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この記事であつかうテンソルは、行列とそっくりな2階のテンソルです。しかも2x2という単純な・・・。なぜかって?2階のテンソルがわかれば他の複雑なテンソルも理解できると思うからです。
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専門家は言います。
テンソルと行列は違う
と。
しかし、そう言われたって、テンソルと行列は、同じにみえます。
どちらもこんなふうに数字のセットとして表されます。
ベクトルや行列との掛け算や計算のルールなども、まったく同じです。
テンソルとはいったい何なんでしょう?
いったい、専門家は何を言おうとしているのでしょうか。
(えっと・・・なぜか読者が急増しているので、あえてお断りしておきます。本記事はあくまで一般人を対象にした解説です。専門家の方を対象とした厳密な内容ではありません。その証拠に添字とかアインシュタインの縮約とか省略とかでてきません。そういう専門的な話ではありません・・・)
テンソルと行列のちがいを理解する最初の一歩は、数字とスカラーの違いを理解することだと思います。
たとえば数字の3。
数字の3は数字の3です。
こどものころ、こういう数字には「意味」がありましたよね?
6は3より大きいとか、数が多いとか、少ないとか・・・
しかし、成長とともにだんだん数字を抽象的に扱うことに慣れてくると、いちいち数字の意味を考える必要がなくなっていきます。
意味を考えず、数字を使って、機械的・抽象的に計算することができるようになります。
ここで・・・
こどものころに感じていた、"意味"を戻してあげると、数字がスカラーに戻ります。
数字としての3、スカラーとしての3・・・
スカラーには、サイズ感がつきまといます。
単位とかもついてきます。
単位付きの数字、みたいに考えるといいかもしれません。
スカラーは無機的ではなく、しっかりした意味をもちます。
このようにスカラーと数字は違う!
と専門家に言われても
はい、そうなんだ
と思うだけでしょう。
次に、この数字を2つ組み合わせてみましょう。
たとえば、2と3。
これを(2, 3)と一組にしてみます。
無機的な数字の組み合わせです。抽象的です。
しかし、グラフ上にプロットしてみれば(2, 3)という座標として表示されます。
ちょっと具体的なイメージはあるかもしれません。
(2, 3)という数字の組み合わせをみて、意味がわからん!とか思い悩んでいる人はあまりいないかもしれません。
(2, 3)って、実に無機的なのに。
ここで・・・
この(2, 3)という組み合わせに、"方向"という感覚をくっつけてみましょう。
グラフの原点から(2, 3)に向かう矢印のような・・・
みなさんご存じ、そういう数字の組み合わせを、ベクトルといいます。
大きさと方向をもった、何か矢印のようなイメージです。
ベクトルには、大きさや方向の感覚がついてまわります。
(2, 3)という数字の組み合わせに意味が与えられます。
無機的な数字の組み合わせと、ベクトルでは意味が違う!
と、専門家に言われても、
はい、そうですね・・・というしかないでしょう。
次に数字を縦横に4つならべたもの、たとえば
こういうのを行列と言います。
無機的な数字の組み合わせです。
慣れないうちは、意味が気になるものです。
連立方程式の係数・・・?
なんて、無理やり意味をこじつけようとしたりします。
しかし、これも年齢をかさね(汗)、慣れてくると、いちいち意味を与えずに行列として利用できるようになります。
抽象的、無機的な数字のセットとして計算できるようになります。
そこに・・・
この4つの数字に、何かイメージのようなものを無理やり与えると・・・
それがテンソルになります。
2つのベクトルの大きさと方向と、その"組み合わせ"という感覚がプラスされます・・・って、えっと・・・
どんなイメージだ!?
という疑問はさておき、
テンソルにもスカラーやベクトルのように何かイメージがあるのです。
行列にはありません。
それが、テンソルと行列の違いです。
ではテンソルのイメージとはどんなものでしょう?
みんな、それを知りたいし、知ってる人は教えたい・・・
なのにそれが難しい、できない!
ってのがテンソルの難しさです。
そこで・・・
ちょっと視点をかえてみましょう。
どういうことかというと・・・
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ベクトルには数字のそれぞれ(成分)に「基底」がくっついています。
たとえばベクトル(2,3)を、基底をつかってあらわすと、
||
2ex + 3ey
ってことです。
ex や ey を基底といいます。
座標軸のよって決まるベクトルの基本単位です。
ベクトルは、このように基底をつかった表現に書き換えることができます。
基底を、
ex =(1,0)
ey =(0,1)
とおけば、
2ex + 3ey
= 2(1,0)+ 3(0,1)
=(2,0)+(0,3)
=(2,3)
ですよね。つまり、
(2, 3)
||
2ex + 3ey
です。
これがベクトルです。
絵にするとこんな感じです。青い矢印が基底です。
何をあたりまえな・・・
と感じるかもしれませんが、
テンソルにも、ベクトルと同様、それぞれの数字(成分)に「基底」がくっついています。
あえて式で表してみると・・・
||
5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy
みたいな感じになります。
何なの?この e とか ε の合体した変な基底は?
という疑問は、ぐっと飲みこんでください。
このとき考えている基底は、
exεx
||
exεy
||
eyεx
||
eyεy
||
みたいな感じです(注1)。
すると、
5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy
||
+
+
+
||
になりますよね?
つまり、
||
5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy
です。
このように「数字」プラス「基底」という考え方・・・を意識するのがテンソルの勉強です。
4つの「数字」は、それぞれ「基底」の係数にすぎません。
4つの「数字」が「基底」と結びついているとき、それは行列ではなくテンソルだ、と専門家は言いたいのです。
「基底」が変化したら係数はどう変化するのだ?・・・と。
上の例だと、ex とか、ey とか、εx とか、εy とか・・・、そういう基底がいろいろと変化したら、exεx や、exεyや、 eyεxや、eyεy の係数はどうなる?
と・・・(注2)。
そういう勉強です。
ここで、以下のベクトルとテンソルを100回ぐらい交互にみてください。
ベクトル
||
2ex + 3ey
テンソル
||
5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy
・・・
どうですか?
