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2021年2月19日 (金)

たぶんこの世で3番目ぐらいにやさしいテンソルの話 ~具体例をみてみる編~

テンソルの解説では、めったにみない具体例なテンソルの作り方を解説します。もしかしたらこんな解説、世界初かも?(苦笑)

さすがにテンソルを作るだけではあっという間に話が終わってしまいますので、ほんとにそれ テンソル?

というところまで踏み込んでみたいと思います。

ちなみに、本記事で扱うテンソルは、基本中の基本、2階のテンソルです。

 

なんでこんな解説を試みたのかというと・・・「テンソルの具体的な作り方」とか「ほんとに、それテンソル?」という解説を読むことによって「テンソルとは何か?」を感じることができるのでは?と思ったからです。

ステップ1〜15にわけました vヾ(´∀`○)ノ♪



ステップ1

次のような2つのベクトル(V1とV2)を用意します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor20.png

ベクトルV1

2 3

ベクトルV2

6 -1

このベクトルV1とV2からテンソルをつくりましょう。

単に成分同士を掛け合わせるだけです(テンソル積)。

すると・・・

12 -2
18 -3

という数字のセットができます。

めでたくテンソルができました(注1)。

テンソルって、実はこれだけの事なんですけど。

 

しかしこれ、ほんとうにテンソルなんでしょうか?

これがテンソルかどうか、どうすれば確かめることができるのでしょう?

それを確かめるために・・・

 


ステップ2

まず、正規直交座標を「斜交座標1」に変換します。

初学者は「え?」と思うかもしれませんが、これがテンソル解説の常套手段です。

ここでは、新しい斜交座標1を以下のように設定してみましょう。

正規直交座標

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor22.png

斜交座標1

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor23.png

ちなみに、正規直交座標の基底ベクトルを(1,0)と(0,1)とすると、この斜交座標1の基底ベクトルは(2,1)および(-0.5,0.25)です。

そのような新しい斜交座標1を設定してみました。

座標軸が動いても「ベクトルは動かない」というのがベクトルの大原則です。

ですから、この座標軸の変化によって・・・ベクトルV1とV2の「成分」が変化します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor20_20210725002001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor21_20210725002001.png

どのように変化するかというと、ベクトルの座標変換公式にしたがって・・・

ベクトルV1については、

反変表示は

2 4

共変表示は

7 -0.25

に変換されます。

反変表示、共変表示がよくわからないという人はこちらをご覧ください ⇒ 【図解】共変ベクトル・反変ベクトル

わからなくても大丈夫です。

斜交座標では、ベクトルに2種類の表示があるんだな・・・と思ってもらえば、本記事ではことたります。

 

同様に、ベクトルV2については、

反変表示は

1 -8

共変表示は

11 -3.25

に変換されます。

 

ーーーーー(自分用メモ)ーーーーー

正規直交座標から斜交座標1へベクトルの成分変換を担う変換行列は以下の通り(公式)。

共変成分の変換行列(基底ベクトルを横に並べたもの)

2 1
-0.5 0.25

反変成分の変換行列(上の行列を転置した行列の逆行列)

0.25 0.5
-1 2

 

もとの正規直交座標系の計量テンソルを

1 0
0 1

とすると、斜交座標1の計量テンソルは

5 -0.75
-0.75 0.3125

と決まる(公式(余談2と3参照))。計量テンソルはベクトルの反変表示と共変表示を入れ替える。

 


ステップ3

さて。ステップ2で得られた、ベクトルV1とV2の新しい座標での表示を、以下に再掲します。

ベクトルV1

反変表示

2 4

共変表示

7 -0.25

 

ベクトルV2

反変表示

1 -8

共変表示

11 -3.25

では、これらベクトルV1とV2からもテンソルをつくってみましょう。

なんで?ときかないでください。すべての学生がここを通ります。

テンソルを作るのは簡単で、単に成分同士を掛け合わせるだけです(テンソル積)。

ベクトルの組み合わせによって、以下の4つのテンソル(数字のセット)がつくられます。

1.反変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

2.反変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

3.共変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

4.共変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

4種類のテンソルV12が造られました。

ステップ1ではふたつのベクトルから1つのテンソルしかできませんでしたが、今回は、2つのベクトルから4つのテンソルがつくられました。

でも、この4つの数字のセット・・・ほんとうにテンソルなんでしょうか?

