運動エネルギーと運動量の違い: スタディヘルプ

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2016年11月 1日 (火)

運動エネルギーと運動量の違い

物体Aと物体Bが衝突し、その前後で、速度がどう変化するかを求める問題があります。

この問題を解くために、新しく運動量というものを習い、運動量の保存の法則を使って解くように習います。

しかし・・・。

どうして運動量なのでしょう?

運動エネルギーではダメなのでしょうか?

運動量 mv と運動エネルギー (1/2)mv2 ・・・って、

どちらも運動の勢いみたいなものですし、どちらもmとvでできている式だし・・・

運動量ではなく、運動エネルギーが保存される、と考えてはダメなのでしょうか?

そもそも、運動量と運動エネルギーは何が違うのでしょうか?

シンプルにするために、どちらかひとつだけで、他方は葬り去ることができないのでしょうか?

 

結論からいうと、ダメ。しかも、両方とも必要なのです。

 

基本原則は、ある2つの物質からなるシステムにおいて、外からの力がまったく働かない場合(⇒ お互い、相手からの影響だけをうけるってことです。たとえば、冒頭の衝突が典型例で、衝突後の運動は、相手から受けた力だけで決まります。このような場合)、

1.運動量は必ず保存される。 → これが運動量保存の法則

2.運動エネルギーは保存されるとは限らない

という2点です。これが基本原則です。

運動エネルギーは、保存される保証がない・・・ってのがポイントです。←これ、あまり学校で教えませんよね?

力学的エネルギー保存の法則なんて勉強してしまうと運動エネルギーこそが保存されるべき量である!かのような錯覚を起こすかもしれませんが、運動エネルギーなんて、すぐ他のエネルギー(音や熱のエネルギーなど)に変わり、すぐに変化するんです(いろんなエネルギー含めてトータルではエネルギーは保存されてるかもしれませんが、そんなのあまり役に立ちません)。

それに対し、運動量は必ず保存されます(もちろん外からの干渉が全くない場合に限られますが)。

さもあたりまえのように述べましたが、

なぜ運動量が保存されるのか?

は誰にもわかっていません。が、作用反作用の法則が成り立つ限り運動量は必ず保存されます。

 

とにもかくにも、冒頭で書いた、物体Aと物体Bが衝突し、その前後で、速度がどう変化するかを求める問題を解くためには、

必ず、次の二つの式、運動量の保存の法則と、運動エネルギーの変化(Δ )の式の両方を連立させる必要があります。

(式1)・・・m1v1 + m2v2 = m1v1' + m2v2'

(式2)・・・(1/2)m1v12 + (1/2)m2v22  = (1/2)m1v1'2  + (1/2)m2v2'2  + Δ

(Δ:衝突前後の運動エネルギーの差)

 

このとき、頭の中で考えているのは、

物体Aと物体Bが衝突したとき、

その前後で運動量の総和は同じという「運動量保存の法則」

と、

その前後での運動エネルギーの総和がどれだけ変化したか?

です。

 

ダメな教科書では、(式1)だけを利用して問題を解いて終わり、というものがあります。

でも、頭の中では必ず(式1)と(式2)を解いて、

1.衝突後の速度の変化

2.衝突後の運動エネルギーの変化 Δ

の両方を求めなければ本質を理解できません。本質を理解できなければ、なぜ運動量と運動エネルギーの両方があるのか、違いは何なのか?

ということがいつまでたってもわからないということになります。

 

運動エネルギーは、衝突時の熱エネルギーのロスなどによって、衝突前後でΔだけ変化する・・・

というのがポイントです。

運動量は、運動エネルギーのロスの有無にかかわらず保存されます。

 

(補足:衝突前後で運動エネルギーの総和がまったく変化しない、すなわち Δ = 0 という特殊な衝突を、弾性衝突 elastic collision といいます。つまり、弾性衝突 elastic collision においては Δ = 0 です。)

 

それにしても、運動量と運動エネルギーの関係がどうなっているのかよくわかりにくい・・・

という人のために、

運動量と運動エネルギーをグラフ化して考えてみました。

(そんな必要ないという人は、最後の例題を解いてみてください)

 