ちゃんと100回みましたか?(苦笑)
なんだか・・・
ベクトルもテンソルも、結局は似たようなものにみえてきませんか?
基底に対する係数が箱に入ってるだけです。
くりかえし交互にみてください。
あ、なるほど!そういうことか!と感じることができたら・・・ラッキーです。
そう、それだけのことなんです。
(^▽^;)
こんな逃げた説明・・・専門家の先生にめちゃくちゃおこられそうですが・・・
絵で描いたり図示できればいいんでしょうけれども、テンソルのイメージなんて、なかなか図示できません。
テンソルのイメージをベクトルのように図示するのは不可能なんです。
これが、何事も完全に理解しながら一歩一歩前に進んできた人たちにとっては大きな壁になると思います。
テンソルの学習は、そうはいきません。もやもやしたあいまいな理解を同時に複数かかえながら少しづつ理解を深めていく・・・という、ちょっと高次な脳機能を要します。
いくつかの専門書によるテンソルの解説は「成分」の変換法則に焦点をあてた解説が多く、初学者にとってはそこも落とし穴になっているかもしれません。
しかし、大事なのは成分ではなく基底なんです。
成分は基底にかかっている係数にすぎません。
成分変換に意識を奪われると、いつまでたってもテンソルの本質に到達できないと思います。
テンソルをテンソルたらしめているのは、5,-1,3,4 などという成分ではなく基底のほうだからです。
ベクトルだって、そうですよね?
ベクトルの本質は、2とか3という成分より、基底の大きさや方向です。
基底がいろいろと変化するから、係数がそれに応じて変化するのです。
2とか3ってのは基底にかかる係数にすぎません。
ベクトルやテンソルは基底と切っても切れない関係があります。
逆にいうと、たとえテンソルのイメージがわからなくても基底を意識できていれば、イメージを考えていることになるんです。
成分と基底の結びつきがみえてくると、なんかテンソルの意味がわかりはじめます。
基底を意識すると、テンソルの成分変換が意味を持ち始めます。テンソルの凄さがわかってきます。
行列は単なる数字の組み合わせ。
しかしテンソルは基底にかかっている係数を成分にしたもの。基底の変化に応じて成分が規則正しく変化します。
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このテンソルの性質が、物理学者にとって非常に非常に非常に便利なんです。
どうしてかというと、
基底=座標軸
だからです。
基底(座標軸)の変換に影響をうけない物理量というものがたくさんあって、テンソルのテクニックに習熟すればそういう物理量をテンソルであらわすことができます。
座標軸がうごいても、方向や大きさが変わらないもの・・・といわれて、パッと思い浮かぶのは、ベクトルでしょう。
ベクトルは座標軸から独立した存在です。
だからこそ、座標軸が変化すると、成分が変化するわけです。
ベクトルが表そうとしている"物理量"を不変に保つために成分が変化します。
テンソルも同じです。
実はスカラーだってそうです。
そもそもスカラーには基底がありません。
なので、座標軸(=基底)が変化してもスカラーの値はかわりません。
そういう意味で、スカラーも座標軸の変換に影響をうけない物理量と言えます。
たとえば・・・ある瞬間の東京の気温。これはスカラーです。
その東京の位置を緯度経度で表したり、平面地図で表したり・・・
東京の位置をあらわす方法はたくさんあると思いますが、
そのあらわし方によって、東京の気温は違ってくるでしょうか?
変わりませんよね。
東京の位置をあらわす座標(観察者の視点)が変化しただけで東京の気温が変化したら大変なことになります。
ある部屋の明るさ、富士山の高さ・・・
いろいろなスカラーがありますが、その場所、位置を表す方法が変化しても、スカラーの値は変化しません。
なんか、言いたいことがあたりまえすぎて、うまく伝わっていない気もしますが・・・(汗)。
ベクトルだって同じです。
たとえば平面地図で、東京からみた福岡市の位置は、ベクトルで表現できます。
東京からみた福岡の位置をあらわす方法は、東京を原点とする地図で表したり、東京と福岡を緯度経度であらわしたり、いろいろな方法があるでしょう。
東京からみた福岡の位置は、東京の温度、とは違い、場所の表し方によっていろいろと表現内容が変わってくるかもしれません。
しかし、東京からみた福岡の距離や方向そのものが変化するわけではありませんよね?
東京からみた福岡の方向や距離は座標の取り方に影響をうけないのです。
ベクトルも同じです。
基底の選び方によって、ベクトルの「成分」は変化してしまいます。
が、つまるところ、観察者の視点がかわったために、みための数字が変化しているだけの話です。
「ベクトル」そのものが変化したわけではありません。
ベクトルの成分=みため
です。
なんか、本当に話がくどくてすみません・・・(苦笑)
テンソルだって同じなんです。
テンソルを使って、物理学者がこの世の "何か" をあらわすとします。
この世には、テンソルでしかあらわせないものがあります(注3)。
テンソルを使わないとあらわせないものっていうのは、
たいがいが難しいものなので、
想像するのが難しいのですが、
だから難しい勉強が必要なわけで・・・(汗)
アインシュタインは「空間のエネルギー」をテンソルであらわしました。
なんだ?!それ?
という感じはさておいて、
今、「空間のエネルギー」を測定できたとします。
それを「複数の数字のセット」でうまくあらわすことができたとき・・・
それがテンソルになっていれば、その数字のセットは、ベクトルの成分のようにふるまうわけです。
座標系が変化すると、それにともなって数字がクルクルと変化します。
注意すべき点は、数字が変化したからと言って「空間のエネルギー」そのものが変化しているわけではないということ。
観察者の視点が変化しているために、その変化に応じてテンソルの成分が変化しているだけです。
そうすることによって、「空間のエネルギー」を座標系に依存せずにあらわし続けることができているのです。
いってみれば、テンソルとは、
座標変換に影響をうけずに~"何か"~をあらわし続ける数学的なテクニックです。
この世には、テンソルを使うとうまくあらわせる、何か、があります。
(それがなければ、テンソルなんて、誰も見向きもしなかったでしょう。一部の数学者が何の役にたつのかわからないまま研究する、たんなる数学上の抽象的な題材にすぎなかったと思います)
電磁気力とか、せん断応力とかです。
そういうものを、観察者の視点やスケールや運動に依存せずに、絶対的なものとしてあらわしたい・・・
学者さんにはそういう願望があります。
それを可能にするのがテンソルです。
座標系が変わっても、テンソルの成分(数字)が規則にしたがって変化するだけで、もとになったテンソルがあらわしている"何か"・・・方向や大きさのようなもの・・・は失われないし、変わらないようにしたい。
そういう学者さんの願望が、テンソルを生み出したとも言えます。
スカラーもベクトルも、実はテンソルです。
スカラーを0階のテンソル、ベクトルを1階のテンソルといったりします。
行列のようにみえるのは2階のテンソルです。
その成分の変化のさせ方・・・
そこがテンソルの核心なんです。
空間に浮かぶベクトル
座標で表示することができる
同じベクトルを違う座標からみる
そうすると座標表示が変わる
こういうものをすべてテンソルという
この座標変換を自動計算したい!