どうすればそれを確かめることができるでしょう?

それを確かめるために・・・

 


ステップ4

さらに新しい「斜交座標2」を設定します。

「え~!?また!?」と言わないでください。めんどくさいのですが、こうするのが常套手段なんです。

ここでは、斜交座標1の基底ベクトルを(1,0)と(0,1)とすると、新しい座標ではその基底ベクトルが(2,1)および(1,3)となるような、そんな斜交座標2を設定してみました。

斜交座標1

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor23.png

斜交座標2

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor24_20210725014501.png

すると・・・またまたベクトルV1とV2の「成分」が変化します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor21_20210725002001.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/tensor25_20210725014501.png

どのように変化するかというと、ベクトルの座標変換公式(後述)にしたがって・・・

ベクトルV1の反変表示は

0.4 1.2

共変表示は

13.75 6.25

に変換されます。

 

ベクトルV2も、その反変表示は

2.2 -3.4

共変表示は

18.75 1.25

に変換されます。

 

ーーーーー(自分用メモ)ーーーーー

斜交座標1から斜交座標2へのベクトルの成分変換を担う変換行列は以下の通り(公式)。

共変成分の変換行列(基底ベクトルを横に並べたもの)

2 1
1 3

反変成分の変換行列(上の行列を転置した行列の逆行列)

0.6 -0.2
-0.2 0.4

 

斜交座標1の計量テンソルを

1 0
0 1

とすると、

斜交座標2の計量テンソルは

5 5
5 10

である(公式(余談2と3参照))。計量テンソルは、ベクトルの反変表示と共変表示を入れ替える。

 


ステップ5

さて、この新しく表示されたベクトルV1とベクトルV2から、さらに新しいテンソル(新)をつくってみましょう。

文句を言わず・・・(苦笑)

 

つくり方は成分同士を単に掛け合わせるだけ(テンソル積)です。

1.反変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

2.反変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた反変共変テンソルV12(新)

7.5 -0.5
22.5 1.5

3.共変ベクトルV1と反変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変反変テンソルV12(新)

30.25 -46.75
13.75 13.75

4.共変ベクトルV1と共変ベクトルV2のテンソル積によって造られた共変共変テンソルV12(新)

257.8125 17.1875
117.1875 7.8125

4種類のテンソルV12(新)ができました。

さぁ、これで準備完了です!

 


ステップ6

考察です。

ステップ3(斜交座標1)でつくられた4種類のテンソルV12と、ステップ5(斜交座標2)でつくられた4種類のテンソルV12(新)を比較します。

成分を一つ一つ比較するなんてめんどくさいですが、ここはテンソルの勉強をしている人の全てが通る道です(賢い人は抽象的に一瞬で比較してしまいます・・・)。

 

わかりやすくするため、サービス(再掲)しましょう。

ステップ3(斜交座標1)でベクトルV1とV2からつくられた4種類のテンソルV12を再掲します。

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

 

ステップ5(斜交座標2)でつくられた4種類のテンソルV12(新)を再掲します。

反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

反変共変テンソルV12(新)

7.5 -0.5
22.5 1.5

共変反変テンソルV12(新)

30.25 -46.75
13.75 13.75

共変共変テンソルV12(新)

257.8125 17.1875
117.1875 7.8125

これらを比較します。

まず、一見してわかると思いますが、ずいぶん成分が違ってみえます。

 

しかし、元はと言えば、どちらも同じベクトル(V1とV2)からつくられたものです。

なので、もし、ステップ3で造られたテンソルV12と、ステップ5で造られたテンソルV12(新)が両者ともほんとうにテンソルであれば、それぞれの成分の間に「座標変換にともなう成分変換式」が存在するはずです。

ベクトルに「座標変換にともなう成分変換式」があるのと同じ理屈です。

あたりまえと言えばあたりまえのような・・・しかし、ここがテンソル理解の鍵です。

座標変換にともなう成分の変換式。その存在をもって、テンソルであることを証明するのです。

そもそも、そういう変換式に従って成分が変換される数字のセットのことをテンソルとかベクトルという、という定義もあるぐらいですから。

変換式が存在しなければ、ステップ3(斜交座標1)でつくられた

4種類のテンソルV12

と、ステップ5(斜交座標2)でつくられた

4種類のテンソルV12(新)

は、テンソルではありません。

 

で・・・

結論はどうなのかというと、

変換式はあります。

その変換式とは以下のようなものです。

反変反変テンソルV12 を 反変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

反変共変テンソルV12 を 反変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

共変反変テンソルV12 を 共変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式3

1.2 -0.4 0.6 -0.2
-0.4 0.8 -0.2 0.4
0.6 -0.2 1.8 -0.6
-0.2 0.4 -0.6 1.2

共変共変テンソルV12 を 共変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

 

しかし、この変換式によって、本当にテンソルV12の成分がテンソルV12(新)に変換されるのでしょうか?

