アメリカの中学生が学校でならう政治学 Political Science
アメリカの中学生たちが学校で学んでいる政治学Political Scienceが興味深いので紹介します。
中学生が学ぶレベルですので、かなり簡素化された政治学です。
専門の人からみれば、いろいろ、ご意見もあるかと思いますが・・・
基本中の基本と思っていただければ幸いです。
まずは、国家体制について。
独裁国家Dictatorship: 国王や単一政党など単一の権力者によって統治されている国。国民による選挙がありません。例:中国(中華人民共和国)は、単一政党による独裁国家です。
君主国Monarchy: 独裁国家Dictatorshipの一種で、国王によって統治される国。例:中国(中華人民共和国)は、単一政党による独裁国家ですが、君主国ではありません。
共和国Republic: 君主国でない全ての国。必ずしも民主国家とは限りません。例:中国(中華人民共和国)は、共和国ですが民主国家ではありません。
民主国家Democracy: 独裁国家でないすべての国。国民によって統治されている国。選挙システムがあるのが特徴です。複数の政党から好きな政党を多数決で選ぶことができます。
君主国家は2回の革命で民主国家になります
君主国Monarchy → 革命 → 共和国Republic → 革命 → 民主国家Democracy
中国(共和国)が民主主義国家になるためには、もう一回、革命が必要であるといわれている理由はこれです。
2回の革命を経ると民主国家となり、国民は自由と平等を手に入れます。
自由にはいろいろな自由がありますが、そのなかでも、もっとも大切な自由は、「政府を批判する自由」です。
さて、このようにして自由と平等を追求していくうちに、大きな問題が立ちはだかります。
自由と平等は両立しえないという根源的な問題です。
ここから、自由を重んじる自由主義と、平等を重んじる共産主義がうまれました
自由主義Liberalism:次の3つのタイプに分けられます。経済学的には資本主義になじみます
1. 古典的自由主義Classic liberalism:自由競争主義。勝者と敗者の格差を認める。つまり、自由>>>平等という考え方。サポートグループ:共和党(アメリカ)Repubrican party、保守Conservatism、伝統主義Traditionalist、右派Right
2. リベラリズム(現代自由主義)Modern liberalism: 極端な自由競争を認めない主義。敗者は政府によって保護される。競争が激化しないよう「ある程度」競争は規制される。つまり、平等のためには自由は少し抑制されてよいという考え方。サポートグループ:民主党(アメリカ)Democratic party、中道Center、中道左派Center left、社会自由主義Social liberalism、リベラルLiberal
3. 新自由主義Neoliberalism: リベラリズムよりも自由競争を認める主義。サポートグループ:中道右派Center right
共産主義Communism:国民がすべて平等である国です。市場Marketは存在せず経済学的には社会主義Socialismになじみます。ただし、人間はほっとけば必ず競争してしまうため、強力な政府システムによって競争を抑制する必要があります。必然的に、政府を批判する自由は抑えられます。つまり、自由<<<平等という考え方です。サポートグループ:左派Left wing、極左Extreme left
経済体制が資本主義から社会主義に変化するとともに、物資が豊かになり、自由主義は最終的に共産主義に行き着くと考えられた時代がありました。
しかし、共産主義では「政府を批判する自由」が抑制されることが明らかになるにつれ、自由主義が共産主義に発展するという考えは下火になりました。
資本主義では富は資本家に帰属しますが、社会主義では富は労働者のものとされます。
自由主義では物資の所有者は国民ですが、共産主義では物資の所有者は国家になります。
国家Stateと国民Nationは、共存共栄しなければならない組織ですが、基本的には、支配する側、支配される側という意味では利害対立するグループです。
国民Nation:民族の集団、グループです。
国家State:政府Government。法的に暴力を使うことを許されている組織。政府は国民Nationを守り、国民Nationは税金を払う。
いくつかの政治学的用語
封建制度Feudalism: あらゆる人間は、目上の人に使えるために生まれてくるべきという主義。
帝国主義 Imperialism: 海外へ市場(マーケット)を展開するためには軍の力も利用してよいという資本主義。植民地Colonialismと帝国Empireの関係を築く。
民族主義Nationalism: 国民Nation(民族)の繁栄のためには個人の自由は抑制されるべきという主義。
結束主義Fascism: 国家Stateの繁栄のためには個人の自由は抑制されるべきという主義。暴君Tyrantや軍国を生みやすい。政府を批判する自由が制限される。サポートグループ:極右Extreme right、過激派Radical、全体主義Totalitarianism、権威主義Authoritarianism
個人自由主義Libertarianism: 国家Stateの繁栄よりも、民族Nationの繁栄よりも、何よりも個人の自由が優先されるという主義。サポートグループ:無政府主義Anarchism
権威主義Authoritarianism (Despotism): 国民には国を統治する能力はなく、独裁国家のほうがよい国になるという考え方。
集産主義Collectivism: 極左Extreme leftと、極右Extreme rightは、どちらも政府の干渉が最大化されており、政府を批判する自由は失われ、集産主義Collectivismになるという考え方。George Orwellの「1984」にでてくる世界。
アメリカに留学する場合は、ここに書いてある程度の政治学は「常識」として身につけておきましょう。
アメリカ人は政治にまつわるニュースが大好きです。大統領選が近づいたときなどは、国民のほとんどの関心が政治に集約されます。
しかし、雑談の場では政治の話は敬遠されますので要注意。関心が高いだけに、しばしば意見が対立してしまうからです。
だからといって、アメリカで生活する以上、政治にまったく関心がないというのはNGです。意見を求められたときには堂々と自分の政治的スタンスを述べましょう。
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