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抽象的な話は、うんざり・・・という人のために、すこし具体例をあげながら解説してみます。
次のような4つの数字のセットを考えます。
一見、行列のようにみえます。物理学者が、この4つの数字で"何か"をあらわそうとしています。
それぞれの数字は座標の基底 exεx や、exεyや、eyεx や、eyεy の係数になっています。つまり
||
[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]
です。
今つけた基底によって、この4つの数字は行列ではなくテンソルになったと思います。
ほんとうでしょうか?
その様子をみてみましょう。
まず、座標を変換してみます。たとえば・・・
座標全体が反時計回りに+30度回転すると、このテンソルはどうなるかというと・・・
に、変換されます。
このように、座標変換によって変化する行列=テンソル、です。
座標変換によって、表示が変化するのです。
こういうのを自動計算できるようになるのがテンソルの勉強です。
数字が大きく変わってしまいましたが、物理学者が表現しようとしていた "何か" が変化したわけではありません。
その "何か" を、新しい座標であらわすと、
||
[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]
になります。
座標変換により、基底が、 ex や ey 、εx 、 εy の組み合わせから、e'x や e'y 、 ε'x 、ε'y の組み合わせに変化しましたが、そのパターンは同じです。
なので、基底の変換にあわせて成分を規則的に変化させることができました。
うまく伝わっているかどうかわかりませんが、たとえば、もし、
||
[5ex - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]
みたいに、e と ε の個数があわなかったりしたら(基底の対称性が失われていたら)、こうはうまくいかないのです。
えっと・・・
これの何が便利なのかって?
座標が+30度回ったので(基底が変化したので)、テンソルの成分(数字)が変化してしまいましたが、こうすることによって、物理学者があらわそうとしていた"何か"(物理量)が、座標変換の影響をうけずに維持されたのです。
つまり、
[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]
||
[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]
ってこと・・・
わかるでしょうか?
係数だけとりだして書いてみると・・・
||
となってしまい、ちょっと意味がわからなくなりますが、この、基底の変化にともなう係数の変化・・・
ここらへんがテンソルの真髄なわけで、この醍醐味が理解できなければ、テンソルの勉強は無味乾燥でやってられません。
もう一例考えてみましょう。
たとえば、さきほどのテンソル
||
[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]
は、x軸が+20度(反時計回りに20度)、y軸が-30度(時計回りに30度)に歪んだ座標上では、どう表されるでしょうか?
||
[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80e*yε*x + 6.39e*yε*y]
です(注4)。
数字が変化してしまいましたが、やはり、同じテンソルです。
座標軸が変化したことによって、テンソルの中身(数字、成分、みため)が変わってしまいましたが、4つの数字であらわそうとしている ”何か” (物理量)が変化したわけではありません。
つまり、
[5exεx - 1exεy + 3eyεx + 4eyεy]
||
[5.61e'xε'x - 1.93e'xε'y + 2.06 e'yε'x + 3.38e'yε'y]
||
[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80e*yε*x + 6.39e*yε*y]
です。
これを基底なしで書くと、
||
||
となって、ちょっと意味がわからなくなります。
座標の変化にともなってテンソルの成分が変化するのは、
実は、「基底」が変化していることによる二次的なものです。
つまりテンソルの本質は「基底」のほうにあります。
「基底」の様子がわかってくると、テンソルにだんだんイメージがついてくるようになります。
すると、しだいに成分(数字、みため)に対する興味は消えていき、「基底」の変化が気になりはじめます。
exεx 、exεy 、eyεx、eyεy と ex や ey 、εx や εy の意味が知りたくなってきます。
ベクトルやテンソルのイメージは「基底」と切っても切り離せない関係があります。
直交座標では、「基底」はx方向に1の大きさ、y方向に1の大きさをもつ矢印のようなイメージです。
「基底」を変化させると、何かを不変に保とうとして、テンソルの「成分」(数字、みため)が2次的に変化してしまうんです。
なんだ、そんなことかと思います。
座標軸の変化ではなく「基底」の変化を理解するのが本質です。
いったい、基底 ex 、ey とか、基底 εx 、εy とは何なのでしょうか?
テンソルの基底 exεx 、exεy、eyεx 、eyεy と ベクトルの基底 ex や ey 、εx や εy には、どんな関係があるのでしょう?
