たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ~ゆる~く計算してみる編~: スタディヘルプ

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2021年1月28日 (木)

たぶんこの世で二番目にやさしいテンソルの話 ~ゆる~く計算してみる編~

以前、テンソルについてできるだけ数式を使わない解説を試みましたが、かえってわかりにくい・・・とのご指摘もあり、今回、少しだけ計算式を使って説明してみることにしました。

縮約はでてきません。省略もしません。また、決してxとyと1と2に変換したりしませんのでご安心ください(苦笑)。ただしちょっとびっくりするような式を紹介します。

本解説を読破するために最低必要な事前知識は以下の3つでしょうか・・・。事前にご確認ください。

1.全微分の公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/159.png

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/70.png

2.全微分の変数変換公式

座標(基底)を変換する場合は、合成関数の微分(いわゆる連鎖律)によって偏微分係数を変換します。

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3.ベクトルの成分変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.png

この3つが理解できたら準備完了です。


【1日目】

XY座標にふたつのベクトルを用意します。ベクトルV1とV2です。V1=(2,3)とか V2 =(4、-1)とか、なんでも構わないのですけど、ちょっとカッコ悪いので文字表記にします(文字表記は抽象的でイヤだ・・・という人は下記「おまけ」具体例バージョンをご覧ください)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/120.png

そのまま座標軸だけを変換したところ、ベクトルV1とV2の表示は下記のように変換されたとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/125.pngとすると、ベクトル表示の変換は以下の変換式に従っていることになります。つまるところ、ごくふつうの一般的なベクトルの座標変換です(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/119.png

行列でまとめるとこうなります。別にまとめなくてもいいですが・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/123.png

上段がベクトルV1、下段がベクトルV2です。

では、ベクトルV1とV2からXY座標でテンソルV12をつくりましょう。テンソルをつくるのはカンタンで、ベクトルの成分同士を"すべて掛け合わせてならべるだけ"です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/238.png

これでテンソルになります。(8,-2,12,-3)みたいな4つの数字です。同様にRθ座標でもテンソルV12をつくってみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/211.png

できました。

このふたつのテンソルV12、"みため"(=成分)は違いますが、どちらも同じものです。なのでどちらも同じ名前(テンソルV12)でよびました。

ところが。

厳密な専門家たちにとっては、このふたつのテンソル、ほんとうに同じものか?いや、そもそもテンソルなのか?が自明ではありません。

どういうことかというと・・・

もし、このふたつのテンソル(ベクトルV1とV2からXY座標でつくられたテンソルV12と、Rθ座標でベクトルV1とV2からつくられたテンソルV12)の間に規則的な座標変換が成立していれば、それらは確かにテンソルでしょうし、したがって、まぁ両者は同じものといってよいだろう・・・、しかしそれまでは軽々しく同じ名前であらわしたり、そもそもテンソルという敬称で呼ぶなというわけです。

しかし、これらがテンソルであることは数々の専門書ですでに証明済みのことですし・・・

と言いたい気持ちをグッと抑えて、まぁここは、テンソルV12が確かにテンソルであることを確認してみたいと思います。

テンソルV12(Rθ座標)を、ベクトルV1とV2のXY座標成分を使ってあらわしてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/78.png

式を展開すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/79.png

行列を使ってまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/147.png

左辺はテンソルV12(Rθ座標)そのものになりました。最終的に次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

ほらね (o^-‘)bグッ!!

右辺にもテンソルV12(XY座標)が現れ、テンソルV12(XY座標)からテンソルV12(Rθ座標)への変換式になりました。

これが、テンソルV12がテンソルであること(=成分変化が整然と規則的に無機的に生じていること)を証明しています。

どういうことかというと、もし次のように「C」などという余計な項がつくようであれば、それはテンソルではなかった(←座標を超える線型性はないだろう)・・・というわけです(注2)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/237.png

しかしそうではなかったわけですから、テンソルV12(Rθ座標)とテンソルV12(XY座標)はともにテンソルであり、したがってそれらは(成分表示が違うだけで)同一のものとみなしてよい・・・と結論できます。

(注1)

もう少し精密に、というか基底ベクトルを省略せずに記述すると以下のようになります。基底ベクトルが変化すると、ベクトルの成分はどのように変化するのかという式です。何も特別なことはなく、ベクトルを座標変換する際の公式みたいなものです。

