張力について 次元別に理解する
張力は高校物理で教わる比較的簡単な概念です。
ところが、大人になっていろいろ勉強していくと、張力って、案外、深い概念であることに気がつきます。
この記事では、そのあたりについて、ちょっと・・・独自の解説をしてみます。
まず。
張力について高校で習ったはずの先入観(何かヒモのようなものを引っ張る「力」。。。とか)があると思います。それを捨てましょう。
(なんて大見えを切ると専門家に怒られそうですが・・・)
高校物理の範囲ではそれでいいのですが、少し高度な物理になると、そういう考え方が通用しなくなります。
ここ、最初に強調しておきます。
そもそも、厳密にいうと、張力は「力」ではありません。
「ある単位あたりに作用している力」です。
ちょっと、よくわからないという人は「圧力」を想像してみてください。
圧力って「単位面積あたり」に作用している力ですよね。
ある面に作用している力を、その面の「面積」でわったものです。
張力も、そんな感じです。
圧力のように「ある単位あたりに作用している力」だと考えましょう。
作用している力を、ある「単位」でわったものです。
ただし・・・
圧力は面で考えますが、張力は、いろいろな次元(点、線、面)で考えます。
すなわち、
圧力は面積でわりますが、張力は圧力と違って、いろいろな次元(点、長さ、面積など)でわるのです。
次元(点、長さ、面積など)でわる、をわかりやすく言うと、
ある点あたりの力、ある長さあたりの力、ある面積あたりの力・・・みたいな。
逆に、わかりにくいでしょうか。
圧力の場合は、N/m2という固有の単位を持ち、それが定義になっています。
しかし、張力は、
点、線、面、あらゆる次元で考えることができ、それぞれの意味においてそれぞれの単位を決めるのです。
次元別に理解する・・・
ここが、張力理解の鍵だと思います。う~む。
全然伝わってない気もしますので、図解してみます。
一次元の物体における張力
これが張力の一番わかりやすい例です。高校物理ででてくる張力です。
太さのないヒモを両側からFの力で引っ張ったとき、ヒモ内の「ある点」にかかっている力が一次元物体における張力です。
図中、 F(力)の単位は N(ニュートン)、E(エネルギー)の単位は J(ジュール)とします。
ヒモの中の、ありとあらゆる点で、同じ張力が発生しています。
この張力は、一次元の物体におけるゼロ次元的作用点(点)に作用しています。
直感的に一番わかりやすい張力の概念でしょう。
単位をみると、力そのものです。
単位は、Nです。
あまりにもわかりやすいので、これが「張力 = 力」という大きな誤解を生むもとになっていると思います。
一次元物体における張力というのは、ヒモの長さを1m伸ばすのに必要なエネルギー(J/m)に等しくなります。
では、どうしてヒモはちぎれないのでしょうか?
ヒモが切れないように、ありとあらゆる点で分子の結合力が増加しているからです。
外部からの作用によって、ヒモの内部で生じた結合力が反作用のもとです。
張力が作用してはじめて反作用が内部で生じます。
二次元の物体における張力
厚みのない膜を両側から引っ張ったとします。
膜内に「力の方向に垂直な線」を想定してください。
その線の長さ1mあたりにかかっている力が二次元物体における張力です。
二次元物体における一次元的作用点(線)に作用しています。
表面張力ともいいます。
線の長さ1mあたりにかかる力です。
張力は糸を引っ張る力だと思っているとかなり想像しづらいかもしれません。
方向は線に平行ではなく垂直です。
単位は、N/mです。力を長さで割ったものです。
ですので、力そのものではありません。
そのような線は、膜の中に平行(力の方向に垂直)に数限りなく想定できます(ラプラスの法則)。
そのありとあらゆる線に同じ張力が作用しています。
膜の面積を1m2増やすのに必要なエネルギー(J/m2)に等しくなります。
さて、両側から引っ張っているのに、どうして膜は引き裂かれないのでしょうか?