具体例で考えましょう。
正規直交座標の「基底」は、
ex =(1,0)
ey =(0,1)
です。
この座標系全体が+30度回った状態というのは、上記の基底が、
e'x =(√3/2,0.50)
e'y =(-0.5,√3/2)
という新しい基底に変換されたということと同義です。
座標系全体が+30度回転した座標系では、この新しい基底が
ex =(1,0)
ey =(0,1)
という新たな直交基底になります。
少し注意してほしいのは、基底はテンソルではなく、動いているという点です。
基底は座標の方についてまわります。
座標が動き、基底がうごく。テンソルの成分(数字、みため)は基底の変化にカウンターをあてるように変わる。その結果、テンソルがあらわそうとしている "何か" は変化しないですむ・・・という感じです。
まぁしかし、座標全体が+30度回っても、直交座標であることにかわりはありません。
しかし、これが斜交座標への変換になると・・・やっかいなことがおこります。
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斜交座標には、「反変基底」や「共変基底」という2種類の「基底」があらわれます。
実は今まで直交座標で基底だと思っていたものは共変基底で、その影に反変基底が隠れていたんだな、って感じです。
直交座標では、反変基底は、まったくみえませんでしたし、意識する必要もありませんでした。
斜交座標では、これを考えなければならず、疲れます。
共変基底、反変基底を具体例でみていきます。
たとえば、x軸が+20度(反時計回りに20度)、y軸がー30度(時計回りに30度)回転すると、直交座標ではなく座標が歪んだ斜交座標になります。
この新しい斜交座標の基底は、
e'x =(0.94,0.34)
e'y =(0.5,0.87)
という共変基底(元の直交座標を利用して表現しています)と、
ε'x =(1.34,-0.78)
ε'y =(-0.53,1.46)
という反変基底です(元の直交座標を利用して表現しています)。
共変基底、反変基底という2種類の基底を使い分けることになります。
すると、
正規直交座標で
||
[1ex + 2ey]
とあらわされていたベクトルは、新しい斜交座標では二つの表示方法が可能になります。
ベクトル
||
[-0.21e'x + 2.39e'y]
という共変基底を基準にした表示と、
||
[1.62ε'x + 2.23ε'y]
という反変基底を基準にした表示です。
同じベクトルを裏表からみたイメージでしょうか。
この2つの表示の内積をとってみると、元のベクトルの内積に一致します。
(-0.21)*(1.62) + (2.39)*(2.23) =5
2*2 + 1*1=5
空間幾何において内積が最も重要なスカラーであることを知っていると、
なるほど、すごいね・・・なんて感じる人もいるかもしれません。
たとえばアインシュタインは光速を内積で表現することによって光速度不変の原理を数式化したわけです。
しかし(でも、それだけのこと?)と思っていると、ここでめちゃくちゃ大切なことがでてきます。
計量テンソルです。
さきほどのベクトル
||
[-0.21e'x + 2.39e'y]
と、ベクトル
||
[1.62ε'x + 2.23ε'y]
の間を結びつけている何かがあります。
この例で言うと、
です。
これを「計量テンソル」といいます。
計量テンソルは
反変表示
↕
計量テンソル
↕
共変表示
のように、
共変基底をもとにしたベクトル表示(反変表示といいます)と、
反変基底をもとにしたベクトル表示(共変表示といいます)の
間を取り持つ仲介役といえます(注5)。
計量テンソルは、共変基底さえわかれば、公式を使って一発で算出できます。
具体例をみてみましょう。
正規直交基底
ex =(1,0)
ey = (0,1)
が、
e'x =(2,1)
e'y =(-0.5,0.25)
という新しい共変基底に変換されると、
ε'x =(0.25,0.5)
ε'y =(-1,2)
という反変基底があらわれます(どちらも元の直交基底をつかってあらわされています)。
この座標変換によって、計量テンソルは、正規直交座標をあらわす
から
に変換されます。また、この座標変換によって、もとの直交座標で
||
[4ex - 1ey]
とあらわされていたベクトルは、新しい座標系では、ベクトル
||
[0.5e'x - 6e'y]
とあらわされることになります。
これを反変表示といいます(反変表示は共変基底をつかってあらわされます)。
新しい反変基底をもとにすると、ベクトル
||
[7ε'x - 2.25ε'y]
になります(共変表示といいます)。
この反変表示
||
[0.5e'x - 6e'y]
と共変表示
||
[7ε'x - 2.25ε'y]
の間を結んでいるのが、計量テンソル
だ、というわけです。
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さて・・・いよいよ話も佳境に入ってきました。
テンソルにはもうひとつ不思議な能力があります。
それは、スカラーやベクトルを生み出す「作用素」(=関数、写像)としての働きです。
わかりにくい話ですが、すごい話です。
どういうことかというと、
テンソルに、スカラーやベクトルなどの数字のセットを掛け合わせて、別の数字や数字のセットをつくったとき、
その、つくられた数字や数字のセットが座標系に依存しない、という話です。
いうなれば、
テンソルにスカラーやベクトルを作用させると異なるスカラーやベクトルが生成される
といえます。
座標系が異なっても、まったく同じものが生成されます。
なんか、伝わっていない気がしますが、すごい話なんです。
どうしてそんなことがおこるのかというと、
まずは、テンソルの成分が、そうなるよう、うまい具合に座標変換されます。
作用素自体(テンソル)が座標系に依存しないんです。
座標系に依存しない「作用素」はめちゃくちゃ役に立ちます。
このあたりは、もう、想像を絶する凄さなのですが、文章ではなかなかうまく伝えることができません。
がんばって具体例で話をしてみます。
たとえば正規直交座標のテンソル
を考えてみます。このテンソルにベクトル
||
[2ex + 3ey]
を掛け合わせると、別の新しいベクトル
||
[7ex + 18ey]
がつくられます。行列にベクトルを掛け合わせただけのようにみえますが、
このプロセスが「座標系に依存しない」という話をしています。
どういうことかというと・・・
とりあえず、百聞は一見し如かず。
上記と同じことをまったく違う座標でやってみましょう。
まず、座標変換してみます。
正規直交座標の
ex =(1,0)
ey = (0,1)
という基底を、
e'x =(2,1)
e'y =(-0.5,0.25)
という共変基底に変換してみます。
すると、正規直交系で先ほど
とあらわされていたテンソルが、新しい座標系では
と表示されることになります(注6)。また、正規直交系のベクトル
||
[2ex + 3ey]
は、新しい座標系ではベクトル
||
[2e'x + 4e'y ]
と表示されます。では、この新しいベクトル
||
[2e'x + 4e'y ]
に新しいテンソル
を掛け合わせてみましょう。すると、新しい別のベクトル
||
[10.75e'x + 29e'y ]
が得られます。このベクトルが、正規直交系のベクトル
||
[2ex + 3ey]
をテンソル
に掛け合わせて生成されたベクトル
||
[7ex + 18ey]
とまったく同じなのだという話をしています。
ほんとうでしょうか?
