まんがでわかる偏微分と全微分
偏微分とか、全微分って、つまるところ「接平面の傾き」を考えるってことなんですが・・・
中学の数学でさんざんでてくる
y = ax +b
という式。
これって、変数が2つあるようにみえるのに、数学では1変数関数というんですね。
yは変数ではなく、変数xによって決まる「関数」という扱いです。
一般的には
y = f (x)
という式で書き表されます。
図にするとこんな感じです。
x という変数を、f という箱に入れると、y という結果(関数)がでてくる。
数学者がこの箱の働きを絵にしたものが「グラフ」です。
この箱の仕組みがグラフになるとxy平面上に直線や曲線となってあらわれます。
下の絵(グラフ)をよ~くみてみましょう。
x という変数を、f という箱に入れると、y という結果(関数)がでてくる…
これをみて、「x → f(x) → y」 という流れがすぐにみえた人はセンスがあります。
数学者にきくと、このグラフは絵というか、ほんとうに「まんが」にみえるそうです。
まんが・・・w(゚o゚)w。
で・・・それはさておき
この曲線 f(x) の傾きを考える
というのが微分です。
曲線 f(x)を微分すると、「接線の傾きをあらわす式」が手に入ります。
1変数関数の微分を常微分ともいいます。
では、2変数関数とは何でしょう?
2変数関数とは、
z = ax + by +c
のように、一見、変数が3つあるような式です。
( a が0だったり、b が0だったりすると1変数関数にみえるかもしれませんが・・・)
しかし、ほんとうの変数はxとyの2つだけです。
一般的には、
z = f (x , y)
という式であらわされます。
この2変数関数を図にするとこんな感じになります。
zは変数ではなく、「関数」なんですね。
変数xとyを箱に入れると、zがでてくる。
これが2変数関数です。
2変数関数 z = f (x, y) のグラフにすると、xyz3次元空間に浮かぶ平面や曲面といった「面」になります。
2変数関数 z = f (x, y) では、xとyが与えられると、zが決まる・・・
すぐにイメージできる人はそうそういないと思います。
下の絵をよ〜くみて、「x, y → f (x, y) → z」という流れをつかんでください。
xが決まり、yが決まると、平面上に点があらわれ、zが決まります。
これが2変数関数 z = f (x, y) です。
(注意: 2変数関数は、f (x, y, z) = 0 とも表現されます。f (x, y) = z も、f (x, y, z) = 0 も、2変数関数です。また、1変数関数は f (x) = y とも、f (x, y) = 0 ともあらわされます。1変数関数 f (x, y) = 0 と 2変数関数 f (x, y) = z を混同しないようにしましょう。同様に、2変数関数 f (x, y, z) = 0 と3変数関数f (x, y, z) = w を混同しないようにしましょう。f (x, y, z) = w も、 f (x, y, z, w) = 0 も、3変数関数です。ちなみに3変数関数のイメージは4次元空間に浮かぶ立体みたいなものになるはずです・・・((・(ェ)・;)))。
さて・・・
ここからいよいよ本題に入ります。
今、ある2変数関数が表している曲面と、
その曲面に接する平面を想像してみましょう。
それが接平面です。
そして、その接平面の傾きを考えるのが「全微分」です。
でも・・・
接平面の傾きなんて、どう考えたらいいのでしょう―――。
いきなり難しい接平面の傾きを考える前に・・・
ちょっと一段階いれます。
面を線に変えてみます。
具体的には、
上図の曲面を、まず、x軸やy軸に平行な面で切ります。
断面を想像してください。
2つの曲線があらわれますよね?
(へたな絵で申しわけありませんが、イメージ的にこんな感じ・・・)
どこで切っても、x軸方向の曲線と、y軸方向の曲線の2つの曲線があらわれます。
実は・・・
この2つの曲線の傾きを、別々に計算するのが「偏微分」なんです。
えっと・・・なんで、そんなことをするのかというと―――
接平面のx方向の傾きとy方向の傾きがわかれば、接平面の傾きもだいたいわかるんじゃないか・・・
と考えるのは、なんとなく自然なことだからです(◎´∀`)ノ。
だから、
2変数関数(平面・曲面)の偏微分には、
「xに関する偏微分」と、「yに関する偏微分」のように2つがあるんですね。
それぞれ、
x方向の傾きをあらわす式(xに関する偏微分) = ∂z/∂x
y方向の傾きをあらわす式(yに関する偏微分) = ∂z/∂y
と書きあらわします。
偏微分を、ちょっとむずかしく言うと、
xかyの、どちらかひとつの変数だけを「ちょっとだけ」動かしたときのzの変化をあらわす式です。
つまり、
yを止めて、xだけちょっと変えたときのzの変化分 = ∂z/∂x
xを止めて、yだけちょっと変えたときのzの変化分 = ∂z/∂y
です。
x方向と、y方向の、2種類あるのも納得!ですね。(*^ー゚)b
ではーーー
この偏微分を利用して、どうやって全微分を計算するのでしょうか?