検証してみます。

ここでは、まず一例として、ステップ3(斜交座標1)で造られた反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

を、変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

に掛け合わせてみましょう(え?どう掛け合わせるの?という人は注1参照)。

すると・・・

0.88 -11.36
2.64 -4.08

という数字のセットが得られます。

この数字のセットは、スッテプ5(斜交座標2)で造られた反変反変テンソルV12(新)

0.88 -11.36
2.64 -4.08

と見事に一致していますよね?

これは偶然ではありません。

反変反変テンソル以外のテンソルV12(反変共変テンソル、共変反変テンソル、共変共変テンソル)でもこうなります。

すなわち、テンソルV12 はたしかにテンソルなのです。

念のため言っておきますが、上記の4つの変換式は、テンソルV12の変換のために都合よくつくられたのではありません(変換式の作り方は注2を参照してください)。

これらの変換式は、斜交座標1のどんなテンソルでも斜交座標2のテンソルに変換してしまいます。

信じられない人は自分でベクトルを2つ用意して試してみてください。

試したくない人は・・・信じるしかありません(苦笑)。

 

テンソルの定義は、

1.テンソル積で造られたもの

2.変換式で変換できるもの

3.ベクトルに作用させるとベクトルをつくるもの

の3つがありますが、このようにテンソル積で造られたもの(1)は必ず変換式で変換できます(2)。

ここへんを少し詳しくみたい人はこちらをご参照ください ⇒ たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ゆる~く計算してみる編~

 

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ステップ7

さて、斜交座標1で造られたテンソルV12と斜交座標2で造られたテンソルV12(新)の間に変換式が存在することが確認されましたが、テンソルの変換式は、当然、正規直交座標と斜交座標1の間にも存在します。それは以下の通りです。

 

反変反変テンソルを反変反変テンソルに変換する

変換式1

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

反変共変テンソルを反変共変テンソルに変換する

変換式2

0.5 0.25 1 0.5
-0.125 0.0625 -0.25 0.125
-2 -1 4 2
0.5 -0.25 -1 0.5

共変反変テンソルを共変反変テンソルに変換する

変換式3

0.5 1 0.25 0.5
-2 4 -1 2
-0.125 -0.25 0.0625 0.125
0.5 -1 -0.25 0.5

共変共変テンソルを共変共変テンソルに変換する

変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

変換式のつくりかたについては(注3)をご参照ください。

 

では、これらの変換式がほんとうに正規直交座標でつくられたテンソルにうまく作用するのかどうか、確認してみましょう。

ステップ1でいちばん最初に用意したベクトルV1とベクトル2

ベクトルV1

2 3

ベクトルV2

6 -1

からつくられたテンソル

12 -2
18 -3

と、これらの変換式1~4を掛け合わせてみます。

すると、以下の4種類の数字のセットが得られます。

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

これらが、ステップ3(斜交座標1)でベクトルV1とV2からつくられた4種類のテンソルV12(下記)とまったく同じであることを確認してください。

反変反変テンソルV12

2 -16
4 -32

反変共変テンソルV12

22 -6.5
44 -13

共変反変テンソルV12

77 -22.75
-2.75 0.8125

共変共変テンソルV12

7 -56
-0.25 2

 

何が言いたいのかと言うと、正規直交座標で造られたテンソルV12

12 -2
18 -3

は1つにみえましたが、実は、

反変反変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもあり

反変共変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもあり

共変反変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもあり

共変共変テンソルV12

12 -2
18 -3

でもある・・・成分がまったく同じな4つのテンソルだったのです。

どれも成分が同じなので1つにみえていただけです。   

 


ステップ8

さて。

ここで、少し頭をリフレッシュし、いったん正規直交座標に戻ります。

そして、適当な4つの数字のセットを用意しましょう。

たとえば

4 -1
5 3

のような数字のセットです。

まったくランダムな数字のセットです。

 

これをテンソルT1とします。

えっと・・・しかし、これ、ほんとうにテンソルなんでしょうか?