確かめてみましょう。正規直交系のベクトル
||
[7ex + 18ey]
を新しい座標系で表示してみると、たしかに
||
[10.75e'x + 29e'y ]
という表示になります。つまり、
は、ベクトル(座標系に依存しない存在)に作用して新しいベクトル(座標系に依存しない存在)を生成する能力をもち、かつ、その能力が座標系に依存しません。
このように「座標系に依存しない」能力はテンソルの最大の特徴だと言えます。
「と言えます」・・・などという言い方になるのは、
テンソルとは、そういう数字のセットに付けられた名前ではなく、数字のセットに対する「考え方」とか「テクニック」につけられた名前だと思うからです。
どんな行列でも、整然とした座標変換規則と結びついていれば、それはテンソルである・・・
といえるのではないでしょうか。
文章で説明していると、だんだんわけがわからなくなってきます。
が、いずれにしろ、このように、座標変換にともない適切に成分変化させよう!そうやって物理量を不変に維持しよう!ってのがテンソルの気持ちです。
アインシュタインがテンソルを使って一般相対性理論を完成させたのもそういうモチベーションだったと思います。
テンソルと行列の違いがわかれば、テンソルを使ってみようかな?
という気がしてくると思います。
興味がわいたら専門書を開きましょう。いっぱい添字がでてきて天手古舞するかもしれませんが、しかし、本来、添え字の上げ下げなんて、枝葉末節です(注7)。
(なんて言うと、専門家から怒られますかね・・・汗)
テンソルの定義や壁にぶちあたり、そこで無用に長い時間を消耗するのはもったいないと思います。
テンソルとは何?という状態から1日でも早く脱出し、できるだけテンソルを使いこなす側にまわりたいものです。
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(注1)
基底には「かたち」があります。
どういうことかというと・・・
ベクトルでは、「縦ベクトル」と「横ベクトル」のようにベクトルの「かたち」を区別することがありますよね?
その「縦ベクトル」と「横ベクトル」の基底(ex、ey、εx、εy)は以下のように考えることができます。
この考え方がテンソルの基底に深く関係しています。
ベクトルの基底を考えると「縦ベクトル」と「横ベクトル」の2つのベクトルを区別するのと同様に・・・
テンソルの基底を考えると、4つのテンソルを区別できます。
どういうことかというと・・・
4つの成分をもつテンソルについて、縦基底と横基底の組み合わせを考慮するのです。
すると、以下のように16種類の基底のパターンというか「かたち」を考えることができます。
「横ベクトルが縦に並んだ2x2型」
「縦ベクトルが横に並んだ2x2型」
「縦ベクトルが縦に並んだ4x1型」
「横ベクトルが横に並んだ1x4型」
下付き文字で縦基底、上付き文字で横基底を区別しました。
この基底の「かたち」を踏襲してテンソルを表現すると、全体として以下の4種類のテンソルの「かたち」を区別することができます。
A exεx B exεy |
C eyεx D eyεy |
||
A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy
A εxex
B εxey
|
C εyex
D εyey
|
||
A εxex + B εxey + C εyex + D εyey
A exex
B exey
|
C eyex
D eyey
|
||
A exex + B exey + C eyex + D eyey
A εxεx B εxεy |
C εyεx D εyεy |
||
A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy
上から
(1,1)-テンソル
(1,1)-テンソル
(2,0)-テンソル
(0,2)-テンソル
などともよばれます。
初学者的には、こういうテンソルの「かたち」を丁寧に区別しながら説明してくれる解説がもっとも親切な解説でしょう。
しかし、これらテンソルの「かたち」をいちいち絵的に区別して表現するのはなかなか煩雑です。
なので、基底を区別したうえで、以下のように2x2型で表記してしまうのがふつうです。
||
A (xx) + B (xy) + C (yx) + D (yy)
くわしく基底をつけてみると・・・
(1,1)-テンソル
A (exεx) |
B (exεy) |
C (eyεx) |
D (eyεy) |
||
A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy
(1,1)-テンソル
A (εxex) |
B (εxey) |
C (εyex) |
D (εyey) |
||
A εxex + B εxey + C εyex + D εyey
(2,0)-テンソル
A (exex) |
B (exey) |
C (eyex) |
D (eyey) |
||
A exex + B exey + C eyex + D eyey
(0,2)-テンソル
A (εxεx) |
B (εxεy) |
C (εyεx) |
D (εyεy) |
||
A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy
です。
一見、どれも同じ
にみえます。
が、基底さえ併記しておけば、もともとのテンソルの「かたち」はわかる人にはわかるはずなので(例えばこの注1を一度でも読んだ人には)、それでいいのです。
まとめてみると(理解できた方には、くどいかもしれませんが)・・・
(1,1)-テンソル
A (exεx) |
B (exεy) |
C (eyεx) |
D (eyεy) |
||
A exεx + B exεy + C eyεx + D eyεy
||
A exεx B exεy |
C eyεx D eyεy |
(1,1)-テンソル
A (εxex) |
B (εxey) |
C (εyex) |
D (εyey) |
||
A εxex + B εxey + C εyex + D εyey
||
A εxex
B εxey
|
C εyex
D εyey
|
(2,0)-テンソル
A (exex) |
B (exey) |
C (eyex) |
D (eyey) |
||
A exex + B exey + C eyex + D eyey
||
A exex
B exey
|
C eyex
D eyey
|
(0,2)-テンソル
A (εxεx) |
B (εxεy) |
C (εyεx) |
D (εyεy) |
||
A εxεx + B εxεy + C εyεx + D εyεy
||
A εxεx B εxεy |
C εyεx D εyεy |
ってことです。
つまり、よくよく考えれば、(1,1)-テンソルであろうと(2,0)-テンソルであろうと、(0,2)-テンソルであろうと、4種類の基底パターン
e ε
ε e
e e