実は、
全微分は、偏微分をたすだけで計算できます。
・・・w(゚o゚)w・・・
xとyの偏微分を足すだけで全微分になるんです。
ちょっと待った。
足すだけ???
なんで?
と思う人もいるかもしれません。
ですよね・・・
ちょっと説明の順番を間違えたかもしれません。
最後は「足すだけ」というのを早く言いたくて、結論を焦りすぎました。
もう少し、丁寧に説明しましょう。
そもそも全微分Δzとは何でしょう?
(この記事では、少しでも数学色を消すために、dのかわりにΔを使います。Δのほうがまんがっぽいのでr(^ω^*))))
先ほど、全微分とは「接平面の傾き」を求めること・・・みたいなことを書きましたが・・・
実は・・・
全微分Δzとは、接平面の「傾き」そのものではなく、接平面の傾きがつくる「zの変化」なんです。
全微分Δzは、「zの微小な変化」です。
下図の微小な平面(ピンクの平面)をみてください。
x軸、y軸、z軸が交差している原点にみえるポイントが、接点で、
ピンクの平面は、接点における接平面だと考えます。
この図から、
xの微小な変化= Δx
yの微小な変化= Δy
であることは、わかりますか?
それがわかれば、
Δz= zの微小な変化
であることもわかるでしょう。
このΔzが、全微分です。
全微分とは、「傾き」ではなく「長さ」なんです。
ここまでわかれば、全微分をほぼほぼ理解したことになります。
もっと深く理解したい人は・・・
接平面のx方向の傾き = ∂z/∂x (xに関する偏微分)
接平面のy方向の傾き = ∂z/∂y (yに関する偏微分)
であることを、図から理解しましょう。
そして、
ピンクの接平面の、原点から対角に向かう「対角線の傾き」こそが、 「接平面の傾き」であることを確認しましょう(下図ではピンクの線の傾き)。
ちょっと難しいのですが・・・
よーくみると―――
全微分 Δz は、
x 方向の変化((∂z/∂x)・Δx)と
y 方向の変化((∂z/∂y)・Δy)の
「和」になっている
のがわかりますか・・・?
これが「見えれば」、全微分を概念として「完全に」理解できたことになります!
オメデトウございます。
結局・・・
2変数関数f((x, y)を全微分すると、
Δz = (∂z/∂x)・Δx + (∂z/∂y)・Δy
という「偏微分を足した式」になるわけで、この式全体が、
2変数関数f(x, y)の「接平面の傾きをあらわす式」なんです。
なんだかんだ言って、最後は「足すだけ」でよかったんですね!
***
ところで・・・
ある2変数関数を「全微分」して得られた、
Δz = (∂z/∂x)・Δx + (∂z/∂y)・Δy
という式は、「接平面の傾きをあらわす式」であって、「接平面の式」そのものではありません。
では、具体的に、点(a, b, c)における「接平面の式」を求めるにはどうしたらいいのでしょうか?
ここでは、「接平面の式」を求めるカンタンな方法を記しておきます。
ある2つの数字さえ手にはいれば、式が求まるのです。
1.まず、x軸方向とy軸方向の2方向について偏微分をおこないます。
→すると、x方向の傾きをあらわす式(∂z/∂x)と、y方向の傾きを表す式(∂z/∂y)の、2つの式が手に入ります。2つの式、ゲット!!!でも、数字ではありません・・・
2.次に、この2つの式、(∂z/∂x)と(∂z/∂y)に、点(a, b, c)の値を代入します。
→すると、点(a, b, c)におけるx方向の接線の傾き(xに関する偏微分係数)と、点(a, b, c)におけるy方向の接線の傾き(yに関する偏微分係数)という、2つの数字が手に入ります。2つの数字、ゲット!!!