それを確かめるためには、どうしたらいいでしょう?

一番簡単なのは、このテンソルT1のもとになっている2つのベクトルを見つけることですよね?

これまでの考察で、「2つのベクトルから(テンソル積によって)造られた数字のセットはテンソルである」ことがわかっているのですから。

テンソルT1の元になっている2つのベクトルが見つかれば、テンソルT1はテンソルだと言えます。

しかし、このテンソルT1は、どうやっても2つのベクトルに分解できません。

ランダムな数字のセットは、2つのベクトルに分解できるとは限らないのです。

そのようなランダムな数字のセットの場合、それがテンソルであるかどうか(テンソルとしてふるまうかどうか)、どうすればわかるのでしょう?

ヒントを先に言ってしまうと・・・

テンソルT1の成分が、ステップ7の変換式1~4によって斜交座標1のテンソルに「適切」に変換されれば、テンソルT1はテンソルだと言えそうです。

しかし、その成分変換が「適切」かどうか・・・どうやったらわかるのでしょうか?

そのための準備として・・・

 


ステップ9

正規直交座標で用意されたテンソルT1

4 -1
5 3

に、ベクトルV1(どんなベクトルでもOKです・・・)

2 3

を掛け合わせてみます。

すると・・・

5 19

という新しいベクトルが作られます。これを、べクトルV3とします。

今やったことは、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

という、なんてことない計算です。

 

なんでこんなことをしたのか?というと・・・

この計算

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

が、異なる座標系でも成り立つか?

を気にしています。

もし座標系の違いを超えて成り立てば、テンソルT1

4 -1
5 3

はたしかにテンソルであると言えるのです。

なぜかというと・・・

座標系が変化するとベクトルV1とベクトルV3の成分表示は「適切」に変化するはずですよね。ベクトルなのですから。

ならば、座標系が変化しても

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

が常に成り立つ条件は何か?という話です。

当然ですが、テンソルT1の成分表示が「適切」に変化しなければ成り立つはずがありません。

なので、もし

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

という関係が座標系に依存せず常に成り立つなら、

テンソルT1の成分は、座標変換にともない「適切」に変換されている、

つまり、テンソルT1はテンソルといえる、というわけです。

くどくど言う前にやってみましょう。

 


ステップ10

まず、正規直交座標をステップ2で使用した「斜交座標1」に変換してみます。

すると・・・

正規直交座標のベクトルV1の表示は

2 3

は反変表示

2 4

と共変表示

7 -0.25

に変換されます。

 

正規直交座標のベクトルV3の表示は

5 19

は反変表示

10.75 33

と共変表示

29 2.25

に変換されます。

 


ステップ11

次に、正規直交座標に用意されたテンソルT1

4 -1
5 3

に、ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4を掛け合わせてみたいと思います。

しかし・・・

このテンソルT1はいったい何テンソルなんでしょう?

成分変換式1~4のどの変換式を作用させればいいのでしょう?

 

結論から言うと、テンソルT1

4 -1
5 3

は、反変反変テンソルでもあり、反変共変テンソルでもあり、共変反変テンソルでもあり、共変共変テンソルでもあります。

正規直交座標では、それらを区別する必要がありません。

なので、テンソルT1

4 -1
5 3

には、ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4のすべてを作用させる(掛け合わせる)ことができ、その結果、テンソルT1は斜交座標1では下記の4種類のテンソルとして表すことができます。

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

斜交座標1に座標変換された4種類のテンソルT1が得られました。

しかし、この4種類のテンソルT1は「適切」に変換されているのでしょうか?