質量mの物体の運動量が、速度0から速度vに増加したときの運動量の変化の様子をグラフにすると下図のようになります。

時間のファクターを抜きにすると、運動量Pはvに比例する単純な傾きmの一次関数と考えることができます。

Cocolog_oekaki_2016_04_05_01_55

つまり、途中で加速しようが失速しようが一定速度で動こうが、結局、今の運動量Pは今の速度で決まります。

一方―――

運動エネルギーは、速度0から速度vまで、各速度ごとの運動量を総加算したもの(積分値)といえます。

 

図にすると下図のようになります。

Cocolog_oekaki_2016_04_05_02_09

運動量は、ある速度で運動している物質のY軸の値(mv)。

運動エネルギーは、青い部分の面積((1/2)mv2 )。

 

こう描くと、運動量と運動エネルギーって、関係はありますが、必ずしも同じにはならない

ということがわかるでしょう?

 

今、物体Aと物体Bがあるとします。

物体Aと物体Bの運動量の総和は保存されるとします(空中での衝突や突き放し)。

ここで、物体Aの運動量が、下図のように減ったとします(運動量の変化は ΔP の長さに相当します)。

Cocolog_oekaki_2016_04_05_02_20

すると、物体Aの運動エネルギーも減ります。

物体Aの運動エネルギーの変化は、水色の部分(面積 ΔE の広さ)に相当します。

 

このとき・・・

運動量保存の法則のため、物体Bの運動量は、物体Aが失った量と同じだけ増えるのです(下図、ΔP の長さ)。

物体Bの変化の様子をグラフ化すると、下図のようになります。

Cocolog_oekaki_2016_04_05_02_28

物体Aの(ΔP)=物体Bの(ΔP)

これが運動量保存の法則です。

しかし、

物体Aの(ΔE)=物体Bの(ΔE)

となるとは限りません。

というか、

ΔP とΔE の両方がわからなければ、物体Bの速度の変化(Δv)はわからないのです。

 

物体Aが失った運動エネルギー(水色部分の面積ΔE)は、物体Bが獲得した運動エネルギーの量(水色部分の面積ΔE)と同じとは限らない・・・

つまり、

運動エネルギー(水色部分の面積ΔE)は熱などの他のエネルギーにかわって失われたり、他のエネルギーを吸収して増加したり・・・ということがあるんです。

 

物体Aと物体Bが、「勝手に」速度をやり取りすると、

運動量の総和は一定に保たれますが、運動エネルギーには喪失や増加が起こります。

逆に言うと、運動エネルギーの喪失や増加の程度がわからなければ、

物体AとBの速度の変化を計算することはできません。

 

運動エネルギーの変化が与えられて、はじめて、その条件下で、ΔPが一致するような速度の変化を求めることができます。

ですから、衝突の問題を解くためには、

必ず、次の二つの式、運動量の保存の法則と、運動エネルギーの変化の両方を連立させる必要があります。

m1v1 + m2v2 = m1v1' + m2v2'

(1/2)m1v12 + (1/2)m2v22  = (1/2)m1v1'2  + (1/2)m2v2'2  + Δ

(Δ:衝突前後の運動エネルギーの総和差)

 

たとえば、運動エネルギーの喪失がない(Δ= 0)と指定されて、はじめて

上記、二つの図の水色の部分(ΔE)の面積が同じであることがわかり、

その条件下ではじめて、ΔPの大きさが同じになるような、そのようなΔvの値が物体A、物体Bにおいて決まります。

 

だから、両方必要なんです。

・‥…━━━☆

 

ちなみに、

運動量はベクトルで、運動エネルギーはスカラー

ってどういうこと?という質問がありますが、言ってることは単純で、

運動エネルギーの総和を計算するときには、単純に速度の絶対値だけを考えればOKですが、

運動量の総和を計算するときには個々の物体の速度の方向をベクトルにしてよく考えて、ベクトルのx成分同士、y成分同士の足し算、引き算をして、最後のベクトルの大きさを求めます。逆方向なら、プラスマイナスゼロになることもあるよってことです。

 

・‥…━━━☆

(例題1)

スピード(+5)、質量8の球Aと、スピード(ー5、マイナスは180度反対方向の意味)、質量2の球Bが衝突した。

衝突後、運動エネルギーに80のロスがおこった。

衝突後のそれぞれの球のスピードは?

