型の共変基底(ey) 

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector147.png

共変基底(exとey)も、このように矢印タイプの共変基底と等高線(みたいな縞模様)タイプの共変基底の2つの方法であらわすことができます。

矢印基底も、等高線(みたいな縞模様)基底も、どちらも共変基底です。

くどいようですが、

ここに反変基底は描かれていません。どちらも ex とか ey という共変基底です。

今の目的は、

共変ベクトルを、等高線(みたいな縞模様)タイプの共変基底の和を使って表現すること

これが、共変ベクトルの共変基底を使った「反変表示」です。

この黄色の等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変基底をつかって、それらをどう組み合わせれば、目的の共変ベクトルを作図できるのでしょうか?

つまり・・・

共変ベクトル = 「ex 成分」+「ey 成分」

この成分をどう決定するか・・・という問題です。

その決定には、反変ベクトルの共変表示(7,11)を利用します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector158.png

この「εx 成分」 は7です。

その逆数をとります。

1/7

共変基底 ex の方向に、間隔が 1/7倍 にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。

これ(この間隔)が目的とする共変ベクトルの「ex 成分」です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector127.png

等高線(みたいな縞模様)の間隔は、共変基底 ex の大きさの1/7になっていますが、数式上は7ex とあらわされます。

これで共変ベクトルの「ex 成分」は7であることがわかりました。

次に、反変ベクトルの「εy 成分」を使って、共変ベクトルの「ey 成分」を求めます。

反変ベクトル共変表示(7,11)の「εy 成分」は11です。

その逆数をとります。

1/11

共変基底 ey の方向に、間隔が 1/11 倍にあいた等高線(みたいな縞模様)ベクトルを描くと、下図のようになります。

これ(この間隔)が目的とする共変ベクトルの「ey 成分」です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector126.png
この等高線(みたいな縞模様)の間隔は、共変基底 ey の大きさの1/11になっていますが、実はサイズは11倍になっています。したがって、目的とする共変ベクトルの「ey 成分」は 11です。


これらのベクトルの和

「ex 成分の共変ベクトル」+「ey 成分の共変ベクトル」 = 7ex + 11ey

が、目的の共変ベクトルです。

重ね合わせると、見事、目的の共変ベクトルに一致します。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector128.png

共変基底を使った「反変表示」は、(7,11)だといえます。

 

これまで述べてきた非常にややこしい話を表にまとめると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector.png

このようにベクトルは、反変ベクトルか、共変ベクトルかどうかで、成分表示が入れ替わり、共変基底、反変基底を入れ替えると、成分表示が入れ替わります。

 

さて、以上で、

反変ベクトルを、共変基底(矢印タイプ)をつかって反変表示する(高校レベル)

反変ベクトルを、反変基底(矢印タイプ)をつかって共変表示する(本文で解説)

共変ベクトルを、反変基底(等高線タイプ)をつかって共変表示する(注3で解説)

共変ベクトルを、共変基底(等高線タイプ)をつかって反変表示する(注3で解説)

を理解できたと思います。

 

ここでは、ちまたのテキストブックでよくみる

反変ベクトルを、共変基底(等高線タイプ)をつかって反変表示する方法を解説したいと思います。

どのように考えるのかというと・・・

 

考える前に、やってみましょう。

まずは「εx 成分」から。

矢印の共変基底(ex)と等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底(ex)を用意します。先ほどと同じです。

矢印型の共変基底(ex)と等高線型の共変基底(ex

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector145.png

等高線(みたいな縞模様)の間隔は、赤い基底の1/5にしました。

赤い基底(2,1)のサイズは√5だからです。

ここに、矢印ベクトルを絵的に重ね合わせてみます(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector146.png

そして、緑の矢印が、共変基底(ex)を、何本貫いているかを数えます。

7本ですよね?

すると「εx 成分」にかかる係数は7なんです。

同様に・・・

矢印の共変基底(ey)と等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底(ey)を用意します(下図)。先ほどと同じです。

矢印型の共変基底(ey)と等高線型の共変基底(ey) 

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector147.png

等高線(みたいな縞模様)の間隔を赤い基底の1/10にしました。

赤い基底(1,3)のサイズは√10だからです。

これに、矢印ベクトルを絵的に重ね合わせてみます(下図)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector148.png

緑の矢印が貫いている、共変基底(ey)の本数を数えます。

本数は11本ですね?

すると「εy 成分」にかかる係数は11になるんです。

したがって、緑の矢印ベクトル(反変ベクトル)の共変表示は

(7,11)

と表現できます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector150.png

実は、このように解説している(解説しようとしている?)テキストをよくみかけますが、どれも等高線(みたいな縞模様)として描かれた共変基底を使っていないので非常にその意味するところがわかりにくいと思います。

 

以上、

反変基底による共変表示

だけでなく

共変基底による共変表示

もあるという話です。

いずれにしてもとてもとてもややこしい話です。

 

 

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(注4)

数学者は、何かを与えると変数を返すものはなんでも関数と考えるようです。なので、共変ベクトルも、反変ベクトルを作用させると内積(スカラー)を返す「関数」である・・・と言われることがあります。

ちょっと絵で説明してみます。

たとえば・・・

次の2つのベクトルの「内積」は何でしょうか?

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector51.png

・・・といわれても、座標がわからなければ計算のしようがありませんよね?

では、座標を設定しましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector52.png

こうすると、それぞれのベクトルが(2, 3)と(4, -1)であることがわかります。

すると、

(2, 3)・(4, -1)=5

と「内積」を求めることができました。

では次のような座標が与えられたらどうでしょう?正規直交座標から基底を(2,1)と(1,3)に動かしました。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector159.png

ベクトル自体は動いていません。

緑が(0.6,0.8)、赤が(2.6,-1.2)というところまでは何とか求めることができるかもしれません。

では内積は?

次の公式を使います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20200706213201.pngベクトル(A,B)とベクトル(C, D)の内積は、計量テンソル(a, b, c, d)を間に挟んで計算するのが正式です。

そうすると、この斜交座標の計量テンソルが

5 5
5 10

であることがわかれば、やっと

(0.6, 0.8)・(7, 1)=5

と内積を求めることができます。

 

ところが・・・共変ベクトルを使うとこんな計算は不要になります。

どういうことかというと・・・

たとえば、上図の「緑のベクトル」だけを等高線(みたいな縞模様)ベクトルに変更してみましょう・・・

すると次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector82.png

緑のベクトルが消え、等高線(みたいな縞模様)になりました。

赤い矢印が貫く等高線(みたいな縞模様)の数を数えてみてください。

「5本」ですよね?

この数が「内積」に一致します。

ですので「内積」は5です。

これがどんな座標系であっても成り立ちます。

「赤いベクトル」を共変ベクトルに変更しても結果は同じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector91.png

数えてみてください。

「5本」ですよね?

この数が「内積」に一致します。

共変ベクトルを使うと「内積」を求めるのに計算は不要です。

というか・・・

座標軸さえ不要です。

矢印が等高線(みたいな縞模様)を乗りこえる数を数えるだけです。

内積はまんが(絵)でわかるのです。

数学の世界では

「内積」=一定

という式によって、直線や平面をあらわしますが、

共変ベクトルを持ち込めば、直線や平面を座標系を使わずに表すことができます。

反変ベクトル・共変ベクトル

= 矢印・等高線(みたいな縞模様)

= 矢印が等高線(みたいな縞模様)を貫いた数

= スカラー(内積)

みたいな感じです。

この意味で使うとき、この等高線(みたいな縞模様)を、1形式(one form)とか、線型汎関数とか、線形写像とか、線形作用素とかいいます。

ちなみに、1形式(one form)とは、ひとつのベクトルとの「内積」により、スカラーを返すものです。共変ベクトルはまさにその例です。同様に、2形式(Bilinear form)とは、ふたつのベクトルとの「内積」により、スカラーを返すものです。その例は計量テンソルです。

結局、この等高線(みたいな縞模様)をベクトルとみるか、関数とみるかによって、呼び方がかわります。双対ベクトル dual vectorとか、余ベクトル covectorとか、1形式(one form)とか、線型汎関数とか、線形写像とか、線形作用素とか・・・