ε ε
さえわかれば、 テンソルの形を無視して、すべて
とあらわしていいことになります。
要するに(A、B、C、D)という4つの数字のセットがテンソルになっている場合、
A の基底は 〇x〇x
B の基底は 〇x〇y
C の基底は 〇y〇x
D の基底は 〇y〇y
と勝手に判断してよいのです。つまり、
A 〇x〇x + B 〇x〇y + C 〇y〇x + D 〇y〇y
です。
かつ、基底のパターンさえ示せば、それを
と表記していいのです。
逆に言うと、たとえば、あるテンソルが
と表記されていたとき、
その基底パターンが
ε e パターン
であれば、テンソルは
5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey
だし、すると、そのテンソルの形は、自動的に
と決まります。
しかし、一見、同じように表記されているテンソル
でも、その基底が
ε ε パターン
であれば、テンソルは
5 εxεx - 1 εxεy + 3 εyεx + 4 εyεy
で、そのテンソルの形は、
です。
こういうことが慣れた人の目には自明なのです。
つまり
は、ただの行列ですが、そこに基底がつくとテンソルになるというのは、そういうことです。
よく考えたら、ベクトルだって同じですよね。
基底がついていない
は行列ですが、ベクトルには基底がついています。
基底を意識すると、
2 εx + 3 εy
||
2 ex + 3 ey
||
です。
基底が ε なのか e なのかさえわかれば、いちいち「縦ベクトル」なのか「横ベクトル」なのかを絵で描かなくてもわかる人にはわかります。
専門書は、その「かたち」を絵的には区別してくれません。
しかも、場合によっては、ε も e も、どちらも e とあらわしたりします。
では専門家はどうやって2種類の基底の違いを判別しているのかというと、"添字"の位置です。
添字のパターン(上とか下とか)が基底のパターン(ε とか e とか)と1対1で対応しているので、"添字"の位置(上付きか下付きか)で、ε か e かわかります。
添字に慣れないうちは
ex とか ey
など、基底の右上に添字がついていたら εx と εy
ex とか ey
など、基底の右下に添字がついていたら ex と ey
などと、読み替えると専門書を理解しやすくなると思います。
さらに、多くの専門書では、添字を用いる場合、もはや基底そのものを省いて表記します。
この場合、
3y = 3 εy
2x = 2 ex
5xx = 5 exex
-1xy = -1 exεy
3y 10x = 30yx = 30 εyex
です。
つまり、
(2x , 3y)
||
(2x , 3y)
||
です。添字さえあれば、形を区別するのに ε も e も不要です。
ただし、成分につく添字の上下は、基底につく添字の上下と、一見、反対になりますので注意しましょう。
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(注2)
たとえば、
A ex + B ey
C εx + D εy
という2つのベクトルがあるとします。つまり、
基底 ex の係数 = A
基底 ey の係数 = B
基底 εx の係数 = C
基底 εy の係数 = D
です。
この二つのベクトルから
無理やり exεx、exεy、eyεx、eyεy
という基底をもつテンソルをつくろうとおもえば、その係数は・・・
基底 exεx の係数 = AC
基底 exεy の係数 = AD
基底 eyεx の係数 = BC
基底 eyεy の係数 = BD
になります。
つまり、そのテンソルは
(AC、AD、BC、BD)
||
(AC exεx、AD exεy、BC eyεx、BD eyεy)
||
AC exεx + AD exεy + BC eyεx + BD eyεy
です。
なので、逆から考えると、
5、ー1、3、4
というテンソル成分を考えるということは、たとえば
5exεx、ー1exεy、3eyεx、4eyεy
を考えることであり、すなわち
AC = 5
AD = -1
BC= 3
BD = 4
となるA, B, C, Dを考えている、ということです。
しかし、念のため言っておきますが、そういうA、B、C、Dはありません。
連立方程式は解けないのです。
にもかかわらず・・・
それが存在すると考えることによって、どういうわけか(AC, AD, BC, BD)=(5,-1,3,4)の座標変換が可能になるのです。
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(注3)
たとえば、ベクトル
は、x方向に1つの成分、y方向にも1つの成分を含む物理量です。
では、x方向に2つの成分、y方向にも2つの成分を含む物理量はどうあらわしたらいいでしょうか?
たとえばx方向に
という成分、y方向に
という成分を持つ物理量です。
こういう成分をどうあらわしたらいいでしょうか?
これを・・・まるで
をひとつの成分とみなし、
もひとつの成分とみなし、
それぞれを横ベクトルのように横に並べてみて
と、あらわしてみたらどうだろうか?
こういうアイデアがテンソルの源流にあると思います。
基底をつけてみると・・・
||
5 ex -1 ey
||
3 ex + 4 ey
ですよね?これを無理やり横に並べてみると
||
(5,-1) εx + (3,4) εy
となります。
これを展開すると、
(5,-1) εx + (3,4) εy
||
(5 ex -1 ey )εx +(3 ex + 4 ey )εy
||
5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey
||
5 εxex -1 εxey |
3 εyex 4 εyey |
です。
基底のセット
に対応するテンソルはこうして作られます。
しかし、このテンソルをいちいち
5 εxex -1 εxey |
3 εyex 4 εyey |
みたいな絵にするのはムダです。
基底のパターンさえきちんと記載しておけば何ら問題はありません。
||
5 εxex - 1 εxey + 3 εyex + 4 εyey
です。
専門家は添字というテクニックを使ってこれらを巧みに区別します。
なんか、めんどくさい作法だなぁ、ふ~んって感じかもしれません。
が、このようにあらわすと、何かとうまく表現できる物理量があるんです。
たとえば、ある座標系で、x方向に(5,-1,2)、y方向に(3,4,1),z方向に(2,-3,5)みたいな物理量を、とりあえず
のようにあらわすわけです。
これだけをみた人は、縦にみるのか横にみるのかわかりませんが、
もし基底のパターンが
εe パターン
であるとわかると、
5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez + 2εzex -3εzey + 5εzez
と、決まります。
||