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なお、Rとかθはふつう極座標基底に用いられますが、この記事では単に基底を区別するための文字として使用しています。もちろん極座標基底としても構いません。極座標基底によるベクトル表示についてはこちらをご参照ください。

(注2)

テンソルには、ある座標で

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であれば、他のすべての座標で

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/296.png

でなければならないという一丁目一番地ともいうべき決まりがあります。なので変換式に定数Cなどあってはならないのです。

 


おまけ

具体例で考えてみます。

下記のようなベクトルV1とV2を考えます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/dual-vector-163.png

ベクトル(2,3)と(4,-1)です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/241_20210129233701.png

つづいて座標変換をおこないます。

基底ベクトルが、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/320.png

から

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/321.png

へ、かわったとしましょう。

ベクトルはそのまま動かしません。

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本座標変換におけるベクトルの変換は以下の式に従うことになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/242_20210129233701.png

すると、新しい座標(Rθ座標)におけるベクトルV1とV2の表示は

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/319.png

となります。これで下準備完了です。

では、XY座標でテンソルV12(XY座標)をつくってみましょう。ベクトルV1とV2のXY座標成分をすべて掛け合わせて並べるだけです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/249_20210129233701.png

同様に、Rθ座標で表示されているベクトルV1とV2からテンソルV12(Rθ座標)をつくります。ベクトルV1とV2のRθ座標成分をすべて掛け合わせて並べるだけです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/250_20210129233701.png

この4つの数字を覚えておきます。

つぎに、テンソルの変換式を考えます(以下の行列のことです)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/240_20210129232901.png
ベクトルの座標変換の公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/73.pngと、今回の座標変換の式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/242_20210129233701.png
の係数を見比べることによって

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/245_20210129233701.png

であることがわかります。これをもとにひとつひとつ計算していくと・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/246_20210129233701.png

です。これをテンソルV12(XY座標)

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/249_20210129233701.png

に作用させてみましょう(作用とは、掛け算のことです)。すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/252_20210129233701.png

先ほど得られていたテンソルV12(Rθ座標)https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/250_20210129233701.png

と全く同じものが得られました。偶然ではありません。このことから、ベクトルV1とV2の成分をすべて掛け合わせて作られたテンソルV12は確かにテンソルといえます。

このとき、真ん中の行列

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/253_20210129234401.pngは、テンソルに作用して別のテンソルを作りだしたことになります。このように「テンソルに作用して別のテンソルをつくるもの」をテンソルというテンソルの定義があります。するとこれもテンソルといえます。

 

具体的な説明の方が好みの方は、こちらもご覧ください

 


【2日目】

前述したXY座標でつくられたテンソルV12とRθ座標でつくられたテンソルV12の関係を再掲します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

この式を特殊な方式で書くと、以下のようになります(注1)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/144.png

えっと・・・目が点になっている人が多いと思いますが、この式を信じる信じないはおいといて・・・今から少しずつ式を展開していきますのでその様子をご確認ください。三つの⊗がありますが、まず、両サイドの⊗を処理します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/146.png

次に真ん中の⊗を処理すると以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/129.png

最後の⊗を処理すると、最終的に次式を得ます。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/236.png

前述したテンソルの座標変換式とまったく同一のものが得られました。

テンソルの座標変換とベクトルの座標変換の係数を比較してみましょう。

テンソルの座標変換公式

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ベクトルの座標変換公式

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/196.png

テンソルの座標変換がベクトルの座標変換に完全に依存していることが見てとれます。ベクトルの座標変換が成り立つ限り、テンソルの座標変換も必ず成立するのです。

(注1)

この形式は厳密ではないかもしれませんし、あるいは、すでに誰かが開発している確かな方法なのかもしれませんが、従来より管理人が個人的に勝手に愛用している方法で、区分行列を一つの成分とみなしながら、クロネッカー積のような積を外側から処理していく方法です。非常に見通しがよく今のところ常に正しい変換行列を得るので利用しています。ただし、決して、正式な場で使用しないでください。


【3日目】

今回は計量テンソルについて考えてみます。計量テンソルの問題とは、正規直交座標で成り立つ

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/174.png

という三平方の定理が斜交座標ではどうなるか?という問題です。専門書では、この式は本当は以下のような形をしていると言います。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/92.png