そして、双対ベクトルの双対ベクトルはベクトルに戻るのです。不思議ですよね。というか、本来同じもの(の裏表)ではないか?と思えてなりません。

話がそれました。

言いたかったのは、共変ベクトルと反変ベクトルがあれば座標軸は不要である・・・というなんか爽快な話です。

 

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(注5)

本文記事中に、反変ベクトルについては、

斜交座標の反変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)

斜交座標の共変表示(7, 11)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)

と記述しましたが、共変ベクトルについては、

斜交座標の反変表示(7, 11)⇔ 直交座標の反変表示(2, 3)

斜交座標の共変表示(0.6, 0.8)⇔ 直交座標の共変表示(2, 3)

となります。

その理由を説明します。

直交座標で考えると、共変ベクトルをあらわす等高線(みたいな縞模様)の間隔は、

x軸方向に 1/2 = 0.5

y軸方向に 1/3 = 0.33

という関係になっていて、x軸方向に0.5、y軸方向に0.33 の間隔です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector70.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector110.png

これが、直交座標から求めた共変ベクトルです。

この共変ベクトルの成分表示を考えます。

この等高線(みたいな縞模様)の間隔は 0.5εx と0.33 εy です。

しかし、共変ベクトルの成分表示は(0.5,0.33)ではありません。

(注3)で述べた理由により、それぞれの逆数、すなわち、2と3が共変ベクトルの成分になります。

共変ベクトルの係数(成分の大きさ)は、等高線(みたいな縞模様)の間隔の広さではなく、等高線(みたいな縞模様)を基底ベクトルが貫いている数に比例します。

下図からもあきらかだと思います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector131_20210114034301.png

上図であらわされている等高線(みたいな縞模様)は、ベクトル2εx です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector133.png
上図であらわされている等高線(みたいな縞模様)は、ベクトル 3εy です。


https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector134.png

したがって、この共変ベクトルの成分表示(反変基底による共変表示)は

x + 3ε = (2,3)

です。

共変ベクトルの共変基底による反変表示にも同様の考察が適用され、

2ex + 3ey = (2,3)

です。

共変ベクトルそのものは、斜交座標上で求めた共変ベクトルと同じです。

ベクトルは座標の影響をうけません。

直交座標で考えるなら、実は直線の式 2x+3y = c(cは変数)を使うだけで簡単に共変ベクトルを描くことができます(共変ベクトル(a,b)の成分が直線の式 ax+by = cのaとbになります)。

 

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(注6)

直交座標では、原点からx方向の基底2に対し4本の等高線、y方向の基底3に対し9本の等高線、すなわちベクトル(2,3)の方向で合計13本の等高線を、矢印が横切ることになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector106.png

上図の4と9という数字は基底が乗りこえる等高線の数で、座標表示ではないことに注意してください。

では、記事本文中にでてきた斜交座標では、矢印が横切る等高線の数は何本でしょうか?

計算してみると・・・

7/(1/0.6) = 4.2

11/(1/0.8) = 8.8

下図からもわかりますが、εx 基底7に対し等高線4.2本、εy 基底11に対し等高線8.8本、すなわちベクトル方向(7, 11)で合計13本です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector107.png

注3と注5を読まれた方なら、共変ベクトルを εx 方向と εy 方向の等高線(みたいな縞模様)に分割してみるともっとよくわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector138.png

注意してほしいのは、上の図の4.2と8.8という数字はベクトルの座標表示ではなく、反変基底εx7に対する等高線が4.2本、反変基底εy11に対する等高線が8.8本であることをあらわしています。

座標軸にかかわらず合計13本です。

等高線(みたいな縞模様)であらわされた共変ベクトルが、反変ベクトルと同様、座標変換に対して不変であることに着目してください。

乗りこえる等高線を数えるのに共変基底を用いることもできます。

計算してみると・・・

0.6/(1/7) = 4.2

0.8/(1/11) = 8.8

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector108.png

注3、注5を読まれた方なら、共変ベクトルを ex 方向と ey 方向の等高線(みたいな縞模様)に分割してみるともっとよくわかります(ん?・・・この場合はこっちの方がわかりにくいかもですね(汗))。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector139.png

共変基底 ex0.6に対する等高線の本数は4.2本、共変基底 ey0.8に対する等高線の本数は8.8本、合計13本です。

共変基底が乗りこえる等高線の数は、反変基底が乗りこえる等高線の数と一致します。

あたりまえのような不思議なような話です・・・

 

 

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(注7)

等高線(みたいな縞模様)と矢印の方向は直交している・・・といわれると、

もしかしたら偏微分や勾配ベクトルを知っている人なら

反変ベクトル = 勾配ベクトル(∇f)

とイメージできるかもしれません。まさにそのイメージでいいと思います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field-2.png
あえて3Dっぽく絵に描けば・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field6.png
ある1点を起点とする、こういう空間に浮かぶ面の勾配が反変ベクトルによって表現されているともいえます。

 

そして・・・ピンときた人もいると思いますけれど、

全微分を知っている人にとっては、

共変ベクトルは

全微分(df)

と考えることもできると思います。

ある1点を起点して空間に浮かぶ下図のような面の等高線が共変ベクトルによって表現されているといえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field5.pngこういう平面を真上からみたときの高さの変化が共変ベクトルという等高線(みたいな縞模様)であらわされている・・・と想像すればいいのです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral175.png

たとえば、f(x,y) = x2 + y2

という曲面があるとき、その点(1, 1.5, 3.25)における全微分は、

df = 2dx +3dy

です。本記事中で論じている共変ベクトルはちょうどこの全微分 df に相当します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20210116001401.png

点(1, 1.5, 3.25)における接平面のスロープは、勾配ベクトル方向(2,3)への傾斜が一番きつく、x方向に2行くと4上昇し、y方向に3行くと9上昇、つまりベクトル(2,3)方向で合計13上昇する斜面です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral177.png

傾斜が一番きつい方向 = 反変ベクトルの方向です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/lineintegral178.png

この等高線(みたいな縞模様)や矢印は、その様子を見事にあらわしています(注6)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector76.png

共変ベクトルをスカラーポテンシャルと考えることもできるかもしれません。

2次元の存在と思っていたベクトルが実は3次元的な情報を持っているのは驚きです。

すべての反変ベクトルは、その起始部においてペアになる共変ベクトルをもっており、それらは双対関係にあるといいます。

 

双対ベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector97_20210112021001.png

面白いのは、これ、数学的につきつめていくと、どちらが矢印でどちらが等高線(みたいな縞模様)なのか、だんだんよくわからなくなるんです。みためはこんなに違うのに・・・。実は等高線(みたいな縞模様)も、まるで矢印ベクトルのように足したり倍にしたりできます。よくよく考えると、等高線(みたいな縞模様)の、そのまた等高線(みたいな縞模様)を考えることもでき、そのイメージはまた矢印に戻ります。いったい、どちらが元祖ベクトルなのか・・・鶏が先か卵が先かみたいな話です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector105.png

最後に、本記事をここまで・・・最後の最後まで読んでいただいた方に、共変ベクトル、反変ベクトルの究極のイメージ図を紹介したいと思います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/vector-field9.png

この図と、本記事冒頭にある図を照らし合わせてみて、共変ベクトル、反変ベクトルのイメージをつかんでいただけたら、と思います。

 

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【基礎】たぶんこの世で一番やさしいテンソルの話 基礎の基礎

 

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この記事であつかうテンソルは、行列とそっくりな2階のテンソルです。しかも2x2という単純な・・・。なぜかって?2階のテンソルがわかれば他の複雑なテンソルも理解できると思うからです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor1.png

 

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専門家は言います。

テンソルと行列は違う

と。

しかし、そう言われたって、テンソルと行列は、同じにみえます。

5 -1
3 4

どちらもこんなふうに数字のセットとして表されます。

ベクトルや行列との掛け算や計算のルールなども、まったく同じです。

テンソルとはいったい何なんでしょう?

いったい、専門家は何を言おうとしているのでしょうか。

 

(えっと・・・なぜか読者が急増しているので、あえてお断りしておきます。本記事はあくまで一般人を対象にした解説です。専門家の方を対象とした厳密な内容ではありません。その証拠に添字とかアインシュタインの縮約とか省略とかでてきません。そういう専門的な話ではありません・・・)

 

テンソルと行列のちがいを理解する最初の一歩は、数字とスカラーの違いを理解することだと思います。

たとえば数字の3。

数字の3は数字の3です。

こどものころ、こういう数字には「意味」がありましたよね?