確認してみます・・・

 


ステップ12

面白いことに、斜交座標1の

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

に作用させると

10.75 33

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の反変表示です。

 

ベクトルV1の反変表示

2 4

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

に作用させると

10.75 33

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の反変表示です。

 

ベクトルV1の共変表示

7 -0.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

に作用させると

29 2.25

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の共変表示です。

 

ベクトルV1の反変表示

2 4

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

に作用させると

29 2.25

が得られますが、これは斜交座標1におけるベクトルV3の共変表示です。

 

つまり、斜交座標1でも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は見事に成り立たっている、と言えます。

これは偶然ではありません。

逆に言うと、斜交座標1で

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

を成り立たせるテンソルの変換式は、ステップ7で求めたテンソルの成分変換式1~4でいいのです。

 


ステップ13

さらに、斜交座標1を「斜交座標2」へ座標変換してみましょう。すると・・・

ベクトルV1の反変表示は

0.4 1.2

共変表示は

13.75 6.25

になります。

 

ベクトルV3の反変表示は

-0.15 11.05

共変表示は

60.25 35.75

になります。

 


ステップ14

ステップ6で求めた変換式(テンソルV12の成分表示を斜交座標1から斜交座標2へ変換する変換式1~4)を斜交座標1のテンソルT1

反変反変テンソルT1

1.5 -1
5 8

反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

共変反変テンソルT1

3.75 -11
0.4375 3.25

共変共変テンソルT1

27 -6.25
-0.25 0.6875

に作用させてみます。

すると、以下の4つのテンソルT1(新)に変換されます。

反変反変テンソルT1(新)

0.38 -0.86
0.34 1.02

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

共変反変テンソルT1(新)

8.5125 -9.0875
3.2875 -1.5125

共変共変テンソルT1(新)

95.6875 18.3125
48.3125 13.6875

4種類のテンソルT1(新)が造られました。

 


ステップ15

面白いことに、斜交座標2のベクトルV1の共変表示

13.75 6.25

反変反変テンソルT1(新)

0.38 -0.86
0.34 1.02

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の反変表示

-0.15 11.05

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

0.4 1.2

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の反変表示

-0.15 11.05

が得られます。

 

ベクトルV1の共変表示

13.75 6.25

共変反変テンソルT1(新)

8.5125 -9.0875
3.2875 -1.5125

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の共変表示

60.25 35.75

が得られます。

 

ベクトルV1の反変表示

0.4 1.2

共変共変テンソルT1(新)

95.6875 18.3125
48.3125 13.6875

に作用させると、斜交座標2におけるベクトルV3の共変表示

60.25 35.75

が得られます。

 

このように、斜交座標2でも、

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

は見事、成り立っています。

これも偶然ではありません。

逆にいうと、やはり斜交座標1から斜交座標2に座標変換しても

テンソルT1 × ベクトルV1 = ベクトルV3

を成り立たせるテンソルの変換式は、ステップ6で求めた変換式1~4でいいのです。

ステップ6で求めた変換式1~4は、どんなランダムなテンソルに対してもそれを斜交座標1から斜交座標2へ「適切に」座標変換することができます。

よって、ランダムな数字のセットもテンソルと考えてよいことがわかりました。

 


まとめ

結局、テンソルとは何か?

といわれると、どんな数字のセットもテンソルといえるのです。

肝心なのは、それがテンソルなら、座標変換に際しどのように成分が変換されるのか?ということのほうです。

ベクトルとは何か?

といわれると、どんな数字のセットもベクトルですよね。

ベクトルをベクトルたらしめているのは、各成分が座標変換に際し「適切に」変換されるからです。

テンソルも同じです。というか、ベクトルはテンソルの一種です。

ベクトルやテンソルには、座標を超越した性質があります。

そのような性質をあわせ持つ数字のセットのことをベクトルやテンソルといいます。

専門書では、これらの説明を、記号や添字を使って、ほんの数行でホントに

あっ

と言う間に終わらせてしまいます。

本記事は、そこのところに、ちょっとしたヘルプ、具体的な解説ができないかな?と思って書いてみました。

書き始めはこんな大変な作業になるとは思いませんでした。計算が思ったよりめんどくさかったです。

たぶん、数学の得意な人が読んだら「ご苦労様・・・」と一笑に付されるような内容だったかもしれません。

なんか、書いたとたん消したくもなりました(汗)。

しかし、もしかしたら、誰かの役に立つかも・・・と、しばらくは消さずに残しておこうと思います。

閲覧数が減れば消去します。

そうなるとこの世で3番目ぐらいに無駄なテンソルの話になるかもしれません・・・(:-))| ̄|_ぐったり

(おしまい)

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(注1)