これで、全てです。
3.点(a, b, c)における接平面の式は以下のようになります。
(xに関する偏微分係数)・(x - a) + (yに関する偏微分係数)・(y - b) - (z - c) = 0
ゲットした2つの数字をつかって、見事、接平面の式を求めることができました!
この2つの数字は「偏微分係数」という仰々しい名前で呼ばれることを、覚えておきましょう。
この仰々しい名前を使うと、
全微分Δzは
「xに関する偏微分係数」・Δxと「yに関する偏微分係数」・Δyを足したもの
と言うことができます。
では、
どうして接平面の式は、偏微分係数を使って上記のようにあらわされるのかでしょうか・・・?
接平面の式を、もう一度よくみてください。
(xに関する偏微分係数)・(x - a) + (yに関する偏微分係数)・(y - b) - (z - c) = 0
この式からわかるのは、
点(a, b, c)における接平面の法線ベクトルが、(xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数、-1)であることです。
どうして、そうなるのでしょう?
イメージしてみてください。
接平面とは、接点におけるx方向の接線とy方向の接線の両方を含む平面です。
たびたび、へたな絵でもうしわけありませんが、
ピンクの接平面が、x方向の接線とy方向の接線の両方を含んでいることが「みえる」でしょうか・・・?
ここは非常に大事なポイントです。
管理人の絵画力ではうまく図にできませんので、みなさんの頭の中で、よ~くイメージしてください!
そして、思い出してください。
x方向の接線の傾きやy方向の接線の傾きは、偏微分係数という数字で表されるのでした。
つまり、∂z/∂xや∂z/∂yの式に点(a, b, c)の値を代入して得られた数字、偏微分係数、が直行する2方向の傾きをあらわしています。
つまり、
偏微分係数の意味を考えると、
xに関する偏微分係数 = x方向への接平面の傾き
yに関する偏微分係数 = y方向への接平面の傾き
になるのです。
このことをベクトルを使って難しく書くと、
x方向の接線ベクトル = (1、0、xに関する偏微分係数)
y方向の接線ベクトル = (0、1、yに関する偏微分係数)
となります。
接平面にはこの両方のベクトルが含まれているのが図からわかるでしょうか?
この直行する2つのベクトルの両方に直行するベクトルは、外積で求めることができます。
(1、0、xに関する偏微分係数) × (0、1、yに関する偏微分係数)
= (xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数、-1)
つまり、これが、
点(a, b, c)における接平面の法線ベクトルです。
そして・・・
接平面と曲面は、点(a, b, c)において、局所的に"一致"しているはず・・・つまり、「同じ面」であるはずなのだから、
結局・・・
曲面上の点(a, b, c)における法線ベクトルは、必ず(xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数、-1)になります。
実はこのことって、そんなに難しく考えなくても、
「点(a, b, c)を通り、x方向への傾きm1、y方向への傾きm2である平面の式は、z - c = m1(x - a) + m2(y - b)である」
という公式を知っている人にはアタリマエすぎる話です。
でも知らない人にはなんか不思議な感じがする話です。
偏微分係数って、x方向とy方向の傾きを表す数字なんですけど、法線ベクトルにも関係しているんですね。
以上―――
曲面上の点(a, b, c)における接平面の式が、
(xに関する偏微分係数)・(x - a) + (yに関する偏微分係数)・(y - b) - (z - c) = 0
になる理由についてちょっと掘り下げて記述してみました。
では・・・
全微分の式 Δz = (∂z/∂x)・Δx + (∂z/∂y)・Δy
この式の意味って、何なんでしょう?
上のほうで、「接平面の傾きをあらわす式」と書きましたが・・・
な~んか、Δがいくつもあって、よくわからないと思います。
でも、
この全微分の式からΔを外してみると・・・
z = (∂z/∂x)・x + (∂z/∂y)・y
こんな式であれば、「原点を通り、接平面に平行な平面」であることが、ちょっと想像しやすいでしょうか・・・
このあたりを、はっきりと理解するためには、「勾配ベクトル」という、またまた小難しい用語を知る必要があります。
―――勾配ベクトルについて―――
そもそも、みなさん・・・
平面の「傾き」といわれて「?」と思いませんでしたか?