6は3より大きいとか、数が多いとか、少ないとか・・・

しかし、成長とともにだんだん数字を抽象的に扱うことに慣れてくると、いちいち数字の意味を考える必要がなくなっていきます。

意味を考えず、数字を使って、機械的・抽象的に計算することができるようになります。

ここで・・・

こどものころに感じていた、"意味"を戻してあげると、数字がスカラーに戻ります。

数字としての3、スカラーとしての3・・・

スカラーには、サイズ感がつきまといます。

単位とかもついてきます。

単位付きの数字、みたいに考えるといいかもしれません。

スカラーは無機的ではなく、しっかりした意味をもちます。

このようにスカラーと数字は違う!

と専門家に言われても

はい、そうなんだ

と思うだけでしょう。

 

次に、この数字を2つ組み合わせてみましょう。

たとえば、2と3。

これを(2, 3)と一組にしてみます。

無機的な数字の組み合わせです。抽象的です。

しかし、グラフ上にプロットしてみれば(2, 3)という座標として表示されます。

ちょっと具体的なイメージはあるかもしれません。

(2, 3)という数字の組み合わせをみて、意味がわからん!とか思い悩んでいる人はあまりいないかもしれません。

(2, 3)って、実に無機的なのに。

ここで・・・

この(2, 3)という組み合わせに、"方向"という感覚をくっつけてみましょう。

グラフの原点から(2, 3)に向かう矢印のような・・・

みなさんご存じ、そういう数字の組み合わせを、ベクトルといいます。

大きさと方向をもった、何か矢印のようなイメージです。

ベクトルには、大きさや方向の感覚がついてまわります。

(2, 3)という数字の組み合わせに意味が与えられます。

無機的な数字の組み合わせと、ベクトルでは意味が違う!

と、専門家に言われても、

はい、そうですね・・・というしかないでしょう。

 

次に数字を縦横に4つならべたもの、たとえば

5 -1
3 4

こういうのを行列と言います。

無機的な数字の組み合わせです。

慣れないうちは、意味が気になるものです。

連立方程式の係数・・・?

なんて、無理やり意味をこじつけようとしたりします。

しかし、これも年齢をかさね(汗)、慣れてくると、いちいち意味を与えずに行列として利用できるようになります。

抽象的、無機的な数字のセットとして計算できるようになります。

そこに・・・

この4つの数字に、何かイメージのようなものを無理やり与えると・・・

それがテンソルになります。

2つのベクトルの大きさと方向と、その"組み合わせ"という感覚がプラスされます・・・って、えっと・・・

どんなイメージだ!?

という疑問はさておき、

テンソルにもスカラーやベクトルのように何かイメージがあるのです。

行列にはありません。

それが、テンソルと行列の違いです。

 

ではテンソルのイメージとはどんなものでしょう?

みんな、それを知りたいし、知ってる人は教えたい・・・

なのにそれが難しい、できない!

ってのがテンソルの難しさです。

 

そこで・・・

ちょっと視点をかえてみましょう。

どういうことかというと・・・

 

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ベクトルには数字のそれぞれ(成分)に「基底」がくっついています。

たとえばベクトル(2,3)を、基底をつかってあらわすと、

2 3

||

2ex + 3ey

ってことです。

ex や ey を基底といいます。

座標軸のよって決まるベクトルの基本単位です。

ベクトルは、このように基底をつかった表現に書き換えることができます。

基底を、

ex =(1,0)

ey =(0,1)

とおけば、

2ex + 3ey

= 2(1,0)+ 3(0,1)

=(2,0)+(0,3)

=(2,3)

ですよね。つまり、

(2, 3)

||

 2ex + 3ey 

です。

これがベクトルです。

絵にするとこんな感じです。青い矢印が基底です。


https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/covector4.png


何をあたりまえな・・・

と感じるかもしれませんが、

テンソルにも、ベクトルと同様、それぞれの数字(成分)に「基底」がくっついています。

あえて式で表してみると・・・

5 -1
3 4

||

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy

みたいな感じになります。

何なの?この e とか ε の合体した変な基底は?

という疑問は、ぐっと飲みこんでください。

このとき考えている基底は、

exεx

||

 

exεy

||

1

 

eyεx

||

 

eyεy

||

みたいな感じです(注1)。

すると、

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy

||

-1

||

5 -1
3 4

になりますよね?

つまり、

5 -1
3 4

||

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy

です。

 

このように「数字」プラス「基底」という考え方・・・を意識するのがテンソルの勉強です。

4つの「数字」は、それぞれ「基底」の係数にすぎません。

4つの「数字」が「基底」と結びついているとき、それは行列ではなくテンソルだ、と専門家は言いたいのです。

「基底」が変化したら係数はどう変化するのだ?・・・と。

上の例だと、ex とか、ey とか、εx とか、εy とか・・・、そういう基底がいろいろと変化したら、exεx や、exεyや、 eyεxや、eyεy の係数はどうなる?

と・・・(注2)。

そういう勉強です。

 

ここで、以下のベクトルとテンソルを100回ぐらい交互にみてください。


ベクトル

2 3

||

2ex + 3ey


テンソル

5 -1
3 4

||

5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy


・・・

どうですか?

ちゃんと100回みましたか?(苦笑)

なんだか・・・

ベクトルもテンソルも、結局は似たようなものにみえてきませんか?

基底に対する係数が箱に入ってるだけです。

くりかえし交互にみてください。

あ、なるほど!そういうことか!と感じることができたら・・・ラッキーです。

そう、それだけのことなんです。

(^▽^;)

こんな逃げた説明・・・専門家の先生にめちゃくちゃおこられそうですが・・・

絵で描いたり図示できればいいんでしょうけれども、テンソルのイメージなんて、なかなか図示できません。

テンソルのイメージをベクトルのように図示するのは不可能なんです。

これが、何事も完全に理解しながら一歩一歩前に進んできた人たちにとっては大きな壁になると思います。

テンソルの学習は、そうはいきません。もやもやしたあいまいな理解を同時に複数かかえながら少しづつ理解を深めていく・・・という、ちょっと高次な脳機能を要します。

 

いくつかの専門書によるテンソルの解説は「成分」の変換法則に焦点をあてた解説が多く、初学者にとってはそこも落とし穴になっているかもしれません。

しかし、大事なのは成分ではなく基底なんです。

成分は基底にかかっている係数にすぎません。

成分変換に意識を奪われると、いつまでたってもテンソルの本質に到達できないと思います。

テンソルをテンソルたらしめているのは、5,-1,3,4 などという成分ではなく基底のほうだからです。

ベクトルだって、そうですよね?

ベクトルの本質は、2とか3という成分より、基底の大きさや方向です。

基底がいろいろと変化するから、係数がそれに応じて変化するのです。

2とか3ってのは基底にかかる係数にすぎません。

ベクトルやテンソルは基底と切っても切れない関係があります。

逆にいうと、たとえテンソルのイメージがわからなくても基底を意識できていれば、イメージを考えていることになるんです。

成分と基底の結びつきがみえてくると、なんかテンソルの意味がわかりはじめます。

基底を意識すると、テンソルの成分変換が意味を持ち始めます。テンソルの凄さがわかってきます。

行列は単なる数字の組み合わせ。

しかしテンソルは基底にかかっている係数を成分にしたもの。基底の変化に応じて成分が規則正しく変化します。

 

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このテンソルの性質が、物理学者にとって非常に非常に非常に便利なんです。

どうしてかというと、

基底=座標軸

だからです。

基底(座標軸)の変換に影響をうけない物理量というものがたくさんあって、テンソルのテクニックに習熟すればそういう物理量をテンソルであらわすことができます。

座標軸がうごいても、方向や大きさが変わらないもの・・・といわれて、パッと思い浮かぶのは、ベクトルでしょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor9.png

ベクトルは座標軸から独立した存在です。

だからこそ、座標軸が変化すると、成分が変化するわけです。

ベクトルが表そうとしている"物理量"を不変に保つために成分が変化します。

テンソルも同じです。

 

実はスカラーだってそうです。

そもそもスカラーには基底がありません。

なので、座標軸(=基底)が変化してもスカラーの値はかわりません。

そういう意味で、スカラーも座標軸の変換に影響をうけない物理量と言えます。

たとえば・・・ある瞬間の東京の気温。これはスカラーです。

その東京の位置を緯度経度で表したり、平面地図で表したり・・・

東京の位置をあらわす方法はたくさんあると思いますが、

そのあらわし方によって、東京の気温は違ってくるでしょうか?