ここでは、得られた数字のセットを

12 -2
18 -3

と、まるで2x2行列のように書きあらわしましたが、あくまで(12,ー2,18,ー3)という数字のセットにすぎません。

つまり、

12 -2
18 -3

or

12
-2
18
-3

or

12 -2 18 -3

or

12 18
-2 -3

だと思ってください。

この数字のセットを「4x4行列の変換式」

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

と掛け合わせて新しい数字のセットを得る場合には、

12
-2
18
-3

の形式を使い、

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

×

12
-2
18
-3

||

2
-16
4
-32

と、計算します(スッテプ6,ステップ7,ステップ11,ステップ14など)。

この計算の結果を、記事中では

2 -16
4 -32

と2x2行列のように記述しましたが、あくまで

(2,ー16,4,ー32)

という数字のセットにすぎません。

つまり、

2
-16
4
-32

or

2 -16
4 -32

or

2 -16 4 -32

or

2 4
-16 -32

と、思ってください。

本記事では、基底を極力意識しないでいいように、テンソルの成分とその座標変換に注目した解説を試みています。

 

なんか行列の形式を都合よく考えるところが恣意的で気持ち悪いでしょうか・・・

でも、ベクトルだってそうですよね?

たとえばベクトル

(2,3)

を成分変換式

4 -1
5 3

に作用させて新しいベクトルを得よ、と言われれば、ベクトル(2,3)を勝手に(恣意的に)

2
3

の形式にして

4 -1
5 3

×

2
3

||

5
19

としませんか?

あたらしく得られたベクトルは、

5
19

or

5 19

であって、あくまで

(5,19)

という数字のセット(ベクトル)に過ぎません。

縦ベクトルにするか横ベクトルにするかは基底が決めることです。

逆に言えば、「基底の種類」さえしっかりわかっていれば、座標変換行列とのかけ算において、縦とか横とか行列の形にこだわる必要はないのです。

ベクトルもテンソルも。

(基底の種類には、共変基底とか、反変基底とか、共変共変基底、共変反変基底、反変共変基底、反変反変基底とか、いろいろあります。みなさんが高校で習ったベクトルの基底は、共変基底です)

成分変換に着目する限り、行列との掛け算が必要なら、行列との掛け算に都合よい形式(行列計算できる形式)にしてしまいます。

なぜなら、その計算の目的は、結局

(旧)第一成分 → (新)第一成分

(旧)第二成分 → (新)第二成分

(旧)第三成分 → (新)第三成分

(旧)第四成分 → (新)第四成分

・・・

とすべての成分を獲得することです。

すべての成分が「適切」に変換されているかどうかを気にしています。

ちなみに、ここでいう「適切」というのは、ベクトルの座標変換前後で

旧ベクトルV1 + 旧ベクトルV2 = 旧ベクトルV3

新ベクトルV1 + 新ベクトルV2 = 新ベクトルV3

と、きちんと対応していることです。

つまり

旧ベクトルV1 ⇒(変換式)⇒ 新ベクトルV1

旧ベクトルV2 ⇒(変換式)⇒ 新ベクトルV2

旧ベクトルV3 ⇒(変換式)⇒ 新ベクトルV3

という変換式が存在していればいいのです。

 

(注2)

斜交座標1から斜交座標2へのベクトルの反変成分の変換行列

A'

0.6 -0.2
-0.2 0.4

と、その逆行列(ベクトルの共変成分の変換行列を転置したもの = 共変基底ベクトルをただ縦に並べたもの)

B'

2 1
1 3

を用意し、A'⊗A'、A'⊗B'、B'⊗A'、B'⊗B'・・・と、それぞれのテンソル積をとる(成分をひとつひとつ掛け合わせていく)と、本文中にも掲載した以下の4つの変換式1~4が手に入ります。

 

反変反変テンソルV12 を 反変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式1

0.36 -0.12 -0.12 0.04
-0.12 0.24 0.04 -0.08
-0.12 -0.04 0.24 -0.08
0.04 -0.08 -0.08 0.16

反変共変テンソルV12 を 反変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

共変反変テンソルV12 を 共変反変テンソルV12(新)に変換する

変換式3

1.2 -0.4 0.6 -0.2
-0.4 0.8 -0.2 0.4
0.6 -0.2 1.8 -0.6
-0.2 0.4 -0.6 1.2

共変共変テンソルV12 を 共変共変テンソルV12(新)に変換する

変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

 

