【図解】計量テンソルって? The Metric Tensor 基礎の基礎: スタディヘルプ

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2020年2月 3日 (月)

【図解】計量テンソルって? The Metric Tensor 基礎の基礎

計量テンソルって、簡単に言うと、あらゆる三角形で「三平方の定理」を成り立たせる魔法の数字なんですが・・・


ふつう、みなさんが習った「三平方の定理」はコレですよね?

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/1_20200131013801.png

直角三角形のときに成り立つ3辺(A,B,C)の関係式です。

同じような式が、直角三角形じゃなくても、成り立つんじゃないか?

そんなことを考えた数学者はいっぱいいました。

素人的には、下記の係数をいろいろ変えるとうまくいくかも?・・・と思いますよね?

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-5.png

実際、まぁそんな感じで・・・

今では、

つぎの式が「どんな三角形」でも成り立つことがわかっています。

aA・A  +  bA・B  +  cB・A  +  dB・B = C2

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-6.png

先に言っちゃうと計量テンソルはこの係数と深い関係があります。覚えておいてください)

この式が、ありとあらゆる三角形で成り立つわけです。まさに三平方の定理「上級バージョン」です。

aA・A  +  bA・B  +  cB・A  +  dB・B = C2

4つの係数(abcd)の値は三角形ごとに異なりますが、カンタンに求めることができます。

 

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-4.png

行列を使って式を書き直すと、もっとスッキリします。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/3_20200131013801.png

三平方の定理「上級バージョン」のスッキリ系です。

わかりやすくなったような、わかりにくくなったような・・・

先にも述べたように、この行列というか係数(a、b、c、d)

a b
c d

は、三角形をみただけでカンタンにわかります。

 

言い方をかえれば、この(a、b、c、d) 

a b
c d

が、三角形の形を決めている、ともいえるのです

 

たとえば、∠AB の外角が cosθ だけ歪んでいる三角形の場合、(a、b、c、d) は、

1 cosθ
cosθ 1

になります(証明は下図参照。または余弦定理から求めることもできます)。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/6_20200131013801.png

つまり、あるひとつの外角 「θ」。

これさえわかれば、一発で(a、b、c、d) の値 を求めることができます。

たとえば、θ=60°の場合、(a、b、c、d) の値は、

1 0.5
0.5 1

です(cos60° = 0.5)。

つまり、

θ=60°であれば、どんな三角形でも、必ず、

1A・A  +  0.5A・B  +  0.5B・A  +  1B・B = C2

が成り立ちます。(┓゜A゜)┓

ウソだと思う方は、適当に自分で三角形の絵をかいて確かめてみてください。

必ずそうなります。

自分で確かめたくない方は・・・

信じてもらうしかありません(苦笑)。

 

これがわかってくると、逆に、

1A・A  +  0.5A・B  +  0.5B・A  +  1B・B = C2

という式、あるいは、

1 0.5
0.5 1

という係数をみただけで、どんな三角形の話をしているのかわかるようになります。

 

たとえば(a、b、c、d) が

1 0
0 1

なら、直角三角形(∠AB = 90°)です。

その証拠に、式を展開すると・・・

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/7_20200131013801.png

と、典型的な三平方の定理になります。

極論すると、みなさんが学校で習った三平方の定理は、

aA・A  +  bA・B  +  cB・A  +  dB・B = C2

の特殊バージョンにすぎないわけです。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/ver2-7.png

ーーーーー ーーーーー ーーーーー

 

さて・・・

ここで、ちょっとだけ頭を切りかえましょう。

今まで、三角形で話をすすめてきましたけど、

下の図をみてください。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-1.png

三角形をベクトルに置き換えました。

よ~くみると、三角形の辺Aと辺Bの長さって、ベクトル C の成分と考えることができますよね?

すると、

A2 + B2 = C2

という式は、

ベクトルの成分と大きさの関係をあらわしている

とも、いえます。https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-7.png

よね? では・・・

こういう式が成り立つのは座標が直交しているときだけでしょうか?

今のあなたは、こうも考えることができるのではないでしょうか?

座標が直交でないときにでも、(a、b、c、d)をうまく選べば、次の式が成り立つはずだ・・・と。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-2.png

(A,Bはベクトルの成分、Cはベクトルの大きさ)

数学者もそう考えました。

先ほど、三角形の形を決めていると述べた係数(a、b、c、d)

a b
c d

は、斜交座標の角度に関係しているはずです。

その意味で使うとき、係数(a、b、c、d) を

a b
c d

を計量テンソル the metric tensor といいます。

座標ごとに定まる数字の組み合わせです。

この数字(a、b、c、d)が座標の形を決めている・・・

ともいえるのです。

たとえば、直交座標では、(a、b、c、d) の値は

1 0
0 1

になります。

しかし、斜交座標では、そうはなりません。

たとえば、下図のようなx軸とy軸の角度がθのとき、その座標の計量テンソルは

1 cosθ
cosθ 1

になります(注1)。https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-3.png

三角形の外角(θ)が、ちょうどx軸とy軸の角度(θ)と一致します。三角形のときと同じ話をしていることがわかるはずです。

三平方の定理「上級バージョン」は、ベクトルの成分とサイズの間の関係式としても成立するのです。

 

具体例でみていきましょう。

上図で x軸とy軸の角度 θ=60°の場合、計量テンソルは、

1 0.5
0.5 1

ですよね。

すると、この座標系では"どんな"ベクトルでも、

1A・A  +  0.5A・B  +  0.5B・A  +  1B・B = C2

が成り立ちます。

 

ほんとうでしょうか?