変わりませんよね。

東京の位置をあらわす座標(観察者の視点)が変化しただけで東京の気温が変化したら大変なことになります。

ある部屋の明るさ、富士山の高さ・・・

いろいろなスカラーがありますが、その場所、位置を表す方法が変化しても、スカラーの値は変化しません。

なんか、言いたいことがあたりまえすぎて、うまく伝わっていない気もしますが・・・(汗)。

 

ベクトルだって同じです。

たとえば平面地図で、東京からみた福岡市の位置は、ベクトルで表現できます。

東京からみた福岡の位置をあらわす方法は、東京を原点とする地図で表したり、東京と福岡を緯度経度であらわしたり、いろいろな方法があるでしょう。

東京からみた福岡の位置は、東京の温度、とは違い、場所の表し方によっていろいろと表現内容が変わってくるかもしれません。

しかし、東京からみた福岡の距離や方向そのものが変化するわけではありませんよね?

東京からみた福岡の方向や距離は座標の取り方に影響をうけないのです。

ベクトルも同じです。

基底の選び方によって、ベクトルの「成分」は変化してしまいます。

が、つまるところ、観察者の視点がかわったために、みための数字が変化しているだけの話です。

「ベクトル」そのものが変化したわけではありません。

ベクトルの成分=みため

です。

なんか、本当に話がくどくてすみません・・・(苦笑)

 

テンソルだって同じなんです。

テンソルを使って、物理学者がこの世の "何か" をあらわすとします。

この世には、テンソルでしかあらわせないものがあります(注3)。

テンソルを使わないとあらわせないものっていうのは、

たいがいが難しいものなので、

想像するのが難しいのですが、

だから難しい勉強が必要なわけで・・・(汗)

アインシュタインは「空間のエネルギー」をテンソルであらわしました。

なんだ?!それ?

という感じはさておいて、

今、「空間のエネルギー」を測定できたとします。

それを「複数の数字のセット」でうまくあらわすことができたとき・・・

それがテンソルになっていれば、その数字のセットは、ベクトルの成分のようにふるまうわけです。

座標系が変化すると、それにともなって数字がクルクルと変化します。

注意すべき点は、数字が変化したからと言って「空間のエネルギー」そのものが変化しているわけではないということ。

観察者の視点が変化しているために、その変化に応じてテンソルの成分が変化しているだけです。

そうすることによって、「空間のエネルギー」を座標系に依存せずにあらわし続けることができているのです。

いってみれば、テンソルとは、

座標変換に影響をうけずに~"何か"~をあらわし続ける数学的なテクニックです。

この世には、テンソルを使うとうまくあらわせる、何か、があります。

(それがなければ、テンソルなんて、誰も見向きもしなかったでしょう。一部の数学者が何の役にたつのかわからないまま研究する、たんなる数学上の抽象的な題材にすぎなかったと思います)

電磁気力とか、せん断応力とかです。

そういうものを、観察者の視点やスケールや運動に依存せずに、絶対的なものとしてあらわしたい・・・

学者さんにはそういう願望があります。

それを可能にするのがテンソルです。

座標系が変わっても、テンソルの成分(数字)が規則にしたがって変化するだけで、もとになったテンソルがあらわしている"何か"・・・方向や大きさのようなもの・・・は失われないし、変わらないようにしたい。

そういう学者さんの願望が、テンソルを生み出したとも言えます。

スカラーもベクトルも、実はテンソルです。

スカラーを0階のテンソル、ベクトルを1階のテンソルといったりします。

行列のようにみえるのは2階のテンソルです。

その成分の変化のさせ方・・・

そこがテンソルの核心なんです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor7.png空間に浮かぶベクトル

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor8.png座標で表示することができる

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor9.png同じベクトルを違う座標からみる

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor10.png

そうすると座標表示が変わる

こういうものをすべてテンソルという

この座標変換を自動計算したい!

 

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抽象的な話は、うんざり・・・という人のために、すこし具体例をあげながら解説してみます。

次のような4つの数字のセットを考えます。

5 -1
3 4

一見、行列のようにみえます。物理学者が、この4つの数字で"何か"をあらわそうとしています。

それぞれの数字は座標の基底 exεx や、exεyや、eyεx や、eyεy の係数になっています。つまり

5 -1
3 4

||

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

です。

今つけた基底によって、この4つの数字は行列ではなくテンソルになったと思います。

ほんとうでしょうか?

その様子をみてみましょう。

まず、座標を変換してみます。たとえば・・・

座標全体が反時計回りに+30度回転すると、このテンソルはどうなるかというと・・・

5.61 -1.93
2.06 3.38

に、変換されます。

このように、座標変換によって変化する行列=テンソル、です。

座標変換によって、表示が変化するのです。

こういうのを自動計算できるようになるのがテンソルの勉強です。

数字が大きく変わってしまいましたが、物理学者が表現しようとしていた "何か" が変化したわけではありません。

その "何か" を、新しい座標であらわすと、

5.61 -1.93
2.06 3.38

||

[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]

になります。

座標変換により、基底が、 ex や ey 、εx 、 εy の組み合わせから、e'x や e'y 、 ε'x 、ε'y の組み合わせに変化しましたが、そのパターンは同じです。

なので、基底の変換にあわせて成分を規則的に変化させることができました。

うまく伝わっているかどうかわかりませんが、たとえば、もし、

5 -1
3 4

||

[5ex - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

みたいに、e と ε の個数があわなかったりしたら(基底の対称性が失われていたら)、こうはうまくいかないのです。

 

えっと・・・

これの何が便利なのかって?

座標が+30度回ったので(基底が変化したので)、テンソルの成分(数字)が変化してしまいましたが、こうすることによって、物理学者があらわそうとしていた"何か"(物理量)が、座標変換の影響をうけずに維持されたのです。

つまり、

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

||

[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]

ってこと・・・

わかるでしょうか?

係数だけとりだして書いてみると・・・

5 -1
3 4

||

5.61 -1.93
2.06 3.38

となってしまい、ちょっと意味がわからなくなりますが、この、基底の変化にともなう係数の変化・・・

ここらへんがテンソルの真髄なわけで、この醍醐味が理解できなければ、テンソルの勉強は無味乾燥でやってられません。

 

もう一例考えてみましょう。

たとえば、さきほどのテンソル

5 -1
3 4

||

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

は、x軸が+20度(反時計回りに20度)、y軸が-30度(時計回りに30度)に歪んだ座標上では、どう表されるでしょうか?

2.61 -1.66
3.80 6.39

||

[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80e*yε*x + 6.39e*yε*y]

です(注4)。

数字が変化してしまいましたが、やはり、同じテンソルです。

座標軸が変化したことによって、テンソルの中身(数字、成分、みため)が変わってしまいましたが、4つの数字であらわそうとしている ”何か” (物理量)が変化したわけではありません。

つまり、

[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]

||

[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]

||

[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80e*yε*x + 6.39e*yε*y]

です。

これを基底なしで書くと、

5 -1
3 4

||

5.61 -1.93
2.06 3.38

||

2.61 -1.66
3.80 6.39

となって、ちょっと意味がわからなくなります。

 

座標の変化にともなってテンソルの成分が変化するのは、

実は、「基底」が変化していることによる二次的なものです。

つまりテンソルの本質は「基底」のほうにあります。

「基底」の様子がわかってくると、テンソルにだんだんイメージがついてくるようになります。

すると、しだいに成分(数字、みため)に対する興味は消えていき、「基底」の変化が気になりはじめます。

exεx 、exεy 、eyεx、eyεy と ex や ey 、εx や εy の意味が知りたくなってきます。

ベクトルやテンソルのイメージは「基底」と切っても切り離せない関係があります。

直交座標では、「基底」はx方向に1の大きさ、y方向に1の大きさをもつ矢印のようなイメージです。

「基底」を変化させると、何かを不変に保とうとして、テンソルの「成分」(数字、みため)が2次的に変化してしまうんです。

なんだ、そんなことかと思います。

座標軸の変化ではなく「基底」の変化を理解するのが本質です。

いったい、基底 ex 、ey とか、基底 εx 、εy とは何なのでしょうか?