は?って感じです。専門書によると正規直交系では計量テンソルの働きによってdxdyやdydxの項がゼロになっているのだと・・・。どういうことなのでしょう?それを調べるために、まず、全微分の公式を使って、dxとdyを別の基底で書き変えてみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/130.png

これらの公式を使って前述の式の右辺を書き変えると、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/131.png

さらに展開します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/132.png

係数に注意しながら、次のように変形します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/152.png

行列でまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/137.png

この式を特殊な方法で書くと・・・次のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/202.pngさらにまとめていくと・・・ちょっと途中で長くなってしまいますが、次のようになります・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/203.png

最終的にはやや単純化されて以下を得ます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/204.png次の部分がいわゆる計量テンソルを構成する部分です。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

XY座標からRθ座標への基底変換の式(以下)とよ~く見比べてください。係数が完全に一致しているわけではありませんが・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/157.png

計量テンソルを構成する成分は、基底変換の係数に100%支配されていることがわかると思います。計量テンソル構成する4つの成分は次の式をみればわかります(前述の式を再掲)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/152.png

この式、4つの係数(A B C D)をつかえば、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/153.png

という形になっていることに注目してください。つまり、冒頭の式は、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/175.png

と書き変えることができます。(1  0  0  1)とか(A B C D)の部分がズバリ「計量テンソル」です。直交基底のときは計量テンソルが(1  0  0  1)になり、典型的な三平方の定理

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/174.png

となります。


【4日目】

今回は共変ベクトルをふたつ(V1とV2)用意します。そのXY座標での座標表示、Rθ座標表示を以下のように定めます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/162.png

共変ベクトルの成分変換は、

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ではなく、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/160.png

であることに注意しましょう。ベクトルV1およびV2の成分も、この法則に従い、以下のように変換されるとします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/164.png

つまり、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/165.png

です。ここからテンソルV12をつくります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/178.png

できました。成分が違いますが両者とも同じテンソルです。その証拠にそれぞれのテンソル成分には以下の関係式が成り立っているはずです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/193.png

式を一度展開してみます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/179.png

まとめなおすと以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/177.png

テンソルの成分表示が、基底変換に応じて整然と規則的に変化することがわかります。

これを特殊な形式であらわすと・・・以下のようになります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/169.png

ベクトルの座標変換公式と見比べてみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/199.png

それぞれの係数比較により、テンソルの座標変換がベクトルの座標変換に完全に依存していることがわかります。また、今回は計量テンソルを構成する成分(以下参照)とも比べてみましょう。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png

計量テンソルと共変テンソルの密接な関係が見えてきます。

 


【5日目】

今回は、基底を入れて考えてみます。基底を導入すると式が非常に複雑になるので逃げたい気分なんですが、ちょっと頑張ってみます。1日目で考察したベクトルVとV は基底を使えば以下のようにあらわせます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/219.png

ベクトルVとV のRθ座標は、XY座標表示を使って以下のようあらわされます。

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ベクトルVとV からテンソルV12(Rθ座標)をつくります。

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式を展開します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/310.png

基底の変換には以下の式を適用します。

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これを前述の式に代入します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/309.png
式を部分的に展開し、

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/285.png
行列の形にします。

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特殊な形式でまとめます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/287.png

さらにまとめていくと・・・https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/288.png

途中、式がやたらと長くなりますが、最終的には以下のようにまとまります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/290.png

これがテンソルの変換式です。基底をつけるとこのように非常に複雑化します。

ベクトルVとVからつくられるテンソルV12についても同様の考察が可能です。最終的な変換式のみ示します。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/291.png

共変テンソルの変換式には、計量テンソルで考察した次の式をそのまま適用できることがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/156.png


おまけ

既出の反変テンソル、共変テンソルの座標変換に加え、混合テンソルについても変換式だけアップしておきます。

 

(2,0)テンソルの座標変換

「反変ベクトル⊗反変ベクトル」としてつくられた反変テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/235.png

 

(0,2)テンソルの座標変換

「共変ベクトル⊗共変ベクトル」としてつくられた共変テンソルについて

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(1,1)テンソルの座標変換

「反変ベクトル⊗共変ベクトル」としてつくられた混合テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/182.png

 

「共変ベクトル⊗反変ベクトル」としてつくられた混合テンソルについて

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/239.png


 

 

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