(注3)

正規直交座標から斜交座標1へのベクトルの反変成分の変換行列

A

0.25 0.5
-1 2

と、その逆行列(ベクトルの共変成分の変換行列を転置したもの= 共変基底ベクトルをただ縦に並べたもの)

B

2 -0.5
1 0.25

を用意し、A⊗A、A⊗B、B⊗A、B⊗B・・・と、それぞれのテンソル積をとる(成分をひとつひとつ掛け合わせていく)と、本文中にも記載した以下の4つの変換式1~4が得られます。

 

反変反変テンソルを反変反変テンソルに変換する

変換式1

0.0625 0.125 0.125 0.25
-0.25 0.5 -0.5 1
-0.25 -0.5 0.5 1
1 -2 -2 4

反変共変テンソルを反変共変テンソルに変換する

変換式2

0.5 0.25 1 0.5
-0.125 0.0625 -0.25 0.125
-2 -1 4 2
0.5 -0.25 -1 0.5

共変反変テンソルを共変反変テンソルに変換する

変換式3

0.5 1 0.25 0.5
-2 4 -1 2
-0.125 -0.25 0.0625 0.125
0.5 -1 -0.25 0.5

共変共変テンソルを共変共変テンソルに変換する

変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

 

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余談1

本文中では、反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

に、変換式2

1.2 0.6 -0.4 -0.2
0.6 1.8 -0.2 -0.6
-0.4 -0.2 0.8 0.4
-0.2 -0.6 0.4 1.2

を作用させて、反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

を造りました。

 

反変共変テンソルT1(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

は、反変共変テンソルT1

8.25 -1.4375
19 -1.25

にベクトルの成分変換行列

F

0.6 -0.2
-0.2 0.4

と、その逆行列

F-1

2 1
1 3

を掛け合わせて

反変共変テンソル(新)=(F-1)(反変共変テンソル)(F)

として求めることもできます。

どちらの方法でも同じ反変共変テンソル(新)

1.6875 -0.6875
11.6875 5.3125

が得られます。

 


余談2

正規直交座標の計量テンソル

1 0
0 1

に、斜交座標1で共変共変テンソルを得る変換式4

4 2 2 1
-1 0.5 -0.5 0.25
-1 -0.5 0.5 0.25
0.25 -0.125 -0.125 0.0625

を作用させると、斜交座標1の計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.3125

が得られます。ということは、斜交座標1の計量テンソルは共変共変テンソルだということです。

斜交座標1の基底を新しく

0 1

 

1 0

と定義すれば、斜交座標1の計量テンソルは

1 0
0 1

になります。その計量テンソル

1 0
0 1

に、斜交座標1の共変共変テンソルを斜交座標2の共変共変テンソルに変換する変換式4

4 2 2 1
2 6 1 3
2 1 6 3
1 3 3 9

を作用させると、斜交座標2の計量テンソル

5 5
5 10

が得られます。

このように計量テンソルは共変共変テンソルの性質を有していることがわかります。

事実、計量テンソルは共変基底同士のテンソル積「共変基底⊗共変基底」で求めることもできます。

たとえば、斜交座標1の共変基底を横に並べたもの

2 1
-0.5 0.25

にその転置行列

2 -0.5
1 0.25

をかけるだけで、斜交座標1の計量テンソル

5 -0.75
-0.75 0.3125

が得られます(余談3)。

 


余談3

斜交座標2の計量テンソル

5 5
5 10

の最も教科書的な求め方は、

ベクトルの反変成分を変換する行列

F

0.6 -0.2
-0.2 0.4

の逆行列

F-1

2 1
1 3

と、その転置行列

F-1・T

2 1
1 3

を、正規直交系の計量テンソル

1 0
0 1

掛け合わせて

計量テンソル=(F-1・T)x(F)x(正規直交系の計量テンソル)

とする方法です。

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コメント

めちゃくちゃ丁寧な解説で感動しました。

>hibitさん そう言っていただけると時間をかけて書いた甲斐があります。ありがとうございます。

3つの一連の記事を書いていただきありがとうございます。
大学の時に落ちこぼれてから数十年ずっともやもやしていましたが、こんなに簡単なことだったのかと眼から鱗が落ちるようです。本当に感謝しています。

>上田さん
お褒めのコメントありがとうございます。励みになります!

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