テンソルの基底 exεx 、exεy、eyεx 、eyεy と ベクトルの基底 ex や ey 、εx や εy には、どんな関係があるのでしょう?

 

具体例で考えましょう。

正規直交座標の「基底」は、

ex =(1,0)

ey =(0,1)

です。

この座標系全体が+30度回った状態というのは、上記の基底が、

e'x =(√3/2,0.50)

e'y =(-0.5,√3/2)

という新しい基底に変換されたということと同義です。

座標系全体が+30度回転した座標系では、この新しい基底が

ex =(1,0)

ey =(0,1)

という新たな直交基底になります。

少し注意してほしいのは、基底はテンソルではなく、動いているという点です。

基底は座標の方についてまわります。

座標が動き、基底がうごく。テンソルの成分(数字、みため)は基底の変化にカウンターをあてるように変わる。その結果、テンソルがあらわそうとしている "何か" は変化しないですむ・・・という感じです。

まぁしかし、座標全体が+30度回っても、直交座標であることにかわりはありません。

しかし、これが斜交座標への変換になると・・・やっかいなことがおこります。

 

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斜交座標には、「反変基底」や「共変基底」という2種類の「基底」があらわれます。

実は今まで直交座標で基底だと思っていたものは共変基底で、その影に反変基底が隠れていたんだな、って感じです。

直交座標では、反変基底は、まったくみえませんでしたし、意識する必要もありませんでした。

斜交座標では、これを考えなければならず、疲れます。

 

共変基底、反変基底を具体例でみていきます。

たとえば、x軸が+20度(反時計回りに20度)、y軸がー30度(時計回りに30度)回転すると、直交座標ではなく座標が歪んだ斜交座標になります。

この新しい斜交座標の基底は、

e'x =(0.94,0.34)

e'y =(0.5,0.87)

という共変基底(元の直交座標を利用して表現しています)と、

ε'x =(1.34,-0.78)

ε'y =(-0.53,1.46)

という反変基底です(元の直交座標を利用して表現しています)。

共変基底、反変基底という2種類の基底を使い分けることになります。

すると、

正規直交座標で

1 2

||

[1ex + 2ey]

とあらわされていたベクトルは、新しい斜交座標では二つの表示方法が可能になります。

ベクトル

-0.21 2.39

||

[-0.21e'x + 2.39e'y]

という共変基底を基準にした表示と、

1.62 2.23

||

[1.62ε'x  + 2.23ε'y]

という反変基底を基準にした表示です。

同じベクトルを裏表からみたイメージでしょうか。

この2つの表示の内積をとってみると、元のベクトルの内積に一致します。

(-0.21)*(1.62) + (2.39)*(2.23) =5

2*2 + 1*1=5

空間幾何において内積が最も重要なスカラーであることを知っていると、

なるほど、すごいね・・・なんて感じる人もいるかもしれません。

たとえばアインシュタインは光速を内積で表現することによって光速度不変の原理を数式化したわけです。

しかし(でも、それだけのこと?)と思っていると、ここでめちゃくちゃ大切なことがでてきます。

計量テンソルです。

さきほどのベクトル

-0.21 2.39

||

[-0.21e'x + 2.39e'y]

と、ベクトル

1.62 2.23

||

[1.62ε'x  + 2.23ε'y]

の間を結びつけている何かがあります。

この例で言うと、

1 0.77
0.77 1

です。

これを「計量テンソル」といいます。

計量テンソルは

反変表示

計量テンソル

共変表示

のように、

共変基底をもとにしたベクトル表示(反変表示といいます)と、

反変基底をもとにしたベクトル表示(共変表示といいます)の

間を取り持つ仲介役といえます(注5)。

計量テンソルは、共変基底さえわかれば、公式を使って一発で算出できます。

 

具体例をみてみましょう。

正規直交基底

ex =(1,0)

ey = (0,1)

が、

e'x =(2,1)

e'y =(-0.5,0.25)

という新しい共変基底に変換されると、

ε'x =(0.25,0.5)

ε'y =(-1,2)

という反変基底があらわれます(どちらも元の直交基底をつかってあらわされています)。

この座標変換によって、計量テンソルは、正規直交座標をあらわす

1 0
0 1

から

5 -0.75
-0.75 0.31

に変換されます。また、この座標変換によって、もとの直交座標で

4
-1

||

[4ex - 1ey]

とあらわされていたベクトルは、新しい座標系では、ベクトル

0.5 -6

||

[0.5e'x - 6e'y]

とあらわされることになります。

これを反変表示といいます(反変表示は共変基底をつかってあらわされます)。

新しい反変基底をもとにすると、ベクトル

7 -2.25

||

[7ε'x - 2.25ε'y]

になります(共変表示といいます)。

この反変表示

0.5 -6

||

[0.5e'x - 6e'y]

と共変表示

7 -2.25

||

[7ε'x - 2.25ε'y]

の間を結んでいるのが、計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.31

だ、というわけです。

 

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さて・・・いよいよ話も佳境に入ってきました。

テンソルにはもうひとつ不思議な能力があります。

それは、スカラーやベクトルを生み出す「作用素」(=関数、写像)としての働きです。

わかりにくい話ですが、すごい話です。

どういうことかというと、

テンソルに、スカラーやベクトルなどの数字のセットを掛け合わせて、別の数字や数字のセットをつくったとき、

その、つくられた数字や数字のセットが座標系に依存しない、という話です。

いうなれば、

テンソルにスカラーやベクトルを作用させると異なるスカラーやベクトルが生成される

といえます。

座標系が異なっても、まったく同じものが生成されます。

なんか、伝わっていない気がしますが、すごい話なんです。

 

どうしてそんなことがおこるのかというと、

まずは、テンソルの成分が、そうなるよう、うまい具合に座標変換されます。

作用素自体(テンソル)が座標系に依存しないんです。

座標系に依存しない「作用素」はめちゃくちゃ役に立ちます。

このあたりは、もう、想像を絶する凄さなのですが、文章ではなかなかうまく伝えることができません。

 

がんばって具体例で話をしてみます。

たとえば正規直交座標のテンソル

5 -1
3 4

を考えてみます。このテンソルにベクトル

2 3

||

[2ex + 3ey]

を掛け合わせると、別の新しいベクトル

7 18

||

[7ex + 18ey]

がつくられます。行列にベクトルを掛け合わせただけのようにみえますが、

このプロセスが「座標系に依存しない」という話をしています。

どういうことかというと・・・

とりあえず、百聞は一見し如かず。

上記と同じことをまったく違う座標でやってみましょう。

まず、座標変換してみます。

正規直交座標の

ex =(1,0)

ey = (0,1)

という基底を、

e'x =(2,1)

e'y =(-0.5,0.25)

という共変基底に変換してみます。

すると、正規直交系で先ほど

5 -1
3 4

とあらわされていたテンソルが、新しい座標系では

7.25
-0.94
11 1.75

と表示されることになります(注6)。また、正規直交系のベクトル

2 3

||

[2ex + 3ey]

は、新しい座標系ではベクトル

2
4

||

[2e'x + 4e'y ]

と表示されます。では、この新しいベクトル

2
4

||

[2e'x + 4e'y ]

に新しいテンソル

7.25
-0.94
11 1.75

を掛け合わせてみましょう。すると、新しい別のベクトル

10.75
29

||

[10.75e'x + 29e'y ]

が得られます。このベクトルが、正規直交系のベクトル

2 3

||

[2ex + 3ey]

をテンソル

5 -1
3 4

に掛け合わせて生成されたベクトル

7 18

||

[7ex + 18ey]

とまったく同じなのだという話をしています。

 

ほんとうでしょうか?