平面の「傾き」なんて、見る方向によっていくらでもありえますよね・・・
平面の「傾き」とか、定義できそうにないです。
でも実は―――
数学者のいう「平面の傾き」とは、その平面の最大の傾きのことを言っているんです。
一般的に、
傾いている平面は、必ず「あるひとつの方向」で最大の傾きをとります。
その方向とは?
勾配ベクトル(gradient)の方向です。
勾配ベクトルの方向とは、面の上で、ある点からちょっと動いたときに、上下の動きが最も大きくなる方向です。
あなたが平らな傾斜面の上に立っているとすれば、
その平面の勾配ベクトルは、傾斜が最もきつく感じられる方角です。
勾配ベクトルは曲面上でも定義できます。
あなたが山に囲まれた盆地に立っているとしましょう。
回りを見渡し、もっとも勾配が急になる方角、これが勾配ベクトルの方向です(等高線が最も密な方向)。
あなたの足元の地面は少し傾いており、勾配ベクトルの方角で、最大の傾斜になっているというイメージです。
直感的に理解できると思いますが、
ある曲面上の点における勾配ベクトルの方向は、その点における接平面の勾配ベクトルの方向に一致します。
勾配ベクトルは、結局、接平面がどの方向により大きく傾いているかをあらわしています。
非常におもしろいことに・・・
勾配ベクトルは、上ででてきた「仰々しい2つの数字」(偏微分係数)であらわすことができるのです。
なんと、勾配ベクトルって―――
法線ベクトル(xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数、-1)のxy方向に一致しているんです。
つまり、法線ベクトルのxy方向は、最大傾斜の方向を示している・・・ってことです。知ってました???
話をまとめると、
偏微分にカッコをつけただけの
(∂z/∂x、∂z/∂y)
= (xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数)
これを、
曲面f(x,y)の勾配ベクトル(gradient)いい、
∇f (ナブラ f)とか grad f と書きます。
∇f = (∂z/∂x、∂z/∂y)です。
勾配ベクトルを使うと、
全微分は、次のように、勾配ベクトルと微小ベクトルの内積であらわすことができます。
Δz = ∇f ・ (Δx, Δy)
ちょっと話が高度になりますが・・・
1変数関数の微分(常微分)を2回くりかえすと二階の常微分になり、グラフの傾きの変化というか、グラフの凸凹具合をあらわす関数になります。
同様に、2変数関数の偏微分を2回くりかえすと、二階の偏微分(∇fをもう一回偏微分したもの)になりますが、これはラプラシアン ∇2f とよばれ、面の凸凹をあらわすようになります。
さて・・・
これまでにわかったことを総動員してイメージしてみましょう。
接平面の傾きは、x方向への傾きと、y方向への傾きという2つの傾きであらわされます。
すると、その2つの傾きの大きさの比率に比例するように、最大傾斜の方角(勾配ベクトルの方向)が決まります。
x方向への傾きがy方向への傾きの3倍なら、勾配ベクトルの方向は(3, 1)というように・・・
なんか、みえてきませんか?
全微分の式の意味。
Δz = (∂z/∂x)・Δx + (∂z/∂y)・Δy
(∂z/∂x)がx方向の傾きで、(∂z/∂y)がy方向の傾きをあらわしています。
それぞれにΔxとΔyをかけると、x方向とy方向の傾きの大きさみたいなものになります。
(∂z/∂x)と(∂z/∂y)の比が、最大傾斜となる方角(勾配ベクトル)を示しています。
Δzは、x方向とy方向の傾きの大きさを足しただけですが、これが最大傾斜の大きさを表しています。
この式・・・みればみるほど
接平面の傾きと、その方向、その程度の様子を、実にいい感じに表しているんです(・∀・)!