 

解答

(式1)・・・8 x 5 + 2 x (-5) = 8 x v1' + 2 x v2'

(式2)・・・(1/2) x 8 x (5)2 + (1/2) x 2 x (-5)2  = (1/2) x 8 x v1'2  + (1/2) x 2 x v2'2  - 80

これを解くと・・・

v1' = +3

v2' = +3

すなわち、衝突後、2つの球は同じスピード(+3)で動いていく。

いいかえると、衝突後、2つの球がひっついたようにみえる。

このように、

衝突時に、運動エネルギーの総和に大きなロスがおこり、2つの球が一体化する(=同じスピードになる)ような衝突を、完全非弾性衝突  perfectly inelastic collision といいます。

 

(例題2)

スピード(+5)、質量8の球Aと、スピード(ー5、反対方向)、質量2の球Bが衝突した。

衝突後、球Aのスピードは(+2)になった。

では、衝突後、球Bのスピードは?

 

解答

(式1)・・・8 x 5 + 2 x (-5) = 8 x 2 + 2 x v2'

(式2)・・・(1/2) x 8 x (5)2 + (1/2) x 2 x (-5)2  = (1/2) x 8 x (2)2  + (1/2) x 2 x v2'2  + Δ

式1だけから、球Bの衝突後のスピードは(+7)とわかる。

式2は、この問題を解くには必要ないが、衝突前後で失われる運動エネルギーが60(Δ=60)であることがわかる。

このように、衝突前後で運動エネルギーの総和が変化する衝突を非弾性衝突 inelastic collision といいます。ふつうの衝突です。

 

(例題3)

質量が不明の2つの物体があるとする。

この2つの物体のあいだで、運動量保存の法則が成り立つとする。

最初、

物体Aの速度は 6

物体Bの速度は ー3

であった。

あるところで弾性衝突 elastic collision がおこって、物体Aの速度が2になったとき、

物体Bの速度は何になるか・・・?

 

解答

弾性衝突 elastic collision であるから、Δ=0である。

(式1)・・・m1 x (6) + m2 x (-3) = m1 x (2) + m2v2'

(式2)・・・(1/2) x m1 x (6)2 + (1/2) x m2 x (-3)2  = (1/2) x m1 x (2)2  + (1/2) x m2 x v2'2  + 0

これを解いて、

v2' = 11

→物体Bの速度は11になる。

とわかる。

さらに、物体Aの質量と物体Bの質量比は2:7ということもわかる。

 

(例題4)

同様に・・・

物体Aの速度6

物体Bの速度2

とする。

衝突か何かわからないが、2つの物質の間に運動量が保存される現象が起きて、物体Aの速度がとつぜん0になった。

すると物体Bの速度は・・・?

ただし、衝突の前後で運動エネルギーに損失はないとする。

 

解答

(式1)・・・m1 x (6) + m2 x (2) = m1 x (0) + m2v2'

(式2)・・・(1/2) x m1 x (6)2 + (1/2) x m2 x (2)2  = (1/2) x m1 x (0)2  + (1/2) x m2 x v2'2  + 0

これを解いて、

v2' = 4

→物体Bの速度は4になる。

物体Aの質量と物体Bの質量比は1:3、すなわち、物体Aの質量は物体Bの質量の3分の1でなければならないということもわかる。

 

さぁ、これであなたも運動量マスターですね!(おしまい)

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コメント

マスターできましたぁ💪

お役に立ててよかったです!

たかださま、ご質問ありがとうございます。

>>一点、スライムをコンクリートの壁に投げ付けた時に、完全非弾性衝突で衝突後の速度が共に0になる場合、運動量保存の観点ではどの様に解説できるのでしょうか。

その場合でも運動量は保存されているはずです。したがって理論的にはスライムと一体化したコンクリートの壁はゼロではないはずですが、コンクリートの壁(や、その下の地面、地球)の重量があまりにも巨大なため、その速度は計算上あまりにもあまりにもあまりにも小さくなりゼロにみえる・・・と考えるといいのではないでしょうか?なんか観念的な説明ですみません。

早速のご返信ありがとうございました😊
勉強になりました!

>たかださま
なお、こちらの手違いでご質問を上書きしてしまいました(汗)。もうしわけありません<(_ _)>

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