確かめてみましょう。正規直交系のベクトル

7 18

||

[7ex + 18ey]

を新しい座標系で表示してみると、たしかに

10.75
29

||

[10.75e'x + 29e'y ]

という表示になります。つまり、

5 -1
3 4

は、ベクトル(座標系に依存しない存在)に作用して新しいベクトル(座標系に依存しない存在)を生成する能力をもち、かつ、その能力が座標系に依存しません。

このように「座標系に依存しない」能力はテンソルの最大の特徴だと言えます。

「と言えます」・・・などという言い方になるのは、

テンソルとは、そういう数字のセットに付けられた名前ではなく、数字のセットに対する「考え方」とか「テクニック」につけられた名前だと思うからです。

どんな行列でも、整然とした座標変換規則と結びついていれば、それはテンソルである・・・

といえるのではないでしょうか。

 

文章で説明していると、だんだんわけがわからなくなってきます。

が、いずれにしろ、このように、座標変換にともない適切に成分変化させよう!そうやって物理量を不変に維持しよう!ってのがテンソルの気持ちです。

アインシュタインがテンソルを使って一般相対性理論を完成させたのもそういうモチベーションだったと思います。

テンソルと行列の違いがわかれば、テンソルを使ってみようかな?

という気がしてくると思います。

興味がわいたら専門書を開きましょう。いっぱい添字がでてきて天手古舞するかもしれませんが、しかし、本来、添え字の上げ下げなんて、枝葉末節です(注7)。

(なんて言うと、専門家から怒られますかね・・・汗)

テンソルの定義や壁にぶちあたり、そこで無用に長い時間を消耗するのはもったいないと思います。

テンソルとは何?という状態から1日でも早く脱出し、できるだけテンソルを使いこなす側にまわりたいものです。

 

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(注1)

基底には「かたち」があります。

どういうことかというと・・・

ベクトルでは、「縦ベクトル」と「横ベクトル」のようにベクトルの「かたち」を区別することがありますよね?

その「縦ベクトル」と「横ベクトル」の基底(ex、ey、εx、εy)は以下のように考えることができます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/1_20210301161201.png
この考え方がテンソルの基底に深く関係しています。

ベクトルの基底を考えると「縦ベクトル」と「横ベクトル」の2つのベクトルを区別するのと同様に・・・

テンソルの基底を考えると、4つのテンソルを区別できます。

どういうことかというと・・・

4つの成分をもつテンソルについて、縦基底と横基底の組み合わせを考慮するのです。

すると、以下のように16種類の基底のパターンというか「かたち」を考えることができます。

「横ベクトルが縦に並んだ2x2型」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensorbase1.png

「縦ベクトルが横に並んだ2x2型」

Tensorbase2_20201110005501

「縦ベクトルが縦に並んだ4x1型」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensorbase3.png

「横ベクトルが横に並んだ1x4型」

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensorbase4.png

下付き文字で縦基底、上付き文字で横基底を区別しました。

この基底の「かたち」を踏襲してテンソルを表現すると、全体として以下の4種類のテンソルの「かたち」を区別することができます。

A exεx     B exεy 
C eyεx     D eyεy 

||

A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy

 

A εxex


B εxey

C εyex


D εyey

||

A εxex + B εxey + C εyex + D εyey

 

A exex


B exey

C eyex


D eyey

||

A exex + B exey + C eyex + D eyey

 

A εxεx     B εxεy C εyεx     D εyεy

||

A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy

上から

(1,1)-テンソル

(1,1)-テンソル

(2,0)-テンソル

(0,2)-テンソル

などともよばれます。

初学者的には、こういうテンソルの「かたち」を丁寧に区別しながら説明してくれる解説がもっとも親切な解説でしょう。

しかし、これらテンソルの「かたち」をいちいち絵的に区別して表現するのはなかなか煩雑です。

なので、基底を区別したうえで、以下のように2x2型で表記してしまうのがふつうです。

A B
C D

||

A (xx) + B (xy)  + C (yx) + D (yy)

くわしく基底をつけてみると・・・

(1,1)-テンソル

A (exεx) B (exεy)
C (eyεx) D (eyεy)

||

A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy

 

(1,1)-テンソル

Axex) Bxey)
Cyex) Dyey)

||

A εxex + B εxey + C εyex + D εyey

 

(2,0)-テンソル

A (exex) B (exey)
C (eyex) D (eyey)

||

A exex + B exey + C eyex + D eyey

 

(0,2)-テンソル

Axεx) Bxεy)
Cyεx) Dyεy)

||

A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy

です。

一見、どれも同じ

A B
C D

にみえます。

が、基底さえ併記しておけば、もともとのテンソルの「かたち」はわかる人にはわかるはずなので(例えばこの注1を一度でも読んだ人には)、それでいいのです。

 

まとめてみると(理解できた方には、くどいかもしれませんが)・・・

(1,1)-テンソル

A (exεx) B (exεy)
C (eyεx) D (eyεy)

||

A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy

||

A exεx     B exεy 
C eyεx     D eyεy 

 

 

(1,1)-テンソル

Axex) Bxey)
Cyex) Dyey)

||

A εxex + B εxey + C εyex + D εyey

||

A εxex


B εxey

C εyex


D εyey

 

 

(2,0)-テンソル

A (exex) B (exey)
C (eyex) D (eyey)

||

A exex + B exey + C eyex + D eyey

||

A exex


B exey

C eyex


D eyey

 

 

(0,2)-テンソル

Axεx) Bxεy)
Cyεx) Dyεy)

||

A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy

||

A εxεx     B εxεy C εyεx     D εyεy

 

ってことです。

 

つまり、よくよく考えれば、(1,1)-テンソルであろうと(2,0)-テンソルであろうと、(0,2)-テンソルであろうと、4種類の基底パターン

e ε

ε e

e e

ε ε

さえわかれば、 テンソルの形を無視して、すべて

A B
C D

とあらわしていいことになります。

 

要するに(A、B、C、D)という4つの数字のセットがテンソルになっている場合、

A の基底は 〇x〇x

B の基底は 〇x〇y

C の基底は 〇y〇x

D の基底は 〇y〇y

と勝手に判断してよいのです。つまり、

A 〇x〇x + B 〇x〇y + C 〇y〇x + D 〇y〇y

です。

かつ、基底のパターンさえ示せば、それを

A B
C D

と表記していいのです。

 

逆に言うと、たとえば、あるテンソルが

5 -1
3 4

と表記されていたとき、

その基底パターンが

ε e パターン

であれば、テンソルは

5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey

だし、すると、そのテンソルの形は、自動的に

5


-1

3


4

と決まります。

しかし、一見、同じように表記されているテンソル

5 -1
3 4

でも、その基底が

ε ε パターン

であれば、テンソルは

5 εxεx - 1 εxεy + 3 εyεx + 4 εyεy

で、そのテンソルの形は、

      -     

です。

こういうことが慣れた人の目には自明なのです。 

つまり

5 -1
3 4

は、ただの行列ですが、そこに基底がつくとテンソルになるというのは、そういうことです。

 

よく考えたら、ベクトルだって同じですよね。

基底がついていない

2 3

は行列ですが、ベクトルには基底がついています。

基底を意識すると、

2 εx + 3 εy

||

2 3

 

2 ex + 3 ey

||

2
3

です。

基底が ε なのか e なのかさえわかれば、いちいち「縦ベクトル」なのか「横ベクトル」なのかを絵で描かなくてもわかる人にはわかります。

専門書は、その「かたち」を絵的には区別してくれません。 

しかも、場合によっては、ε も e も、どちらも e とあらわしたりします。

では専門家はどうやって2種類の基底の違いを判別しているのかというと、"添字"の位置です。

添字のパターン(上とか下とか)が基底のパターン(ε とか e とか)と1対1で対応しているので、"添字"の位置(上付きか下付きか)で、ε か e かわかります。

添字に慣れないうちは

ex とか ey 

など、基底の右上に添字がついていたら εx と εy

ex とか ey

など、基底の右下に添字がついていたら ex と ey

などと、読み替えると専門書を理解しやすくなると思います。

さらに、多くの専門書では、添字を用いる場合、もはや基底そのものを省いて表記します。

この場合、

3y = 3 εy

2x = 2 ex

5xx = 5 exex

-1xy = -1 exεy

3y 10x  = 30yx = 30 εyex

です。

つまり、

(2x , 3y)

||

2 3

 

(2x , 3y)

||

2
3

です。添字さえあれば、形を区別するのに ε も e も不要です。

ただし、成分につく添字の上下は、基底につく添字の上下と、一見、反対になりますので注意しましょう。

 

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(注2)