5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez + 2εzex -3εzey + 5εzez
||
です。
ステップをひとつひとつ説明すると、
||
5ex -1ey + 2ez
||
3ex + 4ey + 1ez
||
2ex -3ey + 5ez
という3つの「縦ベクトル」を3つの数字とみなし「横ベクトル」をつくります。縦ベクトルの基底を(ex、ey、ez)、横ベクトルの基底を(εx、εy、εz)とします。すると・・・
||
(5 ,-1,2)εx + (3,4,1)εy + (2,-3,5)εz
||
(5ex ,-1ey ,2ez)εx + (3ex ,4ey ,1ez)εy + (2ex ,-3ey ,5ez)εz
||
(5ex -1ey + 2ez)εx + (3ex + 4ey + 1ez)εy + (2ex -3ey + 5ez)εz
||
(5εxex -1εxey + 2εxez) + (3εyex + 4εyey + 1εyez) + (2εzex -3εzey + 5εzez)
||
5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez + 2εzex -3εzey + 5εzez
になりますよね?これを・・・
||
5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez + 2εzex -3εzey + 5εzez
とあらわすわけです。
もし、基底の情報がなく
とだけしかわからなければ
5exεx -1exεy + 2ex εz + 3eyεx + 4eyεy + 1eyεz + 2ezεx -3ezεy + 5ezεz
||
なのか
5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez + 2εzex -3εzey + 5εzez
||
なのか
5exex -1exey + 2exez + 3eyex + 4eyey + 1eyez + 2ezex -3ezey + 5ezez
||
なのか
5εxεx -1εxεy + 2εxεz + 3εyεx + 4εyεy + 1εyεz + 2εzεx -3εzεy + 5εzεz
||
なのか・・・
それ以上は、わからないわけです。
でも、その基底の組み合わせが「 ε e パターン」だとわかれば、その正体は
5εxex -1εxey + 2εxez + 3εyex + 4εyey + 1εyez + 2εzex -3εzey + 5εzez
||
だな・・・
ということがわかり、x方向に(5,-1,2)、y方向に(3,4,1)、z方向に(2,-3,5)みたいな物理量かな・・・と考えることができます。
慣れないうちは、ひとつの方向に複数の成分を考えるのは難しいかもしれません。
しかし、それがテンソルの絵的なイメージの源流にあると思います。
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(注4)
実はこのとき、
||
[2.61e*xε*x - 1.66e*xε*y + 3.80 e*yε*x + 6.39e*yε*y]
の他に、もうひとつ、
||
[7.40ε*xe*x - 2.42ε*xe*y + 4.56ε*ye*x + 1.62ε*ye*y]
というテンソルができています。というか、このふたつのテンソルは、表示が違うだけでどちらも同じテンソルです。同じテンソルに2種類の表示ができてしまうのです。
斜交座標ではこういうことがおこります。
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(注5)
斜交座標では、共変基底と反変基底がでてきて非常に面倒なのですが、共変基底による成分表示を一発で反変基底による成分表示に変換する便利な行列関数があります。それが計量テンソルです。共変基底や座標軸の傾き情報が与えられると、計量テンソルは一発で計算できます。
たとえば、x軸から30度、y軸から30度歪んだ座標系の計量テンソルは、
です。この計量テンソルをつかえば、共変基底による成分表示から反変基底による成分表示に一発で変換できます。計量テンソルは、このように何か間をとりもつ関数みたいなものですが、実は、計量テンソルこそが座標の性質のすべてを決める主役なのです。
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(注6)
注4で述べた理由と同じ理由により、テンソル
は、同時に
とも表示できます。見た目が違いますが、どちらも同じテンソルです。
両者を基底をつけてあらわすと、
||
[7.25e'xε'x - 0.94e'xε'y + 11e'yε'x + 1.75e'yε'y]
と
||
[4.25ε'xe'x - 9ε'xe'y + 0.31ε'ye'x + 4.75ε'ye'y]
です。このテンソル
に、ベクトル
||
[2e'x + 4e'y]
の共変表示
||
[7ε'x - 0.25ε'y]
を掛け合わせると、ベクトル
||
[32ε'x + 1ε'y]
が得られます。本文中のベクトル
||
[10.75e'x + 29e'y]
の共変表示は
||
[32ε'x + 1ε'y]
です。すごいですよね。
このあたりが理解できてくると、テンソルに何ができるのか?
がみえてくると思います。
そういうことを可能にするのがテンソルです。
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(注7)
座標上の2つのベクトルを比べるとき、もし両者の基底ベクトルが同じなら、成分の違いはベクトルの違いを意味します。しかし、極座標基底のように座標ごとに基底ベクトルが異なる場合には、成分の違いが必ずしもベクトルの違いをあらわしているとは限りません(極座標基底によるベクトル表示については ⇒ こちら)
そのため、異なる基底ベクトルをもつ2つのベクトルを比較するときは、基底の違いを補正する必要があります。その係数が補正係数クリストッフェルです。これによって正味の成分変化を知ることができるようになります。
たとえば、直交座標で点(2,1)を起点とするベクトル
と、直交座標で点(3,2)を起点とするベクトル
は、両方とも同じ大きさと方向をもつベクトルであることが一目瞭然です。
これは、直交座標上の点(2,1)と点(3,2)では、どちらも、基底が
ex =(1,0)
ey =(0,1)
であるために、成分が素直にベクトルの違いを反映するためです。
しかし、極座標では、直交座標上の点(2,1)は点(2.24,0.46)とあらわされ、その基底ベクトルは、
e'x =(0.89, 0.45)
e'y =(-1, 2)
です。
また、直交座標の点(3,2)は、極座標では点(3.61,0.59)であり、その基底は、
e'x =(0.83, 0.56)
e'y =(-2, 3)
になります。