たとえば、ベクトル(2.14,3.57)を考えてみましょう。

このベクトルを θ=60°の座標にプロットしてみると、ベクトルのサイズは5であることがわかります。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/ver5_1.png

しかし、いわゆる一般的な三平方の定理(ベクトルの成分と大きさの関係式)は成り立ちません。

(2.14) + (3.57) ≠ (5)

ところが・・・

さきほどの計量テンソル

1 0.5
0.5 1

を作用させると、

・(2.14) + 0.5・(2.14)・(3.57)+ 0.5・(3.57)・(2.14) +・(3.57) = (5)

と、見事に式が成立します。

 

つぎに、直交座標で考えてみます。直交座標の計量テンソルは

1 0
0 1

です。なのであらゆるベクトルに対して、

1A・A  +  0A・B  +  0B・A  +  1B・B = C2

が成り立つはずです。

たとえば、ベクトル(4,3)の場合・・・

1・(4) + 0・(4)・(3)+ 0・(3)・(4) +1・(3) = C2

なので

(4) + (3) =  C2

故に

C = 5

と、ベクトル(4,3)のサイズは5であることが予測されます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/ver5_2.png

実際、直交座標のベクトル(4,3)のサイズは5です。

このように、計量テンソルがわかると、ベクトルのサイズを計算することができます。

 

ベクトルのサイズを測る

というのは、

2点間の距離(サイズ)を計るーーー計量するーーーことと同じです。

 

実は、

このベクトル(4,3)@ θ = 90°

と、

前述したベクトル(3.57,2.14)@ θ = 60°

は、

成分としての表示が違ってみえますが、実は、

全く同じベクトルです。

 

同様に・・・

斜交座標( θ=60° )の計量テンソル

1 0.5
0.5 1

と、

直交座標( θ=90° ) の計量テンソル

1 0
0 1

も、違ってみえますが、実は両方とも

1 cosθ
cosθ 1

という同じテンソルだといえます(ここはちょっと異論がある専門家もいるかも・・・)。

 

いずれにしろ、

ベクトルも計量テンソルも、座標変換に応じて自動的にその成分が変換され・・・

結局、以下の式はいつでも成り立つ

といえます。

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-2.png

ーーーーー ーーーーー ーーーーー

計量テンソルは"2点間の距離"を正しく測定する(どんな座標系においても三平方の定理を成り立たせる)ために欠かせない数字のセットです。

だから"計量"という言葉がついています。

しかも・・・

計量テンソルは、テンソルという名前がついているだけあって「テンソル」という"座標変換に耐える形式"になっているところがすごいところです。


なぜ「テンソル」だとすごいのか?・・・

テンソルについては → こちら


 

ーーーーー ーーーーー ーーーーー

そのほか、計量テンソルには・・・

ある計量テンソルにベクトルを作用させると、必ず元のベクトルになる(ベクトルを動かさない!)という驚くべき性質があります(注2)

数字でいうと「1」みたいなものです。

 

最後に、ちょっとだけ「内積」との関係について話をします。

「内積」って、直交座標でしか計算できないと思っていたら、次のように計量テンソルを挟み込むことによって、斜交座標でも計算できるんです(注3)。https://remedics.air-nifty.com/photos/uncategorized/photo_20200706213201.pngベクトル(A, B)とベクトル(C, D) というベクトルの「内積」の上級バージョンというか・・・

こうやって計量テンソルを間にはさみ込む決まりにすれば「内積」の結果をどんな座標変換に対しても不変に保つことができます。

すごいと思いません?

だって、たとえば

「内積」=一定

という式によって、数学の世界では直線や平面をあらわすわけです。

なので、この「内積」 の上級バージョンを使えば、直線や平面を座標に依存しない形であらわすことができます。

アインシュタインは、計量テンソルのこの性質を利用して「空間の歪み」を座標系に依存しない形で表すことに成功したのです(一般相対性理論)。

 

リンク:アインシュタインの一般相対性理論

https://remedics.air-nifty.com/photos/hawaii/ver2-6.png


注1:この記事は、基底のサイズが常に「1」である場合を考えています。しかし、もちろん、基底のサイズは常に「1」である必要はありません。

計量テンソルは、座標軸の角度(θ)だけでなく、座標軸の基底のサイズの影響もうけます。たとえば、x軸が+30度、y軸が-30度偏位した座標の計量テンソルは、基底サイズが「1」のときは

1 √3/2
√3/2 1

です。しかし、たとえば、x軸が+30度、y軸が-30度偏位し、基底のサイズが「√2」のときは、その座標の計量テンソルは、

2 √3
√3 2

になります(いわゆるローレンツ変換をうけたような座標です・・・)。こういうのを勉強するのが計量テンソルの勉強です。

注2:厳密にいえば、斜交座標をあらわす計量テンソルにベクトルを作用させると、やはり、ベクトルの成分表示は変化してしまいます(変化したようにみえます)。しかし、ベクトル表示の形式が(反変表示から共変表示に、あるいは共変表示が反変表示に)変わっただけで、ベクトルの絶対的な方向や大きさは計量テンソル作用前と作用後で不変です。

共変ベクトル・反変ベクトルについては → こちら

注3:計量テンソルを挟み込む内積の上級バージョンは、一方のベクトル表示を反変表示⇒共変表示に変換、あるいは共変表示⇒反変表示に変換すれば、高校数学で教わったふつうの内積(ただの成分同士を掛け合わせ合算する)計算と同じになります。


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