たとえば、

A ex + B ey

C εx + D εy

という2つのベクトルがあるとします。つまり、

基底 ex の係数 = A

基底 ey の係数 = B

基底 εx の係数 = C

基底 εy の係数 = D

です。

この二つのベクトルから

無理やり exεx、exεy、eyεx、eyεy

という基底をもつテンソルをつくろうとおもえば、その係数は・・・

基底 exεx の係数 = AC

基底 exεy の係数 = AD

基底 eyεx の係数 = BC

基底 eyεy の係数 = BD

になります。

つまり、そのテンソルは

(AC、AD、BC、BD)

||

(AC exεx、AD exεy、BC eyεx、BD eyεy

||

AC exεx + AD exεy + BC eyεx + BD eyεy

です。

なので、逆から考えると、

5、ー1、3、4

というテンソル成分を考えるということは、たとえば

5exεx、ー1exεy、3eyεx、4eyεy

を考えることであり、すなわち

AC = 5

AD = -1

BC= 3

BD = 4

となるA, B, C, Dを考えている、ということです。

しかし、念のため言っておきますが、そういうA、B、C、Dはありません。

連立方程式は解けないのです。

にもかかわらず・・・

それが存在すると考えることによって、どういうわけか(AC, AD, BC, BD)=(5,-1,3,4)の座標変換が可能になるのです。

 

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(注3)

たとえば、ベクトル

2 3

は、x方向に1つの成分、y方向にも1つの成分を含む物理量です。

では、x方向に2つの成分、y方向にも2つの成分を含む物理量はどうあらわしたらいいでしょうか?

たとえばx方向に

5 -1

という成分、y方向に

3 4

という成分を持つ物理量です。

こういう成分をどうあらわしたらいいでしょうか?

これを・・・まるで

5
-1

をひとつの成分とみなし、

3
4

もひとつの成分とみなし、

それぞれを横ベクトルのように横に並べてみて

5
-1
3
4

と、あらわしてみたらどうだろうか?

こういうアイデアがテンソルの源流にあると思います。

基底をつけてみると・・・

5
-1

||

5 ex -1 ey

 

3
4

||

3 ex + 4 ey

ですよね?これを無理やり横に並べてみると

5
-1
3
4

||

(5,-1) εx + (3,4) εy

となります。

これを展開すると、

(5,-1) εx + (3,4) εy

||

(5 ex -1 ey )εx +(3 ex + 4 ey )εy

||

5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey

||

5 εxex
-1 εxey
3 εyex
4 εyey

です。

基底のセット

εxex
 εxey
εyex
εyey

に対応するテンソルはこうして作られます。

しかし、このテンソルをいちいち

5 εxex
-1 εxey
3 εyex
4 εyey

みたいな絵にするのはムダです。

基底のパターンさえきちんと記載しておけば何ら問題はありません。

5 -1
3 4

||

5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey

です。

専門家は添字というテクニックを使ってこれらを巧みに区別します。

なんか、めんどくさい作法だなぁ、ふ~んって感じかもしれません。

が、このようにあらわすと、何かとうまく表現できる物理量があるんです。

たとえば、ある座標系で、x方向に(5,-1,2)、y方向に(3,4,1),z方向に(2,-3,5)みたいな物理量を、とりあえず

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

のようにあらわすわけです。

これだけをみた人は、縦にみるのか横にみるのかわかりませんが、

もし基底のパターンが

εe パターン

であるとわかると、

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

と、決まります。

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

||

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

||

5
-1
2
3
4
1
2
3
5

です。

ステップをひとつひとつ説明すると、

5
-1
2

||

5ex -1ey + 2ez

 

3
4
1

||

3ex + 4ey + 1ez

 

2
3
5

||

2ex -3ey + 5ez

という3つの「縦ベクトル」を3つの数字とみなし「横ベクトル」をつくります。縦ベクトルの基底を(exeyez)、横ベクトルの基底を(εx、εy、εz)とします。すると・・・

5
-1
2
3
4
1
2
3
5

||

5 ,-1,2)εx  + (3,4,1)εy  + (2,-3,5)εz

||

5ex ,-1ey ,2ez)εx  + (3ex ,4ey ,1ez)εy  + (2ex ,-3ey ,5ez)εz

||

5ex -1ey + 2ezεx  + (3ex + 4ey + 1ezεy  + (2ex -3ey + 5ezεz

||

(5εxex -1εxey + 2εxez) + (3εyex + 4εyey + 1εyez)  + (2εzex -3εzey + 5εzez

||

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

になりますよね?これを・・・

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

||

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

とあらわすわけです。

 

もし、基底の情報がなく

5 -1 2
3 4 1
2 -3 5

とだけしかわからなければ

5exεx -1exεy + 2ex εz + 3eyεx + 4eyεy + 1eyεz + 2ezεx -3ezεy + 5ezεz

||

5     -1     2
3      4     1
2     -3     5

なのか

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

||

5
-1
2
3
4
1
2
3
5

なのか

5exex -1exey + 2exez + 3eyex + 4eyey + 1eyez  + 2ezex -3ezey + 5ezez

||


5

-1

2


3

4

1


2

3

5

なのか

5εxεx -1εxεy + 2εxεz + 3εyεx + 4εyεy + 1εyεz + 2εzεx -3εzεy + 5εzεz

||

5     -1     2
3     4     1
2     3     5

なのか・・・

それ以上は、わからないわけです。

 

でも、その基底の組み合わせが「 ε e パターン」だとわかれば、その正体は

5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez  + 2εzex -3εzey + 5εzez

||

5
-1
2
3
4
1
2
3
5

だな・・・

ということがわかり、x方向に(5,-1,2)、y方向に(3,4,1)、z方向に(2,-3,5)みたいな物理量かな・・・と考えることができます。

慣れないうちは、ひとつの方向に複数の成分を考えるのは難しいかもしれません。

しかし、それがテンソルの絵的なイメージの源流にあると思います。

 

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(注4)

実はこのとき、

2.61 -1.66
3.80 6.39

||

[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80 e*yε*x + 6.39e*yε*y]

 

の他に、もうひとつ、

7.38 -2.42
4.56 1.62

||

[7.40ε*xe*x - 2.42ε*xe*y + 4.56ε*ye*x + 1.62ε*ye*y]

というテンソルができています。というか、このふたつのテンソルは、表示が違うだけでどちらも同じテンソルです。同じテンソルに2種類の表示ができてしまうのです。

斜交座標ではこういうことがおこります。

 

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(注5)

斜交座標では、共変基底と反変基底がでてきて非常に面倒なのですが、共変基底による成分表示を一発で反変基底による成分表示に変換する便利な行列関数があります。それが計量テンソルです。共変基底や座標軸の傾き情報が与えられると、計量テンソルは一発で計算できます。

たとえば、x軸から30度、y軸から30度歪んだ座標系の計量テンソルは、

1 √3/2
√3/2 1

です。この計量テンソルをつかえば、共変基底による成分表示から反変基底による成分表示に一発で変換できます。計量テンソルは、このように何か間をとりもつ関数みたいなものですが、実は、計量テンソルこそが座標の性質のすべてを決める主役なのです。

 

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(注6)

注4で述べた理由と同じ理由により、テンソル

7.25
-0.94
11 1.75

は、同時に

4.25
-9
0.31 4.75

とも表示できます。見た目が違いますが、どちらも同じテンソルです。

両者を基底をつけてあらわすと、

7.25
-0.94
11 1.75

||

[7.25e'xε'x - 0.94e'xε'y + 11e'yε'x + 1.75e'yε'y]

4.25
-9
0.31 4.75

||

[4.25ε'xe'x - 9ε'xe'y + 0.31ε'ye'x + 4.75ε'ye'y]

です。このテンソル

4.25
-9
0.31 4.75

に、ベクトル

2
4

||

[2e'x + 4e'y]

の共変表示

7
-0.25

||

[7ε'x - 0.25ε'y]

を掛け合わせると、ベクトル

32
1

||

[32ε'x + 1ε'y]

が得られます。本文中のベクトル

10.75
29

||

[10.75e'x + 29e'y]

の共変表示は

32
1

||

[32ε'x + 1ε'y]

です。すごいですよね。

このあたりが理解できてくると、テンソルに何ができるのか?