このように極座標では局所局所によって、基底ベクトルが異なります。
(極座標基底によるベクトル表示については ⇒ こちら)
これがベクトルの比較を非常に難しくします。
直交座標で点(2,1)を起点とするベクトル
||
[1ex + 1ey]
は、極座標からは、点(2.24,0.46)を起点とするベクトル
||
[1.34e'x + 0.20e'y]
にみえ、
直交座標で点(3,2)を起点とするベクトル
||
[1ex + 1ey]
は、極座標からは、点(3.61,0.59)を起点とするベクトル
||
[1.39e'x + 0.08e'y]
にみえます。
直交座標では同じ大きさと方向をもつことが一目瞭然である2つのベクトル
||
[1ex + 1ey]
が、極座標であらわされると、
||
[1.34e'x + 0.20e'y]
とか、
||
[1.39e'x + 0.08e'y]
のように、成分のみためがぜんぜん違うベクトルのような表現になってしまいます。
しかし、ほんとうは、これらは同じ大きさ、同じ方向をもつベクトルなのです。
極座標では局所局所によって基底が変化してしまうため、このような事態がおこります。
この基底の変化を補正し、ベクトルの比較を容易にするのが共変微分です。
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(注8)
座標の1点1点に値(スカラー)が設定されているものをスカラー場といいます。
点 =「数字が入っている箱」と考えるとこんな感じです。
スカラー場のある1点から上下左右をみると、上下左右に違う数字がみえます。
その上下の差と左右の差を1組にして数字のセットとすると、1点1点ごとに、1組の数字のセットを設定することができます。
このように、1点に1組の数字のセットが設定されている・・・それをベクトル場といいます。
スカラー分布が滑らかで微分可能な時、スカラー場を微分するとベクトル場になります。
つぎに、あるベクトル場の1点(スカラー場の1点ともいえます)から上下左右をながめると、上下左右に違うベクトルがみえます。
その上下の差と左右の差を数字のセットとして、1点1点ごとに、上下左右のベクトルの差を意味する数字のセットを設定します。
すると、テンソル場になります。
ベクトル分布が滑らかで微分可能な時、ベクトル場を微分するとテンソル場になります。
(注9)
テンソルって何?という質問に対し、2つのベクトルを「ある特殊な掛け算」で掛け合わせてできたものだ!というきわめて抽象的な定義があります。
初めて聞いた人にはまったく意味不明・・・最悪中の最悪な定義でしょう。
けれども、これがもっとも恣意性のないテンソルの定義のような気がします。
テンソルを2つのベクトルの積からつくるのですが、内積でも外積でもありません。普通の積じゃないのです。
その特殊な掛け算を「テンソル積」といいます(計算式⊗)。
いいかえるとテンソルとはテンソル積(計算式⊗)という特殊な計算で造られた数字の組み合わせです。
テンソル積(計算式⊗)は、行列積と同じ?と思われることがありますが全然違います。
できあがったテンソルは、まるで行列と区別がつきません。行列同士との掛け算や和算など計算の仕方やルールなども、まるで行列です。
しかし、テンソル積(計算式⊗)は、ベクトルや行列で使われる、よくあるルールとは全く違った計算です。
よくよく注意してください。大事なところなので繰り返します。特殊な計算です。
特殊な計算・・・とは言っても、計算は極めて機械的で、ベクトルの成分をそれぞれ全部掛け合わせるだけ。
数字だけをみると、直積と同じです。
直積と違うのは「基底」を伴っている点です。
テンソル積(計算式⊗)の概念を無理やり図示してみると下記のようになります。成分の「1」はベクトルの第一成分、成分の「2」はベクトルの第二成分です。
「縦ベクトル」⊗「横ベクトル」
(1,1)-テンソル
「横ベクトル」⊗「縦ベクトル」
(1,1)-テンソル
「縦ベクトル」⊗「縦ベクトル」
(2,0)-テンソル
「横ベクトル」⊗「横ベクトル」
(0,2)-テンソル
内積とも外積とも違いますよね?行列積ともまったく違います。ベクトルのふたつの成分同士をすべてかけ合わせて4つの数字をつくります。つまり、できあがる数字のセットは直積と同じです。しかし直積と違って、来上がった数字に基底の「かたち」(縦ベクトルか横ベクトルか・・・)が関連付けされます。
このように、もとになるベクトルが「縦ベクトル」か「横ベクトル」かを区別することによって、2つのベクトルから「テンソル積」によって4種類のテンソルが造られます。
専門家は「縦ベクトル」とか「横ベクトル」とか「かたち」などという野暮な表現を使いません。これらを添字で区別します。
(「縦ベクトル」と「横ベクトル」ではなく、共変ベクトル、反変ベクトルと言うことがあります・・・)
そもそも「縦ベクトル」と「横ベクトル」を区別して考えることができるなら、添字を使う必要はないんです・・・
できあがったテンソルをみると、最初に投入された2つのベクトルの縦横の違いによって、できあがったテンソルの「4つの成分」の並び方というか、基底の絡み方というか、テンソルの形に、4つのパターンが生じており、上から、
(1,1)-テンソル
(1,1)-テンソル
(2,0)-テンソル
(0,2)-テンソル
などともよばれます。
できあがったテンソルのカッコの中にもう一つかっこがあります。1つのかっこを1つの成分とみなせば、できあがったテンソルは、2つのベクトルを成分にもつベクトルとも言えます(ベクトル in ベクトル)。
(この「ベクトル in ベクトル」を専門用語で、区分行列とかブロック行列とか言うようです)
4つのテンソルをよ〜くみると、
「横ベクトルが縦に並んだテンソル」
「縦ベクトルが横に並んだテンソル」
「縦ベクトルが縦に並んだテンソル」
「横ベクトルが横に並んだテンソル」
になっていることがわかると思います。
上の図では、添字がに慣れてない人のために、添字をつかわず、「縦ベクトル」や「横ベクトル」を区別しながら、入れ子構造になったベクトルの並び方によってこの4つのパターンの違いを表現しましたが、専門家はこの4つの「かたち」を、すべて2x2行列で表現し、"添字" を使って区別します。
添字を使ったテンソルは、添字がふえていけばいくほど高階(立体的→4次元的→・・・)になっていきます。
「ベクトル in ベクトル」を使ったテンソルは、2次元的に展開できるスペースさえ与えられれば高階のテンソルをいくらでも紙上に図示できます。
そんな紙面の無駄を数学者や物理学者が好むはずもなく・・・
どの専門書もすべて同じ(2x2)形式であらわされ、「かたち」の違いは添字で区別する流儀です。
なので、初学者にはとてもわかりにくい。
非常に大事な4つの「かたち」を、みづらいほど小さな「添字」を使って区別する・・・
数学とは、わかる人だけついてこい、という冷たい学問であることを痛感する一例です。
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