そうです。
破れないように線上に並んだ分子が結合力を増しているからです。
外部からの作用によって、ヒモの内部で増加した結合力が、反作用のもとになります。
張力が作用してはじめて、反作用が内部で生じます。
三次元の物体における張力
今度は、上図のようなブロックを両側から引っ張った場合を考えてみましょう。
ブロック内に上図のような面を想定してください。力のベクトルに垂直な面です。
その面1m2あたりにかかる力が、三次元物体における張力です。
この張力は、三次元物体における、二次元的作用点(面)に作用しています。
単位は、N/m2です。
方向は面に平行ではなく垂直です。
力を面積で割ったものになります。
この単位は圧力と同じです。
もしブロックを圧縮する方向に力が加わっていれば(= 両側から押されていれば)、想定した面に対する圧力そのものです。
つまり、三次元物体における張力は、向きが逆であるだけで本質的には圧力と同じものと考えていいと思います。
上図に描かれたような面は、ブロックの中に無数に想定できますが、その全ての面に対して同じ張力が作用しています。
ブロックの体積を1m3増やすのに必要なエネルギー(J/m3)に等しくなります。
では、なぜ、ブロックは引きちぎれないのでしょうか?
そうです。
ブロックがバラバラにならないように、面にならんだ分子がその結合力を増しているからです。
この内部で増加した結合力が、反作用のもとになります。
張力が作用してはじめて、反作用が内部で生じます。
このように、張力にはいろいろな次元があると考えましょう。
二次元物体では表面張力と区別できず、三次元物体においては圧力と区別できません。
だったらそれぞれ表面張力や圧力とよべばいいではないかと言われるとその通りです。
その通りですが、張力を、ある単位あたりの力であると包括的にとらえると、視野が広がり、思考的にメリットが生まれます。
二次元物体における表面張力とは、すなわち膜の中に想定される任意の「線」に作用し、まるで線に沿って両側から破くように引っ張る作用です。
三次元の物体における張力は、その中に想定できる「ある面」に作用する、マイナスの圧力(面を引っ張る力)みたいなものです。
圧力もすべての次元で考えた方がすっきりする気もします。
(こんなことを言うと、専門の人からおこられそうですが・・・)
一次元の物体における圧力というものを考えることもできます・・・((・(ェ)・;))・・・
張力と逆向きの作用を考えればいいだけです。
太さのない棒を両側から押したときに、棒の中のある点に作用する力、これが一次元物体における圧力です。一次元の物体における張力のときと同じく、力そのものと区別できません。
圧力を次元ごとに考えることができれば、こういう、想像もしたこともないような力ですら自由に捉えることができます。
二次元の物体についても、圧力を考えることができます。
膜の中にある線を両側から圧迫する作用です。表面圧力と、よぶべきでしょうか?
三次元物体についえては、圧力を想像するより張力を考える方が難しいかもしれません。
張力も圧力も向きが違うだけで本質的には同じものですから、何か統一した名前にしたほうがスッキリする気もしますが・・・かえって混乱しますかね(*ノv`)
いろいろ書きましたが、管理人の頭にあるのは、張力は力そのもの(重力やクーロン力、磁力の仲間)ではなく、ある単位当たりの力(圧力や表面張力の仲間ととらえるべき)であるという話です。しかも引っ張るだけではなく押す力も含めたほうがいい・・・と。
一次元物体におけるゼロ次元的張力 → 積分 → 二次元物体における一次元的張力(表面張力) → 積分 → 三次元物体における二次元的張力(圧力)
三次元物体における二次元的張力(圧力) → 微分 → 二次元物体における一次元的張力(表面張力)→ 微分 → 一次元物体におけるゼロ次元的張力
のようなイメージです。
わかっている人からみれば何の話をしているのかさっぱりわからない記事かもしれません。
それぐらいsubtleな話をしています。
しかし、張力に関してなんかスッキリしない感覚、もやもや感を抱えている人は意外に多いのではないかと思います。
この記事が、そういう、張力に関して何となくモヤモヤ感を抱えている人に届けば幸いです。
張力には、上記の張力の他に、ヒモの方向や膜面に垂直(法線ベクトルの方向)に作用する張力もあります。
振動しない硬い針金や押しても動かない硬い壁ではイメージしにくいかもしれないけれども、ギターの弦やトランポリンのように振動するヒモや面においては弾性力(反発力・跳ね返りの力)とよばれる力と同じものだと思っていいでしょう。
ある壁に垂直に外力が作用しているとき、その壁が今の位置と形を維持するために反作用として抵抗している内力(抵抗力)が、垂直張力です(法線応力ともいいます)。
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