がみえてくると思います。

そういうことを可能にするのがテンソルです。

 

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(注7)

座標上の2つのベクトルを比べるとき、もし両者の基底ベクトルが同じなら、成分の違いはベクトルの違いを意味します。しかし、極座標基底のように座標ごとに基底ベクトルが異なる場合には、成分の違いが必ずしもベクトルの違いをあらわしているとは限りません(極座標基底によるベクトル表示については ⇒ こちら

そのため、異なる基底ベクトルをもつ2つのベクトルを比較するときは、基底の違いを補正する必要があります。その係数が補正係数クリストッフェルです。これによって正味の成分変化を知ることができるようになります。

たとえば、直交座標で点(2,1)を起点とするベクトル

1 1

と、直交座標で点(3,2)を起点とするベクトル

1 1

は、両方とも同じ大きさと方向をもつベクトルであることが一目瞭然です。

これは、直交座標上の点(2,1)と点(3,2)では、どちらも、基底が

ex =(1,0)

ey =(0,1)

であるために、成分が素直にベクトルの違いを反映するためです。

しかし、極座標では、直交座標上の点(2,1)は点(2.24,0.46)とあらわされ、その基底ベクトルは、

e'x =(0.89, 0.45)

e'y =(-1, 2)

です。

また、直交座標の点(3,2)は、極座標では点(3.61,0.59)であり、その基底は、

e'x =(0.83, 0.56)

e'y =(-2, 3)

になります。

このように極座標では局所局所によって、基底ベクトルが異なります。

(極座標基底によるベクトル表示については ⇒ こちら

これがベクトルの比較を非常に難しくします。

直交座標で点(2,1)を起点とするベクトル

1 1

||

[1ex + 1ey]

は、極座標からは、点(2.24,0.46)を起点とするベクトル

1.34 0.20

||

[1.34e'x + 0.20e'y]

にみえ、

直交座標で点(3,2)を起点とするベクトル

1 1

||

[1ex + 1ey]

は、極座標からは、点(3.61,0.59)を起点とするベクトル

1.39 0.08

||

[1.39e'x + 0.08e'y]

にみえます。

直交座標では同じ大きさと方向をもつことが一目瞭然である2つのベクトル

1 1

||

[1ex + 1ey]

が、極座標であらわされると、

1.34 0.20

||

[1.34e'x + 0.20e'y]

とか、

1.39 0.08

||

[1.39e'x + 0.08e'y]

のように、成分のみためがぜんぜん違うベクトルのような表現になってしまいます。

しかし、ほんとうは、これらは同じ大きさ、同じ方向をもつベクトルなのです。

極座標では局所局所によって基底が変化してしまうため、このような事態がおこります。

この基底の変化を補正し、ベクトルの比較を容易にするのが共変微分です。

 

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(注8)

座標の1点1点に値(スカラー)が設定されているものをスカラー場といいます。

点 =「数字が入っている箱」と考えるとこんな感じです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field1.png

スカラー場のある1点から上下左右をみると、上下左右に違う数字がみえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field2.png

その上下の差と左右の差を1組にして数字のセットとすると、1点1点ごとに、1組の数字のセットを設定することができます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field3.png

このように、1点に1組の数字のセットが設定されている・・・それをベクトル場といいます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field4.png

スカラー分布が滑らかで微分可能な時、スカラー場を微分するとベクトル場になります。

つぎに、あるベクトル場の1点(スカラー場の1点ともいえます)から上下左右をながめると、上下左右に違うベクトルがみえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field5.png

その上下の差と左右の差を数字のセットとして、1点1点ごとに、上下左右のベクトルの差を意味する数字のセットを設定します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field6.png

すると、テンソル場になります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor-field7.png

ベクトル分布が滑らかで微分可能な時、ベクトル場を微分するとテンソル場になります。

 

(注9)

テンソルって何?という質問に対し、2つのベクトルを「ある特殊な掛け算」で掛け合わせてできたものだ!というきわめて抽象的な定義があります。

初めて聞いた人にはまったく意味不明・・・最悪中の最悪な定義でしょう。

けれども、これがもっとも恣意性のないテンソルの定義のような気がします。

テンソルを2つのベクトルの積からつくるのですが、内積でも外積でもありません。普通の積じゃないのです。

その特殊な掛け算を「テンソル積」といいます(計算式⊗)。

いいかえるとテンソルとはテンソル積(計算式⊗)という特殊な計算で造られた数字の組み合わせです。

テンソル積(計算式⊗)は、行列積と同じ?と思われることがありますが全然違います。

できあがったテンソルは、まるで行列と区別がつきません。行列同士との掛け算や和算など計算の仕方やルールなども、まるで行列です。

しかし、テンソル積(計算式⊗)は、ベクトルや行列で使われる、よくあるルールとは全く違った計算です。

よくよく注意してください。大事なところなので繰り返します。特殊な計算です。

特殊な計算・・・とは言っても、計算は極めて機械的で、ベクトルの成分をそれぞれ全部掛け合わせるだけ。

数字だけをみると、直積と同じです。

直積と違うのは「基底」を伴っている点です。

 

テンソル積(計算式⊗)の概念を無理やり図示してみると下記のようになります。成分の「1」はベクトルの第一成分、成分の「2」はベクトルの第二成分です。

「縦ベクトル」⊗「横ベクトル」

(1,1)-テンソル

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product21_20200314040301.png

 

「横ベクトル」⊗「縦ベクトル」

(1,1)-テンソル

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product22.png

 

「縦ベクトル」⊗「縦ベクトル」

(2,0)-テンソル

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product23.png

 

「横ベクトル」⊗「横ベクトル」

(0,2)-テンソル

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/tensor-product24.png

内積とも外積とも違いますよね?行列積ともまったく違います。ベクトルのふたつの成分同士をすべてかけ合わせて4つの数字をつくります。つまり、できあがる数字のセットは直積と同じです。しかし直積と違って、来上がった数字に基底の「かたち」(縦ベクトルか横ベクトルか・・・)が関連付けされます。

このように、もとになるベクトルが「縦ベクトル」か「横ベクトル」かを区別することによって、2つのベクトルから「テンソル積」によって4種類のテンソルが造られます。

専門家は「縦ベクトル」とか「横ベクトル」とか「かたち」などという野暮な表現を使いません。これらを添字で区別します。

(「縦ベクトル」と「横ベクトル」ではなく、共変ベクトル、反変ベクトルと言うことがあります・・・)

そもそも「縦ベクトル」と「横ベクトル」を区別して考えることができるなら、添字を使う必要はないんです・・・

できあがったテンソルをみると、最初に投入された2つのベクトルの縦横の違いによって、できあがったテンソルの「4つの成分」の並び方というか、基底の絡み方というか、テンソルの形に、4つのパターンが生じており、上から、

(1,1)-テンソル

(1,1)-テンソル

(2,0)-テンソル

(0,2)-テンソル

などともよばれます。

できあがったテンソルのカッコの中にもう一つかっこがあります。1つのかっこを1つの成分とみなせば、できあがったテンソルは、2つのベクトルを成分にもつベクトルとも言えます(ベクトル in ベクトル)。

(この「ベクトル in ベクトル」を専門用語で、区分行列とかブロック行列とか言うようです)

4つのテンソルをよ〜くみると、

「横ベクトルが縦に並んだテンソル」

「縦ベクトルが横に並んだテンソル」

「縦ベクトルが縦に並んだテンソル」

「横ベクトルが横に並んだテンソル」

になっていることがわかると思います。

上の図では、添字がに慣れてない人のために、添字をつかわず、「縦ベクトル」や「横ベクトル」を区別しながら、入れ子構造になったベクトルの並び方によってこの4つのパターンの違いを表現しましたが、専門家はこの4つの「かたち」を、すべて2x2行列で表現し、"添字" を使って区別します。

添字を使ったテンソルは、添字がふえていけばいくほど高階(立体的→4次元的→・・・)になっていきます。

「ベクトル in ベクトル」を使ったテンソルは、2次元的に展開できるスペースさえ与えられれば高階のテンソルをいくらでも紙上に図示できます。

そんな紙面の無駄を数学者や物理学者が好むはずもなく・・・

どの専門書もすべて同じ(2x2)形式であらわされ、「かたち」の違いは添字で区別する流儀です。

なので、初学者にはとてもわかりにくい。

非常に大事な4つの「かたち」を、みづらいほど小さな「添字」を使って区別する・・・

数学とは、わかる人だけついてこい、という冷たい学問であることを痛感する一例です。

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