つまり・・・
というわけでもないですが、
「接平面の傾き」とは、勾配ベクトルの方向で、接平面がどれだけ高くなっているかをあらわしたものともいえます。
上図の「ピンクの接平面」は、その対角線の方向が最大の傾きになっていて、その傾き―――ピンクの線の傾き―――が「接平面の傾き」です。
全微分Δzとは、結局、ピンクの接平面のうち、原点と向かい合う対角点(diagonal point)の「高さ」になります。
話についてこれなかった人のためにあえて書いておきますが、
上の図の傾いている「ピンクの接平面」が、xy平面上につくる影(緑の四角形)は正方形ではありません。
微小な四角形ですから、数学者に言わせれば形も何もないのですが、管理人のような非専門家にいわせれば「ある長方形」です。
「ピンクの接平面」が、ある傾きで傾いているとき、
「みどりの長方形」の対角線の方向は、「ピンクの接平面」の最大の傾きの方向と常に一致しています。
その長方形の2辺の比率は、
(xに関する偏微分係数):(yに関する偏微分係数)
になっているはずなんです―――
法線ベクトルがxy平面につくる影が勾配ベクトルです。
上下成分(z成分)を除けば、法線ベクトルと勾配ベクトルのxy方向は一致しています。
結局―――
「接平面の傾き」とは、曲面上の任意の点を勾配ベクトルの方向に切ったときに、その断面にあらわれる傾きであり、その点における「最大の傾き」を示しています。
そして、
全微分Δzとは、xとyの両方の変数を勾配ベクトルの方向にちょっとだけ動かしたときの関数fの変化
です。
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☆お ま け 1☆
リクエストにお答えして、具体例で考えてみます。
2変数関数
z = 3x2 + 4y3 +5
の全微分について考えます。
(この関数、まじ適当につくりました)
全微分とは・・・
この式があらわす曲面と、その接平面を考えるということです。
この式が、どんな面をあらわすのか想像もつきませんが、
まず、偏微分をおこないます。
偏微分とは、
この面を、x方向に切った断面と、y方向に切った断面にあらわれる曲線を考えると言うことでしたね。
X方向については
∂z/∂x = 6x
Y方向については
∂z/∂y = 12y2
となります。
この2つの式によって、何がわかったかというと、
この曲面上のあらゆる点におけるx方向の「傾き」とy方向の「傾き」です。
全微分は、これらを足すだけです・・・
足すだけと言っても、ただΔz = 6x + 12y2と足すだけではダメです。
6xや12y2は「傾き」ですが、Δzは「傾きの大きさ」です。
6xや12y2という傾きを、傾きの大きさに直さなければいけません。
どうしたらいいでしょう?
そうです。
x方向の傾きの大きさは6xΔx、y方向の傾きの大きさは12y2Δyになります。
全微分Δzは、これらを足すだけです。
つまり、
Δz = 6xΔx + 12y2Δy
これが全微分の式です。
全微分とは、たったこれだけのことです。
ここで・・・実際に、接平面の式を手に入れてみましょう。
たとえば・・・
この2変数関数 z = 3x2 + 4y3 +5 の、接点(2, 1, 21)における接平面を考えてみましょう。
まず、すべての手順を始める前に、この2変数関数 z = 3x2 + 4y3 +5 が、接点(2, 1, 21)にいて接平面をもつかどうかが問題になります。
(数学の専門家は、「接平面をもつかどうか」とはいわず、「全微分可能であるかどうか」という小難しい言い方をすることがあります。同じことです)
接平面をつくることができない接点というのもありますからね・・・
しかし、まぁ、ここでは点(2, 1, 21)で接平面をつくることができると仮定して、この接平面の式を計算してみましょう。
点(2, 1, 21)における偏微分係数は、
上記、偏微分の式にx = 2、y = 1、z = 21 を代入するだけで求まります。
x方向の偏微分係数については、
∂z/∂x = 6・2 = 12
Y方向の偏微分係数については、
∂z/∂y = 12・(1)2 = 12
となりました。
この2つの数字が偏微分係数です。
xに関する偏微分係数 = 12
yに関する偏微分係数 = 12
です。
つまり、点x(2, 1, 21)において、x方向の接線の傾きは12、y方向の接線の傾きは12、であることがわかりました!
すなわち、
点(2, 1, 21)における全微分の式は、
Δz = 12Δx + 12Δy
になります。
この式は、点(2, 1, 21)における接平面の傾きの様子をあらわしています。
ちょっとイメージが難しいのですが、
この接平面に平行で、かつ、原点を通る平面の式は、
z = 12x + 12y
(全微分の式からΔをはずした式)
です。
この接平面は、x方向に12、y方向に12傾いています。
イメージできますか・・・?
