まんがでわかる包絡線
大学の数学の入試問題で、接線の「通過領域」の問題がときどき出題されます。
どんな問題かというと、
「t が 0 ≦ t ≦ 1 を動くとき、直線 y = 2tx - t2 + 1 の通過領域を図示せよ」
みたいな問題です。
この直線、t によって傾きや切片が変化しますが、実は「ある曲線」に対する接線になっていることが多いんですね。
その曲線を「包絡線」というのですが、この包絡線の式を見破るのが、この手の問題を解くコツになります。
やることはわりと単純で、偏微分して連立方程式をつくる2ステップ。
「ステップ1: y = 2tx - t2 + 1をt方向に偏微分(∂y/∂t)すると、∂y/∂t = - 2t + 2x。ステップ2: - 2t + 2x = 0 と、y = 2tx - t2 + 1 の連立方程式を解くと、y = x2 + 1。これが包絡線の式。だから・・・」
と考えれば、この手の問題はめちゃくちゃ簡単になります。
今回は・・・
ちょっと強引ではありますが、
この解き方の立体的な意味を考えてみたいと思います。
誰の役に立つのかはわかりませんが・・・(´-д-`)
まず、あたえられた関数 y = f (t, x) を、t と x からなる2変数関数と考えます。
2変数関数 y = f (t, x) というのは、座標空間に浮かぶ面になります。
例えば、例にあげた2変数関数 y = 2tx - t2 + 1 がどんな面になるのかわかりませんが、ある曲面になるとして・・・
こんな感じだとします。
勝手に曲面をつくってみました(;´▽`A``。
数学者にはこのグラフがまんがにみえるそうですΣ( ̄ロ ̄lll)
実は・・・
この手の包絡線がからむ問題に出題される関数を曲面にあらわすと、こんな勝手な曲面にはなりません。
必ずといっていいほど、ある重要な特徴をもつ曲面になります!
何だと思いますか?
その特徴がこの手の問題を理解するカギになるのですが・・・
それは、
「直線」の集まりでできた曲面
です。w(゚o゚)w
・・・
気がついている人もいるかも知れませんが、
この事実は、包絡線に接する接線の立体的な意味を考える上で、非常に重要なポイントになります。
みなさん、
直線が集まると、平面になりそうな気がするかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
直線が少しずつ角度(傾き)をかえながら連結すると、曲面を形成します。
それが、この手の問題に出てくる関数に共通する超重要な性質なんです。
この特徴がなければ、その関数は通過問題に出題されない、といっても言いぐらいです。
通過問題で問われている式を2変数関数とみなし、曲面 y = f(t,x) にすると、必ずといっていいほど、この「直線が集合してできた」曲面になります。
具体的には・・・
この曲面 y = f(t,x) を x 方向に切ると、その断面が必ず直線になるんです。
x方向に平面を切った断面をならべてみたら、こんな感じでしょうか?
あいかわらず、下手な絵ですみませんが・・・
この直線はすべてxy平面に平行です
(全然、そうはみえませんが・・・\(;゚∇゚)/)
xy平面を正面から見るとこんな感じです・・・
う~ん・・・少しは、直線でできた波打つ面にみえますかね・・・?(;´Д`A ```
まぁ、とにかく、x方向の断面は常に直線になっているということで、了解してくださいι(´Д`υ)
ちょっと難しい言い方をすると、この手の問題にでてくる関数をxについて偏微分すると、必ずといっていいほど、tに関する一次式になるということなのです。
一方・・・
この曲面を t 方向に切ると、その断面は曲線になります。
この断面のようすは、2変数関数 y = f(t,x)を t について偏微分をすることによって知ることができます。
またもや、絵がガタガタで、すみません(ノω・、)。
この断面に現れた曲線の様子は、
曲面を、t に関して偏微分することによって知ることができます。
この曲面上のありとあらゆる点における t 方向の傾きをあらわす式
∂y/∂t
これが、t 方向の断面の様子(傾き)をあらわします。
これまでの説明を、例にあげた式 y = 2tx - t2 + 1 にあてはめて考えてみましょう。
y = 2tx - t2 + 1 を2変数関数と考え、この関数が表す曲面をイメージします。
その曲面を、x方向に切った断面には、傾きが 2t という直線が現れます。
(なぜなら、∂y/∂x = 2t)
傾きは 2t ですから、x 方向の傾きは x の値によって変化しません。直線なのです。
しかし t 方向に切った断面は様子が違います。
なんか曲線になります。
t 方向に切った断面には、傾きが
∂y/∂t = - 2t + 2x
という式で与えられる曲線があらわれます。
つまり、
y = 2tx - t2 + 1 を2変数関数と考え、この関数が表す曲面をイメージすると、この曲面上のどんな点でも、その点の t 方向の傾きは - 2t + 2x であらわせるということです。
今、この t 方向の傾きが水平になる点がないかどうかを調べてみると・・・
このように、t方向に水平な点がズラーッとならんで存在していたとします。
これが包絡線の原型です。
これらの点は、傾きがt方向にゼロなのですから ∂y/∂t = 0 の式を満たす(t, x)の組み合わせからなる点であることはわかると思います。
つまり、
このズラーッと並んだ点を結んだ曲線は、
y = f(t,x) かつ、∂y/∂t = 0
の両方の式を満たすはずです。
例題で考えてみましょう。
この点の集まりは
y = 2tx - t2 + 1 と - 2t + 2x = 0
の両方の式をみたす t と x の組み合わせになっているはずです。
この t 方向に水平な点を結ぶと、たとえばこんな感じになります。
この2つの式を連立させて t を消去した
y = x2 + 1
という式・・・
これは、この曲線を、xy座標に投影したグラフの式になります。
このxy座標に投影された曲線・・・
これが、包絡線envelopeなんです。
この包絡線上の点は、曲面 y = f(t,x)上にあり、かつ、∂y/∂t = 0 である点を、xy平面に投影したものです。
曲面 y = f(t,x) は、無数の直線で作られた曲面であることを思い出してください。
無数の直線が少しずつズレて曲面を形成しています。
その曲面上、t 方向に水平(∂y/∂t = 0) の点があると、そのポイントは、t 方向からみて、丘や鞍のようにみえます。
その丘や鞍のエッジがxy平面に投影されると包絡線として観察されるのです。
包絡線上のありとあらゆる点は、∂y/∂t = 0 をみたし、かつ、式 y = f(t,x) をみたす点だということです。
通過範囲を求める問題は、このエッジを求める問題といっても過言ではありません。
∂y/∂t = 0 と y = f(t,x) を連立させれば、包絡線というエッジを見つけることができます。
直線 y = f(t,x) がずらりと並んだ曲面・・・
そのうえで、t 方向にだけ水平になっている特異な点・・・
その特異点がずらりとならんだ曲線・・・
そのエッジをxy平面に投影したものが包絡線です。
どうです?
包絡線、見えてきましたか?
本質がみえれば、包絡線が、なぜ接線で形成されているのか、おのずと理由も理解できることと思います。
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