この接平面の法線ベクトルは
必ず、(xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数、-1)
になるのでしたね。ですから、
n = (12, 12, -1)
です。
これは、
x方向の接線ベクトル(1、0、12)と、y方向の接線ベクトル(0、1、12)の外積 (12, 12, -1)に等しくなります。
したがって、
点(2, 1, 21)における接平面は、
12 (x - 2) + 12 (y - 1) -1 (z - 21) = 0
になります。
また、点(2, 1, 21)における接平面の勾配ベクトル∇f は、(xに関する偏微分係数、yに関する偏微分係数)ですから、
∇f = (12, 12)
です。
つまり、この接平面は、xy平面上、ベクトル(x、y) = (12、12)の方向に最大の傾斜を持っていることがわかります。
また、勾配ベクトル∇f とベクトルの内積を使うと、接点(2, 1, 21)における全微分を、
Δz = (12, 12) ・ (Δx, Δy)
とあらわすこともできます。
☆お ま け 2☆
上の解説中に、2変数関数が点(2, 1, 21)において接平面をもつと仮定すると・・・と書きましたが、
この仮定が気になってしかたがない厳密な人(´~`)。゜がいるかもしれませんので、ちょっと補足しておきます。
2変数関数をf(x,y)、その接平面をg(x,y)としましょう。
今、
f(x,y) = 3x2 + 4y3 +5
が、もし点(2, 1, 21)において接平面をもつとすれば、その接平面の式は、
g(x,y) = 21 + 12(x-2) + 12(y-1)
になります。
(数学の得意な人たちは、この「もし〜があれば」を、「もし〜であれば〜をみたすような〜が存在する」みたいな妙な言い回しをしますが、わけがわかりません(^-^;)
点(2, 1, 21)に接平面があるってことは、曲面f(x,y)と接平面g(x,y)が、点(2, 1, 21)において完全に一致し、区別できないってことですよね、ぶっちゃけていえば。。。
もうちょっと厳密に言うと、
ある点で、関数g(x,y)が関数f(x,y)の接平面になっているんだったら、
その点で、f(x,y)とg(x,y)が一致、つまり関数の差 [f(x,y) - g(x,y)] がゼロになる・・・
ということ。
これを数学者は、関数f(x,y)が点(2, 1, 21)で全微分可能であれば(= 接平面をもつとすれば)、
lim x→2, y→1 [f(x,y) - g(x,y)]/√[(x-2)2 + (y-1)2] = 0
であるはずだぁ(σ・∀・)σゲッツ!!
と表現します( ´_ゝ`)。
逆に言うと、
ある点でf(x,y)とg(x,y)が一致すれば、その点に接する接平面がある
ということ・・・
面によっては、どうしても接平面ができない場所ってのもありますからね。厳密な人はそれが気になるんです。
まぁ、細かいことはさておき(^-^;、
実際に計算してみましょう。
[f(x,y) - g(x,y)]/√[(x-2)2 + (y-1)2]
= [3x2 + 4y3 +5 - (21 + 12(x-2) + 12(y-1))]/√[(x-2)2 + (y-1)2]
= [3(x-2)2 + 4(y-1)2(y+2)]/√[(x-2)2 + (y-1)2]
ここで、分母を消すための常套手段として、x-2 = rcosθ、y-1 = rsinθとおくと、
= [3r2cos2θ + 4r2sin2θ(rsinθ+3)]/r
= [3rcos2θ + 4rsin2θ(rsinθ+3)]
x→2、y→1のとき、r→0ですから
lim x→2, y→1 [f(x,y) - g(x,y)]/√[(x-2)2 + (y-1)2]
= lim r→0 [3rcos2θ + 4rsin2θ(rsinθ+3)]
= 0
見事、ゼロになりましたね(v^ー゜)!!
よって、
2変数関数 z = 3x2 + 4y3 +5 は、点(2, 1, 21)において全微分可能、つまり、点(2, 1, 21)で接平面をもつ
と結論できます(v^ー゜)!!
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教え方が上手 教え方の天才
投稿: hirahatakatuhiko | 2022年4月 4日 (月) 15時49分
ありがとうございます!ほめていただき嬉しいです。
投稿: 管理人 | 2022年4月20日 (水) 21時01分
>管理人さん
>
>ありがとうございます!ほめていただき素直に嬉しいです。
投稿: 管理人 | 2022年4月20日 (水) 21時01分